新型コロナウイルス感染症の世界の状況報告

COVID-19 Weekly Epidemiological Update(WHO)2022年4月27日

世界の概況

新規感染者数及び死亡者数については、2022年3月以降世界的に減少が継続しています。2022年4月18日から4月24日(以下「直近1週間」という。)の新規感染者数及び死亡者数については、それぞれ4,548,226人及び15,134人と報告され、前週と比較してそれぞれ21%及び20%減少しました(図1)。しかしながら、全ての地域で減少傾向が報告された訳ではありません。新規感染者数にあってはアメリカ地域で9%及びアフリカ地域で32%の増加が報告された一方、新規死亡者数にあっては東南アジア地域で41%(インドからの報告遅延による。)及びアフリカ地域で110%の増加が報告されました。2022年4月24日時点で、全世界の累積感染者数は507,184,387人、累積死亡者数は6,219,657人となります。
 
これらの傾向については、いくつかの国が検体採取方式を積極的に変更し、全体の検査数が減少して結果的に検出される感染者数が減少するため、慎重に解釈する必要があります。
 
各国別では、新規感染者数が多い上位5か国は、ドイツ(675,022人、13%減少)、韓国(589,442人、39%減少)、フランス(542,896人、34%減少)、イタリア(419,374人、1%減少)及びアメリカ(298,306人、21%増加)でした。また、直近1週間における新規死亡者数が多い上位5か国は、アメリカ(2,354人、24%減少)、ロシア(1,402人、21%減少)、韓国(1,041人、38%減少)、イタリア(1,007人、7%増加)及び英国(903人、47%減少)でした。

図1 2022年4月24日時点の週別又はWHO管轄地域別の新型コロナウイルス感染者数及び世界の死亡者数の推移
 

表1 2022年4月24日時点におけるWHO管轄地域別の新規又は累積新型コロナウイルス感染者の確定症例数及び死亡者数

WHO管轄地域別の概況

アフリカ地域

新規感染者数及び死亡者数については、2022年1月以降減少傾向が報告されていましたが、直近1週間でそれぞれ35,994人及び185人と報告され、前週と比較して32%及び110%増加しました。アフリカ地域内の4か国(全体の18%)については、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、ブルンジで233%(103人から343人)、南アフリカで111%(9,151人から19,291人)及びエスワティニで41%(132人から186人)の最大の増加が報告されました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
南アフリカ 19,291人   111%増加
レユニオン 13,850人 1546.9人 11%増加
ザンビア 517人 2.8人 47%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
南アフリカ 154人 1.0人未満 221%増加
レユニオン 11人 1.2人 同等
ジンバブエ 6人 1.0人未満 20%増加


 

アメリカ地域

新規感染者数については、2022年1月以降減少が継続して観察された後に増加傾向となり、直近1週間で550,015人と報告され、前週と比較して9%増加しました。アメリカ地域内の18か国(全体の32%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、セントビンセント及びグレナディーン諸島で400%(9人から45人)、プエルトリコで323%(5,106人から21,622人)及びアルゼンチンで271%(6,695人から24,832人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で4,029人と報告され、前週と比較して19%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
アメリカ 298,306人 90.1人 21%増加
ブラジル 91,395人 43.0人 26%減少
カナダ 63,247人 167.6人 6%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
アメリカ 2,354人 1.0人未満 24%減少
ブラジル 650人 1.0人未満 17%減少
カナダ 452人 1.2人 40%増加

 

東地中海地域

新規感染者数については、2022年2月に頂点を迎えた後は減少が継続しています。直近1週間で22,878人と報告され、前週と比較して30%減少しました。ヨーロッパ地域内の3か国(全体の14%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、スーダンで74%(23人から40人)及びリビアで50%(28人から42人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で283人と報告され、前週と比較して34%減少しました。

新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
イラン 10,448人 12.4人 36%減少
バーレーン 3,071人 180.5人 8%減少
UAE 1,628人 16.5人 6%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
イラン 162人 1.0人未満 27%減少
エジプト 42人 1.0人未満 14%減少
チュニジア 24人 1.0人未満 71%減少


ヨーロッパ地域

新規感染者数については、2022年3月前半に増加が観察された後、減少が継続しています。直近1週間で2,289,820人と報告され、前週と比較して23%減少しました。アルバニアのみで、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、21%(271人から329人)の増加が報告されました。
 
