新型コロナウイルス感染症の世界の状況報告

COVID-19 Weekly Epidemiological Update(WHO) 2022年4月12日

世界の概況

2022年4月4日から4月10日(以下「直近1週間」という。)の新規感染者数及び死亡者数については、3週連続で減少し、それぞれ7,221,651人及び22,336人と報告され、前週と比較してそれぞれ24%及び18%減少しました(図1)。全ての地域で新規感染者数及び死亡者数の減少傾向が報告されています(表1)。2022年4月10日時点で、全世界の累積感染者数は496,507,539人、累積死亡者数は6,177,354人となります。
 
これらの傾向については、いくつかの国が検体採取方式を積極的に変更し、全体の検査数が減少して結果的に検出される感染者数が減少するため、慎重に解釈する必要があります。
 
各国別では、新規感染者数が多い上位5か国は、韓国(1,459,454人、29%減少)、ドイツ(1,019,649人、26%減少)、フランス(927,073人、3%減少)、ベトナム(453,647人、43%減少)及びイタリア(447,322人、8%減少)でした。また、直近1週間における新規死亡者数が多い上位5か国は、アメリカ(3,682人、9%減少)、韓国(2,186人、6%減少)、ロシア(2,008人、15%減少)、ドイツ(1,686人、6%増加)及びブラジル(1,120人、22%減少)でした。

図1 2022年4月10日時点の週別又はWHO管轄地域別の新型コロナウイルス感染者数及び世界の死亡者数の推移
 

表1 2022年4月10日時点におけるWHO管轄地域別の新規又は累積新型コロナウイルス感染者の確定症例数及び死亡者

WHO管轄地域別の概況

アフリカ地域

新規感染者数については、2022年1月以降減少傾向が報告されており、直近1週間で23,323人と報告され、前週と比較して17%減少しました。しかしながら、アフリカ地域内の7か国(全体の14%)については、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、レソトで287%(15人から58人)、マリで130%(23人から53人)及びマヨットで29%(52人から67人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で82人と報告され、前週と比較して40%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
レユニオン 10,996人 1228.2人 13%増加
南アフリカ 9,182人 15.5人 6%減少
セーシェル 510人 518.6人 1%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
南アフリカ 50人 1.0人未満 38%減少
レユニオン 11人 1.2人 57%増加
ジンバブエ 11人 1.0人未満 22%増加

 

アメリカ地域

2022年1月中旬以降、アメリカ地域の新規感染者数及び死亡者数については、減少傾向が報告されており、直近1週間でそれぞれ516,017人及び5,980人と報告され、前週と比較してそれぞれ4%及び19%減少しました。しかしながら、アメリカ地域内の12か国(全体の21%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、バージン諸島で140%(45人から108人)、シント・マールテンで117%(41人から89人)、プエルトリコで77%(2,396人から4,236人)及びアルゼンチンで74%(12,894人から22,468人)の最大の増加が報告されました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
アメリカ 208,732人 63.1人 4%増加
ブラジル 148,798人 70.0人 14%減少
カナダ 60,099人 159.2人 7%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
アメリカ 3,682人 1.1人 9%減少
ブラジル 1,120人 1.0人未満 22%減少
チリ 308人 1.6人 21%減少

 

東地中海地域

新規感染者数については、2022年2月以降減少が継続しており、直近1週間で43,920人と報告され、前週と比較して4%減少しました。しかしながら、ヨーロッパ地域の3か国(全体の14%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、パレスチナで90%(282人から537人)及びイランで27%(17,582人から22,378人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で565人と報告され、前週と比較して18%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
イラン 22,378人 26.6人 27%増加
エジプト 3,913人 3.8人 11%減少
バーレーン 3,871人 227.5人 26%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
イラン 300人 1.0人未満 2%減少
チュニジア 102人 1.0人未満 35%減少
エジプト 56人 1.0人未満 同等

 

