複数国におけるサル痘のアウトブレイク(更新10)

External Situation Report 10, published 16 November 2022
Date as received by WHO national authorities by 17:00 CEST, 13 November 2022
 
確定された感染者数 死亡者数 国・地域数
79,411人 50人 110
 
リスクアセスメント
世界的なリスク
WHO管轄地域別のリスク 欧州地域
アフリカ地域
北米・中南米地域
東地中海地域
東南アジア地域
西太平洋地域

焦点

2022年11月7日から11月13日までの週において、世界的なサル痘の感染者数は継続して減少しています。
 
欧州地域については、2週連続で新規感染者数が減少した後に疫学的第45週で増加が観察されています。

11月2日に発行された前回の報告以降において、2,147人の新規感染者数(2.8%の増加)及び14人の新規死亡者数が報告されています。
 
アウトブレイクが始まって以降において、HIV感染の高い有病率(25,951人中の13,170人、50.7%)がHIV状態にある感染者のうちで報告されています。サル痘及びHIVは、性的接触を介した感染という、行動における共通の危険因子を有します。サル痘感染者については、感染状態が不明であるとき、HIV検査を考慮する必要があります。
 
テコビリマットは、天然痘のために開発された抗ウイルス薬であり、欧州医薬品庁及び英国の医薬品・ヘルスケア製品規制庁によってサル痘の治療薬として承認されています。WHO及びSIGAテクノロジーズ(テコビリマットの開発企業)は、緊急使用拡大手順のもとにおいて、サル痘の治療のための2,500の治療コースをWHOに寄付することに同意しています。この調整を通じて、参加に関心を示す低・中所得国は、テコビリマットを利用できるようになります。

疫学的な更新情報

2022年1月1日から11月13日までにWHO管轄である全6地域の110の国・地域から、79,411人の累積感染者数及び50人の累積死亡者数がWHOに報告されました(表1)。2022年11月2日に発表された状況報告以降、2,147人の新規感染者数(2.8%の増加)及び14人の新規死亡者数が報告されています。
 
過去7日間において、18か国が毎週の新規感染者数の増加を報告し、ブラジルで最大の増加が報告されました。過去21日間にわたり、63か国において、新規感染者数が報告されませんでした(21日は、潜伏期間の最大値です。また、前回の報告より5か国増加しています。)。
 
世界的に毎週報告される新規感染者数は、疫学的第44週(2022年10月31日から11月6日まで。以下同じ。)の1,348人と比較し、疫学的第45週(2022年11月7日から11月13日まで。以下同じ。)の1,114人まで17%減少しました(北米・中南米地域で20%と最大の減少率でした。)。欧州地域において、2週連続の減少の後にスペイン(41人)及びイタリア(17人)から新規感染者数の増加が観察されています。
 
2022年10月31日から11月13日までにおいて、米国(5人)、ブラジル(4人)、メキシコ(4人)及びエクアドル(1人)と全て北米・中南米地域から、合計14人の新規死亡者数が報告されました。北米・中南米地域については、全体的に新規感染者数の中で最多となる新規死亡者数を報告しています(50人中の30人、60%)。
 
2022年11月13日時点で、世界的に累積感染者数が多い10か国は、米国(28,683人)、ブラジル(9,606人)、スペイン(7,377人)、フランス(4,102人)、英国(3,703人)、ドイツ(3,670人)、コロンビア(3,630人)、ペルー(3,299人)、メキシコ(3,007人)及びカナダ(1,444人)です。当該の10か国を合算すると、に世界的に報告された新規感染者数の86.3%を占めています。
 
表1  WHOへ報告されたWHO管轄地域別のサル痘に係る累積感染者数及び死亡者数(2022年1月1日から11月13日17時(欧州夏時間)まで)
 
図1 週毎に集計されたWHO管轄地域別のサル痘に係る新規感染者数を示したグラフ(2022年1月1日から11月13日17時(欧州夏時間)まで)
 
