エボラウイルス病(スーダン型)- ウガンダ共和国(更新3)

Disease Outbreak News 2022年12月8日
 
12月5日現在のウガンダ共和国におけるエボラウイルス病の流行:主要な疫学的指標
確定症例数 142
推定症例数/死亡数 22
確定症例における死亡数 55※
回復症例数 87
医療従事者における感染者数 19
感染発生地域数 9/147
最初の症例確定後の日数 80
※データ照合の結果、これまで「死亡」とされていた1件が「回復」に分類し直されました。
出典:ウガンダ保健省
 

発生の概要

11月24日に発表された前回のWHO Disease Outbreak News(DON) 以降、11月27日にカサンダ(Kassanda)地区でスーダン型エボラウイルス(SUDV)によるエボラウイルス病の新たな確定症例が1件報告されました。保健省の情報によると、この患者は、妊娠28週で死産となった胎児です。母親は妊娠中にSUDVに感染していましたが、その後回復し、出産時には良好な状態であったとのことです。
 
9月20日の発生宣言以降、2022年12月5日までに、ウガンダ保健省から合計142名の確定症例が報告されています。このうち、55人が死亡し、CFRは39%となりました。また、22人の推定患者(全例死亡)も報告されています。医療従事者の感染者数は、前回のDONレポートから変わらず、19人が確定例、7人が死亡しています。
 
12月2日、ウガンダ保健当局は、全ての患者がエボラ治療室(ETU)から退院し、現在入院中の患者はいないことを発表しました。12月5日現在、治療中の症例はありません。
 
2022年12月5日現在、確認されている2,564人の接触者のうち、84.5%にあたる2,167人が、21日間の健康観察期間を終了しています。現在、4地区で36人の接触者が健康観察期間にあり、追跡率100%です。
 

図1. 2022年12月5日時点のSUDVによるエボラウイルス病の確定症例数および推定症例数の症状発現日別推移(3日移動平均値付き)出典:ウガンダにおけるエボラウイルス病の現状報告ー69
 
表1. 12月5日現在のSUDVによるエボラウイルス病の地区別患者数及び死者数(確定及び推定)

 

2022年12月5日時点のSUDVによるエボラウイルス病の確定患者・死亡者の地区別分布地図
 
公衆衛上の取り組み
ウガンダの保健省、WHO、パートナーによる公衆衛生上の取り組みついての詳細は、保健省とWHOアフリカ地域事務所が共同で発行した最新の状況報告書( https://www.afro.who.int/countries/publications?country=879)を御覧ください。
 
世界発生時対応ネットワーク(GOARN) の支援要請を受け、12月7日現在、23のパートナー機関から66件の支援の申出がありました。現在、GOARNを通じて症例管理、感染予防・管理、公衆衛生上の緊急事態が発生している際の現地調査に役立てるツールであるGo.Dataの導入の各分野に5人の専門家が配置されています。さらに、水と衛生・保健(WaSH)、疫学・サーベイランス、パートナー機関の調整、検査能力といった分野でも、支援の申出が寄せられています。GOARN支援要請に加えて、パートナーは、複数の分野にわたって保健省主導の対応を支援し続けています。
 
WHOは、2022年10月から11月にかけて、臨床試験に含める治療薬とワクチンの候補を特定するための専門家会議を開催し、スーダン・エボラウイルスに対するワクチンと治療薬の両候補の臨床試験プロトコルを開発しました。専門家は、3つのワクチン候補を計画中の囲い込みワクチン接種試験 に含めるべきであると勧告しました。Merck/IAVIのVSV-SUDV、セービン研究所のChAd3-SUDV、オックスフォード大学/ジェナー研究所のbiEBOVの3つです。12月8日、これらの候補ワクチンのうち1種類1,200回分が同国に到着し、臨床試験で評価される予定です。
 
WHOは、カンパラの「広報強化キャンペーン」においてパートナーと連携し、リスクコミュニケーションとコミュニティ参加(RCCE)活動を実施しています。この期間中にウガンダでのRCCE活動や近隣諸国での予防を方向付けるために、祝祭シーズン向けのRCCE計画が策定されました。
 
WHOは引き続きウガンダ保健省を支援し、パートナーと協力して、医療施設における感染予防と制御(IPC)対策を実施し、更なる感染を防止するため、 SUDV対応のための国家IPC戦略の策定、スクリーニングの実施、疑い症例の隔離と通知、医療従事者への研修などを実施しています。漏れのないIPCアプローチは、確定症例が報告された場合に施設やコミュニティを支援するために実施され、現在も継続されています。

近隣諸国での対策と管理オペレーションの確立

WHOは、リスク評価を行った上で、周辺国の優先順位を見直しました。リスクがあると評価された周辺6か国(ブルンジ、コンゴ民主共和国、ケニア、南スーダン、ルワンダ、タンザニア)に加え、ウガンダとの間で多くの人口移動がある中央アフリカ共和国、ジブチ、エチオピア、ソマリア、スーダンの5か国が追加されることになりました。
 
