新型コロナウイルス感染症に係る世界の状況報告

COVID-19 Weekly Epidemiological Update(WHO)2022年6月29日

世界の概況

新規感染者数については、2022年3月の頂点以降は減少傾向であり、その後世界的に3週連続で増加しています。新規感染者数は、2022年6月20日から26日までの週(以下「直近1週間」という。)に4,182,217人と報告され、前週と比較して18%増加しました(図1)。新規死亡者数については、直近1週間で8,552人と報告され、前週と比較して同等でした。管轄地域別の新規感染者数については、東地中海地域で47%、ヨーロッパ地域で33%、東南アジア地域で32%及びアメリカ地域で14%増加した一方、アフリカ地域で39%及び西太平洋地域で3%減少しています。管轄地域別の新規死亡者数については、東地中海地域で22%、東南アジア地域で15%及びアメリカ地域で11%増加した一方、西太平洋地域で6%、ヨーロッパ地域で5%及びアフリカ地域で1%の減少が観察されています。2022年6月26日時点で、全世界の累積感染者数は541,313,815人、累積死亡者数は6,327,547人となります。
 
これらの傾向については、いくつかの国が検体採取方式を積極的に変更し、全体の検査数が減少して結果的に検出される感染者数が減少するため、慎重に解釈する必要があります。
 
各国別では、新規感染者数が多い上位5か国は、米国(701,855人、5%増加)、ドイツ(504,655人、23%増加)、ブラジル(349,791人、37%増加)、イタリア(340,012人、61%増加)及び中国(333,926人、18%減少)でした。また、直近1週間における新規死亡者数が多い上位5か国は、米国(1,997人、2%減少)、ブラジル(1,313人、37%増加)、中国(925人、11%減少)、ロシア(429人、3%減少)及びイタリア(355人、5%増加)でした。
 
図1 2022年6月26日時点の週別又はWHO管轄地域別の新型コロナウイルス感染者数及び世界の死亡者数の推移
 
表1 2022年6月26日時点におけるWHO管轄地域別の新規又は累積新型コロナウイルス感染者の確定症例数及び死亡者数

WHO管轄地域別の概況

アフリカ地域

新規感染者数については、直近1週間で20,579人と報告され、前週と比較して39%減少しました。アフリカ地域内の14か国(全体の29%)については、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、赤道ギニアで633%(6人から44人)、ガボンで165%(31人から82人)及びセーシェルで109%(88人から184人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で203人と報告され、前週と比較して同等でした。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
南アフリカ 6,843人 11.5人 14%減少
エチオピア 3,092人 2.7人 40%減少
ケニア 2,859人 5.3人 21%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
南アフリカ 133人 1.0人未満 10%増加
コンゴ民主共和国 17人 1.0人未満 325%増加
ジンバブエ 15人 1.0人未満 15%増加

 

アメリカ地域

新規感染者数については、直近1週間で1,360,367人と報告され、前週と比較して14%増加しました。アメリカ地域内の6か国(全体の29%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、カナダで131%(6,515人から15,051人)、フォークランド(マルビーナス)諸島で122%(23人から51人)及びボリビアで110%(2,617人から5,485人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で4,127人と報告され、前週と比較して11%増加しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
米国 701,855人 212.0人 5%増加
ブラジル 349,791人 164.6人 37%増加
メキシコ 76,407人 59.3人 47%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
米国 1,997人 1.0人未満 2%減少
ブラジル 1,313人 1.0人未満 37%増加
チリ 159人 1.0人未満 6%増加
 

 

東地中海地域

新規感染者数については、直近1週間で74,016人と報告され、前週と比較して47%増加しました。東地中海地域内の10か国(全体の45%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、イラクで182%(2,210人から6,237人)、チュニジアで157%(886人から2,277人)及びパキスタンで130%(718人から1,652人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で83人と報告され、前週と比較して22%増加しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
モロッコ 17,729人 48.0人 84%増加
バーレーン 12,740人 748.7人 38%増加
UAE 11,139人 112.6人 15%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
イラン 20人 1.0人未満 43%増加
チュニジア 15人 1.0人未満 114%増加
サウジアラビア 13人 1.0人未満 13%減少

 

ヨーロッパ地域

新規感染者数については、2022年3月中旬以降減少が報告された後、過去3週間で増加が報告されており、直近1週間で1,796,850人と報告され、前週と比較して33%増加しました。ヨーロッパ地域内の33か国(全体の54%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、ルーマニアで665%(341人から2,609人)、スペインで531%(18,757人から118,421人)及びカザフスタンで167%(112人から299人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で2,259人と報告され、前週と比較して5%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
ドイツ 504,655人 606.8人 23%増加
イタリア 340,012人 570.1人 61%増加
フランス 331,843人 510.2人 37%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
ロシア 429人 1.0人未満 3%減少
イタリア 355人 1.0人未満 5%増加
スペイン 317人 1.0人未満 45%増加