ヨーロッパ地域

新規感染者数については、2022年3月中旬に増加が観察された後、3週連続で減少が継続しており、直近1週間で3,554,764人と報告され、前週と比較して26%減少しました。ヨーロッパ地域内では、20%を超える新規感染者数の増加が報告された国はありませんでした。
 
新規死者数については、同様に減少が継続しており、直近1週間で9,920人と報告され、前週と比較して16%減少しました。
 
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
ドイツ 1,019,649人 1226.0人 26%減少
フランス 927,073人 1425.4人 3%減少
イタリア 447,322人 750.0人 8%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
ロシア 2,008人 1.4人 15%減少
ドイツ 1,686人 2.0人 6%増加
英国 1,026人 1.5人 35%減少

 

東南アジア地域

新規感染者数については、2022年1月中旬以降減少傾向が継続して観察されており、直近1週間で204,527人と報告され、前週と比較して8%減少しました。しかしながら、ブータンで70%(6,357人から10,785人)の新規感染者数の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で1,358人と報告され、前週と比較して15%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
タイ 171,890人 246.3人 6%減少
インドネシア 12,726人 4.7人 39%減少
ブータン 10,785人 1397.7人 70%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
タイ 668人 1.0人 8%増加
インド 340人 1.0人未満 同等
インドネシア 338人 1.0人未満 45%減少

 

西太平洋地域

新規感染者数については、2022年3月に頂点に達した後、減少が継続しており、直近1週間で2,879,100人と報告され、前週と比較して26%減少しました。西大平洋地域内の5か国(16%)において20%を超える新規感染者数の増加が報告され、アメリカ領サモアで101%(600人から1,208人)、サモアで75%(917人から1,607人)及びフィジーで72%(39人から67人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で4,431人と報告され、前週と比較して21%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
韓国 1,459,454人 2846.6人 29%減少
ベトナム 453,647人 466.1人 43%減少
オーストラリア 392,569人 1,539.5人 2%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
韓国 2,186人 4.3人 6%減少
中国 645人 1.0人未満 33%減少
フィリピン 406人 1.0人未満 8%減少

 

新型コロナウイルスの懸念される変異株及び注目すべき変異株についての特別な焦点

国の、当局、機関及び研究者と協力して、新型コロナウイルスの変異株が感染・伝播性や病原性に影響するか否か、感染拡大を制御するための、ワクチンの有効性(以下「有効率」という。)、治療法、診断又は公衆衛生上の取組(以下「PHSM」という。)について、WHOは定期的に評価しています。潜在的な、懸念される変異株(以下「VOC」という。)、注目すべき変異株(以下「VOI」という。)及び監視下にある変異株(以下「VUM」という。)は、世界の公衆衛生にもたらすリスクに基づいて定期的に評価されています。流行している変異株の継続的な進化及び付随する疫学の変化を反映するために、変異株の分類が改訂される予定です。変異株の分類基準、VOC、VOI及びVUMの現在の一覧は、新型コロナウイルス変異株の追跡ウェブサイトで閲覧できます。国の当局は、他の変異株の指定を選択することができ、かつ、これら変異株の影響に基づいて調査・報告をするよう奨励されています。最初の症例(2019年12月)から特定された新型コロナウイルスのゲノム配列に言及する場合、「インデックスウイルス」という用語を使用する必要があります。

VOCの世界的拡散及び有病率

変異株B.1.1.529系統(以下「オミクロン株」という。)は依然として世界的に優勢な変異株であり、GISAIDに直近で提出された検体のほぼ全てを占めています。過去30日間に採取されてGISAIDに提出された379,278検体のうち、376,082検体(99.2%)がオミクロン株、125検体(0.1%未満)がデルタ株及び2,961検体(0.8%)がPango系統に分類されない検体でした。これらの傾向については、調査の限界を考慮し、慎重に解釈する必要があります(調査の限界は、ゲノム解析のための実験室における所用時間及び報告の遅延と同様に、国・地域毎のゲノム解析能力及び検体採取方式の違いを含む。)。
 

