新型コロナウイルス感染症の世界の状況報告

COVID-19 Weekly Epidemiological Update(WHO)2022年5月18日

世界の概況

新規感染者数については、2022年3月末以降世界的に減少が観察された後、2022年5月9日から5月15日(以下「直近1週間」という。)で安定しており、3,699,960人と報告され、前週と比較して1%増加しました(図1)。一方、新規死亡者数については、減少が継続しており、直近1週間で9,806人と報告され、前週と比較して21%減少しました。管轄地域別の新規感染者数については、東地中海地域で63%、アメリカ地域で26%、西太平洋地域で14%及びアフリカ地域で6%増加し、他の2地域で減少しています。新規死亡者数については、アフリカ地域を除く管轄地域全てで減少しており、アフリカ地域で48%増加しています。2022年5月15日時点で、全世界の累積感染者数は518,874,036人、累積死亡者数は6,265,991人となります。
 
これらの傾向については、いくつかの国が検体採取方式を積極的に変更し、全体の検査数が減少して結果的に検出される感染者数が減少するため、慎重に解釈する必要があります。
 
各国別では、新規感染者数が多い上位5か国は、アメリカ(605,547人、33%増加)、中国(389,901人、94%増加)、ドイツ(376,959人、20%減少)、オーストラリア(332,451人、23%減少)及び日本(279,620人、54%増加)でした。また、直近1週間における新規死亡者数が多い上位5か国は、アメリカ(1,849人、27%減少)、イタリア(765人、16%減少)、ロシア(724人、21%減少)、ブラジル(689人、1%増加)及びフランス(590人、19%減少)でした。
 
北朝鮮の国営メディアは、初めて今週に新型コロナウイルス感染症の発生を報告しました。
 
図1 2022年5月15日時点の週別又はWHO管轄地域別の新型コロナウイルス感染者数及び世界の死亡者数の推移
 

表1 2022年5月15日時点におけるWHO管轄地域別の新規又は累積新型コロナウイルス感染者の確定症例数及び死亡者数

WHO管轄地域別の概況

アフリカ地域

新規感染者数については、ほぼ1か月間増加傾向が報告されており、直近1週間で63,149人と報告され、前週と比較して6%増加しました。アフリカ地域内の17か国(全体の35%)については、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、マラウィで153%(30人から76人)、モザンビークで131%(32人から74人)及びモーリタニアで117%(48人から104人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で258人と報告され、前週と比較して48%増加しました
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
南アフリカ 51,547人 86.9人 17%増加
レユニオン 7,865人 878.5人 28%減少
ジンバブエ 674人 4.5人 58%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
南アフリカ 237人 1.0人未満 55%増加
ジンバブエ 8人 1.0人未満 100%増加
レユニオン 6人 1.0人未満 14%減少

アメリカ地域

新規感染者数については、2022年4月中旬以降増加傾向が観察されており、直近1週間で912,887人と報告され、前週と比較して26%増加しました。アメリカ地域内の26か国(全体の46%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、スリナムで979%(57人から615人)、フォークランド(マルビナス)で248%(211人から734人)及びガイアナで184%(83人から233人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で3,583人と報告され、前週と比較して16%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
アメリカ 605,547人 182.9人 33%増加
ブラジル 120,831人 56.8人 9%増加
アルゼンチン 33,989人 75.2人 93%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
アメリカ 1,849人 1.0人未満 27%減少
ブラジル 689人 1.0人未満 1%増加
カナダ 501人 1.3人 3%増加

 

東地中海地域

新規感染者数については、2022年2月中旬以降減少傾向が観察された後、直近1週間で19,502人と報告され、前週と比較して63%増加しました。東地中海地域内の9か国(全体の41%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、リビアで1,067%(3人から35人)、アフガニスタンで627%(44人から320人)及びサウジアラビアで249%(1,065人から3,719人)の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で133人と報告され、前週と比較して20%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
バーレーン 4,915人 288.9人 46%増加
サウジアラビア 3,719人   249%増加
イラン 2,982人 3.6人 2%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
イラン 51人 1.0人未満 38%減少
エジプト 28人 1.0人未満 20%減少
サウジアラビア 15人 1.0人未満 25%増加

 

ヨーロッパ地域

新規感染者数については、2022年3月中旬以降増加が継続しており、直近1週間で1,266,355人と報告され、前週と比較して20%減少しました。ヨーロッパ地域内の5か国(全体の8.2%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、ウクライナで1,695%(200人から3,590人)、ハンガリーで209%(2,183人から6,748人)及びポルトガルで36%(85,068人から115,560人)の増加が報告されました。ウクライナの新規感染者数については、検査上の戦略に進行中の紛争が影響するため、慎重に解釈する必要があります。
 
新規死者数については、直近1週間で3,951人と報告され、前週と比較して29%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
ドイツ 376,959人 453.3人 20%減少
イタリア 262,374人 439.9人 14%減少
フランス 217,932人 335.1人 18%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
イタリア 765人 1.3人 16%減少
ロシア 724人 1.0人未満 21%減少
フランス 590人 1.0人未満 19%減少

 

東南アジア地域

新規感染者数及び死亡者数については、直近1週間でそれぞれ71,347及び614人と報告され、前週と比較してそれぞれ19%及び24%減少しました。バングラデシュで156%(83人から213人)及びインドネシアで68%(1,391人から2,345人)の増加を除く全ての国で新規感染者数の減少が報告されました。
 
