コレラ - 世界の状況

Disease outbreak news  2022年12月16日

現在の状況

2021年以降、世界的にコレラ患者数と発生地域の地理的分布が拡大しています。2021年にはWHOの事務局が管轄するアフリカと東地中海の加盟国中23カ国がコレラの発生を報告しました。この拡大傾向は2022年に入っても続き、29カ国以上(図1)がコレラ症例または流行を報告しています。2022年11月30日現在、このうち16カ国が流行の長期化を報告しています。これらの国の多くは、例年よりも多くの患者数および致死率(以下、「CFR」という。)を報告しています。2021年に世界で報告されたコレラの平均CFRは1.9%(アフリカでは2.9%)で、許容範囲(1%未満)を大きく上回り、過去10年あまりで最も高値を記録しました。
 
今年は、数年間減少していたコレラ患者数およびコレラ関連死亡者数が世界的に急増しました。特に懸念されるのは、2021年にコレラ患者の発生がなかった13カ国での新たな患者の発生です。この国々の中には3~30年という長期にわたりコレラの発生を報告しておらず、コレラ常在国とみなされていない国も含まれています。現在の状況は、1961年から続くコレラ流行の第7波の再燃を意味しています。
 
複数のコレラ感染が同時に進行し、複雑な人道的危機に直面している国々や脆弱な医療制度、気候変動による影響が重なり、発生時の対応に支障をきたし、さらに他の国々へ感染が拡大する危険性があります。経口コレラワクチンなどの資源が世界的に不足していることに加え、公衆衛生や医療従事者が手一杯で、複数の病気の発生に同時に対処していることが多いため、複数かつ同時の発生に対応する全体的な能力が損なわれています。

コレラの疫学

コレラは急性下痢性感染症で、重症化すると極端な水様性下痢と致命的な脱水症状を特徴とします。コレラ菌(Vibrio cholerae)に汚染された食物や水の摂取によって引き起こされます。潜伏期間は短く、2時間から5日程度です。ほとんどの人は症状が出ないか、軽い症状で済みますが、20%弱の人は中等度または重度の脱水を伴う急性水様性下痢を発症し、体液が急速に失われ、脱水症状に陥り、死に至る危険性があります。コレラは、経口補水液で簡単に治療できるにもかかわらず、適切な医療を受けることができない脆弱な人々における高い罹患率と死亡率のため、依然として世界的な脅威となっています。
 
過去2世紀の間に、7回のコレラの大流行が記録されています。現在も続いている第7波は、主に1961年から1974年にかけて発生したと考えられています。この間、多くの国がコレラの再流行に伴い、コレラ常在国へと転じました。1990年代後半になると、世界的にコレラの発生は大きく減少しましたが、アフリカやアジアの一部では依然としてコレラの流行が続いています。
 
コレラの症例はほとんど報告されていないため、世界的な蔓延状況は不明ですが、これまでの研究では、毎年290万人の患者が発生し、95,000人が死亡していると推定されています。


図-1:2022年1月1日から11月30日までにWHOに報告された人口10万人当たりのコレラ患者発生率(急性水様性下痢症(AWD)の推定例も含む)。
注:白抜きの国は、2022年にコレラ患者が報告されていません。


図2:WHOに報告されたコレラ患者*の年別・大陸別、世界における致死率、1989-2021年**。
* 2017年および2019年、イエメンはコレラ患者全体の84%および93%をそれぞれ占めた(週次疫学レポート2018、2020年)。
**2022年のデータは、(i)不完全(2022年11月30日までのデータ)、(ii)暫定的な推定のため、流行曲線に含まれていません。WHOへの国別患者数の正式な報告は年末に予定されています。
留意点:コレラに関するデータは不完全であることが多く、過少報告もよく見られます。また、コレラに関する報告システムを持たない国もあります。このため、コレラが発生している国の完全なリストや、正確な患者数および死亡数を提供することができません。

現在の流行の要因と対応に影響を及ぼす課題

現在のコレラ大発生を抑制・収束させるための主な手段と課題を以下にまとめました。しかし、コレラ発生を防ぐための資金調達の必要性および資金不足に対処することは非常に重要です。水と衛生のインフラへの大規模な投資は、ヨーロッパとアメリカ大陸でのコレラの撲滅に大きく貢献しました。大規模な投資により、コレラの予防と制御のための水・衛生・保健(WASH)活動を支援する必要があります。このような支援は、社会的背景を考慮し、入手可能なエビデンスとコレラ伝播の方式を理解したうえで支援されるべきです。
 