オミクロン株

WHOは、BA.4系統及びBA.5系統と同様に、BA.1系統、BA.2系統及びBA.3系統を含む、オミクロン株のいくつかの下位系統について監視を継続しています。それは、例えばXE系統のようにBA.1系統及びBA.2系統の組換え体を同様に含みます。全一覧は、https://cov-lineages.org/lineage_list.html で閲覧できます。
 
いくつかの国々で、BA.4系統及びBA.5系統の下位系統の検体が少数特定されています。両方に、スパイクタンパク質の領域における追加の変異(L452R及びF486V)及びスパイクタンパク質以外の領域における固有の変異があります。L452R及びF486Vの変異は、免疫回避の特徴に関連しています。さらに、BA.4系統及びBA.5系統は、PCR検査でS遺伝子のPCRが陰性となる(以下「SGTF」という。)原因の69-70欠失を有しています。BA.2系統には当該欠失がほぼないため、当該欠失はBA.2系統がどこで優勢かを知るためという調査の目的に有用かもしれません。
 
WHOは、科学者と共に、これら系統の特徴及び公衆衛生の影響を更に評価するために取り組んでいます。WHOは、各国に、公的に利用可能なデータベースにおける可能で迅速なデータ共有及び調査を継続することを推奨しています。

特別な焦点(WHOによる新型コロナウイルス感染症の迅速かつ世界的なリスクアセスメントに係る更新)

新型コロナウイルス感染症のパンデミックは進化を継続しており、新型コロナウイルスの理解及びその拡大及び影響を制御するために必要な対応も同様です。WHOによる直近のリスクアセスメントは2021年4月6日に完成し、その中で、世界的な公衆衛生の危機は、進行中の人間の健康、不十分な制御能力及び拡散に係る危機のため、依然として高いままであると評価されました。緊急対応の枠組みの中で、WHOはリスクアセスメント及び状況解析を定期的に実施し、新たな状況への対応を通知します。さらに、WHOは詳細な危機、曝露及び状況評価を通じて公衆衛生の契機に係る現在の危機の状態を定期的に確認します。これは、同様に、公衆衛生の契機に対応するための、かつ、人間の健康に係る現在の危機、世界的に進行中の拡散の危機及び不十分な制御能力の危機を調査するための、脆弱性及び利用可能な能力を含みます。そのような評価は、内部のWHO意思決定手段として使用されます。また、新型コロナウイルス感染症パンデミックに関する国際保健規則(IHR2005)緊急委員会の会議を含みますが、決してそれに限定されない独立した審議を補助するため使用されます。
 
今日に至るまで、13の迅速かつ世界的なリスクアセスメントが新型コロナウイルス感染症のために行われ、新型コロナウイルス変異株の出現を例として、特定の契機について追加の評価が行われています。ここでは、新型コロナウイルス感染症について、最新、詳細、迅速かつ世界的なリスクアセスメントの概要を示します。
 
多くの加盟国で2022年の初頭以降に新型コロナウイルスに係る検査の減少が観察されたにも関わらず、新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、主にワクチン未接種で危機のある集団で高い感染・伝播性及び高い段階の死亡を伴って継続しています。感染・伝播性の高いVOCであるオミクロン株は、報告されているほぼ全ての国で他の全ての流行している変異株に取って替わり、世界的に優勢となっています。
 
オミクロン株の免疫回避の特性は、2022年1月末までに報告された新型コロナウイルス感染症の世界的な発生に係る、急速かつ同期した増加と関連しています。3月の初めに観察された更なる増加は、西太平洋地域における症例発生の増加に係る遅延及びヨーロッパ地域で報告された新規感染者数の再増加によるものでした。この傾向は、複数の要因の組み合わせによるものであり、オミクロン株Pango系統のBA.1系統その次にBA.2系統の優勢(その他オミクロン株系統よりも高い感染・伝播性を伴います。)、PHSMの緩和及びワクチン接種後の感染前後における体液性免疫の減弱も同様に含みます。デルタ株及びオミクロン株の組換え体及びオミクロン株下位系統の出現を直近で検出するためには、継続的かつ詳細な追跡を必要とします。過去の流行とは異なり、オミクロン株による直近の流行は多くの国での症例数、入院数(特に集中治療)及び死亡数間の分離によって特徴付けることができます。しかしながら、オミクロン株感染後の重症化については、データがワクチン接種済みの人と比較してワクチン未接種の人のほうが高いと示しています。重症度の低下にもかかわらず、オミクロン株の症例数が大幅に増加し、入院数が増加し、医療介護システムに対する圧力が増し、一部の国では前週と比較して死亡者数が同程度又は増加しています。
 