保健省、WHO、国内外のパートナーは、これらの国々でSUDVに対しての対応準備活動を支援しています。
 
国の対応準備活動の概要は以下です(ジブチ、ソマリア、スーダンの新規更新はありません。)。

ブルンジは引き続き入国地点での監視体制を強化し、地区レベルで感染予防・管理資材の配備を進めています。保健省は、症例管理とIPCの分野で国際的な専門家を迎えました。入国地点とエボラ治療センターの機能を拡大する努力と、一般市民へのコミュニケーションと啓発も続けられています。

中央アフリカ共和国はスクリーニングを実施し、全ての警告事項を調査しています。国家緊急対策センターが発足し、国家としての戦略的対応準備と計画が策定されています。

コンゴ民主共和国は、空港、海港、国境エリアを含む42の入国地点でスクリーニングを継続しています。疑い症例からサンプルが採取されましたが、スーダン型エボラウイルス病は陰性でした。保健省は、リスクの高い保健地域に派遣された全スタッフに対して、サーベイランス、症例管理、IPCのトレーニングを行っています。

エチオピアは2022年9月から警戒態勢に入っています。保健省は、準備対応能力を高めるための現状の課題と問題点を明らかにするため、SUDV準備対応能力評価を実施している最中です。国際空港では、スクリーニング活動が継続されています。

ケニアはシミュレーション演習に参加する予定です。さらに、国及び地域レベルでの症例管理に関する研修会が開催されました。保健省はさらに、準備対応能力評価を完了し、それに対応して十分な対応能力を確保したと報告しており、今後も現状の課題と問題点に対応するための取り組みを拡大していく予定です。

ルワンダでは引き続きスクリーニングを実施し、全ての疑い例を調査しています。同国ではSUDVの症例報告はありません。保健省は、国及び地方レベルでの対応準備活動を取りまとめています。来週、地域医療従事者のための地域ごとのデジタル化サーベイランスに関するワークショップが開催される予定です。また、12月中旬には、リスクの高い地区で、ケースマネジメントと安全で尊厳のある埋葬に関する研修が行われる予定です。

南スーダンはジュバ(Juba)とニムレ(Nimule)でスクリーニングを実施したと報告しています。28件のエボラウイルスの疑い警告は全て調査され、全て陰性でした。迅速対応チームと医療従事者は、来週、ジュバとヤンビオ(Yambio)で検査手順の訓練を受けます。

タンザニア連合共和国は、過去週間、コールセンターを補強し、入国地点でのスクリーニングを増やすことで、準備対応活動を充実しています。全てのエボラウイルスの疑い警告は調査され、全例陰性です。

 12月6日、WHOアフリカ地域事務局は、アフリカ疾病管理予防センター、西アフリカ保健機関、米国疾病管理予防センター、英国健康安全保障局、ロバート・コッホ研究所、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団と共同で、公衆衛生緊急事態に対応するための準備態勢を強化すべく、2日間の公衆衛生緊急オペレーションセンター(PHEOC)シミュレーション訓練をWHOアフリカ地域の36か国と実施しました。

WHOによるリスク評価

2022年11月4日、WHOは本事象のリスク評価を、国レベルでは高から極めて高に、地域レベルでは低から高に修正しましたが、世界レベルではリスクは低のままでした。2022年12月8日現在、WHOのリスク評価は変更されていません。
 
今後、入手可能かつ共有された情報に基づき、継続的にリスク評価が実施される予定です。
 

WHOからのアドバイス

SUDV感染症の発生をうまくコントロールするには、症例管理、コミュニティーとの連携、サーベイランスと接触者追跡、検査能力の強化、安全で尊厳ある埋葬など、一連の介入策を実施することが重要です。
 
医療従事者は、想定される診断にかかわらず、患者をケアする際には常に標準的な予防策を講ずる必要があります。医療施設がアウトブレイクを拡大させるリスクを減らすために、医療におけるIPC対策(例:手指衛生、医療従事者のトレーニング、適切な個人防護具(PPE)供給、廃棄物管理、環境洗浄、消毒など)の実施と、その継続的モニタリングと監督が必要です。
 
安全で尊厳ある埋葬の確保、コミュニティ内での適切なWASH施設、手指衛生に関する知識、安全な廃棄物管理などIPCの支援、そして、コミュニティの関与と社会動員は、継続的な感染の予防と軽減に不可欠である。
 
患者が特定された場合、早期に診断し、早期に支持療法を開始することで、生存率が著しく向上することが示されています。現在、SUDVの治療薬はまだ存在しませんが、治療薬の候補はあり、無作為化比較試験で使用される予定です。 SUDV患者のケアは、訓練を受けた医療従事者がいる、安全に配慮した設計のなされた隔離および治療・ケアセンターでの実施が求められます。
 
ウガンダと近隣諸国の間では国境を越えた移動が多いため、国際的な感染拡大のリスクを軽減するために、入国地点での積極的な監視体制を確立することが発生時の対応に不可欠な要素となっています。
 
SUDVに対して認可されたワクチンはありませんが、試験的に使用される予定のワクチン候補はあります。
 
WHOは、今回のスーダン型エボラウイルス病の流行に関する入手可能な情報に基づき、ウガンダへの渡航や貿易を制限しないよう助言しています。

出典

Ebola disease caused by Sudan ebolavirus – Uganda
Disease Outbreak News 8 December 2022
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2022-DON428