気候変動 - 広範な洪水と干ばつ
2022年にコレラの発生が報告された国のうち、多くはサイクロン(モザンビーク、マラウイ)、洪水(パキスタン、ナイジェリア)、干ばつ(アフリカの角の国々)などの自然災害に見舞われています。大規模な洪水や例年以上の規模のハリケーンシーズンは、流行の深刻さを高めるとともに、流行は地域的な広がりを見せる傾向があります。今後予想される雨季やサイクロンシーズンは、例年より激しいものと予測されており、それに伴い南部アフリカにコレラが拡大する可能性があります。アメリカ大陸の例年を上回る規模のハリケーンシーズンは、カリブ海と中央アメリカの国々に影響を及ぼし、大規模な洪水を引き起こしています。モンスーン後および洪水後の季節は、通常、南アジアでのコレラのピークと関連しています。さらに、干ばつの被害による、水へのアクセスの悪さ、難民や遊牧民の孤立化、都市部における仮設居住地の拡大により、多くの国でコレラの発生につながりました。
 
人道危機、政情不安、紛争
紛争、政情不安などの人道危機的状況の拡大に加え、発展途上であることにより、WHOの全地域でコレラの危険にさらされている人口は増加しています。発生が報告されている国のうち、アフガニスタン・イスラム共和国 、カメルーン共和国、コンゴ民主共和国、ハイチ、イラン・イスラム共和国、ナイジェリア連邦共和国、ソマリア、シリア・アラブ共和国、イエメンの9カ国は流行地で紛争や政治的暴動が発生しています。このうちエチオピア連邦民主共和国とカメルーンの2か国では、現時点では紛争地域にコレラ流行の影響はありませんが、紛争が続いている地域に流行が広がるリスクが高く、対応が複雑化する可能性があります。
 
複数の緊急事態の継続
コレラが発生している複数の国では、サル痘、デング熱、チクングニア熱、はしか、そして今も続く新型コロナウイルス感染症の大流行など、他の複数の病気の発生にも同時に対応している状況です。これは、特に資源が限られている国々では、コレラに対する全体的な対応能力を圧迫することにもなります。
 
サーベイランスの不完全さと遅れ
データの欠如は対応の妨げになります。(1) 全体的に監視システムが不十分な国、(2) 強固な監視システムを持つ国でも、定点観測地からのコレラ報告のみ、またはコレラの報告を全く含まない国、(3) データの共有不足、(4) 人道危機や政情不安定時の監視システムの崩壊、(5) 検査所の確認能力不足や不均一な症例定義の使用(例:コレラと急性水様下痢)などが、データの不足につながる原因として挙げられます。
 
医療用品・医薬品のサプライチェーン
この報告書作成時点では、コレラキットは世界的に供給不足となっており、供給側は需要に応えるために懸命に取り組んでいます。医療物資の供給の遅れや不足は、予防可能かつ回避可能な死亡を止められなくなる可能性があります。WHOは世界的な連携を推進し、代替供給源を求めていますが、すぐに利用できるわけではありません。
 
医療資源の不足
発生件数と地理的に広範囲にわたる流行発生から、医療機関が複数の部門にまたがる包括的な対応を行うには限界があります。同時に発生する高リスクかつ大規模で集団的な流行やその他の公衆衛生・人道上の危機は、人的金銭的資源をさらに圧迫し、対応能力を低下させます。さらに、人道危機によって優秀で経験値の高い医療従事者が国を出たり、ワクチン接種などの日常的な医療サービスが途切れることでワクチンで予防できる病気の(再)発生が怒っています。また、医療施設の破壊や医療施設へのアクセスが困難になったり、医療従事者に対する暴力が流行発生時の対応活動に支障をきたしています。
 
経口コレラワクチンの確保
 経口コレラワクチンの世界的な備蓄は、予防接種2回分の供給として計算すると、現在供給希望を出したすべての国への分配を満たすには数が不足しています。その結果、2022年10月20日、国際調整グループ(以下、「ICG」という。)メンバーであるIFRC、MSF、ユニセフ、WHOは、すべての対応的経口コレラワクチンキャンペーンを一時的に1回分に制限するという前例のない決定を下しました。経口コレラワクチンの生産は継続的に行われており、毎月約250万回分が生産されています。ワクチン製造会社は現在可能な最大生産数を生産しているため、生産量を増やす短期的な解決策はありません。2回投与ではなく1回投与にすることで、短期的にはより多くの人を保護することができますが、この戦略には限界があり、免疫がどの程度持続するのかは不明です。長期的に問題を解決するためには、世界的なワクチンの増産が必要です。2013年に世界的な備蓄が構築されて以来、5,000万回分以上の経口コレラワクチンが、大規模接種キャンペーンを通じて様々な状況下で使用され、成功を収めています。

