新型コロナウイルス感染症に係る世界の状況報告(更新97)

COVID-19 Weekly Epidemiological Update(WHO)2023年1月11日

世界の概況

新規感染者数については、2023年1月2日から2023年1月8日までの週(以下「直近1週間」という。)に2,898,151人と報告され、前週と比較して9%減少しました(図1及び表1)。新規死亡者数については、直近1週間で11,134人と報告され、前週と比較して12%減少しました。しかしながら、この傾向については、祝日で1年が終了する期間における多くの国々における検査数の減少及び報告の遅延を加味して解釈する必要があります。それゆえ、本報告で提示されたデータは(特に直近の週については)不完全であり、減少傾向は、祝日で終了する期間の後に提供された更新情報を伴って変化するおそれがあるため、それを加味して解釈する必要があります。
 
過去28日間(2022年12月12日から2023年1月8日まで)の新規感染者数及び死亡者数については、それぞれ13,931,083人及び49,770人であり、過去28日間と比較してそれぞれ10%及び22%の増加です。2023年1月8日時点で、全世界の累積感染者数にあっては659,466,141人、累積死亡者数にあっては6,688,140人となります。
 
管轄地域別の新規感染者数については、欧州地域で36%、東南アジア地域で27%、アフリカ地域で23%、北米・中南米地域で7%及び東地中海地域で1%減少しました(西大平洋地域で1%増加しました。)。管轄地域別の新規死亡者数については、アフリカ地域で53%、欧州地域で34%、東南アジア地域で19%及び北米・中南米地域で3%減少しました(東地中海地域で31%及び西太平洋地域で5%増加しました。)。
 
各国別では、新規感染者数が多い上位5か国は、日本(1,070,496人、13%増加)、米国(462,944人、17%増加)、韓国(403,800人、12%減少)、中国(204,609人、6%減少)及びブラジル(145,933人、29%減少)でした。また、直近1週間における新規死亡者数が多い上位5か国は、米国(2,695人、8%増加)、日本(2,149人、11%増加)、ブラジル(926人、17%減少)、中国(722人、11%増加)及びフランス(621人、22%減少)でした。
 
報告された新型コロナウイルス感染症における感染者に係る現在の傾向については、過去の調査で示されたとおり、世界的な感染及び再感染数の真の値を過小評価しています。それゆえ、複数の国が検体採取方式を積極的に変更し、全体の検査数が減少して結果的に検出される感染者数が減少するため、データを慎重に解釈する必要があります。さらに、過去の週からのデータについては、各国によって生じた新型コロナウイルス感染症における感染者及び死亡者の変化を後ろ向きに組み込みながら、継続して更新されています。
 
図1 2023年1月8日時点の週別又はWHO管轄地域別の新型コロナウイルス感染者数及び世界の死亡者数の推移
 
表1 2023年1月8日時点におけるWHO管轄地域別の新規又は累積新型コロナウイルス感染者の確定症例数及び死亡者数(過去28日間の累積を含む。)
 

新型コロナウイルスの懸念される変異株及び監視中であるオミクロン株の亜系統

懸念される変異株の世界的な拡散及び有病率

世界的に2022年12月9日から2023年1月9日までにおいて、97,693の検体がGISAIDを通じて共有されました。これらの検体のうち97,603の検体がオミクロン株(B.1.1.529系統並びにその亜系統のBA.X系統及び組換え体を指す。以下同じ。)の懸念される変異株(以下「VOC」という。)であり、過去30日間に世界的に報告された検体の99.9%を占めています。
 
疫学的第51週(2022年12月19日から12月25日まで。以下同じ。)において、BA.5系統及びその下位系統が世界的に依然として優勢であり、GISAIDに提出された検体の59.7%(9,685検体)を占めています。BA.2系統及びその下位系統の有病率については、上昇しており、疫学的第51週において世界的に提出された検体の13.6%(2,201検体)による傾向です。BA.4系統及びその下位系統の有病率については、減少しており、疫学的第51週時点で有病率が0.6%となります。残りの3,439検体(21.1%)は、疫学的第51週において未指定又はその他の検体と分類されています。これらについては、オミクロン株の下位系統と推定されていますが、いまだ分類されていません。
 
