新型コロナウイルス感染症の世界の状況報告

COVID-19 Weekly Epidemiological Update(WHO)2022年6月8日

世界の概況

新規感染者数については、2022年1月の頂点以降減少が世界的に継続しています。2022年5月30日から6月5日(以下「直近1週間」という。)で3,023,378人と報告され、前週と比較して12%減少しました(図1)。新規死亡者数については、同様に減少が継続しており、直近1週間で7,644人と報告され、前週と比較して22%減少しました。管轄地域別の新規感染者数については、東地中海地域で19%及び東南アジア地域で1%の増加が報告された一方、他の4地域では減少しています。管轄地域別の新規死亡者数については、西太平洋地域で7%増加しており、他の5地域で減少傾向が観察されています。2022年6月5日時点で、全世界の累積感染者数は529,688,157人、累積死亡者数は6,297,872人となります。
 
これらの傾向については、いくつかの国が検体採取方式を積極的に変更し、全体の検査数が減少して結果的に検出される感染者数が減少するため、慎重に解釈する必要があります。
 
各国別では、新規感染者数が多い上位5か国は、米国(657,268人、11%減少)、中国(528,432人、8%減少)、オーストラリア(221,935人、25%減少)、ブラジル(216,334人、36%増加)及びドイツ(215,955人、16%増加)でした。また、直近1週間における新規死亡者数が多い上位5か国は、米国(1,703人、33%減少)、中国(910人、57%増加)、ブラジル(652人、21%減少)、ロシア(565人、7%減少)及びイタリア(380人、39%減少)でした。
 
図1 2022年6月5日時点の週別又はWHO管轄地域別の新型コロナウイルス感染者数及び世界の死亡者数の推移


表1 2022年6月5日時点におけるWHO管轄地域別の新規又は累積新型コロナウイルス感染者の確定症例数及び死亡者数

 

WHO管轄地域別の概況

アフリカ地域

新規感染者数については、1か月間の増加傾向が報告された後、3週連続で減少が報告されており、直近1週間で26,160人と報告され、前週と比較して29%減少しました。しかしながら、アフリカ地域内の11か国(全体の22%)については、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、ガーナで382%(73人から352人)、エリトリアで233%(3人から10人)及びエチオピアで179%(889人から2,483人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で211人と報告され、前週と比較して13%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
南アフリカ 14,885人 25.1人 42%減少
エチオピア 2,483人 2.2人 179%増加
レユニオン 2,046人 228.5人 37%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
南アフリカ 171人 1.0人未満 19%減少
ジンバブエ 10人 1.0人未満 67%増加
レユニオン 7人 1.0人未満 同等

アメリカ地域

新規感染者数については、2022年4月中旬以降の増加傾向に続いて症例発生率の減少が報告されており、直近1週間で1,124,932人と報告され、前週と比較して1%減少しました。しかしながら、アメリカ地域内の16か国(全体の29%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、エクアドルで201%(2,400人から7,215人)、ハイチで155%(29人から74人)及びガイアナで81%(347人から627人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で3,303人と報告され、前週と比較して23%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
米国 657,268人 198.6人 11%減少
ブラジル 216,334人 101.8人 36%増加
チリ 55,211人 288.8人 16%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
米国 1,703人 1.0人未満 33%減少
ブラジル 652人 1.0人未満 21%減少
カナダ 304人 1.0人未満 同等

 

東地中海地域

新規感染者数については、直近1週間で20,965人と報告され、前週と比較して19%増加しました。東地中海地域内の6か国(全体の27%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、ソマリアで114%(14人から30人)、モロッコで82%(1,202人から2,188人)及びバーレーンで28%(3,187人から4,086人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で83人と報告され、前週と比較して14%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
サウジアラビア 4,545人 13.1人 26%増加
バーレーン 4,086人 240.1人 28%増加
UAE 3,269人 33.1人 26%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
イラン 22人 1.0人未満 37%減少
エジプト 14人 1.0人未満 同等
サウジアラビア 12人 1.0人未満 20%減少

 