 

東南アジア地域

新規感染者数については、2022年1月中旬以降減少傾向が観察された後、過去4週間で増加が報告されており、直近1週間で131,014人と報告され、前週と比較して32%増加しました。東南アジア地域内の8か国(全体の80%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、バングラデシュで300%(2,212人から8,846人)、モルディブで98%(528人から1,043人)及びスリランカで77%(47人から83人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で314人と報告され、前週と比較して15%増加しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
インド 93,281人 6.8人 25%増加
タイ 15,111人 21.6人 7%増加
インドネシア 12,376人 4.5人 63%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
インド 144人 1.0人未満 53%増加
タイ 125人 1.0人未満 6%減少
インドネシア 30人 1.0人未満 32%減少

 

西太平洋地域

新規感染者数については、2022年3月中旬以降減少傾向が観察されており、直近1週間で799,391人と報告され、前週と比較して同等でした。西太平洋地域内の12か国(全体の36%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、サモアで361%(75人から346人)、仏領ポリネシアで70%(60人から102人)及びフィリピンで60%(2,738人から4,376人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で1,566人と報告され、前週と比較して6%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
中国 333,926人 22.7人 18%減少
オーストラリア 196,360人 770.0人 8%増加
日本 109,520人 86.6人 20%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
中国 925人 1.0人未満 11%減少
オーストラリア 331人 1.3人 6%増加
韓国 87人 1.0人未満 43%増加

 

新型コロナウイルスの懸念される変異株及び注目すべき変異株についての特別な焦点

国の、当局、機関及び研究者と協力して、新型コロナウイルスの変異株が感染・伝播性や病原性に影響するか否か、感染拡大を制御するための、ワクチンの効果(以下「VE」という。)、治療法、診断又は公衆衛生上の取組(以下「PHSM」という。)について、WHOは定期的に評価しています。潜在的な、懸念される変異株(以下「VOC」という。)、注目すべき変異株(以下「VOI」という。)及び監視下にある変異株(以下「VUM」という。)は、世界の公衆衛生にもたらすリスクに基づいて定期的に評価されています。
 
流行している変異株の継続的な進化及び付随する疫学の変化を反映するために、変異株の分類が改訂される予定です。変異株の分類基準、現在又は過去に流行していたVOC、VOI及びVUMの現在の一覧は、新型コロナウイルス変異株の追跡ウェブサイトで閲覧できます。国の当局は、他の変異株の指定を選択することができ、かつ、進化した新しい変異株及びその影響を調査及び報告するよう強く奨励されています。

VOCの世界的な拡散及び有病率

GISAIDに提出された新型コロナウイルスの検体数については、2022年1月(1,248,906検体が提出された。)と比較して減少が継続しています。2022年5月27日から6月27日まで146,183検体がGISAIDに提出されました。これらの検体のうち、オミクロン株(B.1.1.529系統並びにその亜系統のBA.X系統及び組換え体を指す。以下同じ。)のVOCは世界的に流行している優勢な変異株のままであり、過去30日間に報告された検体の94%を占めています。オミクロン株の検体のうち、疫学的第24週(2022年6月13日から19日まで。以下同じ。)時点でBA.2系統が25%であり、その一方、BA.2.12.1系統が11%、BA.4系統が12%及びBA.5系統が43%です。疫学的第23週(6月6日から12日まで。以下同じ。)及び24週中に提出されたオミクロン株の検体の割合を比較すると、BA.2系統が30%から25%及びBA.2.12.1系統が18%から11%まで減少し、その一方、BA.4系統が9%から12%及びBA.5系統が28%から43%まで増加しています。
 
これらの傾向については、調査の限界を考慮し、慎重に解釈する必要があります(調査の限界は、各国の検体採取及びゲノム解析に係る戦略の変化と同様に、各国のゲノム解析能力及び検体採取上の戦略における違いも含む。)。

相対的なVEという特別な焦点

VEは、現実世界においていかにワクチンが作用するかの指標となります。ほとんどのVEの研究は、ワクチン接種及びワクチン未接種の臨床的結果のリスクを比較しており、絶対的なVE(以下「aVE」という。)とされます。
 
                      
 
