新型コロナウイルス感染症に係る世界の状況報告(更新98)

COVID-19 Weekly Epidemiological Update(WHO)2023年1月19日

世界の概況

新規感染者数については、2023年1月9日から2023年1月15日までの週(以下「直近1週間」という。)に2,754,445人と報告され、前週と比較して9%減少しました(図1及び表1)。新規死亡者数については、直近1週間で12,923人と報告され、前週と比較して1%未満の増減でした。過去28日間(2022年12月19日から2023年1月15日まで)の新規感染者数及び死亡者数については、それぞれ12,924,951人及び52,987人であり、過去28日間と比較してそれぞれ7%の減少及び20%の増加です。2023年1月15日時点で、全世界の累積感染者数にあっては662,397,498人、累積死亡者数にあっては6,704,460人となります。
 
週及び月毎の傾向については、年末の休暇時期における多くの国々で検査数の減少及び報告の遅延があったことを考慮して慎重に解釈する必要があります。それゆえ、この報告で提示されたデータについては(特に直近数週間)、不完全であり、更新された情報が統合されれば、減少傾向が変わるおそれがあります。
 
本状況報告については、2023年1月15日時点にIHRを通じて中国から報告された感染者数及び死亡者数が含まれています。2022年12月8日から2023年1月12日までの期間に中国が発表した59,938人の新型コロナウイルス感染症関連の死亡者数は含まれておらず、ゆえに、WHOは報告の週毎に集計された詳細な州に関するデータを待っています。
 
管轄地域別の新規感染者数については、アフリカ地域で40%、欧州地域で35%、東南アジア地域で17%、北米・中南米地域で12%及び西太平洋地域で1%減少しました(東地中海地域で6%増加しました。)。管轄地域別の新規死亡者数については、西太平洋地域で43%、北米・中南米地域で10%及び東地中海地域で9%増加しました(欧州地域で40%及び東南アジア地域で13%減少しました。アフリカ地域については、同等でした。)。
 
各国別では、新規感染者数が多い上位5か国は、日本(1,025,321人、4%減少)、米国(415,864人、10%減少)、韓国(286,291人、29%減少)、豪国(191,750人。過去3週間の報告がない。)及び中国(190,451人、26%減少)でした。また、直近1週間における新規死亡者数が多い上位5か国は、米国(3,922人、46%増加)、日本(2,849人、33%増加)、中国(802人、3%増加)、豪国(742。過去3週間の報告がない。)及びフランス(520人、35%減少)でした。
 
報告された新型コロナウイルス感染症における感染者に係る現在の傾向については、過去の調査で示されたとおり、世界的な感染及び再感染数の真の値を過小評価しています。それゆえ、複数の国が検体採取方式を積極的に変更し、全体の検査数が減少して結果的に検出される感染者数が減少するため、データを慎重に解釈する必要があります。さらに、過去の週からのデータについては、各国によって生じた新型コロナウイルス感染症における感染者及び死亡者の変化を後ろ向きに組み込みながら、継続して更新されています。
 
図1 2023年1月15日時点の週別又はWHO管轄地域別の新型コロナウイルス感染者数及び世界の死亡者数の推移

表1 2023年1月15日時点におけるWHO管轄地域別の新規又は累積新型コロナウイルス感染者の確定症例数及び死亡者数
 

新型コロナウイルスの懸念される変異株及び監視中であるオミクロン株の亜系統

懸念される変異株の世界的な拡散及び有病率

世界的に2022年12月16日から2023年1月16日までにおいて、85,439の検体がGISAIDを通じて共有されました。これらの検体のうち85,461の検体がオミクロン株(B.1.1.529系統並びにその亜系統のBA.X系統及び組換え体を指す。以下同じ。)の懸念される変異株(以下「VOC」という。)であり、過去30日間に世界的に報告された検体の99.9%を占めています。
 
