新型コロナウイルス感染症の世界の状況報告

COVID-19 Weekly Epidemiological Update(WHO)2022年5月25日

世界の概況

新規感染者数については、2022年1月の頂点降減少傾向が継続して観察されており、2022年5月16日から5月22日(以下「直近1週間」という。)で3,721,079人と報告され、前週と比較して3%減少しました(図1)。新規死亡者数については、同様に減少が継続しており、直近1週間で9,440人と報告され、前週と比較して11%減少しました。管轄地域別の新規感染者数については、アメリカ地域で13%及び西太平洋地域で6%の増加が報告されたその一方、他の4地域では減少傾向が観察されています。新規死亡者数については、東地中海地域で30%増加しており、西太平洋地域及びアメリカ地域で安定して推移しており(共に1%未満)、他の3地域で減少しています。2022年5月15日時点で、全世界の累積感染者数は522,970,476人、累積死亡者数は6,277,407人となります。
 
これらの傾向については、いくつかの国が検体採取方式を積極的に変更し、全体の検査数が減少して結果的に検出される感染者数が減少するため、慎重に解釈する必要があります。
 
各国別では、新規感染者数が多い上位5か国は、米国(713,882人、18%増加)、中国(543,290人、39%増加)、オーストラリア(360,323人、8%増加)、ドイツ(268,396人、35%減少)及び日本(249,210人、11%減少)でした。また、直近1週間における新規死亡者数が多い上位5か国は、米国(1,957人、2%増加)、イタリア(736人、4%減少)、ブラジル(713人、3%増加)、ロシア(680人、6%減少)及びスペイン(564人、118%増加)でした。
 
図1 2022年5月22日時点の週別又はWHO管轄地域別の新型コロナウイルス感染者数及び世界の死亡者数の推移


表1 2022年5月22日時点におけるWHO管轄地域別の新規又は累積新型コロナウイルス感染者の確定症例数及び死亡者数

WHO管轄地域別の概況

アフリカ地域

新規感染者及び死亡者数については、1か月間の増加傾向の後、直近1週間でそれぞれ49,633及び208人と報告され、前週と比較してそれぞれ24及び22%減少しました。しかしながら、アフリカ地域内の13か国(全体の27%)については、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、コートジボワールで195%(22人から65人)、エチオピアで96%(207人から406人)及びブルンジで90%(268人から509人)の最大の増加が報告されました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
南アフリカ 39,203人 66.1人 24%減少
レユニオン 5,383人 601.2人 32%減少
ジンバブエ 1,436人 9.7人 53%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
南アフリカ 178人 1.0人未満 25%減少
ジンバブエ 12人 1.0人未満 33%増加
レユニオン 8人 1.0人未満 33%増加

 

アメリカ地域

新規感染者数については、2022年4月中旬以降増加傾向が報告されており、直近1週間で1,036,740人と報告され、前週と比較して13%増加しました。アメリカ地域内の24か国(全体の43%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、アンティグア・バーブーダで281%(58人から221人)、ボリビアで157%(465人から1,193人)及びコロンビアで127%(1,671人から3,795人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で3,675人と報告され、前週と比較して1%未満の増加であり、安定して推移しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
米国 713,882人 215.7人 18%増加
ブラジル 97,674人 46.0人 19%減少
アルゼンチン 43,487人 96.2人 28%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
米国 1,957人 1.0人未満 2%増加
ブラジル 713人 1.0人未満 3%増加
カナダ 411人 1.1人 18%減少

 

東地中海地域

新規感染者数については、2022年2月中旬以降減少傾向が観察された後に先週増加傾向が観察され、直近1週間で17,335人と報告され、前週と比較して12%減少しました。東地中海地域内の4か国(全体の19%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、ヨルダンで263%(84人から305人)、モロッコで65%(500人から824人)及びアフガニスタンで35%(320人から431人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で173人と報告され、前週と比較して30%増加しました。先週チュニジアから報告された53人の死亡は、2022年5月18日に一括報告されました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
バーレーン 3,800人 223.3人 23%減少
サウジアラビア 3,780人 10.9人 2%増加
UAE 2,305人 23.3人 8%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
イラン 55人 1.0人未満 8%増加
チュニジア 53人 1.0人未満 489%増加
エジプト 21人 1.0人未満 25%減少