ヨーロッパ地域

新規感染者数については、2022年3月中旬以降減少が継続しており、直近1週間で744,792人と報告され、前週と比較して18%減少しました。ヨーロッパ地域内の6か国(全体の10%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、モロッコで124%(59人から132人)、ウズベキスタンで40%(81人から113人)及びルクセンブルクで32%(1,181人から1,559人)の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で2,082人と報告され、前週と比較して35%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
ドイツ 215,955人 259.7人 16%増加
フランス 128,198人 197.1人 13%増加
ポルトガル 120,711人 1172.4人 31%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
ロシア 565人 1.0人未満 7%減少
イタリア 380人 1.0人未満 39%減少
フランス 272人 1.0人未満 7%減少

 

東南アジア地域

新規感染者数については、2022年1月中旬以降減少傾向が観察された後、直近1週間で50,811人と報告され、前週と比較して1%増加しました。東南アジア地域内の3か国(全体の30%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、インドで43%(16,672人から23,774人)、インドネシアで31%(1,825人から2,385人)及びネパールで22%(59人から72人)の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で350人と報告され、前週と比較して23%減少しました。
 
2022年5月12日に国営メディアを通じて北朝鮮における新型コロナウイルス感染症の発生が初めて報告されました。しかしながら、現時点で確定した感染者数及び死亡者数はWHOに報告されていません。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
タイ 24,145人 34.6人 23%減少
インド 23,774人 1.7人 42%増加
インドネシア 2,385人 1.0人未満 31%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
タイ 199人 1.0人未満 12%減少
インド 106人 1.0人未満 39%減少
インドネシア 41人 1.0人未満 21%減少

 

西太平洋地域

新規感染者数については、2週間連続で減少傾向が観察されており、直近1週間で1,055,718人と報告され、前週と比較して19%減少しました。西太平洋地域内の6か国(全体の18%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、パプアニューギニアで561%(31人から205人)、バヌアツで473%(205人から1,174人)及びトンガで170%(94人から254人)の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で1,615人と報告され、前週と比較して7%増加しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
中国 528,432人 35.9人 8%減少
オーストラリア 221,935人 870.3人 25%減少
日本 122,241人 96.7人 40%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
中国 910人 1.0人未満 57%増加
オーストラリア 288人 1.0人未満 17%減少
日本 199人 1.0人未満 18%減少

 

新型コロナウイルスの懸念される変異株及び注目すべき変異株についての特別な焦点

国の、当局、機関及び研究者と協力して、新型コロナウイルスの変異株が感染・伝播性や病原性に影響するか否か、感染拡大を制御するための、ワクチンの有効性(以下「有効率」という。)、治療法、診断又は公衆衛生上の取組(以下「PHSM」という。)について、WHOは定期的に評価しています。潜在的な、懸念される変異株(以下「VOC」という。)、注目すべき変異株(以下「VOI」という。)及び監視下にある変異株(以下「VUM」という。)は、世界の公衆衛生にもたらすリスクに基づいて定期的に評価されています。
 
流行している変異株の継続的な進化及び付随する疫学の変化を反映するために、変異株の分類が改訂される予定です。変異株の分類基準、現在又は過去に流行していた、VOC、VOI及びVUMの現在の一覧は、新型コロナウイルス変異株の追跡ウェブサイトで閲覧できます。国の当局は、他の変異株の指定を選択することができ、かつ、進化した新しい変異株及びその影響を調査及び報告するよう強く奨励されています。

VOCの世界的な拡散及び有病率

オミクロン株(B.1.1.529系統並びにその亜系統のBA.X系統及び組換え体を指す。以下同じ。)のVOCは世界的に流行している優勢な変異株であり、過去30日間にGISAIDに報告された検体のほぼ全てを占めています。過去3か月間にGISAIDに提出された検体の中でかなり低い流行のために、デルタ株はWHOによって「過去に流行していたVOC」として分類されており、同様にアルファ株、ベータ株及びガンマ株も分類されています。しかしながら、これが過去に流行していたVOCが将来再興しえないことを示唆しておらず、WHOは利用可能なデータを監視し続ける予定です。
 