しかしながら、ワクチン接種率が高い場合(例えば、90%を超える場合。)、ワクチン未接種の集団はワクチン接種の集団と新型コロナウイルスの曝露及び疾患のリスクという観点からかなり異なり、aVEという結果のバイアスにつながります。このバイアスを減弱し、より類似したリスクの集団を比較するために、ワクチン接種を受けた集団の中でVEを比較することができます(具体的には、接種した回数で比較します。)。例えば、初回接種のみと1回の追加接種を比較することができ、又は2回の追加接種と1回の追加接種や初回接種のみを比較することができます。この類型の比較は相対的なVE(以下「rVE」という。)と呼ばれ、インフルエンザを例としたいくつかのワクチンに対して行われています。新型コロナウイルスワクチンについては、イスラエル、ブラジル及びカナダを含む多くの国の研究でrVEが報告されています。
 
aVE及びrVEの関係性は、次の数式で表現することができ(例として、追加及び初回接種を用いる。)、図4で示されます。
 
                       
 
図4 aVE及びrVEの関係性


初回接種に係る低いaVE(これにより、初回接種の接種者が未接種の人と比較される。)と追加接種のrVE(これにより追加接種の接種者が初回接種の接種者と比較される。)は追加接種のaVE(これにより、追加接種の接種者が未接種の人と比較される。)に近似します。しかしながら、初回接種に係る高いaVEと追加接種のrVEはかなり劇的に異なれば、その一方で、追加接種のaVEにおける増分は小さいものとなります。
 
例えば、初回接種のaVEが90%で追加接種のrVEが50%の場合、追加接種のaVEは95%となります。この50%のrVEは予防における著明な増加を示すようですが、aVEにおける増分は僅か5%です。一方、初回接種のaVEが0%で追加接種のrVEが50%の場合、追加接種のaVEは50%となります。追加接種に係る真のaVEは、常にrVEよりも高くあるべきですが、いくぶんかは初回接種に係る真のaVEに依拠しており、様々な因子によって決定されます。しかしながら、現実世界のVEの研究では、これは例えば交絡バイアス及び見積もりの不確実性のような問題に常によるものとは限りません(例えば、行動の違い及び新型コロナウイルス感染の先行した感染歴に依拠する。)。
 
2、3の研究が追加接種のaVE及びrVEを評価しています。これらの評価の結果は図5に要約されています。比較集団に属する人はいくぶんのワクチン由来の免疫を潜在的に有しているため、追加接種のrVEはaVEと同等、又は低いものです。仮に調査者が追加接種のaVEを提供していなければ、rVEのみでaVEを導き出すことはできません。追加接種のaVEを算出するために、同一集団で同時点における初回接種のrVE及びaVEを必要とします。
 
図5 オミクロン株に対する1回の追加接種のaVE及びrVE


rVEは、初回接種に対し、追加接種の更なる予防の利益を定量化するための手法を提供します。rVEは、「比較集団は、ワクチンによるある程度の予防が潜在的に残存している。」という理解の上で必ず解釈する必要があります。rVEを解釈することは、集団及びワクチンが評価されること、最終接種の時機、臨床的結果及び疫学的な状況(流行している新型コロナウイルス変異株を含む。)を知ることを必要とします。これらは状況及び時期固有のものであり、一方の研究における追加接種のaVEを算出するために、もう一方の研究から初回接種のaVEを使用することはできません。さらに、rVEはaVEに依拠しているため、特定のワクチンのrVEを研究間で比較することはできません(これは、回避されたイベントが研究によって大きく異なる可能性を示しています)。

2回の追加接種のVE

今日に至るまで、初回接種又は1回の追加接種の片方と比較し、9の研究が2回の追加接種のオミクロン株に対するrVEを評価しています。5の研究では、メッセンジャーRNAワクチン(以下「mRNAワクチン」という。)に係る追加接種による新型コロナウイルス感染症の重症化予防(入院、ICU入室、死亡)が評価されており、1回の追加接種と比較し、2回のmRNAワクチンの追加接種によるrVEは40%から86.5%で推移します(表2)。追跡期間は、全研究で限られています。1の研究のみが重症化予防について2回の追加接種のaVE及びrVEを算出することができ、2回の追加接種のaVEが86%、1回の追加接種のaVEが77%、rVEが40%でした。2回の追加接種の更なる影響を示すため、絶対的リスク減少が同様に示されました。
 
表2 2回の追加接種による、新型コロナウイルスに係る特有の結果についてrVEを評価した研究(2022年6月27日時点のデータ)


出典

World Health Organization. “Weekly epidemiological update on COVID-19 - 29 June 2022”.WHO.2022.https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---29-june-2022,(参照2022-06-30).