新型コロナウイルス感染症の世界の状況報告

COVID-19 Weekly Epidemiological Update(WHO)2022年5月11日

世界の概況

新規感染者数及び死亡者数については、2022年3月末以降世界的に減少が継続しています。2022年5月2日から5月8日(以下「直近1週間」という。)の新規感染者数及び死亡者数については、それぞれ3,546,069人及び12,025人と報告され、前週と比較してそれぞれ12%及び25%減少しました(図1)。管轄地域別の新規感染者数については、アメリカ地域で14%及びアフリカ地域で12%と増加し、西太平洋地域で1%増加と同等のままであり、他の3地域で減少しています。新規死亡者数については、アフリカ地域で84%と増加し、アメリカ地域で3%増加と同等のままであり、他の4地域で減少傾向が報告されています。2022年5月8日時点で、全世界の累積感染者数は514,948,748人、累積死亡者数は6,253,507人となります。
 
これらの傾向については、いくつかの国が検体採取方式を積極的に変更し、全体の検査数が減少して結果的に検出される感染者数が減少するため、慎重に解釈する必要があります。
 
各国別では、新規感染者数が多い上位5か国は、アメリカ(451,414人、19%増加)、オーストラリア(431,410人、59%増加)、ドイツ(427,044人、29%減少)、イタリア(304,573人、21%減少)及び韓国(268,749人、29%減少)でした。また、直近1週間における新規死亡者数が多い上位5か国は、アメリカ(2,652人、19%増加)、ロシア(915人、19%減少)、イタリア(910人、1%増加)、フランス(732人、19%減少)及びブラジル(681人、20%減少)でした。
 
図1 2022年5月8日時点の週別又はWHO管轄地域別の新型コロナウイルス感染者数及び世界の死亡者数の推移


表1 2022年5月8日時点におけるWHO管轄地域別の新規又は累積新型コロナウイルス感染者の確定症例数及び死亡者数

WHO管轄地域別の概況

アフリカ地域

新規感染者数については、3週連続で増加傾向が報告されており、直近1週間で56,983人と報告され、前週と比較して12%増加しました。アフリカ地域内の6か国(全体の12%)については、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、モーリタニアで860%(5人から48人)、ニジェールで67%(27人から45人)及びナイジェリアで61%(31人から50人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で166人と報告され、前週と比較して84%増加しました
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
南アフリカ 43,977人 74.1人 36%増加
レユニオン 10,931人 1220.9人 15%減少
ブルンジ 448人 3.8人 64%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
南アフリカ 153人 1.0人未満 135%増加
レユニオン 7人 1.0人未満 同等
エスワティニ 2人 1.0人未満 同等

 

アメリカ地域

新規感染者数については、2022年4月中旬以降緩徐な増加傾向が観察されており、直近1週間で709,439人と報告され、前週と比較して14%増加しました。アメリカ地域内の9か国(全体の34%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、フォークランド(マルビナス)諸島で628%(29人から211人)、モントセラトで505%(39人から236人)及びアメリカ領バージン諸島で217%(258人から818人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で4,344人と報告され、前週と比較して3%増加し、同等でした。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
アメリカ 451,414人 136.4人 19%増加
ブラジル 110,866人 52.2人 18%増加
カナダ 41,069人 108.8人 25%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
アメリカ 2,652人 1.0人未満 19%増加
ブラジル 681人 1.0人未満 20%減少
カナダ 486人 1.3人 2%増加

 

東地中海地域

新規感染者数については、2022年2月に頂点を迎えた後は減少が継続しています。直近1週間で11,948人と報告され、前週と比較して28%減少しました。しかしながら、サウジアラビア及びシリアでは、それぞれ57%(679人から1,065人)及び48%(21人から31人)の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で166人と報告され、前週と比較して26%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
バーレーン 3,376人 198.4人 17%増加
イラン 3,048人 3.6人 50%減少
UAE 1,455人 14.7人 13%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
イラン 82人 1.0人未満 32%減少
エジプト 35人 1.0人未満 17%減少
チュニジア 16人 1.0人未満 6%減少

 

ヨーロッパ地域

新規感染者数については、2022年3月上旬に増加が観察された後、減少が継続しています。直近1週間で1,482,775人と報告され、前週と比較して26%減少しました。しかしながら、モルドバ及びジブラルタルで、それぞれ149%(220人から547人)及び25%(129人から161人)の増加が報告されました。
 
新規死者数については、減少が継続しており、直近1週間で5,137人と報告され、前週と比較して24%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
ドイツ 427,044人 513.5人 29%減少
イタリア 304,573人 510.7人 21%減少
フランス 267,172人 410.8人 30%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
ロシア 915人 1.0人未満 19%減少
イタリア 910人 1.5人 1%増加
フランス 732人 1.1人 19%減少

 