※当該のグラフについては、日曜日に終了する疫学的週を反映した週報を示しています。現在の週に係るデータについては、次回の状況報告で提示されます。
 
他の重要な疫学的知見
アウトブレイクは継続して主に若年男性に影響を与えており、利用可能なデータを伴う感染者数の96.9%(46,067人中の44,631人)は男性であり、年齢の中央値は34歳です(四分位範囲は、29から41歳まで。)。データが利用可能である感染者数の1.2%(560人)が0歳から17歳までであり、そのうち0.3%(149人)は0歳から4歳までとなります。この割合は管轄地域によって異なり、北米・中南米地域0歳から17歳までの感染者の割合が最も高いと報告されました(560人中の412人、74%)。
 
性的指向が報告された感染者のうち、86.2%(26,923人中の23,215人)がゲイ、バイセクシャル及び男性と性交渉を行う男性であると特定されました。報告された感染経路のうち、性交渉中の皮膚及び粘膜を介した接触感染が最も報告されており、感染曝露機会が報告された19,006人中の13,549人(71.3%)でした。アフリカ地域において、サル痘感染者の人口統計が異なる地域の感染経路を特定するために、更なる研究が必要です。
 
報告された感染曝露状況において、最も一般的に報告された感染曝露状況は性的接触を伴う集会であり、5,962件中の3,237件(54.3%)でした。
 
臨床症状
現在のアウトブレイクにおける感染者の大半は重篤化の症状をほぼ呈さないものの、妊産婦、小児及び免疫不全者は重症化のおそれがあります。世界的な感染者のうち7%(情報が利用可能な37,850人中の2,933人)がサル痘を原因として入院しており、入院のおおよそ17%が隔離目的です。
 
累積32,886人(41%、79,411人中の32,886人)の感染者が少なくとも1以上の症状を報告しています。感染者において、最も一般的な症状は発疹であって感染者の85.5%(32,886人中の28,108人)で報告され、次に全身性発疹が59.8%(32,886人中の19,658人)、その次に発熱が58.1%(32,886人中の19,100人)となります(図2)。症状の分母を正確に特定することは、陰性報告が乏しいことや報告システムが異なる症状の定期のため困難です。
 
図2 世界的なサル痘感染者によって報告された症状の頻度(2022年11月13日時点、32,886人)

最新情報とWHOの助言

WHOは、進行中である疫学及び対策の研究を支援するためと同様に、包括的な感染者の発見、濃厚接触者の追跡、検査の調査、支援を伴う隔離、臨床的な管理、感染予防及び措置の実施、リスクコミュニケーション及びコミュニティエンゲージメント、予防接種活動について促して助言し、抗ウイルス薬へのアクセスを促進するために、継続してアウトブレイクを詳細に監視及び対処し、加盟国及びパートナーと国際的な調整及び情報共有を支援しています。

緊急委員会

 国際保健規則(IHR2005)緊急委員会の第3回会議は、複数国におけるサル痘のアウトブレイクに関するものであり、2022年10月20日(木)に開催されました。当該委員会はWHO事務局長に「複数国におけるサル痘のアウトブレイクは、IHR2005第1条に規定される「公衆衛生上の緊急事態」の定義を継続して満たす。」と助言しています。
 
WHO事務局長は、当該の会議の後に加盟国に対する暫定勧告事項を拡張し、集合場所における事前準備行動及び事態対処行動の確保、研究による知識格差への対処を支援することに関する2つの新しい勧告事項を追加しました。
 
1.リスクアセスメントを徹底し、集合場所※におけるサル痘アウトブレイクの感染者に対する事前準備行動及び迅速な事態対処行動を行うこと(※には、病院、刑務所、出稼ぎ労働者の住居、避難民や難民のための施設を含む人口密度の高いおそれのある状況をいう。)。
 
2.サル痘に関連した研究分野におけるデータ収集、優先研究(感染・伝播性及びこれまでの経緯のみに限らない。)を奨励し、支援する。

(1)診断及び技術革新(簡易迅速検査、検体の種類及び動物診断に及ぶウイルス動態を含む。)