現在監視下にある6つの変異株が疫学的第51週に提出された検体の76.2%を占めています。監視下にあるこれら6の変異株(有病率)は、BQ.1*系統(53.4%)、BA.5系統(R346X、K444X、V445X、N450D又はN460Xの変異を1つ以上伴う。9.7%。)、BA.2.75*系統(8.1%)、XBB*系統(4.6%)、BA.4.6*系統(0.4%)及びBA.2.3.20*系統(0.1%未満)となります。
 
WHOは、ウイルスの進化に関する技術諮問会議からの助言を伴い、XBB.1.5系統の世界的な迅速リスクアセスメントを行いました。XBB.1.5系統は、XBB系統(2つのBA.2系統の亜系統の組換え体)の亜系統となります。XBB.1.5系統である5,288検体は、世界的に38か国から報告されています。XBB.1.5系統に関するデータについては、詳細には限られています。しかしながら、ある国からの現在利用可能な情報に基づくと、XBB.1.5系統は他の流行しているオミクロン株の亜系統と比較して増加の優位性を伴います。実験結果に基づく抗体の回避性に関する研究については、XBB.1.5系統が過去のオミクロン株の下位系統よりも高い免疫回避性を有することを示唆しています。しかしながら、この知見については、人における疫学的な根拠によっていまだ確定されていません。現時点ではXBB.1.5系統の臨床的な重症度に関する情報がありません。

WHO管轄地域別の概況

アフリカ地域

新規感染者数については、直近1週間で4,581人と報告され、前週と比較して23%減少しました。アフリカ地域内におけるデータが利用可能な50か国の2か国(全体の4%)については、20%以上の新規感染者数の増加が報告され、南アフリカで322%及びモザンビークで161%(69人から180人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で8人と報告され、前週と比較して53%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
レユニオン 2,104人 235人 14%増加
南アフリカ 1,470人 2.5人 322%増加
エチオピア 659人 1.0人未満 27%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
レユニオン 4人 1.0人未満 300%増加
コートジボワール 2人 1.0人未満 100%増加
モーリシャス 1人 1.0人未満 50%減少

 

北米・中南米地域

新規感染者数については、直近1週間で771,400人と報告され、前週と比較して7%減少しました。南北アメリカ地域内におけるデータが入手可能な56か国中の3か国(全体の5%)では、20%以上の新規感染者数の増加が報告され、サン・バルテルミー島で67%(6人から10人)、トリニダード・トバゴで63%(151人から246人)及びガイアナで47%(159人から234人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で4,531人と報告され、前週と比較して3%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
米国 462,944人 139.9人 17%増加
ブラジル 145,933人 68.7人 29%減少
アルゼンチン 40,982人 90.7人 44%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
米国 2,695人 1.0人未満 8%増加
ブラジル 926人 1.0人未満 17%減少
カナダ 189人 1.0人未満 30%減少
 

東地中海地域

新規感染者数については、直近1週間で4,116人と報告され、前週と比較して1%減少しました。東地中海地域内におけるデータが利用可能な22か国中の2か国(全体の9%)では、20%以上の新規感染者数の増加が報告され、イランで63%(409人から668人)及びレバノンで33%(682人から907人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で46人と報告され、前週と比較して31%増加しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
カタール 1,065人 37人 26%減少
レバノン 459人 4.6人 33%増加
イラン 668人   63%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
イラン 21人 1.0人未満 75%増加
サウジアラビア 11人 1.0人未満 10%増加
レバノン 6人 1.0人未満 100%増加

 

欧州地域

新規感染者数については、直近1週間で418,751人と報告され、前週と比較して36%減少しました。欧州地域内におけるデータが利用可能な61か国中の7か国(全体の11%)では、20%以上の新規感染者数の増加が報告され、キルギスで150%(4人から10人)、コソボで49%(35人から52人)、マルタで44%(167人から241人)及びキプロスで(2,602人から3,598人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で3,001人と報告され、前週と比較して34%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
ドイツ 121,007人 145.5人 21%減少
イタリア 86,851人 145.6人 34%減少
フランス 73,186人 112.5人 52%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
フランス 621人 1.0人 22%減少
イタリア 499人 1.0人未満 33%減少
スペイン 318人 1.0人未満 118%増加