 

ヨーロッパ地域

新規感染者数については、2022年3月中旬以降減少が継続しており、直近1週間で1,119,084人と報告され、前週と比較して20%減少しました。ヨーロッパ地域内の3か国(全体の5%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、スペインで115%(51,716人から110,951人)、ウズベキスタンで46%(87人から127人)及びモナコで33%(15人から105人)の増加が報告されました。
 
新規死者数については、直近1週間で3,574人と報告され、前週と比較して23%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
ドイツ 268,396人 322.7人 35%減少
イタリア 199,116人 333.9人 24%減少
ポルトガル 164,225人 1595.1人 7%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
イタリア 736人 1.2人 4%減少
ロシア 680人 1.0人未満 6%減少
スペイン 564人 1.2人 118%増加

 

東南アジア地域

新規感染者数及び死亡者数については、2022年1月中旬以降減少傾向が観察されており、直近1週間でそれぞれ54,768及び539人と報告され、前週と比較してそれぞれ23%及び12%減少しました。東南アジア地域内の3か国(全体の30%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、モルディブで39%(67人から93人)及びネパールで25%(56人から70人)の最大の増加が報告されました。
 
2022年5月12日に国営メディアを通じて北朝鮮における新型コロナウイルス感染症の発生が初めて報告されました。しかしながら、現時点で確定した感染者数及び死亡者数はWHOに報告されていません。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
タイ 37,648人 53.9人 23%減少
インド 14,772人 1.1人 24%減少
インドネシア 1,814人 1.0人未満 23%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
タイ 274人 1.0人未満 29%減少
インド 199人 1.0人未満 33%増加
インドネシア 64人 1.0人未満 17%減少

 

西太平洋地域

新規感染者数については、過去3週間増加傾向が観察されており、直近1週間で1,443,519人と報告され、前週と比較して6%増加しました。西太平洋地域内の8か国(全体の25%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、グアムで562%(36人から238人)、フィジーで346%(26人から116人)及びトンガで80%(246人から444人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で1,271人と報告され、前週と比較して安定して推移した傾向が観察されています(1%未満の増加)。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
中国 543,290人 36.9人 39%増加
オーストラリア 360,323人 1413.0人 8%増加
日本 249,210人 197.0人 11%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
中国 317人 1.0人未満 64%増加
オーストラリア 306人 1.2人 15%増加
韓国 256人 1.0人未満 27%減少

 

新型コロナウイルスの懸念される変異株及び注目すべき変異株についての特別な焦点

国の、当局、機関及び研究者と協力して、新型コロナウイルスの変異株が感染・伝播性や病原性に影響するか否か、感染拡大を制御するための、ワクチンの有効性(以下「有効率」という。)、治療法、診断又は公衆衛生上の取組(以下「PHSM」という。)について、WHOは定期的に評価しています。潜在的な、懸念される変異株(以下「VOC」という。)、注目すべき変異株(以下「VOI」という。)及び監視下にある変異株(以下「VUM」という。)は、世界の公衆衛生にもたらすリスクに基づいて定期的に評価されています。
 
流行している変異株の継続的な進化及び付随する疫学の変化を反映するために、変異株の分類が改訂される予定です。変異株の分類基準、現在又は過去に流行していた、VOC、VOI及びVUMの現在の一覧は、新型コロナウイルス変異株の追跡ウェブサイトで閲覧できます。国の当局は、他の変異株の指定を選択することができ、かつ、進化した変異株及びその影響を調査及び報告するよう強く奨励されています。