オミクロン株の中で、疫学的第20週(2022年5月15日から21日をいう。以下同じ。)の時点でBA.2及びその下位系統(BA.2.X系統と名称される。)は減少していますが優勢なままであり、それぞれ44及び19%を占めています(図4及び表2)。他のオミクロン株の系統と比較し、増加の優位性の予備的な科学的根拠を伴ういくつかの変異株は世界的な有病率が1%未満であり、もはや上昇しておらず、BA.2.11、BA.2.13及びBA.2.9.1系統と名称されています。これらの系統は、共通してS部位の変異(L452X に変異が入ったものを指す。)を有しています。以前の支配的なオミクロン株の系統であるBA.1、BA.1.1、BA.1.X及びBA.3系統は、1%未満に減少しています。
 
世界的にBA.2.12.1、BA.5及びBA.4系統の有病率が上昇しています。疫学的第20週時点でBA.2.12.1系統(53か国で検出されている。)の有病率が28%に達しており、アメリカ地域における初期の迅速な増加に概ねよるものです。BA.5(47か国で検出されている。)及びBA.4系統(42か国で検出されている。)は、流行している変異株のそれぞれ4及び2%を占めています。全ての3つの変異株はS部位のL452に変異を有しており、より高い細胞融合性及び免疫回避の特性を通じてより高い感染・伝播性を有すると考えられます。いくつかの国から蓄積された科学的根拠は、BA.5及びBA.4系統に関連した重症度の増加が観察されていないことを示しています。BA.2.12.1系統に関連した疾患の重症度に関する現時点の科学的根拠は、ありません。
 
既知のVOCの組換え体を含む、2022年初頭に検出された新型コロナウイルスの変異株の組換え体については、感染・伝播性の増加に関する可能性を示唆する特性が複数
ありました。しかしながら、これは大幅な拡大には繋がりませんでした。GISAIDに提出された新型コロナウイルスの組換え体の検体数(WHOによって監視されていた、又は報告された検体数で初期に増加した(XE、XD及びXF系統)。)は週毎に減少が継続しており、現在は疫学的第20週に提出された検体の0.1%未満を占めています。
 
図4A及びB 2022年6月4日時点における新型コロナウイルスの検体数及び割合

 
表2 過去4週間にわたるオミクロン株の系統に関する相対的な割合(採集された検体による。)

ワクチン

図5は、ワクチンの1若しくは2回目接種(以下「初回接種」という。)又は初回接種後の接種(以下「追加接種」という。)がオミクロン株に及ぼすワクチンの有効性(以下「有効率」という。)について、要約したものです。直近の更新以降で、1の研究が図に追加されています(イスラエルの小児を対象とし、3回のファイザー製ワクチンの絶対的な有効率を評価したもの。ただし、未査読。)。この研究から、3回の接種からおよそ2か月以内に12から15歳の小児におけるオミクロン株の感染予防における有効率が80%(95%信頼区間が76.7から83.1%。)とわかりました。
 
図5  オミクロン株に対するワクチン初回又は追加接種の有効率

オミクロン株に対するワクチンの絶対的な有効率の結果に係る解釈

今日に至るまで、10か国(ブラジル、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、イスラエル、カタール、南アフリカ、英国及び米国)から22の研究がオミクロン株に対し、5つのワクチンの予防に係る持続期間を評価しました(6の研究にあっては初回接種のみの、4の研究にあっては追加接種のみの、12の研究にあっては初回及び追加接種の有効率を評価しました。)。これらの研究は、ワクチン初回接種後、オミクロン株に対し、全ての予防(感染、発症及び重症化の予防をいう。以下同じ。)の有効率が他のVOCに対する有効率と比較して減少したと報告しています。重要なことに、大多数の研究で、オミクロン株に対する重症化予防の有効率については、依然として高いままです。ワクチンの追加接種は、初回及び追加接種の両方で、利用可能な見積もりを伴うスケジュールの全ての組合せの中で、全ての予防の有効率を著明に改善します。追加接種後の感染及び発症予防の有効率は、重症化予防と比較して時間経過とともに減少します。しかしながら、予防の持続期間を評価するためには、追加接種後6か月を超えて有効率の見積もりを追跡した研究が必要となります。
 
