黄熱 - ウガンダ共和国

Disease outbreak news  2022年4月25日

発生状況一覧

2022年3月6日、WHOはウガンダ保健省 から黄熱の疑い例4例の通知を受けました。2022年4月25日の時点で、合計7件の疑い例がプラーク減少中和試験で黄熱の抗体が陽性であると確認されました。しかし、さらなる調査により、中央地域ワギソ(Wakiso)県から報告された黄熱の検査確定例は1例のみであることが確認されました。保健省はアウトブレイクを宣言し、迅速対応チームが感染地域に配備されました。ウガンダで流行が拡大し、近隣諸国にも拡がる危険性があるため、WHOは国および地域レベルで高いリスクと評価しています。

発生の概要

2022年3月6日、保健省は、2022年1月2日から2月18日に採取された検体で、ウガンダウイルス研究所(UVRI)における酵素結合免疫吸着法(ELISA)およびプラーク減少中和試(PRNT)により黄熱病抗体が陽性となった4例の疑い例についてWHOに通知しました。2022年3月25日の時点で、2021年10月1日から13日の間に採取された検体のうち、さらに3検体が、ウガンダウイルス研究所でPRNTによる抗体検査で陽性となりました。疑い症例の7人はすべてポリメラーゼ連鎖反応により陰性と判定されました。
 
患者は、発熱、嘔吐、吐き気、下痢、強い疲労感、食欲不振、腹痛、胸痛、筋肉痛、頭痛、咽頭痛などの症状を呈しました。急性黄疸を伴う重症黄熱の症状を呈した症例はありませんでした。
 
疑い例の多くは女性(n=6)で、年齢層は15~57歳でした。5人がワギソ県から、マサカ(Masaka) 県とカセセ(Kasese) 県からそれぞれ1名ずつ報告されています。
 
疑い症例7例のうち、6例については疫学調査が行われ、1例については結果待ちです。2022年4月25日現在、調査した6例のうち5例は最近のワクチン接種歴があり、ワクチン接種の失敗を示唆する証拠がないため、結果的に黄熱の可能性は棄却され、1例(ワギソ県から報告)が黄熱と確定されました。

黄熱の疫学

黄熱は、感染したヤブカおよびHaemagogus蚊に刺されることでヒトに感染するアルボウイルスによる、蚊媒介性のワクチンで予防可能な流行性疾患です。黄熱ウイルスは、感染すると体内で3~6日間潜伏します。感染の大半は無症状ですが、症状が出た場合、発熱、腰痛が目立つ筋肉痛、頭痛、食欲不振、吐き気や嘔吐などが主な症状です。ほとんどの場合、症状は3~4日後に消失します。
 
しかし、ごく一部の患者では、急性肝・腎不全による高熱、嘔吐を伴う腹痛、黄疸、暗色尿など、より重篤な症状を呈することがあります。重症化した患者の約半数は、7~10日以内に死亡する可能性があります。現在、黄熱に特異的な抗ウイルス剤はありませんが、脱水、発熱、肝・腎不全の治療に対症療法を行うなど、早期の支持療法により生存率を向上させることが可能です。
 
世界では40カ国、アフリカでは27カ国、中南米では13カ国が黄熱の高リスク国に分類されています。2021年9月以降、WHOアフリカ地域の13カ国から黄熱の患者およびアウトブレイクが疑いおよび確定例として報告されています。これには、隣国ケニアで現在綿密な調査が行われている進行中のアウトブレイクが含まれています。これらのアウトブレイクは、アフリカの西部、中部、東部地域の広い地域で発生しています。過去に大規模な予防接種キャンペーンを実施した地域でも、定期予防接種による集団免疫の継続の欠如や、人口移動(予防接種歴のない移住者)による二次的な免疫格差が発生あるいは免疫格差が拡大する事態に陥っています。これらの報告は、黄熱ウイルスの再流行と感染の激化を示唆しています。

公衆衛生上の取り組み

ウガンダの保健省は、国内で黄熱が発生したと宣言した後、公衆衛生緊急オペレーションセンターを立ち上げました。また、全症例が報告された感染地区に迅速対応チームを配備し、発生の程度を判断し、リスクのある人々を特定し、リスク評価を行い、リスクコミュニケーションとコミュニティ参加活動を開始し、統合的媒介制御策を実施しています。
 
ウガンダでは、黄熱ワクチンは定期予防接種スケジュールに導入されていませんが、2022年半ばに導入し、その後、段階的な集団予防接種キャンペーン(PMVC)を行うという目処が立っています。状況の進展と対応計画によっては、黄熱ワクチンのため、ワクチン供給に関する国際協力機構(ICG)に要請を提出する可能性があります。