BA.5系統及びその下位系統が世界的に依然として優勢であり、疫学的第52週(2022年12月26日から2023年1月1日まで。以下同じ。)においてGISAIDに提出された検体の70.5%(13,684検体)を占めています。BA.2系統及びその下位系統の有病率については、上昇しており、疫学的第51週(2022年12月19日から12月25日まで。以下同じ。)の11.8%(4.051検体)と比較して疫学的第52週の15.7%(3,055検体)に基づく傾向です。組換え体の有病率については、安定したままであり、疫学的第51週の9.7%(3,336検体)と比較して疫学的第52週の10.1%(1,965検体)となります。BA.4系統及びその下位系統の有病率については、継続して減少しており、疫学的第52週時点で有病率が0.6%となります。未指定の検体(オミクロン株と推定されている。)は、疫学的第52週に提出された検体の3.0%を占めています。
 
WHOは、現在監視下にある4つの亜系統を追跡しています(表2)。これら変異株については、他の流行しているVOC系統と比較して感染・伝播性の優位性に関する徴候、適応性の優位性を与えると判明又は疑義のあるアミノ酸置換という前提に基づいて含まれています。監視下にある亜系統は、BF.7系統(BA.5系統にスパイクタンパクのR346T変異を伴う。)、BQ.1系統(BQ.1.1系統、BA.5系統にスパイクタンパクのR346T、K444T、N460Kの変異を伴う。)、BA.2.75系統(BA.2.75.2系統及びCH.1.1系統を含む。)及びXBB系統(XBB.1.5系統を含む。)となります。
 
実験結果に基づく科学的根拠については、上位系統と比較して下位系統(BQ.1系統、BQ.1.1系統、BF.7系統及びBA.2.75.2系統)において、ワクチン接種者及び新型コロナウイルス感染者である被験者からの血清に対する中和化への耐性が増強されていると示しています。これらのうちBA.2.75.2系統がF486S変異によって最も中和への耐性を示しており、一方、BQ.1系統及びBQ.1.1系統が中和への耐性をN460Kによって示しています。BA.2.75.2系統及びBQ.1.1系統は、ワクチン接種を受けた55人において、上位系統と比較して減少を示しています(力価がそれぞれ35倍及び50倍低下しました。)。さらに、BA.1系統、BA.2系統、BA.2.75系統、BA.4系統、BA.5系統及びBF.7系統と比較してBQ.1系統及びBQ.1.1系統に対する中和の活性が大幅に低下していることが研究で示されました。以前報告されたものに加えてXBB.1.5系統に関するデータについては、利用することがいまだ不可能です。変異株の動態については、様々な要因(ワクチン摂種率、公衆衛生及び社会的対策を含む。)により、WHO管轄地域や国によって異なります。これらの変異株については、感染・伝播性及び臨床的な重症度の増加という指標が継続して監視されています。
 
図4A及びB 2022年7月1日から2023年1月5日までの新型コロナウイルス検体の数及び割合(%)
 
表3 2022年11月21日から2023年1月1日までの新型コロナウイルス検体の相対的な割合

オミクロン株の懸念される変異株に対するワクチンの初回又は追加接種の効果

オミクロン株に対する新型コロナウイルスワクチンの効果(以下「VE」という。)を示すフォレストプロットは、利用可能であり、定期的に更新されます(最新更新日は、2023年1月13日です。)。全てのデータは、新型コロナウイルスワクチンの効果に関する研究に係る進行中のシステマティックレビューの一部として収集されます。次のプロットが利用可能です。
 
 データが利用可能なワクチンの初回及び追加接種のVE
 対象となる様々な二次集団へのVE
 2回目の追加接種の相対及び絶対的なVE(相対的なVEを解釈するための更なる情報については、特別な焦点(2022年6月29日の新型コロナウイルス感染症に係る世界の状況報告)を参照してください。)
 ワクチン(利用可能なデータを伴う。)の時間経過に伴うVEの持続期間
 
要約すると、VEに関する研究から得られた知見については、ワクチン初回接種後のオミクロン株の変異株に対する全ての予防(感染、発症及び重症化の予防をいう。以下同じ。)のVEが新型コロナウイルス及び他の過去に流行していた4のVOCに対するVEと比較して減少したと報告しています。重要なことに、大多数の研究で、オミクロン株の変異株に対する重症化予防のVE推定値については、依然として他の予防のものより高いままです。初回接種については、感染及び発症の効果が時間経過とともに迅速に減少しました。1回目の追加接種については、初回接種において使用されたワクチンにかかわらず、1回目の追加接種後6か月において減少した全ての予防のVEが著明に改善しました(重症化よりも感染及び発症において著明でした。)。mRNAワクチンを伴う2回目の追加接種のVEについては、1回目の追加接種後に減弱した後に、同様の改善の類型を示しました。
 