(2)介入の効果に関する行動調査及び研究

(3)医療従事者の曝露のおそれ及び曝露前及び曝露後の管理

(4)人、動物、環境の境界におけるサル痘の人獣共通感染に関する研究(社会経済学及び行動上の危険因子及び廃水における環境調査の指標を含む。)

臨床及び治療

テコビリマットは、天然痘のために開発された抗ウイルス薬であり、欧州医薬品庁及び英国の医薬品・ヘルスケア製品規制庁によってサル痘の治療薬として承認されています(牛痘、ワクシニアウイルス及びその合併症を含む。)。WHO及びSIGAテクノロジーズ(テコビリマットの開発企業)は、アクセス拡大手順のもとにおいて、サル痘の治療のための緊急使用に関する寄付に同意しています。この調整を通じて、参加に関心を示す低・中所得国は、テコビリマットを利用できるようになります。

ワクチン及び免疫

サル痘のワクチン及び予防接種に関するWHO暫定指針は、科学的根拠のシステムレビュー(WHO予防接種に関する専門家の戦略的諮問会議によって承認される。)によって更新され、2022年11月16日に公開されました。勧告事項の要約は、下記のとおりです。

(1)現在評価されている利害に基づくと、ワクチンの供給に関係なく、現時点でサル痘の集団予防接種は必要ではなく、推奨もされません。

(2)サル痘の人から人への感染拡大は、公衆衛生上の手段でコントロールすることが可能です(調査、感染者の早期発見、診断治療、隔離及び濃厚接触者の追跡、濃厚接触者による健康観察を含む。)。

(3)事態対処行動を管理するうえで、予防接種は一時的な公衆衛生介入を完結するための追加手段とする必要があります。

(4)サル痘又は天然痘のワクチンに伴う全ての決定については、臨床的な意志決定を通じて共有する必要があります。個人の段階においては、予防接種は他の予防手段に置き換わるべきではありません。

(5)曝露前予防接種は、曝露のおそれが高い個人に対して推奨されています。現在の複数国におけるアウトブレイクにおける曝露のおそれが高い個人については、ゲイ、バイセクシャル又は複数かつ男性と性交渉を行う男性(以下「MSM」という。)です。曝露のおそれがある他の個人については、複数の性交渉の相手を持つ人、性的産業の従事者、繰り返し曝露するおそれがある医療従事者、オルソポックスウイルス属を取り扱う検査室の職員、サル痘に関する診断検査を行う臨床検査職員及びアウトブレイク事態対処行動チームメンバーです。

(6)曝露のおそれの段階については、集団間で異なり、ワクチンの供給が限定されるときに国で優先順位を付けるために有用です。

(7)曝露後予防接種については、理想的には初回曝露から4日以内である濃厚接触者に対して推奨されます(無症状のときは、最大14日間となります。)。

(8)ワクチンの供給が限られるとき、サル痘感染者の濃厚接触者、重症化のおそれがある人(例えば小児、妊産婦、免疫不全の人(免疫抑制剤使用及びHIVコントロール不良を含む。)は、状況に応じて利害を鑑みながらワクチン接種を優先する必要があります。
リスクのある集団(小児、妊産婦及び免疫不全の人)へのワクチンの選択に関する更なる推奨事項については、出版された「サル痘のワクチン及び免疫(暫定指針)」で閲覧できます。

