新型コロナウイルス感染症に係る世界の状況報告(更新94)

COVID-19 Weekly Epidemiological Update(WHO)2022年12月14日

世界の概況

新規感染者数については、2022年12月5日から12月11日までの週(以下「直近1週間」という。)に3,326,710人と報告され、前週と比較して2%増加し、同等でした(図1及び表1)。新規死亡者数については、直近1週間で9,782人と報告され、前週と比較して10%増加しました。2022年12月11日時点で、全世界の累積感染者数にあっては645,100,674人、累積死亡者数にあっては6,633,463人となります。管轄地域別の新規感染者数については、アフリカ地域で73%、東南アジア地域で33%、欧州地域で11%及び東地中海地域で2%減少しました(西大平洋地域で3%及び北米・中南米地域で27%増加しました。)。管轄地域別の新規死亡者数については、アフリカ地域で975%(部分的に南アフリカからの後ろ向きの報告に起因する。)、北米・中南米地域で37%、東地中海地域で81%及び西太平洋地域で5%増加しました(欧州地域で17%及び東南アジア地域で10%減少しました。)。
 
各国別では、新規感染者数が多い上位5か国は、日本(849,371人、13%増加)、米国(448,634人、50%増加)、韓国(420,392人、13%増加)、フランス(366,699人、5%減少)及びブラジル(194,170人、3%増加)でした。また、直近1週間における新規死亡者数が多い上位5か国は、米国(2,934人、62%増加)、日本(1,358人、28%増加)、ブラジル(603人、5%減少)、フランス(478人、4%増加)及びイタリア(475人、29%減少)でした。
 
報告された新型コロナウイルス感染症における感染者に係る現在の傾向については、複数の国が検体採取方式を積極的に変更し、全体の検査数が減少して結果的に検出される感染者数が減少するため、慎重に解釈する必要があります。多くの国で実施された新型コロナウイルス感染症の有病率調査については、報告された感染者数は集団における真の感染者数より低く見積もられていることが判明しています。さらに、過去の週からのデータについては、各国によって生じた新型コロナウイルス感染症における感染者及び死亡者の変化を後ろ向きに組み込みながら、継続して更新されています。
 
図1 2022年12月11日時点の週別又はWHO管轄地域別の新型コロナウイルス感染者数及び世界の死亡者数の推移
 
表1 2022年12月11日時点におけるWHO管轄地域別の新規又は累積新型コロナウイルス感染者の確定症例数及び死亡者数
 
図2 前週と比較した直近1週間の新型コロナウイルス感染者数の変化率(%)
 
図3 前週と比較した直近1週間の新型コロナウイルス感染症による死亡者数の変化率(%)

新型コロナウイルスの懸念される変異株及び監視中であるオミクロン株の亜系統

懸念される変異株の世界的な拡散及び有病率

世界的に2022年10月24日から11月20日までにおいて、204,995の検体がGISAIDを通じて共有されました。これらの検体のうち204,042の検体がオミクロン株(B.1.1.529系統並びにその亜系統のBA.X系統及び組換え体を指す。以下同じ。)の懸念される変異株(以下「VOC」という。)であり、世界的に報告された検体の99.5%を占めています。
 
疫学的第46週(2022年11月14日から11月20日まで。以下同じ。)において、BA.5系統及びその下位系統が世界的に優勢のままであり(73.7%の有病率)、次にBA.2系統及びその下位系統の有病率が10.4%でした。BA.4系統及びその下位系統の有病率は、減少しており、2.0%を占めています。XBB系統及びその下位系統の有病率については、3.9%であり、増加傾向となります。未指定の検体(オミクロン株と推定されている。)は、疫学的第46週において、GISAIDに提出された検体の9.9%を占めています。
 
オミクロン株の下位系統である変異株の流行は継続して遺伝的多様性を示しており、540を超える下位系統及び61を超える組換え体が生じています。ただし、これら下位系統の一部にあっては継続して有病率が増加しており、その他の下位系統にあっては少数の検体検出に留まります。より関連のある変異株の系統において、特定の置換が蓄積しており、これは収束した進化とされる遺伝的類型です。
 
5つのオミクロン株の亜系統については、関連する遺伝的変異のために監視下にあり、複数の国における有病率又は症例罹患率が増加し、又は継続して影響を及ぼしています。疫学的第46週時点において、監視下にある5つのオミクロン株の亜系統は過去のBA.5下位系統に置換しており、世界的な有病率が63.5%を占めています。当該の亜系統の置換については、その類型が増加率における特定の変異の潜在的な役割を指摘しており、おそらく免疫逃避能の優位性によるものです(図5)。
 