中和抗体の研究については、VOC(新規又は流行のもの)及び亜系統に対するワクチンの影響に関する知見を早期に提供しています。種々のオミクロン株の亜系統を中和するための新型コロナウイルスワクチンに関する更なる情報については、オミクロン株(BA.1系統、BA.2系統、BA.3系統、BA.4系統又はBA.5系統)に対するワクチン接種後の中和に関する直近のシステマティックレビューを参照してください。さらに、中和に関する研究のシステマティックレビューの結果は、定期的に更新されています(直近の更新日は、2023年1月9日となります。)。
 
これまでの科学的根拠の合計は、「オミクロン株のBA.1系統に対する1回目の追加接種の中和抗体の反応が上位系統と比較しておおよそ6倍低く、過去のVOCと比較して著明な減少でした。」と示唆しています。さらに、力価の減少率の中央値については、BA.1系統と比較してBA.4系統及びBA.5系統の方が2倍低いものでした。初期の科学的根拠は、新しい亜系統(BQ.1系統、BQ.1.1系統、XBB系統、XBB.1系統)に対する中和が更に低下していることを示唆しています。オミクロン株に対する初回接種の中和(追加接種を除く。)については、脆弱のため、亜系統の比較と正確な比較をすることが不可能です。
 

WHO管轄地域別の概況

アフリカ地域

新規感染者数については、直近1週間で3,975人と報告され、前週と比較して40%減少しました。アフリカ地域内におけるデータが利用可能な50か国の3か国(全体の6%)については、20%以上の新規感染者数の増加が報告され、マラウイで2,167%(3人から68人)及びガーナで260%(5人から18人)及びカーボベルデで86%(7人から13人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で10人と報告され、前週と比較して1%未満の増減でした。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
レユニオン 1,213人 135.5人 42%減少
ザンビア 1,063人 5.8人
南アフリカ 772人 1.3人 55%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
レユニオン 4人 1.0人未満 同等
ザンビア 4人 1.0人未満
コンゴ民主共和国 1人 1.0人未満
※前週の報告がなし。

 

北米・中南米地域

新規感染者数については、直近1週間で683,564人と報告され、前週と比較して12%減少しました。南北アメリカ地域内におけるデータが入手可能な56か国中の5か国(全体の9%)では、20%以上の新規感染者数の増加が報告され、米国領バージン諸島で302%(50人から201人)、ジャマイカで292%(36人から141人)及びトリニダード・トバゴで65%(246人から406人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で4,978人と報告され、前週と比較して10%増加しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
米国 415,864人 125.6人 10%減少
ブラジル 120,721人 56.8人 17%減少
メキシコ 25,609人 19.9人 4%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
米国 3,922人 1.2人 46%増加
ブラジル 457人 1.0人未満 51%減少
メキシコ 194人 1.0人未満 126%増加

 

東地中海地域

新規感染者数については、直近1週間で4,369人と報告され、前週と比較して6%増加しました。東地中海地域内におけるデータが利用可能な22か国中の2か国(全体の9%)では、20%以上の新規感染者数の増加が報告され、レバノンで69%(907人から1,536人)及びUAEで22%(456人から556人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で50人と報告され、前週と比較して9%増加しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
レバノン 1,536人   69%増加
カタール 811人 28.1人 24%減少
イラン 687人 1.0人未満 3%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
イラン 18人 1.0人未満 14%減少
サウジアラビア 13人 1.0人未満 18%増加
レバノン 7人 1.0人未満 17%増加
 

欧州地域

新規感染者数については、直近1週間で311,592人と報告され、前週と比較して35%減少しました。欧州地域内におけるデータが利用可能な61か国中の6か国(全体の10%)では、20%以上の新規感染者数の増加が報告され、スペインで93%(9,220人から17,773人)、アルバニアで39%(113人から157人)及びモンテネグロで36%(329人から447人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で2,826人と報告され、前週と比較して40%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
ドイツ 83,605人 100.5人 36%減少
イタリア 62,599人 105人 42%減少
フランス 39,757人 61.1人 52%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
フランス 520人 1.0人未満 35%減少
イタリア 461人 1.0人未満 25%減少
スペイン 346人 1.0人未満 9%増加
 