重症化予防の有効率については、ワクチンの初回接種後3か月以内の期間において、12のうち6の研究(50%)がメッセンジャーRNAワクチン(モデルナ及びファイザー製ワクチン。以下「mRNAワクチン」という。)の有効率を70%以上と見積もりました。ウイルスベクターワクチン(アストラゼネカ及びヤンセン製ワクチン)を対象とした2の研究のうち、片方の研究にあってはアストラゼネカ製ワクチンの有効率を70%未満と見積もり、一方の研究にあってはヤンセン製ワクチンの有効率を50%未満と見積もりました。不活化ワクチン(シノバック製ワクチン)を対象とした1の研究が有効率を50%に等しいと見積もりました。初回接種後3か月を超えると、28のうち13の研究(46%)にあってはmRNAワクチンの有効率を70%以上と見積もり、19の研究(68%)にあっては有効率を50%以上に見積もりました。12の研究のうち、1の研究(8%)にあってはアストラゼネカ製ワクチンの有効率を70%以上と見積もり、8の研究(67%)にあっては有効率を50%以上と見積もりましたが、ヤンセン製ワクチンを対象とした2の研究にあっては有効率を50%以上と見積もったものはありませんでした。シノバック製ワクチンを対象とした2の研究は、初回接種後3か月を超えると、有効率が50%以上と見積もりました。
 
全ての研究で、追加接種後に重症化予防の有効率が改善しました。33の見積もりにあってはmRNAワクチンを追加接種とし、2の見積もりにあってはヤンセン製ワクチンを追加接種とし、1の見積もりにあってはシノバック製ワクチンを追加接種としました。データベース全体で、ファイザー製ワクチンを追加接種とした1の見積もり及びヤンセン製ワクチンを追加接種とした1の見積もりが追加接種後14日から3か月居以内の期間において、有効率を70%未満と見積もりました。mRNAワクチンを追加接種後3から6か月以内の期間において、20のうち17の研究(85%)が有効率を70%以上と見積もりました(20の研究のうち、13の研究にあっては初回接種がmRNAワクチンであり、6の研究にあっては初回接種がアストラゼネカ製ワクチンであり、1の研究にあっては初回接種がシノバック製ワクチンです。)。
 
初回接種後3か月以内の期間において、感染及び発症予防の有効率は、重症化予防の有効率より低く見積もる傾向にあり、時間経過とともに著明に減少します。初回接種後3か月以内の期間において、発症予防の有効率については、mRNAワクチンを対象とする13のうち、3の研究(23%)にあっては有効率が70%以上と見積もり、7の研究(54%)にあっては有効率が50%以上と見積もりました。アストラゼネカ製ワクチンを対象とする3の研究全て及びシノバック製ワクチンを対象とする1の研究は、有効率が50%未満と見積もりました。初回接種後3か月を超えると、29の研究のうち1の研究(全体の3%)が有効率を50%以上と見積もりました(21の研究がmRNAワクチン、6の研究がアストラゼネカ製ワクチン、2の研究がシノバック製ワクチンを対象としました。)。mRNA、アストラゼネカ製又はシノバック製ワクチンの初回接種完了後にmRNAワクチンを追加接種した場合の発症予防の有効率については、追加接種後14日から3か月以内の期間において、20のうち4の研究(20%)にあっては70%以上、15の研究(75%)にあっては50%以上と見積もりました。しかしながら、追加接種した場合の予防については、接種後に時間経過とともに減弱し、mRNAワクチンの追加接種後3から6か月以内の期間において、12のうち2の研究(17%)のみが有効率を50%以上と見積もりました。アストラゼネカ製ワクチン(1の見積もり)及びシノバック製ワクチン(1の見積もり)を追加接種後3から6か月以内の期間において、有効率の見積もりが50%未満でした。感染予防の有効率の見積もりについては、発症予防の有効率と同様の類型を示しました。

出典

COVID-19 Situation reports
COVID-19 Weekly Epidemiological Update: 8 June 2022
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---8-june-2022