スーダンにおけるワンヘルス

新しいワンヘルスプラットフォームがスーダンにおいて2022年9月22日に連邦保健省、連邦動物資源省、環境天然資源高等評議会によって正式に承認されました。WHOと連邦保健省は、動物及び環境部門、州保健省、利害関係者(感染の動態をよく理解し、人間、動物、環境の境界における調査結果を解析するための国連難民高等弁務官、実地疫学研修プログラム、国際NGOを含む。)とともにワンヘルスサル痘の事態対処行動の任務を複数主導してきました。
スーダンの5つの州で実施されたワンヘルス任務において、サル痘の感染者が報告されており、7つの地域から合計39の動物検体が収集されました(2022年8月7日から10月2日まで。)。これらの収集された動物検体については、49%(16検体)はゲダレフ州の2つの難民キャンプ(最多の感染者数(154人の感染疑い者及び3人の感染確定者)を報告している。)から収集され、次に23%(9検体)は西ダルフール州から、18%(7検体)は北ダルフール州から、15%(6検体)はカッサラ州から、3%(1検体)はハルツーム州から収集されました。39検体のうち、最多の割合を占めるのは羊(8検体、21%)及びネズミ(8検体、21%)であり、次いでヤギ(7検体、18%)、ロバ(6検体、15%)、ウシ(4検体、10%)、イヌ(2検体、5%)、サル(2検体、5%)、馬及び野生の豚の皮膚から1検体(3%)が収集されました。全ての検体については、スーダンのハルツーム州にある国立公衆衛生研究所のサル痘ウイルスPCR検査で陰性でした。

リスクコミュニケーション及びコミュニティエンゲージメント

サル痘アウトブレイクに関するIHR緊急委員会の第3回会議の後に次の事項が推奨されています。
 
全ての締約国
親密な出会いがある場所や環境(例えばMSMや敷地内で性交渉を行うことに焦点を当てた場所)において、リスクコミュニケーション及び集団支援の取組が必要です。これについては、個人の感染防護対策及びリスク軽減活動を支援するために、集団主導の組織、小規模又は大規模イベントの主催者、敷地内で性交渉を行うときの場所の所有者及び管理者の関与と支援が含まれます。
 
特定の締約国※
※当初の感染源に関係なく、サル痘感染者が1人以上いる、又は人から人への感染を経験している。主要な人口集団及び曝露のおそれが高い集団を含む。)
 
1.サル痘ウイルス感染、他者への感染・伝播性のおそれを軽減するための行動、アウトブレイクによって影響を受ける集団の臨床症状に関する認識を高めることで、集団に関与して保護すること。これらの状況は変化するおそれがあり、適切な感染予防対策の採用及び適切な施行(曝露のおそれがある人への一次的予防接種へのアクセスを支援すること及び情報に基づくリスク軽減対策の適用を含む。)。様々な状況において、これらの措置については、有症状の期間は肌と肌との接触や濃厚接触を制限すること、敷地内で性交渉を行う場所でのイベントも含めて性交渉の相手の数を減らすこと、曝露のおそれが高い小規模又は大規模の集会も含めて個人用保護具を使用することが含まれます。
 
2.小規模又は大規模の集会のイベント主催者に関与すること(親密な出会いを求める人々や敷地内で性交渉を行う人々を含む。)。目的は、個人の感染防護対策を促進すること、予防対策に関する個人の選択におけるリスクコミュニケーション(ワクチン、性交渉の相手の数を減らすことを含む。)、会場の定期的な清掃を含む感染予防対策に必要な情報を提供すること。
 
3.健康当局、影響を受けた集団の代表に関わるイベント主催者、NGO、選出された役人及び市民、行動科学者は、いかなる個人及び集団における偏見を回避するために戦略と手法に助言し、集会に関連した適切な介入の包括を支援する。

集会

サル痘に曝露する状況については、パーティ、イベント、パレード、フェスティバル、スポーツイベント、コンサート、サル痘の感染拡大のおそれが高い肌と肌の接触を含む活動が含まれます。一部の集会については、MSMを例とする曝露のおそれが高い集団に焦点を当てて公的又は私的イベントと関連しており、親密かつ性的な出会いを通じての曝露の機会増加やその後の感染者の拡大に帰結しています。
 
WHOは、イベントの解約を推奨していません。集会を計画し、修正し、又は延期することに関する意思決定を通知するためのリスクに基づいた手法については、検討中のイベントの状況に合わせて調整し、サル痘を含む全てのリスクを考慮に入れる必要があります。
 