2022年5月12日に国営メディアを通じて北朝鮮における新型コロナウイルス感染症の最初の発生が報告されました。しかしながら、この時点で利用可能で確定した感染者数及び死亡者数はありません。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
タイ 48,996人 70.2人 21%減少
インド 19,405人 1.4人 16%減少
インドネシア 2,345人 1.0人未満 69%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
タイ 384人 1.0人未満 18%減少
インド 150人 1.0人未満 32%減少
インドネシア 77人 1.0人未満 29%減少

 

西太平洋地域

新規感染者数については、2022年3月中旬以降減少傾向が観察されていました。しかしながら、直近の2週間で新規感染者数の増加傾向が観察されており、直近1週間で1,366,720人と報告され、前週と比較して14%増加しました。西太平洋地域内の9か国(全体の31%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、パプアニューギニアで1,168%(22人から279人)、ブルネイ・ダルサラームで2,216%(77人から1,784人)及びマレーシアで119%(8,732人から19,137人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で1,267人と報告され、前週と比較して10%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
中国 389,901人 26.5人 94%増加
オーストラリア 332,451人 1303.7人 23%減少
日本 279,620人 221.1人 54%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
韓国 349人 1.0人未満 28%減少
オーストラリア 267人 1.0人未満 16%増加
日本 254人 1.0人未満 17%増加

 

新型コロナウイルスの懸念される変異株及び注目すべき変異株についての特別な焦点

国の、当局、機関及び研究者と協力して、新型コロナウイルスの変異株が感染・伝播性や病原性に影響するか否か、感染拡大を制御するための、ワクチンの有効性(以下「有効率」という。)、治療法、診断又は公衆衛生上の取組(以下「PHSM」という。)について、WHOは定期的に評価しています。潜在的な、懸念される変異株(以下「VOC」という。)、注目すべき変異株(以下「VOI」という。)及び監視下にある変異株(以下「VUM」という。)は、世界の公衆衛生にもたらすリスクに基づいて定期的に評価されています。流行している変異株の継続的な進化及び付随する疫学の変化を反映するために、変異株の分類が改訂される予定です。変異株の分類基準、現在又は過去に流行していた、VOC、VOI及びVUMの現在の一覧は、新型コロナウイルス変異株の追跡ウェブサイトhttps://www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/で閲覧できます。国の当局は、他の変異株の指定を選択することができ、かつ、進化した変異株及びその影響を調査及び報告するよう強く奨励されています。

VOCの世界的な拡散及び有病率

オミクロン株(B.1.1.529系統並びにその亜系統のBA.X系統及び組換え体を指す。以下同じ。)のVOCは世界的に優勢な変異株であり、GISAIDに報告された検体のほぼ全てを占めています。オミクロン株の中でも、BA.2及びその下位系統(例えばBA.2.X系統)が優勢な変異株であり、2022年5月1日の週からGISAIDに提出された全ての検体の97%を構成しています。過去30日間に、BA.1とその下位系統(例えばBA.1.X系統)、BA.3系統及びデルタ株は、蔓延が更に低下しており、世界的な有病率が1%を下回っています。
 
直近の数週間で、オミクロン株の下位系統である、BA.4、BA.5及びBA.2.12.1系統(スパイク領域及び「S遺伝子のL452部分」に3系統全てが変異を持つ。)は、最初に検出された国々(それぞれ南アフリカ及びアメリカ)で蔓延が増加しており、更に他の国々へ拡散しています。今日に至るまで、BA.4系統は20か国で(GISAIDに提出された1,333検体)、BA.5系統は19か国で(757検体)、及びBA.2.12.1系統は38か国で(21,711検体)検出されています。世界的には、BA.4及びBA.5系統は流行している全変異株の中でそれぞれ0.5及び0.4%を占めています。2022年4月24日時点で、BA.2.12.1系統はBA.2系統の中で世界的に10%を占めています。
 
南アフリカにおいて、BA.4及びBA.5系統は、感染者数が増加しているようであり、2022年3月13日時点で提出された検体の、それぞれ89及び7%を占めています。4月下旬以降に南アフリカでは入院者数の中等度の増加が報告されていますが、2021年後半におけるオミクロン株が出現した期間に観察された数よりは少なくなっています。同様に、ポルトガルで感染者数の増加に係る最初の兆候が観察されており、最近BA.5系統の流行が確認されました。5月13日時点で、ポルトガルにおける入院者及びICU入室者数は安定したままです。アメリカでは、BA.2.12.1系統の有病率が48%であり、2022年4月以降感染者及び入院者数は増加しており、3月9日の週で前週と比較してそれぞれ33及び19%増加しています。
 
GISAIDに提出された検体に基づき、WHOによる予備的な模式では、デルタ株、BA.1及びBA.2系統を例とした他の流行している変異株より、BA.4、BA.5及びBA.2.12.1系統が高い増加率を有しており、免疫回避又は感染・伝播性の増加に寄与している可能性があります。
 
BA.4、BA.5及びBA.2.12.1系統は、現在の世界的なレベルで有病率が低いことや、これらオミクロン株の系統に関連し、重症度を例とした疾患の特性に係る変化の科学的根拠に乏しいことから、オミクロン株の傘下でWHOによって監視される系統のままです。

※特別な焦点(公衆衛生の調査を補完する、新型コロナウイルスに係る環境調査)については、省略します。

出典

COVID-19 Situation reports
COVID-19 Weekly Epidemiological Update: 18 May 2022
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---18-may-2022