東南アジア地域

新規感染者数については、2022年1月以降減少傾向が継続して観察されており、直近1週間で87,674人と報告され、前週と比較して29%減少しました。しかしながら、ネパール及び東ティモールで、それぞれ34%(85人から114人)及び27%(11人から14人)の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で805人と報告され、前週と比較して70%減少しました(ほとんどがインドにおける死亡者数の報告の遅延によるものです。)。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
タイ 62,366人 89.3人 35%減少
インド 23,006人 1.7人 6%増加
インドネシア 1,391人 1.0人未満 52%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
タイ 471人 1.0人未満 44%減少
インド 221人 1.0人未満 87%減少
インドネシア 108人 1.0人未満 38%減少

 

西太平洋地域

新規感染者数及び死亡者数については、2022年3月中旬に頂点が観察された後、減少傾向が観察されています。しかしながら、5月8日で終わる週に新規感染者数の傾向は安定となりました。新規感染者数については、直近1週間で1,197,250人と報告され、前週と比較して1%増加し、同等でした。西太平洋地域内の6か国(全体の19%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、中国で145%(81,989人から200,968人)ニューカレドニアで142%(96人から232人)及びオーストラリアで59%(271,216人から431,410人)の最大の増加が報告されました。オーストラリアにおける急増は、迅速抗原検出検査による確定症例数の修正によるものです。
 
新規死亡者数については、直近1週間で1,407人と報告され、前週と比較して32%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
オーストラリア 431,410人   59%増加
韓国 268,749人 524.2人 29%減少
中国 200,968人   145%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
韓国 485人 1.0人未満 35%減少
オーストラリア 231人 1.0人未満 9%減少
日本 218人 1.0人未満 23%減少

 

新型コロナウイルスの懸念される変異株及び注目すべき変異株についての特別な焦点

国の、当局、機関及び研究者と協力して、新型コロナウイルスの変異株が感染・伝播性や病原性に影響するか否か、感染拡大を制御するための、ワクチンの有効性(以下「有効率」という。)、治療法、診断又は公衆衛生上の取組(以下「PHSM」という。)について、WHOは定期的に評価しています。潜在的な、懸念される変異株(以下「VOC」という。)、注目すべき変異株(以下「VOI」という。)及び監視下にある変異株(以下「VUM」という。)は、世界の公衆衛生にもたらすリスクに基づいて定期的に評価されています。流行している変異株の継続的な進化及び付随する疫学の変化を反映するために、変異株の分類が改訂される予定です。変異株の分類基準、現在又は過去に流行していた、VOC、VOI及びVUMの現在の一覧は、新型コロナウイルス変異株の追跡ウェブサイトhttps://www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/で閲覧できます。国の当局は、他の変異株の指定を選択することができ、かつ、進化した変異株及びその影響を調査及び報告するよう強く奨励されています。

VOCの世界的な拡散及び有病率

1 検体の利用可能性
 
図4は、2020年1月1日から2022年5月5日までGISAIDに提出された新型コロナウイルスの検体数及び報告された症例数を示しています。世界的に、進行中のパンデミックに対応して、かつ新規のVOCの出現に続いて各国が検体採取能力及びゲノム解析調査を強化したため、共有する検体数が時間経過とともに増加しました。しかしながら、2022年1月に頂点に達した後、共有する検体数が2021年6月(デルタ株が拡大し始め、VOCに指定された後でした。)に観察されたものと同等にまで下降しました。直近の減少傾向は、WHO管轄地域全体で類似しています。この減少が主に真の症例数の減少によるものか、いくつかの国での検査戦略の変更によるものか、又はその両方の要因の組合せによるものかは不明です。国毎に解析された症例の割合における変化は、利用可能なデータの減少という結果へ同様に帰結した可能性があります。
 
図4 2020年1月1日から2022年5月10日までの期間において、WHO管轄地域で報告された症例数及びGISAIDに提出された検体数

 
2 変異株の流行
 
WHOは、加盟国、地域事務所、共同者及び新型コロナウイルスの進化に係る技術諮問団体のメンバーを例とする技術専門家の協力により、オミクロン株の亜系統を含む、流行している新型コロナウイルスの変異株に対して詳細な監視を継続しています。オミクロン株(B.1.1.529系統並びにその亜系統のBA.X系統及び組換え体を指す。以下同じ。)のVOCは世界的に優勢な変異株であり、過去30日間にGISAIDに報告された検体のほぼ全てを占めています。特筆すべきは、過去に流行していたVOC及びデルタ株の割合が特に低い点です。変異株の多様性に伴い、オミクロン株の亜系統が特定され続けています。しかしながら、2、3の亜系統が増加優位性を有するようです。これらの知見は、国・地域間の検体採取能力の違いにより解釈及び世界的な拡散に影響する可能性があるため、慎重に解釈する必要があります。