地域別概要

下の表では、モニタリング中の国の一部について説明しています。これらには、最近コレラの発生が報告された国、発生の制御に課題があり継続的に患者数の増加が確認されている国、制御に課題があり長期にわたって感染が発生している国、2022年に発生を繰り返している国、脆弱な人々が多い国、治安の悪さや紛争によって対応に支障が生じている国などが含まれています。
地域 地域でのリスクと課題 監視対象国 背景
西、中央、南部アフリカ 複数の流行地から高いCFR(2.5%)が報告されている。
 流行地の多くは治安が悪く、住民の医療へのアクセスや医療の提供が制限されている。
 治安の悪さから対応能力に限界があるチャド湖流域では、地域的な広がりのリスクが高い。
 気候変動により、ある地域では干ばつが、他の地域では洪水が発生し、その結果、人口移動が増加し、清潔な水へのアクセスが減少している。
 現在も継続している他の公衆衛生上の緊急事態(新型コロナウイルス感染症、サル痘、栄養失調)により、人的資源がひっ迫している。
ナイジェリア連邦共和国(北東部) 最近の大規模な洪水は36州のうち35州に影響を与え、140万人が避難し、コレラ患者が増加し、CFRが高くなっている。
 北東部における複数年にわたる人道的危機により、国内避難民(IDP)が、衛生や公衆衛生が十分でない混雑した環境に避難している。
カメルーン共和国 南部で発生した1年以上続く長期的流行が地理的に拡大し、高いCFRを保っている。
 極北州の難民・国内避難民キャンプがある2つの地域で感染確定例が報告されている。
マラウイ共和国 最近の大規模な洪水が南部を襲い、27,500人以上が避難し、いくつかの学校や医療施設が破壊された。その結果、国内の全地区に広がったコレラの発生により、2022年12月12日現在、合計12,556人が影響を受け、363人が死亡、CFRは3.0%となっている。
コンゴ民主共和国 コレラは東部で広く流行しており、季節性がある。コレラ発生は年末にかけての大雨の影響を受ける。
 2022年は流行地ではない国の中心部に向かって感染が拡大し、高いCFRを保っている。
 現在、紛争の継続により、北キヴ州のIDPキャンプで発生が確認されている。
アフリカの角 ケニア、エチオピア、ソマリアの3カ国で3,600万人が干ばつの影響を受け、気候変動による難民や国内避難民が増加している。
 流行のある国内および近隣諸国への拡散リスクが高い。
ケニア共和国 2022年の2回目の流行は、現在ナイロビを含む10郡で発生中で、当初は祭事で感染者と食事を共にすることで拡大した。
 ソマリアとの国境に近いガリッサ郡の難民キャンプやIOPキャンプから感染者が報告されている。干ばつが続いているため、ソマリアとの国境を越えての人口移動が増加している。
エチオピア連邦民主共和国 最近の流行は、ソマリアと国境を接する地域を含む2つの地域(患者数の増加、高いCFR)で報告されている。
 紛争が続く北東地域へ拡大するリスクが継続している。
 干ばつによる人口移動が増加している。
ソマリア連邦共和国 発生が長期化し、患者数は依然として増加、港湾都市キスマヨを含む地理的な広がりも続いている。
 深刻な干ばつと深刻な急性栄養失調の蔓延という状況下で発生した流行という特徴がある。
カリブ海 ハイチからドミニカ共和国、そして地域内の他の国へと人が絶えず移動しているため、イスパニョーラ島の内外に感染が拡大する可能性が高くなる。
 この地域のほとんどの国や地域は、コレラの発生を検知し対応する能力はあるが同時に発生している緊急事態により、これらの能力はひっ迫状態となっている
ハイチ共和国 現在、ハイチは、武装勢力による暴動、社会不安、治安悪化、燃料や物資の不足など、複数の脅威に同時にさらされている。このため、人口の大部分は、種々の公衆衛生事象に対して非常に脆弱な状態にある。
 医療施設では、コレラキット、経口補水液、乳酸リンゲル液、コレラ患者用ベッド、点滴セット、適切な抗生物質などの物資の深刻な不足に直面。2022年にコレラが発生した国の増加により、コレラ発生時の対応に必要な重要物資が世界的に不足している。
 ハイチでは発生が急速に進んでおり、2022年12月3日現在、10のすべての県で疑い例が報告され、そのうち8つの県で確定例が報告されている。現在の上記のような課題は、未発見の症例や 対応作業の遅れのリスクをさらに高めている。
 2022年11月21日現在、ドミニカ共和国公衆衛生省は、ハイチからの輸入コレラ患者を合計2名確認したと報告している。
中東 感染国内でのさらなる感染拡大および感染のない国への拡大リスクが非常に高い。
 サーベイランスシステムの脆弱性など、サーベイランスデータの解釈を困難にする課題がある。(主要観測地のみでのサーベイランス、病院主導のサーベイランス)。
 複合的な人道的危機によるスタッフの能力低下、経験値の高い医療従事者の国外流出。
 この地域では紛争、経済危機、人口流出が続いており、複数の拠点・当局との連携が困難である。
 洪水と干ばつの両方の異常気象が報告されている。
シリア・アラブ共和国 全国的な流行が続いており、患者数が増加。これは20年以上、少なくとも2000年以降ぶりに報告されたコレラの大流行である。複雑な人道的環境であり、検査施設やサーベイランス能力などの課題がある。
レバノン共和国 レバノンでは、1993年以降30年以上、コレラ患者が報告されていなかったが、今回の発生で国内の全州で患者が報告されている。
 経済危機が続いており、医療制度は非常に脆弱で、清潔な水や衛生設備へのアクセスも不十分。
東南アジア 感染が地域内の他国に輸出されるリスクは引き続き存在している。
 サイクロンシーズンとラニーニャ現象、一部の国ではモンスーン後の感染ピークが流行を悪化させている。
 同時多発的な疾病の発生、新型コロナウイルス感染症パンデミックへの継続的対応、人道的危機のすべてが、サーベイランスとリスク評価の能力に影響を及ぼしている。
 本質的な感染要因(安全な水へのアクセス、野外排泄、医療へのアクセス、貧困/脆弱性、気候変動による悪化)は依然として非常に多く存在する。
バングラデシュ人民共和国 2000年以降で2番目に大きな流行で、モンスーン前の季節に発生。モンスーン終期に、より大きな流行が発生する可能性がある。
 コックスバザールでは、特にロヒンギャ難民/強制移住ミャンマー国民(FOMN)の間で、最近のキャンプでのワクチンキャンペーンにもかかわらず、少ないとはいえ継続的に感染が発生し、理由は未解明。
西太平洋 最近発生している台風が流行の拡大に寄与している可能性がある。
 安全な飲料水や適切な衛生設備へのアクセスには地域による格差がある。
フィリピン共和国 今年、東・西ビサヤ、カラバルソン、ダバオの各地域でコレラの発生が局所的に報告されている。
 保健省および地方自治体が報告された集団感染に対応している。
 
