鳥インフルエンザA(H5N1)-カンボジア王国
Disease outbreak news 2023年11月29日
発生状況一覧
2023年11月24日から25日にかけて、カンボジア王国(以下、「カンボジア」という。)保健省はWHOに対し、カンポット(Kampot)州の村でインフルエンザA(H5N1)感染例2例を確認したと通知しました。患者は2例とも女性で、1例は20~25歳、もう1例は5歳未満でした。最初に報告された患者は、発熱、息切れ、咳の症状が出てから4日後に公立の病院を受診しています。検体採取の結果インフルエンザA(H5N1)陽性が確認され、入院中に死亡しました。2番目に報告された患者は、最初の患者が確認されたことを受け、公衆衛生当局がサーベイランスを強化している中で発見されています。この患者は発熱、咳、発疹があり、現在病院で治療を受けています。疫学的調査によると、どちらの患者も発症の前月までに、裏庭で飼育する家禽類との接触が報告され、この家禽類の一部は病気あるいは死亡が確認されています。保健省の国および地域迅速対応チームは、感染源を調査し、追加症例に対する積極的なサーベイランス、モニタリングのための濃厚接触者の特定、地域社会での感染を予防するための健康教育キャンペーンの実施などを含め、これらの対応に限られない幅広い活動を調整しています。カンボジアでは今年、合計6件のインフルエンザA(H5N1)の症例が報告されています。ヒトにおけるインフルエンザA(H5N1)感染は、重篤な疾患を引き起こす可能性があり、死亡率も高く、国際保健規則(2005年)により通知が義務付けられています。
発生の概要
カンボジア保健省は、2023年11月24日から25日にかけてインフルエンザA(H5N1)のヒト感染例が2例確認されたとWHOに通知しました。患者はカンポット州の村に在住する者で二人とも同じ村で居住していました。患者は2例とも女性で、1例は20~25歳、もう1例は5歳未満でした。
最初に報告された症例は、2023年11月19日に発熱、咳、息切れを発症し、数日間自宅で療養した後、11月23日に病院を受診しました。検体は病院での採取後、国立公衆衛生研究所(National Institute of Public Health)に輸送され、RT-qPCR法によりインフルエンザA(H5N1)が確認され、カンボジア国立パスツール研究所(Institute Pasteur du Cambodge)にてインフルエンザA(H5N1)であると確定されました。この患者は病院に入院して集中治療を受けていましたが、2023年11月26日に死亡しました。2例目の患者は、最初に報告された患者の発生を受け強化された積極的サーベイランスの中で、発熱、咳、発疹などの臨床症状を示す症例が追加で報告されたため、検出されました。この患者は、2023年11月25日に病院に搬送され、国立公衆衛生研究所でRT-qPCR法によりインフルエンザA(H5N1)陽性となり、カンボジア国立パスツール研究所で確定されました。患者は現在、院内の呼吸器病棟にある隔離室に入院し、加療中です。疫学的調査によると、どちらの患者も過去1ヵ月間に病死した家禽類との接触が確認されています。二人の患者は同じ村に住んでいたこと以外、疫学的関連性はまだ確認されていません。
研究機関の調査によると、ウイルスは、系統学的解析で示されたように、H5クレード2.3.2.1cに属し、2013-2014年シーズンからカンボジアと東南アジアで流行しているウイルスに近い類似性を持っていると明らかになりました。この配列は、2023年10月に報告された2例のヒト感染症例のウイルスと最も近いクラスターを形成しています。
最初に報告された症例は、2023年11月19日に発熱、咳、息切れを発症し、数日間自宅で療養した後、11月23日に病院を受診しました。検体は病院での採取後、国立公衆衛生研究所(National Institute of Public Health)に輸送され、RT-qPCR法によりインフルエンザA(H5N1)が確認され、カンボジア国立パスツール研究所(Institute Pasteur du Cambodge)にてインフルエンザA(H5N1)であると確定されました。この患者は病院に入院して集中治療を受けていましたが、2023年11月26日に死亡しました。2例目の患者は、最初に報告された患者の発生を受け強化された積極的サーベイランスの中で、発熱、咳、発疹などの臨床症状を示す症例が追加で報告されたため、検出されました。この患者は、2023年11月25日に病院に搬送され、国立公衆衛生研究所でRT-qPCR法によりインフルエンザA(H5N1)陽性となり、カンボジア国立パスツール研究所で確定されました。患者は現在、院内の呼吸器病棟にある隔離室に入院し、加療中です。疫学的調査によると、どちらの患者も過去1ヵ月間に病死した家禽類との接触が確認されています。二人の患者は同じ村に住んでいたこと以外、疫学的関連性はまだ確認されていません。