新規死者数については、減少が継続しており、直近1週間で6,811人と報告され、前週と比較して23%減少しました。
  
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
ドイツ 675,022人 811.6人 13%減少
フランス 542,896人 834.7人 34%減少
イタリア 419,374人 703.2人 1%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
ロシア 1,402人 1.0人 21%減少
イタリア 1,007人 1.7人 7%増加
英国 903人 1.3人 47%減少

 

東南アジア地域

新規感染者数については、2022年1月以降減少傾向が継続して観察されており、直近1週間で161,639人と報告され、前週と比較して6%減少しました。しかしながら、インドで、126%(6,826人から15,448人)の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で1,580人と報告され、前週と比較して41%増加しました(一部は、インドにおける死亡者数の報告の遅延によるものです。150人が新規死亡者数となります。)。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
タイ 135,915人 194.7人 7%減少
インド 15,448人 1.1人 126%増加
ブータン 4,975人 644.8人 53%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
タイ 893人 1.3人 12%増加
インド 442人 1.0人未満 570%増加
インドネシア 234人 1.0人未満 3%減少

 

西太平洋地域

新規感染者数については、2021年12月から2022年3月まで増加傾向が観察された後、5週連続で減少しており、直近1週間で1,487,880人と報告され、前週と比較して28%減少しました。しかしながら、西太平洋地域内の9か国(29%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、サモアで250%(772人から2,702人)、パラオで202%(52人から157人)及びニューカレドニアで167%(27人から72人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で2,246人と報告され、前週と比較して33%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
韓国 589,442人 1149.7人 39%減少
オーストラリア 294,982人 1156.8人 11%減少
日本 287,210人 227.1人 16%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
韓国 1,041人 2.0人 38%減少
日本 292人 1.0人未満 16%減少
中国 215人 1.0人未満 47%減少

 

新型コロナウイルスの懸念される変異株及び注目すべき変異株についての特別な焦点

国の、当局、機関及び研究者と協力して、新型コロナウイルスの変異株が感染・伝播性や病原性に影響するか否か、感染拡大を制御するための、ワクチンの有効性(以下「有効率」という。)、治療法、診断又は公衆衛生上の取組(以下「PHSM」という。)について、WHOは定期的に評価しています。潜在的な、懸念される変異株(以下「VOC」という。)、注目すべき変異株(以下「VOI」という。)及び監視下にある変異株(以下「VUM」という。)は、世界の公衆衛生にもたらすリスクに基づいて定期的に評価されています。
 
流行している変異株の継続的な進化及び付随する疫学の変化を反映するために、変異株の分類が改訂される予定です。変異株の分類基準、現在又は過去に流行していた、VOC、VOI及びVUMの現在の一覧は、新型コロナウイルス変異株の追跡ウェブサイトで閲覧できます。国の当局は、他の変異株の指定を選択することができ、かつ、これら変異株の影響に基づいて調査・報告をするよう奨励されています。最初の症例(2019年12月)から特定された新型コロナウイルスのゲノム配列に言及する場合、「インデックスウイルス」という用語を使用する必要があります。 

VOCの世界的な拡散及び有病率

オミクロン株(B.1.1.529系統並びにその亜系統のBA.X系統及び組換え体を指す。以下同じ。)は依然として世界的に優勢な変異株です。過去30日間に採取されてGISAIDに提出された257,337検体のうち、256,684検体(99.7%)がオミクロン株、47検体(0.1%未満)がデルタ株及び555検体(0.2%)がPango系統に分類されない検体でした。検体数の減少が世界的に報告される新規感染者数の全体的な減少傾向と一致している一方、検体数の減少が検体採取及びゲノム解析の戦略における変化を含む、いくつかの国での疫学的な調査指針の変化を反映している可能性があります。WHOは、パンデミック急性期の残りの期間を通じ、新型コロナウイルスの強固な調査を維持することを推奨しています。
 
2021年11月にオミクロン株が出現して以降、ウイルスの進化が継続しており、多くの下位系統及び組換え体が出現しています。WHOは、VOCの傘下で異なるオミクロン株の下位系統を監視しています。オミクロン株の遺伝的多様性は、ウイルスがその宿主及び環境に適応するための継続的な選択的圧を示しています。各系統には、更なる変異があります。これらは、関連するゲノム部位のアミノ酸置換につながる場合とそうでない場合があります。遺伝的な差異は小さい可能性があり、ウイルスの表現型に影響を与えると推定される追加のアミノ酸置換よりは、局所的な遺伝傾向としばし関連しています。現在各単一の変異及び変異の集合体は未知であり、それゆえ、疫学における関連した変化を継続して監視することが重要となります。新型コロナウイルス変異株のいかなる出現についても、WHOはリスク評価のために同じ基準を下位系統及び組換え体に適用します。
 