(1)BA.2.75系統
BA.2.75系統については、D339H、G446S、N460K及びQ493R変異があります。スパイクタンパク質に更なる注目すべき変異を伴う2つの注目すべきBA.2.75系統の変異株は、BA.2.75.2系統(BA.2.75系統にR346T、F486S及びD1199変異を伴う。)及びCH.1.1系統(BA.2.75系統にR346T、K444T、L452R及びF486S変異を伴う。)となります。BA.2.75系統は、2021年12月31日に初めて特定され、東南アジア地域の複数の国で拡散し始めました。BA.2.75系統は、出現以降に85か国から報告されています。BA.2.75系統の高い有病率を報告している5か国は、タイ(53.8%)、オーストラリア(25.1%)、マレーシア(22.5%)、中国(18.8%)及びニュージーランド(16.3%)となります。BA.2.75系統は、インド及びバングラデシュで急速に拡散しました。しかし、その後において、BA.2.75系統については、報告された症例罹患の大幅な上昇が示されることはなく、XBB系統に置換されました。現在利用可能な科学的根拠によると、BA.2.75系統は、拡散している国において、他のオミクロン株の変異株と比較して優位に異なる表現型を示していません。
 
(2)BA.5系統
BA.5系統については、R346X、K444X、V445X、N450X又はN460X変異を1つ以上伴っており、ウイルスへの重要な実質的役割(例えば中和化及び増加する感染・伝播性への抵抗)に関与又は保有するとされているため、監視されています。この分類の変異株については、迅速に増加しており、119か国で検出されており、世界的な有病率が15.0%となります。BA.5系統の高い有病率を報告している5か国は、南アフリカ(75.4%)、コスタリカ(70.9%)、ペルー(53.5%)、メキシコ(49.8%)及びブラジル(42.4%)となります。
 
(3)BQ.1系統
更なる置換であるK444T及びN460K変異を伴うBA.5系統の下位系統です。高い有病率を伴うBQ.1系統の下位系統はBQ.1.1系統であり、更なる変異であるR346T変異を伴います。BQ.1系統については、最も増加率の高い変異株の1つであり、90か国に拡散しており、疫学的第46週時点における33.9%の有病率を伴います。BQ.1系統の高い有病率を報告している5か国は、エクアドル(65.5%)、ポルトガル(56.7%)、スペイン(54.1%)、フランス(48.7%)及びコロンビア(46.8%)となります。
 
(4)XBB系統
BA.2.10.1系統及びBA.2.75系統の組換え体であり、2022年8月13日に初めて報告されました。当該の組換え体における関連する変異は、G339H、R346T、L368I、V445P、G446S、N460K、F486S及びF490S変異です。疫学的第46週時点において、XBB系統の世界的な有病率は3.8%であり、70か国で検出されています。XBB系統の高い有病率を伴う5か国は、インド(62.5%)、ドミニカ共和国(48.2%)、シンガポール(47.3%)、マレーシア(40.9%)及びインドネシア(29.3%)となります。
 
(5)BA.2.30.2系統
K444R、N450D、L452M、N460K及びE484R変異を有しています。疫学的第46週時点において、世界的な有病率は0.3%です。高い有病率を伴う国は、アイスランド(4%)、スロベニア(2%)、オーストラリア(1.1%)、コロンビア(0.9%)及び韓国(0.6%)です。
 
 
上記のとおり監視下にあるオミクロン株の亜系統については、複数の関連する変異を共有していますが、異なる地理的拡散を示しています。BA.2.75系統及びXBB系統が出現し、主に東南アジア地域及び西太平洋地域の国々で有病率が増加しました。当該の2つの変異株の有病率が緩徐に増加していますが、現在のデータが新たな感染増加との関連性を一貫して示唆していません。BA.2.75系統及びXBB系統の同時流行が複数の国々で発生しています。BQ.1系統及びBA.5系統(5の変異を伴う。)が出現しており、有病率が増加し、迅速に多くの国々へ拡散しています。
 
免疫逃避能(一連の新しいオミクロン株の下位系統である変異株に関連して上昇した。)が新しい感染の波を起こすために十分か否かについては、地域における免疫の状況、過去のオミクロン株の波の規模及び時期、新型コロナウイルスワクチン接種率に依存すると推測されます。更なる研究が必要である一方、現在のデータはBA.2.75系統、BA.5系統(5の変異を伴う。)、BQ.1系統及びXBB系統の重症度における違いがあると示唆していません。
 
図4 監視下にある選択されたオミクロン株の亜系統の存在及び割合(2022年10月24日から11月20日まで)