カタールでのFIFA2022ワールドカップのリスクコミュニケーション及びコミュニティエンゲージメント(以下「RCCE」という。)を支援する活動が次のとおり進行中です。
 
(1)計画及び調整 政府利害関係者との危機コミュニケーションに関する見直しを支援する。
 
(2)ソーシャルリスニング 毎週のソーシャルリスニングがFIFAワールドカップ中における公衆衛生上の知見を報告・収集するために行われています。分類は、予想できる健康上の潜在的なリスクに基づいて構築されました。
 
(3)広報 サル痘を含む様々な健康上の話題に関連した健康メッセージの発案及び見直しにおいて提供される技術支援
 

欧州地域におけるサル痘の状況報告

欧州地域の45の国・地域において、2022年11月13日時点における25,341人のサル痘の累積感染者数が報告されています(4人の死亡者数を含む。)。疫学的第45週において、当該地域では、新規感染者数が2週連続で減少した後に増加しました。2022年11月14日時点において、当該地域は世界の感染者数の32%を占めています。当該地域の累積感染者数のおおよそ75%は、スペイン(7,377人)、フランス(4,102人)、英国(3,703人)及びドイツ(3,670人)の4か国から報告されています。感染経路に関する情報については、当該地域における感染者数の94%で性的接触が報告されています。
 
ゲノム解析により、かつては西アフリカ型として知られていたクレードⅡ(大多数は、クレードⅡbとなる。)に477検体が属していると判明しました。
 
最も早い感染者は、2022年3月7日付の検体と報告されており、残りの検体の後ろ向きの検査を通じて特定されました。発症日の最も早い日付は、2022年4月17日と報告されました。
 
感染者の大半は、31歳から40歳までであり(25,211人中の9,939人、39%)、男性です(25,195人中の24,781人、98%)。性的指向が判明している10,933人の男性感染者数のうち、96%がMSMであると自認しています。HIV感染者のうち、38%(10,206人中の3,842人)がHIV陽性でした。大部分の感染者は、発疹(15,729人中の15,021人、96%)、発熱、疲労、筋肉痛、悪寒、頭痛を例とする全身症状(15,729人中の10,661人、68%)を呈しました。入院患者は、757人(6%)であり、そのうち255人が臨床治療を要しました。6人がICUに入院し、サル痘感染者の4人が死亡したと報告されています。82人の感染者数が小児であると報告されています(52人は、15歳から17歳までです。)。
 
WHO及びECDCは、現在までに5件の職業性曝露の報告を受けています(4件にあっては医療従事者が推奨される個人用保護具を着用していながら検体収集中に体液に曝露しており、1件にあっては個人用保護具を着用していませんでした。)。
 
欧州地域におけるWHOの事態対処行動
WHOは、各国が当該地域でサル痘の感染を制御・防止するための効率的な事態対処行動計画を作成できるように、技術支援及び複数部門の調整を提供しています。

 (1)検査
WHOは、分子生物学的診断のための検査機器及び試薬の調達及び供給を支援しています。アウトブレイク直後に始まった必要性に関する評価の結果に基づき、WHOは当該地域における支援の優先順位が高い18の国・地域(アルバニア、アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ジョージア、カザフスタン、キルギス、モンテネグロ、北マケドニア、モルドバ、セルビア、タジキスタン、トルクメニスタン、トルコ、ウクライナ、ウズベキスタン及び※コソボ。※国連安全保障理事会決議1244(1999年)に従う。)を特定しました(診断能力が不足している、又はアウトブレイクへの適切な事態対処行動を供給する必要がある。)。WHOは、その次に120万ドル相当の物資を調達して提供することができました(サル痘対応のためのこれらの国々における健康システムの強化に有用でした。)。ドイツ企業(TIB MolBiol)との協力により、現在57,000件のPCR検査が供給されており、優先度の高い国・地域において、最大5,000件のサル痘検査が可能になります。これらの試験の適切な使用については、直営及びオンラインの両方で提供される新しい修練プログラムによって支援されます。臨床検査情報システムについては、サル痘ウイルスの診断を含むように適応されています(要求した国におけるWHOからの支援を含む。)。
 