 

東南アジア地域

新規感染者数については、直近1週間で5,878人と報告され、前週と比較して27%減少しました。東南アジア地域内におけるデータが利用可能な10か国中の1か国(全体の10%)では、20%以上の新規感染者数の増加が報告され、ブータンで86%(7人から13人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で139人と報告され、前週と比較して19%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
インドネシア 3,365人 1.2人 17%減少    
インド 1,275人 1.0人未満 17%減少
タイ 997人 1.4人 53%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
インドネシア 64人 1.0人未満 22%減少
タイ 58人 1.0人未満 23%減少
インド 15人 1.0人未満 25%増加

 

西太平洋地域

新規感染者数については、直近1週間で1,693,425人と報告され、前週と比較して1%増加しました。西太平洋地域内におけるデータが利用可能な35か国中の5か国(全体の14%)では、20%以上の新規感染者数の増加が報告され、モンゴルで218%(108人から343人)、パラオで67%(3人から5人)及びクック諸島で58%(85人から134人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で3,409人と報告され、前週と比較して5%増加しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
日本 1,070,496人 846.4人 13%増加
韓国 403,800人 787.6人 12%減少
中国 204,609人 13.9人 6%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
日本 2,149人 1.7人 11%増加
中国 722人 1.0人未満 11%増加
韓国 371人 1.0人未満 14%減少

 

入院及び集中治療室入室

疫学的第52週(2022年12月26日から2023年1月1日まで。以下同じ。)において、合計23,509件の新規入院数及び1,133件の新規集中治療室(以下「ICU」という。)入室数が世界的に報告されました。当該のデータについては、暫定的なものであり、新規のデータが利用可能になると、変更となるおそれがあります。さらに、入院データは、報告遅延の対象となります。これらのデータについては、新型コロナウイルスの偶発的な感染による入院及び新型コロナウイルス感染症の疾病化による入院の双方が含まれる可能性があります。
 
疫学的第52週に23か国(10%)が新たな入院に関するデータをWHOへ報告しました。新規入院数に関する高い割合を報告した地域については、欧州地域(23%、14か国)、東地中海地域(18%、4か国)、アフリカ地域(8%、4か国)及び北米・中南米地域(2%、1か国)となります。今日に至るまで東南アジア地域及び西太平洋地域については、疫学的第52週における新たな入院に関するデータを報告していません。
 
WHO管轄6地域全体において、疫学的第52週に合計14か国(6%)が新たなICU入室に関するデータをWHOに報告しました。新たなICU入室に関するデータを報告している国の割合が最も高い地域については、欧州地域(16%、10か国)、東地中海地域(14%、3か国)及び北米・中南米地域(2%、1か国)でした。欧州地域及び東南アジア地域において、今日に至るまでアフリカ地域、東南アジア地域及び西太平洋地域については、疫学的第52週における新たなICU入室に関するデータを報告した国はありません。
 
50件を超える新たな入院数を報告した11か国については、前週と比較して増加傾向が示されました(ポルトガルで14,500%(2件から292件)、ギリシャで22%(1,250件から1,519件)及びウクライナで5%(2,662件から2,801件))増加しました。
 
10件を超える新たなICU入室数を報告した8か国については、4か国が前週と比較して増加傾向を示しました(アイルランドで250%(4件から14件)、オランダで28%(40件から51件)、ギリシャで12%(51件から57件)及びウクライナで2%(118件から120件))。
 
図4 WHOへ週毎に報告された新型コロナウイルス感染症の感染者数、死亡者数、新たな入院数及び新たなICU入室数(2023年1月1日時点)
※直近の数週間は報告遅延の対象のため、減少傾向として解釈する必要はありません。

出典

World Health Organization. “Weekly epidemiological update on COVID-19 – 11 January 2023”.WHO.2023.https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---11-january-2023,(参照2023-01-12).