 

公衆衛生上の取り組み

WHOは、世界、国、地域レベルのパートナーと協力し、以下のコレラ発生対応活動において加盟国を支援しています。
 
連携
・コレラ対策国際委員会(GTFCC)の連携を通じた技術的専門知識の交換、およびコレラ関連活動に関する協力の場を提供し、当該国のコレラ予防・制御能力を向上します。
・現在も続くのすべての流行に対する技術支援の提供(臨床検査施設、症例管理、経口コレラワクチン、WASH)をします。
・ユニセフや国境なき医師団(MSF)など主要なパートナー機関と協力し、物資の供給と適切な利用環境を整えます。
・コレラ流行の国際的モニタリングの支援、各国への技術支援の提供、データ収集と報告の向上、支援活動の強化、とりわけ治療と診断のために必要な医療・非医療品を各国へ提供するために人的・金銭的資源を活用します。
・コレラ流行の世界的なモニタリングの支援、各国への技術支援の提供、データ収集と報告の強化、支援活動の強化、とりわけ症例管理と診断のために必要な医療・非医療品を各国へ提供するためにリソースを活用します。
・GAVI、GOARN、および待機しているパートナー機関を通じた専門家の派遣を支援します。
 
サーベイランス
・診断基準の見直し、迅速診断キットの使用、検体の収集と輸送、コレラ菌を培養する検査施設の性能の増強など、サーベイランスの向上をします。
 
ワクチン
・供給が急減している状況下で、ワクチン接種の対象者を見極め、ICG機構を通じてワクチンを申請するための指針を示します。
・経口コレラワクチンの生産量を増やし、新たなワクチン製造業者を巻き込むための支援活動を実施します。
・ワクチン接種が最も必要とされる地域・流行の中心を見極めるために、各国と協力します。
 