VOCの世界的な拡散及び有病率

GISAIDに提出された新型コロナウイルスの検体総数は、減少傾向が継続しています(図4)。オミクロン株(B.1.1.529系統並びにその亜系統のBA.X系統及び組換え体を指す。以下同じ。)のVOCは世界的に優勢な変異株であり、過去30日間にGISAIDに報告された検体のほぼ全てを占めています。オミクロン株の中で、BA.2及びその下位系統(BA.2.X系統と名付けられた系統)が優勢な変異株です。2022年の疫学的な第18週(5月1日から7日)で、BA.2.X、BA.4及びBA.5系統の相対的な割合はそれぞれ94、0.8及び1%でした。BA.2下位系統の中で、BA.2.12.1系統が17%を占めます(図5)。デルタ株及び他の変異株(アルファ、ベータ及びガンマ株)は時間経過とともに著明に減少していますが、検出段階未満で流行しているかもしれません。
 
BA.1及びBA.2系統と比較して増加の優位性を示すように見えるオミクロン株系統の特徴を更に解明するために、研究が進行中です。くわえて、S遺伝子(L452R)に変異があるオミクロン株系統の重症度又は臨床症状に関する追加の科学的根拠が予想されます。現在利用可能なデータでは、BA.4、BA.5及びBA.2.12.1系統はBA.1系統の症例の波が先行した国々でより迅速に拡大しているように見えます。その一方、BA.2系統の波を経験した国々では、この段階では、BA.4、BA.5及びBA.2.12.1系統の症例がより少ないように見えます。各国における予防接種の範囲も、同様にこれら出現したオミクロン株下位系統に影響を及ぼしています。
 
関連する重症度を例として、表現型の違いを示す変化に関する科学的根拠が不足しているため、全てのオミクロン株下位系統はオミクロン株の傘下で継続して追跡されています。
 
図4 2022年5月23日時点の※姉妹系統によるオミクロン株の検体数
※姉妹系統には、BA.1とその下位BA.1.X、BA.2とその下位BA.2.X、BA.3、BA.4及びBA.5系統を含みます(2022年5月23日にGISAIDから抽出)。

 
図5 2022年5月23日時点の、オミクロン株の※姉妹系統及びBA.2下位系統によるオミクロン株の検体数
※増加の優位性に係る現在及び過去の兆候を示すオミクロン株の下位系統が図に示されています。

ワクチン

図6は、ワクチンの1若しくは2回目接種(以下「初回接種」という。)又は初回接種後の接種(以下「追加接種」という。)がオミクロン株に及ぼすワクチンの有効性(以下「有効率」という。)について、要約したものです。直近の更新以降で、有効率を絶対的に評価して図に追加された新たな研究はありません。追加接種のみの相対的な有効率について評価した2つの研究が図から削除されました(2又は3回接種した集団の比較)。相対的な有効率は絶対的な有効率(ワクチン未接種の集団を比較として用いている。)と比較できないため、絶対的な有効率の見積もりのみ図に含まれています。
 
図6 オミクロン株に対するワクチン初回又は追加接種の有効率

オミクロン株に対するワクチンの有効率の結果に係る解釈

今日に至るまで、9か国(ブラジル、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、カタール、南アフリカ、英国及び米国)から21の研究がオミクロン株に対し、5つのワクチンの予防に係る持続期間を評価しました(6の研究にあっては初回接種の、4の研究にあっては追加接種の、11の研究にあっては初回及び追加接種の有効率を評価しました。)。これらの研究は、ワクチン初回接種後、オミクロン株に対し、全ての予防(感染、発症及び重症化の予防をいう。以下同じ。)の有効率が他の4つのVOCに対する有効率と比較して減じたと報告しています。重要なことに、大多数の研究で、オミクロン株に対する重症化予防の有効率については、依然として高いままです。ワクチンの追加接種は、初回及び追加接種の両方で、利用可能な見積もりを伴うスケジュールの全ての組合せを伴い、全ての予防の有効率を著明に改善します。追加接種後の感染及び発症予防の有効率は、重症化予防と比較して時間経過とともに減少します。しかしながら、予防の持続期間を評価するためには、追加接種後6か月を超えて有効率の見積もりを追跡した研究が必要となります。
 