オミクロン株に対してワクチンの1又は2回目接種(以下「初回接種」という。)した場合の有効率については、全ての予防(感染、発症及び重症化予防をいう。以下同じ。)はその他変異株と比較して減弱する一方、重症化予防は依然として高いままでした。さらに、初回接種後の接種(以下「追加接種」という。)が著明に全ての予防の有効率を改善させるという科学的根拠はありますが、この予防の持続期間について特徴化するためには、更なるデータが必要となります。110億以上のワクチンが世界中に配布されています。それにもかかわらず、地域間の格差が存在し、低所得国の11%のみが初回接種を完了しています。地域間の著明な差として、西太平洋地域の82%及びアフリカ地域の13%のワクチン接種率があります。ワクチン未接種である脆弱な集団、特に高齢者及び合併症ある集団に対して懸念があります。世界的には、60歳以上の35%がワクチン初回接種の完了を待機中であると見積もりがあります。アフリカ地域のワクチン接種率が低いにもかかわらず、抗体保有率(ワクチン又は感染による体液性免疫反応)は72.6%の見積りです(95%信頼区間が71.7%から73.5%。)。ワクチン接種率の低さを加味すると、このような抗体保有率は地域全体における新型コロナウイルスの感染・伝播性を明らかにしています。WHOの緊急使用一覧は診断検査を承認しており、複数のウイルスを標的とした、又は迅速抗原検査を伴う核酸増幅検査(例えばPCR検査)を含んでおり、BA.1系統及びBA.2系統を含むオミクロン株の感染を検出するのに有用です。診断検査の利便性が拡散したにもかかわらず、WHOは直近数か月で一部の国が新型コロナウイルス検査を著明に削減したことを懸念しています。強固な調査システムが維持されない限り、各国は、感染・伝播性を減弱し、ウイルスの進化を追跡及び評価をするために必要かつ適切な対策を実施し、正確に疫学的な動向を解釈する能力を失う可能性があります。
 
現在の新型コロナウイルスの感染・伝播性が高いにもかかわらず、多くの国は緩和に向けた階層又は段階的な政策なしにPHSMを削減しています。これは公共の信頼の低下につながる可能性があり、例えば新しい変異株の出現に続いて将来的に必要性が生じた場合、PHSMを容易に再稼働できない可能性があります。各国は、疫学的な状況及び流れに基づいて異なる環境に直面しています。WHOは、2022年に世界的な新型コロナウイルス感染症の緊急事態を終焉させるための、最新の戦略的準備、対応及び準備の計画を発表しました。これは、新型コロナウイルス感染症の将来的な見通しや、他の多くの公衆衛生及び世界的な課題を照らし合わせてパンデミックによる困難を考慮に入れ、現在の戦略をどのように調整する必要があるかという点を解説しています。これは、ウクライナでの紛争及び多くの他の国々で長引く衝突を含んだ緊急事態の際に、特に明らかです。
 
世界的な公衆衛生の危機についての利用可能な情報への信頼性は、依然として中程度のままです。新型コロナウイルス変異株及び組換え体の進化に伴う表現型の影響に係る知識については、格差があります(感染及びワクチン接種による予防の長期持続期間、特に重症化及び入院に対するもの、そして、PHSMを立ち上げて変更することによる感染・伝播性、入院及び死亡率への影響です。
 

出典

COVID-19 Situation reports
COVID-19 Weekly Epidemiological Update: 12 April 2022
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---12-April-2022