(2)調査
WHO及びECDCは、当該地域の全ての国・地域からのサル痘に関する調査を促進するために、欧州調査システムを通じて国内感染者に基づいた報告を実施しました。調査速報については、WHO及びECDCが共同で開発・作成したものであり、当該地域における流行状況の報告を促進します。WHOは、利害関係者と共同し、地域の状況に適した標準的な手順を設計しました(サル痘感染者及び濃厚接触者の公衆衛生上の調査を導くことを目的とする。)。WHO及びECDCは、9月に疫学的な状況を記載した欧州調査の査読済論文を発表しました(当該地域における41か国にわたる複数国のサル痘アウトブレイクについて、2022年3月7日から8月23日までに関するもの)。WHO及びECDCは、直近の傾向、臨床症状と管理、ハイリスク又は脆弱の集団、濃厚接触者の追跡及び予防接種に関する情報共有するための場を提供するために、加盟国向けの定期的なウェビナーを共同して開催しています

(3)その他
WHOは、より良い調整及び計画を通じて事前準備行動及び事態対処行動を改善することによりサル痘アウトブレイクを管理するための公衆衛生上の能力構築を目的として、サル痘アウトブレイクの管理、制御及び排除に関する準地域トレーニングワークショップを2022年11月9日から11月10日まで開催しました。
 
(4)リスクコミュニケーション及びコミュニティエンゲージメント
マスギャザリングの計画及び調整という観点において、政府部局及びイベント主催者を支援するための欧州WHO地域事務所及びECDC合同のサル痘の事態対処行動の資源ツールキットが開発・出版されています。
 
(5)偏見を軽減するための組織及び市民への関与
WHOは、サル痘の事態対処行動へ地域社会を有意義に関与させるために、地域社会との一連の非公式ウェビナーを開催しました。初回は2022年6月2日に開催され、30を超える団体が招待されました。議論された重要点については、偏見の回避、リスクの高い集団に絞ること、特定の国における全体的な状況を考慮するために必要な手法が含まれます。イベント主催者向けのコミュニケーションツールキットを共同開発するために、非公式のワーキンググループが開催されました。
 
(6)知識の共有
2022年7月27日の第2回ウェビナーについては、イベント主催者及び集団がポルトガルから収集及び共有されたRCCEの最適な実務について説明しています。ウェビナーには、70人以上が参加しました(ポルトガル、スロベニア、モンテネグロ及びアゼルバイジャン、そして、イタリア、フランス、英国、他の複数国における男性の健康について取り組む団体組織の代表者を含む。)。モンテネグロ、アルメニア、カザフスタン、キルギス及びチェコにおける集団に関与するために、一連のウェビナーが開催されました。一連のウェビナーについては、広く行動に関する研究がない中でアウトブレイク中の集団の洞察を得るために、有用です。
 
(7)(4)の出版物
2022年欧州のサル痘アウトブレイクにおけるRCCEに関する暫定的な助言。この文書については、現在の欧州のサル痘アウトブレイクの流れにおけるRCCEに取り組む健康部局に向けられたものです。アウトブレイクの疫学と流れ、推奨される感染防護対策及び人々の認識と行動に基づく集団への関与及びコミュニケーションのリスクに対する手法についての助言を提供しています。
 
2022年欧州におけるサル痘アウトブレイクのRCCE。この文書については、現在の欧州のサル痘アウトブレイクの流れにおける健康部局のRCCE介入に向けられたものです。
 