WHOのリスク評価

ウガンダは黄熱の常在国であり、黄熱撲滅(EYE)戦略において高リスク国に分類されています。同国では、2020年(ブリサ(Buliisa)県、マラチャ(Maracha)県、モヨ(Moyo)県)、2019年(マサカ(Masaka)県、コボコ(Koboko)県)、2016年(マサカ県、ルクンギリ(Rukungiri)県およびカランガラ(Kalangala)県)、2010年に北ウガンダの10県で流行が報告された歴史があります。
 
確定症例は、カンパラ大都市圏に近いワギソ県から報告されています。同地区には、国際空港のあるエンテベ(Entebbe)も含まれています。
 
ウガンダは黄熱ワクチンを定期予防接種に導入しておらず、全人口の推定免疫力が低いため(4.2%)、ユンベ(Yumbe)県、モヨ県、ブリサ県、マラチャ県、コボコ県(2020年に支援)、マサカ県、コボコ県(2019年に支援)などの対象地区、カンパラ大都市圏(Greater Kampala)(2017に支援)、マサカ県、ルクンギリ県、カランガラ県(2016に支援)で限定的に行った流行対応ワクチン活動を過去にICGが支援するきっかけになりました。
 
黄熱の流行は、旅行の中継拠点として知られる混雑した都市部でウイルスが持ち込まれた場合、そこを中心に増幅が起こる可能性があるため、ウガンダではリスクとなっています。一部の近隣諸国における人口の免疫力の低さと相まって、頻繁な人口移動(ウガンダ、コンゴ民主共和国、南スーダン間など)があるため、さらに増幅し国際的に広がる危険性があります。
 
繰り返される発生は、黄熱の人獣共通感染症としての流出リスクと、農村部と都市部の人口密集地の両方で、ほとんど予防接種を受けていない人々が病気を増幅するリスクが継続していることを示しています。
 
黄熱ワクチンは非常に有効ですが(接種後30日以内に99%有効)、ブレークスルー感染のリスクは存在します。 これらの症例は、ワクチンがうまく機能しなかったの可能性のある原因を特定し、対処するために調査されなければなりません。
 
上記の状況を考慮し、リスクは国・地域レベルでは高く、世界レベルでは低いと評価されます。
 
WHOは引き続き疫学的状況を監視し、最新の利用可能な情報に基づいてリスク評価を見直します。

WHOからのアドバイス

サーベイランス :WHOは、近隣諸国で患者が発生する可能性、近隣のケニアで黄熱が発生していること、外部に広がる危険性があることから、国境を越えた連携と情報共有を積極的に行い、状況を注意深く監視することを推奨しています。また、疑わしい症例の調査や検査によるサーベイランスの強化も推奨されています。
 
ワクチン接種: ワクチン接種は、黄熱の予防と制御のための主要な手段です。ワクチン接種による全国的な住民の保護が完了すれば、将来の大発生のリスクを回避することができます。WHOは、ウガンダ保健省が国の定期予防接種スケジュールに黄熱ワクチンを導入する計画、および、段階的な集団予防接種キャンペーンの実施を支持しています。
 
媒介蚊の制御(ベクターコントロール): 都市部では、的を絞った媒介蚊の制御も感染を阻止するのに有効です。一般的な予防策として、WHOは忌避剤や殺虫剤処理された蚊帳の使用など、蚊に刺されないようにすることを推奨しています。黄熱ウイルスの感染リスクが最も高いのは、日中と夕方です。
 
リスクコミュニケーション:WHOは加盟国に対し、渡航者にリスクと予防接種を含む予防策について十分な情報を提供するために必要なあらゆる行動をとるよう促しています。旅行者には黄熱の症状や兆候を認識させ、黄熱の感染を示唆する症状や兆候がある場合は、速やかに医師の診断を受けるよう指導する必要があります。感染した帰国者は、媒介蚊が存在する地域で黄熱病の地域的な感染サイクルを確立するリスクとなる可能性があります。
 
国際的な旅行と貿易:WHOはウガンダへの旅行や貿易の制限を適用しないよう勧告しています。ウガンダに入国する1歳以上の外国人旅行者には、国家機関により黄熱の予防接種が義務付けられています。
 
国際保健規則(IHR2005)第3版に基づき、黄熱予防接種の国際証明書は、接種後10日目から有効となり、有効期限は接種者の生涯に及びます。WHOが承認した黄熱ワクチンは、1回の接種で黄熱に対する持続的かつ生涯における免疫を付与します。ブースター接種は必要なく、入国条件として海外渡航者に要求されることはありません。

出典

Yellow Fever – Uganda
Disease outbreak news 25 April 2022
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2022-DON367