研究機関の調査によると、ウイルスは、系統学的解析で示されたように、H5クレード2.3.2.1cに属し、2013-2014年シーズンからカンボジアと東南アジアで流行しているウイルスに近い類似性を持っていると明らかになりました。この配列は、2023年10月に報告された2例のヒト感染症例のウイルスと最も近いクラスターを形成しています。
鳥インフルエンザAウイルスの疫学
動物性インフルエンザウイルスは通常、動物の間で流行していますが、ヒトにも感染することがあります。ヒトへの感染は主に、感染した動物や汚染された環境との直接接触によって起こります。元々の宿主によって、A型インフルエンザウイルスは鳥インフルエンザウイルス、豚インフルエンザウイルス、その他の動物インフルエンザウイルスに分類されます。
鳥インフルエンザウイルス、豚インフルエンザウイルス、その他の動物インフルエンザウイルスがヒトに感染すると、軽度の上気道感染からより重篤な疾患まで様々な疾患を引き起こす可能性があり、致死的な場合もあります。結膜炎、胃腸症状、脳炎、脳症も報告されています。また、検体が採取される数日前に感染した鳥に接触していた無症状の人からもインフルエンザA(H5N1)ウイルスが検出された記録もあります。
ヒトのインフルエンザ感染を診断するには、臨床検査が必要です。WHOは、分子生物学的手法、例えば逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いた人獣共通感染症インフルエンザの検出に関する技術ガイダンス指針を定期的に更新しています。抗ウイルス剤では、特にノイラミニダーゼ阻害剤(オセルタミビル、ザナミビル)が、ウイルスが複製存続期間を短縮し、一部の症例では生存率を改善することが示唆されています。
今回確認された症例は、2023年にカンボジアから報告された5例目と6例目のインフルエンザA(H5N1)のヒト感染症例であり、2023年に報告された4例目の死亡症例となりました。2003年から現在までに、カンボジアから報告されたインフルエンザA(H5N1)のヒト感染症例は62例で、うち41例が死亡しています。
鳥インフルエンザウイルス、豚インフルエンザウイルス、その他の動物インフルエンザウイルスがヒトに感染すると、軽度の上気道感染からより重篤な疾患まで様々な疾患を引き起こす可能性があり、致死的な場合もあります。結膜炎、胃腸症状、脳炎、脳症も報告されています。また、検体が採取される数日前に感染した鳥に接触していた無症状の人からもインフルエンザA(H5N1)ウイルスが検出された記録もあります。
ヒトのインフルエンザ感染を診断するには、臨床検査が必要です。WHOは、分子生物学的手法、例えば逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いた人獣共通感染症インフルエンザの検出に関する技術ガイダンス指針を定期的に更新しています。抗ウイルス剤では、特にノイラミニダーゼ阻害剤(オセルタミビル、ザナミビル)が、ウイルスが複製存続期間を短縮し、一部の症例では生存率を改善することが示唆されています。
今回確認された症例は、2023年にカンボジアから報告された5例目と6例目のインフルエンザA(H5N1)のヒト感染症例であり、2023年に報告された4例目の死亡症例となりました。2003年から現在までに、カンボジアから報告されたインフルエンザA(H5N1)のヒト感染症例は62例で、うち41例が死亡しています。
公衆衛生上の取り組み
保健省の国および地域迅速対応チームは、農林水産省と環境省の支援を受け、カンポット州における鳥インフルエンザ発生について、さらには疑い例や接触者の調査、家々の家禽からのサンプル採取と検査、地域社会での感染予防のための健康教育キャンペーンなど、詳細な調査を開始し、調整を行っています。