治療
・コレラ治療センター(CTC)およびコレラ治療ユニット(CTU))のような専用医療施設の設置、医療従事者の研修、技術指導の提供による治療の向上と患者の治療へのアクセスの向上すること。
 
感染予防と制御(IPC)
・国、地域、世界レベルでのコレラ予防と制御を支援するための啓もう活動や資源動員活動の実施すること。
 
リスクコミュニケーションとコミュニティ活動(RCCE)
・加盟国やパートナー機関と緊密に連携し、地域の慣習や状況に合わせたリスクコミュニケーションとコミュニティ活動の計画と戦略を向上し、ワクチン接種や安全な食品・水・衛生習慣の確保など適切な予防措置に向けての行動変容と受容を促進します。
・コレラの病態、症状、関連するリスク、予防措置、症状が出た場合に治療を受けるべき時期について、地域社会のリスク認識と知識を高めるための支援を提供します。
 
水・衛生・保健(WASH)
 加盟国やパートナー機関と緊密に連携し、IPCや水質モニタリングに関する指針など、多部門の枠組みを通じて水・衛生・公衆衛生のシステムを向上します。
・効果的なコレラ対策戦略の実施と進捗状況のモニタリングのために、各国を支援します。
 
オペレーション、サポート、ロジスティクス(OSL)
・コレラキットの確保、その他のWASH用品の調達、大規模な物品調達経路の確立のため、供給業者と緊密に連携しています。
 

WHOのリスク評価

2022年10月26日、WHOは世界レベルでのコレラのリスクを非常に高いと評価し、コレラは公衆衛生に対する世界的な脅威であり、不平等さと社会の発展の遅れをはかる指標であるとしました。世界的にコレラの発生報告が増加しており、2022年には主にWHOアフリカ地域と東地中海地域の29カ国がWHOに発生を報告し、その多くが例年より高い患者数と致死率(CFR)を報告しています。
 
 いくつかの国では、医療制度が脆弱で、清潔な水や衛生設備へのアクセスが難しく、こうした感染症発生に対応する能力が不十分です。また、複雑な人道的危機に陥っている国もあります。さらに、気候変動や 国の開発の遅れも、感染症の発生や国境を越えた人口移動の一因となっています。人口の移動は、新型コロナウイルス感染症の大流行後の世界的な旅行の増加とともに、国際的な感染拡大のリスクをさらに高めています。
 
WHOの全地域で同時に発生している複数の流行が、疫病への対応能力をひっ迫させています。コレラの発生が長引くと、公衆衛生に対応する人員を消耗させ、資源も失われていくことになります。
 
経口コレラワクチンの世界的な不足により、ICGは最近、アウトブレイク対応のための2回目の感染発生時の対応的ワクチン戦略を一時的に停止するという前例のない決定を下しました。また、医療物資の提供の大幅な遅れと不足により、予防可能かつ回避可能な死亡が発生する可能性があります。

WHOからのアドバイス

WHOは、コレラ患者の適切かつ迅速な症例管理、安全な飲料水と衛生設備へのアクセスの向上、医療施設における感染予防と管理の改善を推奨しています。これらの対策に加え、感染の発生した地域社会における予防的衛生習慣と食品の安全性を促進することが、コレラを抑制する最も効果的な手段です。行動変容と適切な予防措置の導入を促すためには、効果的なリスクコミュニケーションと地域社会の連携戦略が必要です。
 
経口コレラワクチンは、水と衛生の改善と合わせて、コレラ発生の高リスク地域での予防のために使用されるべきです。
 
WHOは加盟国に対し、コレラが疑われる症例を早期発見、適切な治療を提供し、その拡大を防止するために、特に地域レベルでコレラのサーベイランスを向上・維持するよう勧告しています。迅速かつ適切な治療により、患者のCFRは1%未満に抑えられます。
 
WHOは、現在入手可能な情報に基づき、加盟国に対していかなる渡航・貿易制限も推奨していません。しかし、この流行は国境を越えた移動が多い国境地域にも影響を及ぼすため、WHOは加盟国に対し、国境を越えた広がりを迅速に把握し抑え込むため、組織のあらゆるレベルにわたる協力と定期的な情報共有を確保するよう奨励しています。

出典

Cholera – Global situation
WHO Desease Outbreak News 16 December 2022
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2022-DON426