(8)公衆衛生上の介入
WHOは、加盟国におけるサル痘の感染者及び濃厚接触者の管理を調査しています。サル痘の感染者を確認している全ての国については、2022年11月15日時点で41の加盟国が自宅隔離を、1の加盟国が行動制限を、1の加盟国が施設又は病院での隔離を感染者に求めています。これらについては、条件を満たせば、少数の加盟国が隔離の要件を緩和しています(例えば3日間無症状であれば、残りの病変を衣服で覆うことができます。)。WHOの勧告に従い、17の加盟国がサル痘の濃厚接触者を隔離することを推奨していません。21の加盟国が濃厚接触者に対して移動及び他者との濃厚接触の制限を推奨しています(例えば特定の脆弱な集団との性的接触や濃厚接触)。4の加盟国にあってはハイリスクの濃厚接触者に曝露後21日間の隔離を求めており、1の加盟国にあっては全ての濃厚接触者に隔離を求めています。
 
(9)臨床的な管理及び感染予防対策
欧州医薬品庁は、欧州諸国向けに抗ウイルス薬(テコビリマット)を認可しています。WHOは、WHOの備蓄品(限定された数かつ人道的使用のみ)を通じてテコビリマット治療へのアクセスを取得する方法について、加盟国に支援を提供しています。さらに、全てのEU加盟国及び7つの参入国(ボスニア・ヘルツェゴビナ、アイスランド、モンテネグロ、北マケドニア、ノルウェー、セルビア及びトルコ)はテコビリマットを要求できます。
 
(10)予防接種
WHOは、欧州地域におけるサル痘に対する予防接種に関する政策要綱を発表しました(当該地域でサル痘ワクチンを早期に採用した集団からの経験から得た知見に基づいて開発されました。)。政策指針の考慮事項の概要に加え、政策要綱はサル痘ワクチンと予防接種に関する知識の格差を強調しています。WHOは、加盟国がサル痘ワクチンの需要及びリスクの高い集団による受入れについて戦略を立てる必要を考慮し、考慮事項の文書(地域におけるサル痘ワクチン接種の行動に関連した側面の課題に対処するための機構を説明する。)を発行しました。WHO欧州地域におけるサル痘ワクチンの活用は高所得国に限定されており、WHOは、サル痘ワクチンを欧州地域の加盟国間で共有・寄付するために、様々な関連する加盟国、パートナー組織(例えば米国、オランダ、米国国際開発庁、保健衛生の緊急事態の事前対処準備及び事態対処行動)と緊密に連携しています。WHO欧州地域における加盟国から共有されたデータによると、55の加盟国・地域のうち、36の加盟国・地域がサル痘ワクチン接種の政府指針を持っています(これらのうち、24の加盟国・地域は曝露のおそれが高い個人や集団に対して曝露前予防接種を推奨しています。)。2022年11月14日時点において、26か国で461,942回分のワクチンを受け取っており、現在までに22か国で372,824回の予防接種が行われています。

東南アジア地域におけるサル痘の状況報告

2022年11月13日時点において、合計31人のサル痘感染者数が東南アジア地域の4か国から報告されました(1人の死亡者数を含む。)。最多の感染者数が報告されているのはインドであり、次いで、タイ(12人)、スリランカ(1人)及びインドネシア(1人)です。スリランカは11月4日に最初のサル痘感染者を報告しており、当該地域でサル痘感染者を報告した第4の国となりました。
 
表2 東南アジア地域で報告されたサル痘感染者の特徴(2022年7月14日から11月13日まで)
 
利用可能な情報を伴うサル痘感染者(31人)の特徴が表2に示されています(次の(1)から(6)までのとおりです。)。
 
(1)男性にあっては感染者の61%(19人)を占め、女性にあっては感染者の39%(12人)を占めています。当該地域については、世界的な状況※と比較して男性の割合が高いものとなっています。※利用可能なデータを伴う96.9%(45,477人中の44,066人)が男性です。
 
(2)感染者数のおおよそ90%が18歳から39歳までです(28人、中央値は27歳)。
 
(3)13人の感染者にあっては輸入感染症であり(UAE(7人)、カタール(3人)、オマーン(1人)、フランス(1人)及びドイツ(1人))、16人にあっては恐らく当該地域で感染し、2人の感染者にあっては海外渡航歴が不明です。
 