重症化予防の有効率については、ワクチンの初回接種後3か月以内の期間において、12のうち7の研究(58%)がメッセンジャーRNAワクチン(モデルナ及びファイザー製ワクチン。以下「mRNAワクチン」という。)の有効率を70%以上と見積もりました。ウイルスベクターワクチン(アストラゼネカ及びヤンセン製ワクチン)を対象とした2の研究のうち、片方の研究にあってはアストラゼネカ製ワクチンの有効率を70%未満と見積もり、一方の研究にあってはヤンセン製ワクチンの有効率を50%未満と見積もりました。不活化ワクチン(シノバック製ワクチン)を対象とした1の研究が有効率を50%と見積もりました。初回接種後3か月を超えると、27のうち12の研究(44%)にあってはmRNAワクチンの有効率を70%以上と見積もり、18の研究(77%)にあっては有効率を50%以上に見積もりました。12の研究のうち、1の研究(8%)にあってはアストラゼネカ製ワクチンの有効率を70%以上と見積もり、8の研究(67%)にあっては有効率を50%以上と見積もり、2の研究にあってはシノバック製ワクチンの有効率を50%以上と見積もりました。2の研究は、初回接種後3か月を超えると、ヤンセン製ワクチンの有効率が50%未満と見積もりました。
 
全ての研究で、追加接種後に重症化予防の有効率が改善しました。33の見積もりにあってはmRNAワクチンを追加接種とし、2の見積もりにあってはヤンセン製ワクチンを追加接種とし、1の見積もりにあってはシノバック製ワクチンを追加接種としました。データベース全体で、ファイザー製ワクチンを追加接種とした1の見積もり及びヤンセン製ワクチンを追加接種とした1の見積もりが追加接種後14日から3か月間の期間において、有効率を70%未満と見積もりました。mRNAワクチンを追加接種後3から6か月以内の期間において、20のうち18の研究(90%)が有効率を70%以上と見積もりました(20の研究のうち、13の研究にあっては初回接種がmRNAワクチンであり、6の研究にあっては初回接種がアストラゼネカ製ワクチンであり、1の研究にあっては初回接種がシノバック製ワクチンです。)。
 
初回接種後3か月以内の期間において、感染及び発症予防の有効率は、重症化予防の有効率より低く見積もる傾向にあり、時間経過とともに著明に減少します。初回接種後3か月以内の期間において、発症予防の有効率については、mRNAワクチンを対象とする13のうち、3の研究(23%)にあっては有効率が70%以上と見積もり、7の研究(54%)にあっては有効率が50%以上と見積もりました。アストラゼネカ製ワクチンを対象とする3の研究全て及びシノバック製ワクチンを対象とする1の研究は、有効率が50%未満と見積もりました。初回接種後3か月を超えると、28の研究のうち有効率が50%以上と見積もるものはありませんでした(20の研究がmRNAワクチン、6の研究がアストラゼネカ製ワクチン、2の研究がシノバック製ワクチンを対象としました。)。mRNA、アストラゼネカ製又はシノバック製ワクチンの初回接種完了後にmRNAワクチンを追加接種した場合の発症予防の有効率については、追加接種後14日から3か月間以内の期間において、19のうち4の研究(21%)にあっては70%以上、14の研究(74%)にあっては50%以上と見積もりました。しかしながら、追加接種した場合の予防については、接種後に時間経過とともに減弱し、mRNAワクチンの追加接種後3から6か月間以内の期間において、12のうち2の研究(17%)のみ有効率が50%以上と見積もりました。アストラゼネカ製ワクチン(1の見積もり)及びシノバック製ワクチン(1の見積もり)の追加接種後3から6か月以内の期間において、有効率が50%未満と見積もりました。感染予防の有効率の見積もりについては、発症予防の有効率と同様の類型を示しました。

出典

COVID-19 Situation reports
COVID-19 Weekly Epidemiological Update: 25 May 2022
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---25-may-2022