WHOによるリスク評価
2003年から2023年11月27日までに、インフルエンザA(H5N1)に感染したヒトの症例が、世界23カ国から合計882例報告され、うち461例が死亡しています。鳥インフルエンザA(H5N1)にヒトが感染したほぼすべての症例は、感染した鳥(生死問わず)、あるいはインフルエンザA(H5N1)に汚染された環境との濃厚接触に起因しています。これまでの情報によると、インフルエンザA(H5N1)ウイルスはヒトには感染しにくく、ヒトからヒトへの感染は稀であると言えます。一方、ヒトに感染すると重症化する可能性があり、死亡率も高くなっています。特にカンボジアの農村部では、家禽の間でウイルスが流行し続けているため、今後も散発的なヒト感染例が発生する可能性があります。
今回の2例では、ヒトからヒトへの感染は否定できないものの、病気の家禽及び死んだ家禽から別々にウイルスに暴露された可能性が高いと考えられます。
過去には、医療従事者を含む小規模なインフルエンザA(H5)ウイルス感染のクラスターが報告されたことがありますが、持続的なヒトからヒトへの感染のエビデンスはありません。入手可能な疫学的およびウイルス学的知見から考えるに、インフルエンザA(H5N1)ウイルスがヒトの間で感染を持続させる能力は獲得していないことを示唆しています。したがって、ヒトからヒトへの持続的伝播の可能性は低いと考えられます。これまでの入手可能な情報に基づき、WHOはこのウイルスが一般の人々にもたらすリスクは低いと評価しています。リスク評価は、追加情報が入手可能になれば、必要に応じて見直されます。
疫学的状況の詳細な分析、ヒトおよび家禽の集団における最新のインフルエンザA(H5N1)ウイルスのさらなる特徴づけ、および血清学的調査は、公衆衛生に対する関連リスクを評価し、リスク管理対策を迅速に調整するために不可欠となります。
インフルエンザA(H5N1)に特異的なワクチンはありません。しかし、インフルエンザA(H5)のパンデミックに備えて、ワクチン候補の開発は複数の国で進められています。WHOは、インフルエンザウイルスワクチンの構成に関するWHO協議で年2回選定される人獣共通感染症インフルエンザワクチン候補ウイルス(CVV)のリストの更新を続けています。このCVVのリストはWHOのウェブサイトで入手可能です。さらに、現代の人獣共通感染症ウイルスの遺伝学的および抗原学的特性は、Global influenza programme, human-animal interfaceのウェブサイトで公表されています。
今回の2例では、ヒトからヒトへの感染は否定できないものの、病気の家禽及び死んだ家禽から別々にウイルスに暴露された可能性が高いと考えられます。
過去には、医療従事者を含む小規模なインフルエンザA(H5)ウイルス感染のクラスターが報告されたことがありますが、持続的なヒトからヒトへの感染のエビデンスはありません。入手可能な疫学的およびウイルス学的知見から考えるに、インフルエンザA(H5N1)ウイルスがヒトの間で感染を持続させる能力は獲得していないことを示唆しています。したがって、ヒトからヒトへの持続的伝播の可能性は低いと考えられます。これまでの入手可能な情報に基づき、WHOはこのウイルスが一般の人々にもたらすリスクは低いと評価しています。リスク評価は、追加情報が入手可能になれば、必要に応じて見直されます。
疫学的状況の詳細な分析、ヒトおよび家禽の集団における最新のインフルエンザA(H5N1)ウイルスのさらなる特徴づけ、および血清学的調査は、公衆衛生に対する関連リスクを評価し、リスク管理対策を迅速に調整するために不可欠となります。
インフルエンザA(H5N1)に特異的なワクチンはありません。しかし、インフルエンザA(H5)のパンデミックに備えて、ワクチン候補の開発は複数の国で進められています。WHOは、インフルエンザウイルスワクチンの構成に関するWHO協議で年2回選定される人獣共通感染症インフルエンザワクチン候補ウイルス(CVV)のリストの更新を続けています。このCVVのリストはWHOのウェブサイトで入手可能です。さらに、現代の人獣共通感染症ウイルスの遺伝学的および抗原学的特性は、Global influenza programme, human-animal interfaceのウェブサイトで公表されています。