東南アジア地域

新規感染者数については、直近1週間で4,852人と報告され、前週と比較して17%減少しました。東南アジア地域内におけるデータが利用可能な10か国中の2か国(全体の20%)では、20%以上の新規感染者数の増加が報告され、ブータンで100%(13人から26人)及びネパールで45%(20人から29人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で121人と報告され、前週と比較して13%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
インドネシア 2,540人 1.0人未満 25%減少    
インド 1,116人 1.0人未満 12%減少
タイ 969人 1.4人 3%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
タイ 65人 1.0人未満 12%増加
インドネシア 44人 1.0人未満 31%減少
インド 6人 1.0人未満 60%減少
 

西太平洋地域

新規感染者数については、直近1週間で1,746,093人と報告され、前週と比較して1%未満の増減でした。西太平洋地域内では、20%以上の新規感染者数の増加が報告された国はありませんでした。
 
新規死亡者数については、直近1週間で4,938人と報告され、前週と比較して43%増加しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
日本 1,025,321人 810.7人 4%減少
韓国 286,291人 558.4人 29%減少
豪国 191,750人 752人
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
日本 2,849人 2.3人 33%増加
中国 802人 1.0人未満 3%増加
豪国 742人 2.9人
※前週の報告がなし。
中国における新型コロナウイルス感染症の状況に関する情報(2022年12月8から2023年1月12日までの期間。中国からの発表であり、59,938人の新型コロナウイルス感染症関連死亡者数を含む。)については、付録3のとおりです。これらの死亡者数については、いまだ下記の図には含まれていません。

入院及び集中治療室入室

疫学的第1週(2023年1月2日から2023年1月8日まで。以下同じ。)において、合計79,246件の新規入院数及び1,092件の新規集中治療室(以下「ICU」という。)入室数が世界的に報告されました。当該のデータについては、暫定的なものであり、新規のデータが利用可能になると、変更となるおそれがあります。さらに、入院データは、報告遅延の対象となります。これらのデータについては、新型コロナウイルスの偶発的な感染による入院及び新型コロナウイルス感染症の疾病化による入院の双方が含まれる可能性があります。
 
疫学的第1週に28か国(12%)が新たな入院に関するデータをWHOへ報告しました。新規入院数に関する高い割合を報告した地域については、欧州地域(23%、14か国)、北米・中南米地域(9%、5か国)、西太平洋地域(11%、4か国)及び東南アジア地域(9%、1か国)、アフリカ地域(6%、3か国)及び東地中海地域(5%、1か国)となります。
 
WHO管轄6地域全体において、疫学的第1週に合計18か国(8%)が新たなICU入室に関するデータをWHOに報告しました。新たなICU入室に関するデータを報告している国の割合が最も高い地域については、欧州地域(16%、10か国)、西太平洋地域(11%、4か国)、北米・中南米地域(5%、3か国)及び東地中海地域(5%、1か国)でした。今日に至るまで東南アジア地域、アフリカ地域及び西太平洋地域については、疫学的第1週における新たなICU入室に関するデータを報告した国はありません。
 
50件を超える新たな入院数を報告した16か国については、3か国が前週と比較して増加傾向を示しました(中国で70%(37,215件から63,307件)、アイルランドで9%(510件から558件)及びギリシャで7%(1,519件から1,632件))増加しました。
 
10件を超える新たなICU入室数を報告した9か国については、1か国が前週と比較して増加傾向を示しました(ラトビアで55%(11件から17件))。
 
図4 WHOへ週毎に報告された新型コロナウイルス感染症の感染者数、死亡者数、新たな入院数及び新たなICU入室数(2023年1月8日時点)
※直近の数週間は報告遅延の対象のため、減少傾向として解釈する必要はありません。

出典

World Health Organization. “Weekly epidemiological update on COVID-19 – 19 January 2023”.WHO.2023.https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---19-january-2023,(参照2023-01-20).