(4)男性の58%(19人中の11人)にあっては直近の海外渡航歴を持つ一方、女性にあっては17%(12人中の2人)が海外渡航歴を持っていました。これは、男性が海外で曝露しやすく、女性が当該の国・地域で感染しやすいことを示唆しています。
 
(5)4人の感染者にあっては性的指向をMSMと報告しており、14人の感染者にあっては性的指向に関して異性と性交渉を行うと報告しており、13人の感染者にあっては性的指向は不明です。MSMの割合は、世界的な疫学(感染者の86.4%がMSMと自認する。)と比較して著明に低いものです。
 
(6)HIVについては、2人で陽性、11人で陰性、残りの18人で不明でした。
 
当該地域については、2022年11月13日時点において、サル痘ウイルスの少なくとも16検体がGISAIDに提出されています。当該地域でGISAIDに提出された検体については、クレードⅡbA.2が優勢であり、クレードⅡbB.1及びその亜系統がその次に優勢であるという傾向があります。
 
東南アジア地域のサル痘に対するWHOの事態対処行動
WHOは、当該地域におけるサル痘の事前準備行動を促進するための暫定技術指針及び優先行動(各国がサル痘感染者を管理するための事前準備行動を発展させる基盤を提供する。)を2022年5月28日に発表し、2022年7月7日に更新しました。WHOは、6月早期に全ての国の迅速な事前準備行動の評価(事前準備行動の計画及び当該地域におけるWHOの協力を各国に周知する。)を行いました。
 
(1)調査
WHOは、IHRを通じて各国からのサル痘感染者の報告を促進してきました。11月13日時点において、報告された31人の感染者のうち20人については、感染者報告フォームを通じて各国が情報を共有しています。6月早期の政府事前準備行動の評価によれば、評価調査に応答した全ての8か国が次のように報告しました。当該の国々は、サル痘感染者の定義を確立し、契機に応じた調査(直通番号を含む。)を行い、感染者に基づく情報を収集、報告、解析するための現存するシステムを有しています。
 
(2)検査
WHOは、サル痘に関する診断検査能力を加盟国が開発することを支援しました。これについては、サル痘の検査に関する管轄地域の指針の普及、インド及びタイにおける地域委託検査機関の設立(PCR検査及びゲノム解析を目的とする。)が含まれます。全ての加盟国は、サル痘を検出する能力を現在有しており、検査を検証しています。集中的検査は、大半の国々において国立検査機関を通じて提供されています。WHOは、オーストラリア及びインドの民間企業の支援を受け、検査試薬及び陽性対照機器の提供を支援しています。
 
(3)臨床管理
WHOは、臨床管理に関する技術ウェビナーを開催し、第2回のウェビナーは11月14日に始まる週に予定されています。WHOは、サル痘に対する未登録かつ経験的な介入手順について、WHOが監視する緊急使用の実施に関する合意を条件として、加盟国が治療薬を利用できるようにしました。WHOは、デコビリマットの寄付にアクセスすることへの関心を各国が提出できるように支援しています。
 
(4)リスクコミュニケーション及びコミュニティエンゲージメント
サル痘に関するRCCEの指針を示し、かつ、手法について議論するために、政府関係者も巻き込んだ説明会が実施されました。サル痘は、SEAROの定期的なオンライン聴取、データ収集及び解析機構(現在毎週各国と共有されている。)に昨年の5月以降に組み込まれていました。重要事項及び資料が開発・作成され、WHOの各国事務所及び政府が利用できます。

出典

World Health Organization. Multi-country outbreak of monkeypox External Situation Report 10, published 16 November 2022”.WHO.2022. https://www.who.int/publications/m/item/multi-country-outbreak-of-monkeypox--external-situation-report--10---16-november-2022, (参照2022-11-17).