WHOからのアドバイス
今回の事例をもとに、インフルエンザのサーベイランスと公衆衛生対策に関する現在のWHOの勧告の変更はありません。
ヒトにおける散発的なインフルエンザA(H5N1)症例の報告、哺乳類におけるアウトブレイク、鳥類における広範なウイルスの流行、そしてインフルエンザウイルスの絶え間ない変異を考慮すると、WHOは引き続き、ヒトまたは動物の健康に影響を及ぼす可能性のある新たなインフルエンザウイルスおよび既に流行しているインフルエンザウイルスに関連したウイルス学的、疫学的、臨床的変化を検出・監視するための世界的なサーベイランスと、リスク評価のための迅速なウイルス共有の重要性を強調しています。
一般の人々は、生きた動物や家禽の市場や農場、家禽の糞で汚染された可能性のある物など、リスクの高い環境との接触を避けるべきです。さらに、頻繁に手を洗うか、アルコール手指消毒剤を使用し、手指の衛生を保つことが推奨されます。
リスクのある人を含むすべての人々は、病気の動物や予期せず死んだ動物の事例を直ちに獣医当局に報告すべきで、こうした病気や(あるいは死んだ)家禽や野鳥の摂取は避けるべきです。
インフルエンザに感染している可能性がある鳥に接触したり、汚染された環境にさらされたりして体調不良を感じた人は、速やかに医療機関を受診し、医療従事者に感染の可能性を伝えてください。
WHOは、本件に関する現在の情報に基づき、渡航や貿易の制限の実施はしないよう勧告しています。WHOは、ヒトと動物の接点におけるインフルエンザウイルスの現状から、入国地点での特別な旅行者スクリーニングやその他の制限を行うことは勧めていません。
国際保健規則(IHR2005)の締約国は、新種の亜型を原因とするインフルエンザウイルスによるヒトへの感染が検査機関で確認された場合、直ちにWHOに通知することが義務付けられています。この通知には、発病の証拠となるデータは必要ありません。
ヒトにおける散発的なインフルエンザA(H5N1)症例の報告、哺乳類におけるアウトブレイク、鳥類における広範なウイルスの流行、そしてインフルエンザウイルスの絶え間ない変異を考慮すると、WHOは引き続き、ヒトまたは動物の健康に影響を及ぼす可能性のある新たなインフルエンザウイルスおよび既に流行しているインフルエンザウイルスに関連したウイルス学的、疫学的、臨床的変化を検出・監視するための世界的なサーベイランスと、リスク評価のための迅速なウイルス共有の重要性を強調しています。
一般の人々は、生きた動物や家禽の市場や農場、家禽の糞で汚染された可能性のある物など、リスクの高い環境との接触を避けるべきです。さらに、頻繁に手を洗うか、アルコール手指消毒剤を使用し、手指の衛生を保つことが推奨されます。
リスクのある人を含むすべての人々は、病気の動物や予期せず死んだ動物の事例を直ちに獣医当局に報告すべきで、こうした病気や(あるいは死んだ)家禽や野鳥の摂取は避けるべきです。
インフルエンザに感染している可能性がある鳥に接触したり、汚染された環境にさらされたりして体調不良を感じた人は、速やかに医療機関を受診し、医療従事者に感染の可能性を伝えてください。
WHOは、本件に関する現在の情報に基づき、渡航や貿易の制限の実施はしないよう勧告しています。WHOは、ヒトと動物の接点におけるインフルエンザウイルスの現状から、入国地点での特別な旅行者スクリーニングやその他の制限を行うことは勧めていません。
国際保健規則(IHR2005)の締約国は、新種の亜型を原因とするインフルエンザウイルスによるヒトへの感染が検査機関で確認された場合、直ちにWHOに通知することが義務付けられています。この通知には、発病の証拠となるデータは必要ありません。
出典
Avian Influenza A (H5N1) – Cambodia
Disease Outbreak News 29 November 2023
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2023-DON495
Disease Outbreak News 29 November 2023
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2023-DON495