オミクロン株に対するワクチンの有効率の結果に係る解釈

今日に至るまで、10か国(ブラジル、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、イスラエル、カタール、南アフリカ、英国及びアメリカ)から23の研究がオミクロン株に対し、5つのワクチンの予防に係る持続期間を評価しました(6の研究にあっては初回接種の有効率を、6の研究にあっては追加接種の有効率を、11の研究にあっては初回及び追加接種の有効率を評価しました。)。これらの研究は、ワクチン初回接種後、オミクロン株に対し、全ての予防(感染、発症及び重症化の予防をいう。以下同じ。)の有効率が他の4つのVOCに対する有効率と比較して減じたと報告しています。重要なことに、大多数の研究で、オミクロン株に対する重症化予防の有効率については、依然として高いままです。ワクチンの追加接種は、初回又は追加接種の両方、利用可能な見積りを伴うスケジュールの全ての組合せで、全ての予防の有効率を著明に改善します。しかしながら、予防の持続期間を評価するためには、追加接種後6か月を超えて有効率の見積りを追跡した研究が必要となります。
 
重症化予防の有効率については、ワクチンの初回接種後3か月以内の期間において、12のうち7の研究(58%)がメッセンジャーRNAワクチン(モデルナ及びファイザー製ワクチン。以下「mRNAワクチン」という。)の有効率を70%以上と見積もりました。ウイルスベクターワクチン(アストラゼネカ及びヤンセン製ワクチン)を対象とした2の研究のうち、片方の研究にあってはアストラゼネカ製ワクチンの有効率を70%未満と見積もり、一方の研究にあってはヤンセン製ワクチンの有効率を50%未満と見積もりました。不活化ワクチン(シノバック製ワクチン)を対象とした1の研究が有効率を50%と見積もりました。
 
初回接種後3か月を超えると、27のうち12の研究(44%)にあってはmRNAワクチンの有効率を70%以上と見積もり、18の研究(77%)にあっては有効率を50%以上に見積もりました。12の研究のうち、1の研究(8%)にあってはアストラゼネカ製ワクチンの有効率を70%以上と見積もり、8の研究(67%)にあっては有効率を50%以上と見積もり、2の研究にあってはシノバック製ワクチンの有効率を50%以上と見積もりました。2の研究は、初回接種後3か月を超えると、ヤンセン製ワクチンの有効率が50%未満と見積もりました。
 
全ての研究で、追加接種後14日から3か月以内の期間において、全ての予防の有効率が改善し、ファイザー製ワクチンを対象とした1の研究及びヤンセン製ワクチンを対象とした1の研究のみが有効率を70%未満と見積もりました(33の研究がmRNAワクチン、2の研究がヤンセン製ワクチン、1の研究がシノバック製ワクチンを追加接種した場合の有効率を見積もりました。)。mRNAワクチンを追加接種後3から6か月以内の期間において、20のうち18の研究(90%)が有効率を70%以上と見積もりました(20の研究のうち、13の研究にあっては初回接種がmRNAワクチンであり、6の研究にあっては初回接種がアストラゼネカ製ワクチンであり、1の研究にあっては初回接種がシノバック製ワクチンです。)。
 
初回接種後3か月以内の期間において、感染及び発症予防の有効率は重症化予防の有効率より低く見積もる傾向にあり、時間経過とともに著明に減少します。初回接種後3か月以内の期間において、発症予防の有効率については、mRNAワクチンを対象とする13のうち、3の研究(23%)にあっては有効率が70%以上と見積り、7の研究(54%)にあっては有効率が50%以上と見積りました。アストラゼネカ製ワクチンを対象とする3の研究全て及びシノバック製ワクチンを対象とする1の研究は、有効率が50%未満と見積もりました。初回接種後3か月を超えると、28の研究のうち有効率が50%以上と見積もるものはありませんでした(20の研究がmRNAワクチン、6の研究がアストラゼネカ製ワクチン、2の研究がシノバック製ワクチンを対象として見積もりました。)。mRNA、アストラゼネカ製又はシノバック製ワクチンの初回接種完了後にmRNAワクチンを追加接種した場合の発症予防の有効率については、追加接種後14日から3か月間以内の期間において、21のうち4の研究(19%)にあっては70%以上、16の研究(76%)にあっては50%以上と見積りました。しかしながら、追加接種した場合の予防については、接種後に時間経過とともに減弱し、mRNAワクチンの追加接種後3から6か月間以内の期間において、12のうち1の研究(8%)のみ有効率が50%以上と見積もりました。アストラゼネカ製ワクチン(1の見積り)及びシノバック製ワクチン(1の見積り)の追加接種後3から6か月以内の期間において、有効率が50%未満と見積りました。感染予防の有効率の見積りについては、発症予防の有効率と同様の類型を示しました。

出典

COVID-19 Situation reports
COVID-19 Weekly Epidemiological Update: 11 May 2022
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---11-may-2022