一部の国で観察された症例で、過去に報告された急増は、流行する下位系統のより高い感染・伝播性、免疫回避の特性、免疫の低下、進化する遺伝的背景の流れにおけるこれら因子の組み合わせに起因する可能性があります。今日に至るまで、現在利用可能で限られたデータでは、BA.2系統と比較し、BA.4系統、BA.5系統、BA.2.12系統の増加の優位性があるようです。現在利用可能な科学的根拠は、重症度又は臨床症状の違いを示唆していません。研究が進行中であり、更なるデータが期待されます。

オミクロン株に対するワクチンの有効率の結果に係る解釈

今日に至るまで、17の研究は、ワクチン初回接種後のオミクロン株に対する、全ての予防(感染、発症及び重症化の予防をいう。以下同じ。)の有効率が他のVOCに対する有効率と比較して減じたと報告しています。重要なことに、ほぼ全ての研究で、オミクロン株に対する重症化予防の有効率については、他の予防の有効率よりも高いままです。ワクチンの追加接種は、全製品において全ての予防の有効率を著明に改善します。しかしながら、追加接種後における予防の持続期間を評価するために6か月以上追跡した研究はほぼありません。
 
重症化予防の有効率に関して、ワクチンの初回接種後3か月以内において、11のうち6の研究(55%)についてはメッセンジャーRNAワクチン(モデルナ及びファイザー製ワクチン。以下「mRNAワクチン」という。)の有効率を70%以上と見積もりました。ウイルスベクターワクチン(アストラゼネカ及びヤンセン製ワクチン)を対象とした3の研究及び不活化ワクチン(シノバック製ワクチン)を対象とした2の研究が有効率を50%未満と見積もりました。初回接種後3か月を超えると、25のうち10の研究(40%)はmRNAワクチンの有効率を70%以上と見積もる一方で18の研究(72%)が有効率を50%以上に見積もっており、11のうち1の研究(9%)がウイルスベクターワクチンの有効率を70%以上と見積もる一方で7の研究(64%)が有効率を50%以上と見積もっており、4の研究のうちシノバック製ワクチンの有効率を70%以上と見積もったものはなく、2の研究(50%)が有効率を50%以上と見積もりました。全ての研究については、追加接種後14日から3か月間で重症化予防の有効率が改善し、ヤンセン製ワクチンを対象とした1の研究のみが有効率が70%を下回ると見積もりました(28の研究がmRNAワクチンの、3の研究がヤンセン製ワクチンの、1の研究がアストラゼネカ製ワクチンの、2の研究がシノバック製ワクチンの有効率を見積もりました。)。mRNAワクチンの追加接種後3から6か月間において、15のうち12の研究(80%)が有効率を70%以上と見積り、そのうち、11の研究がmRNAワクチンを初回接種とし、3の研究がアストラゼネカ製ワクチンを初回接種とし、1の研究がシノバック製ワクチンを初回接種としました。
 
初回接種後3か月以内において、ワクチンによる感染及び発症予防の有効率は重症化予防の有効率より低くなる傾向にあり、時間経過とともに著明に減少します。発症予防の有効率については、初回接種後3か月間において、mRNAワクチンを対象とする12のうち3の研究(25%)が70%以上であり、アストラゼネカ製ワクチン及びシノバック製ワクチンを対象とする研究が50%を下回ると見積もりました。初回接種後3か月を超えると、26の研究のうち有効率が50%以上のものはありませんでした(18の研究がmRNAワクチンの、4の研究がアストラゼネカ製ワクチンの、4の研究がシノバック製ワクチンの見積もりに関するものでした。)。mRNA、アストラゼネカ製又はシノバック製ワクチンの初回接種完了後にmRNAワクチンを追加接種した場合の発症予防の有効率については、追加接種後14日から3か月間で、14のうち4の研究(29%)が70%以上、12の研究(86%)が50%以上と見積りました。しかしながら、追加接種した場合における予防の有効率については、接種後に時間経過とともに減弱し、mRNAワクチンの追加接種後3から6か月間で、6のうち1の研究(17%)が有効率を50%以上と見積もりました。シノバック(2の見積り)又はアストラゼネカ製ワクチン(1の見積り)を追加接種した場合、有効率が50%を下回ると見積りがありました。感染予防の有効率については、発症予防の有効率と同様の類型を示しました。

出典

COVID-19 Situation reports
COVID-19 Weekly Epidemiological Update: 27 April 2022
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---27-april-2022