複数国におけるmpox(サル痘)のアウトブレイク(更新15)

External Situation Report 15, published 2 February 2023
Date as received by WHO national authorities by 17:00 CEST, 30 January 2022
 
確定された感染者数 死亡者数 国・地域数
85,449人 89人 110
 
リスクアセスメント
世界的なリスク
WHO管轄地域別のリスク 欧州地域
アフリカ地域
北米・中南米地域
東地中海地域
東南アジア地域
西太平洋地域
 
 

焦点

2023年1月19日に発行された前回の報告以降において、716人の新規感染者数(0.8%の増加)及び9人の新規死亡者数が報告されています。
 
過去3か月間(2022年10月21日から2023年1月30日までをいう。)に受け取ったmpox感染者に基づくデータのWHO分析については、世界的な報告される感染者数が緩徐に減少しているため、年齢及び性別の分布、重症度及び臨床症状が変化していないままとなっています。39か国が継続してmpox感染者を報告しています。
 
複数国におけるmpoxのアウトブレイクに関するIHR緊急会合が2023年2月9日に第4回目として開催されます。
 

疫学的な更新情報

2022年1月1日から2023年1月30日までにWHO管轄である全6地域の110か国・地域から、85,449人の累積感染者数及び89人の累積死亡者数がWHOに報告されています(表1)。2023年1月19日に発表された状況報告以降、716人の新規感染者数(0.8%の増加)及び9人の新規死亡者数が報告されています。
 
過去7日間において、22か国にあっては継続して感染者を報告しており、13か国にあっては週毎の新規感染者数の増加を報告しました(メキシコで最大の増加が報告されました(72人)。)。感染した110か国のうち39か国が新規感染者数を報告しています(2023年1月30日時点で過去21日間にわたる。21日は、潜伏期間の最大値となる。)。
 
世界的に毎週報告される新規感染者数は、疫学的第3週(2023年1月16日から1月22日まで。以下同じ。)の294人と比較し、疫学的第4週(2023年1月23日から2023年1月29日まで。以下同じ。)の403人まで37.1%増加しています(北米・中南米地域で5%及び欧州地域で85%と最大の増加率でした。)。特記事項については、アフリカ地域が過去1週間で最多の新規感染者数(88人)を報告している点です(コンゴ民主共和国(69人)、モザンビーク(12人)、中央アフリカ共和国(7人))。
 
2023年1月16日から2023年1月30日までの期間において、米国(5人)、ペルー(3人)及びブラジル(1人)と合計9人の新規死亡者数が北米・中南米地域から報告されました。
 
2023年1月30日時点で、世界的に累積感染者数が多い10か国は、米国(29,891人)、ブラジル(10,739人)、スペイン(7,518人)、フランス(4,128人)、コロンビア(4,066人)、メキシコ(3,768人)、英国(3,735人)、ペルー(3,723人)、ドイツ(3,692人)及びカナダ(1,460人)です。当該の10か国を合算すると、世界的に報告された新規感染者数の85%を占めています。
 
表1  WHOへ報告されたWHO管轄地域別のmpoxに係る累積感染者数及び死亡者数(2022年1月1日から2023年1月30日17時(欧州夏時間)まで)
 
図1 週毎に集計されたWHO管轄地域別のmpoxに係る新規感染者数を示したグラフ(2022年1月1日から2023年1月30日17時(欧州夏時間)まで)
 
※当該のグラフについては、日曜日に終了する疫学的週を反映した集計の週報を示しています。現在の週に係るデータについては、次回の状況報告で提示されます。
 
他の重要な疫学的知見
 
2023年1月30日時点における利用可能なデータを伴う感染者数の96.6%(75,600人中の73,000人)は男性であり、年齢の中央値は34歳です(四分位範囲は、29から41歳まで。)。データが利用可能である感染者数の1.0%(802人)にあっては0歳から17歳までであり、0.3%(221人)にあっては0歳から4歳までとなります。この割合は管轄地域によって異なり、北米・中南米地域については、0歳から17歳までの感染者の割合が最も高いと報告されました(802人中の648人、81%)。
 
性的指向が報告された感染者のうち、84%(31,545人中の26,532人)がゲイ、バイセクシャル及び男性と性交渉を行う男性であると特定されました。報告された感染経路のうち、性交渉中の皮膚及び粘膜を介した接触感染が最も報告されており、感染曝露機会が報告された21,714件中の14,934件(69%)でした。
 
感染経路に関する詳細な情報については、アフリカ地域からの大半の感染者を入手できず、感染・伝播性に関する情報については、アフリカ地域におけるウイルスの疫学的な拡散を完全には記述できないおそれがあります。当該地域の国々については、ヒトからヒトへの感染及び感染した動物との接触による感染の両方があります。
 
最も一般的に報告された感染曝露状況は性的接触を伴う集会であり、曝露状況が報告された5,191件中の3,434件(66%)でした。
 
少なくとも1つの症状を報告した感染者(38,399人)のうち、最も一般的な症状は発疹であり(感染者の79%)、発熱(57%)、全身性及び性器発疹(50%及び44%)となります。
 
感染者に基づくデータ解析に関する要約(20221021日から20231月までの過去3か月間)
 
感染者に基づくデータ解析(2022年10月21日から2023年1月までの過去3か月間)については、疫学的な傾向及び報告された感染者の概要を確認するために、行われました。解析の結果は、次のとおりです。
 
報告された感染者数は、世界的に緩徐に減少しています。
 
アウトブレイクの記述疫学に関する主要な特徴(例えば年齢及び性別)は、不変のままです。最も影響を受けた人々については、29歳から41歳までの若年男性となります。
 
性的接触は最も報告された感染経路でありながら、ゲイ、バイセクシャル及び男性と性交渉を行う男性として性的自認をして影響を受ける人々はより少数となります。偏見に対する懸念については、性的自認の報告に影響を及ぼすおそれはあります。
 
最も報告された曝露状況については、性的活動が関与するイベントよりもむしろ家庭であり、全体的な感染者データで観察されているためです。
 
性的接触が過去3か月間にいまだ最も報告されている感染経路ですが、他の感染経路(例えば人から人への感染)が増加しています。感染・伝播性の動態が変化している、又は報告の偏りがあるのかは、不明です(2022年の複数国におけるアウトブレイクによって以前に影響を受けた集団外において、世界的に報告される感染者数が少数であるためです。)。
 
感染者の臨床症状は、類似したままです。
 
入院及びICU入室の観点における重症度は、不変である、又は低いままです。
 
報告された死亡者数については、継続して低いものの、過小評価されている可能性が高くなっています。
 
図2 mpox感染者の概要の比較(2022年1月1日から2022年10月20日までの期間対2022年10月21日から2023年1月30日までの期間。WHOのmpoxの世界的な調査に基づく。)
 
図3  mpox感染者の曝露状況の比較(2022年1月1日から2022年10月20日までの期間対2022年10月21日から2023年1月30日までの期間。WHOのmpoxの世界的な調査に基づく。)
 
図4  mpox感染者の感染経路の比較(2022年1月1日から2022年10月20日までの期間対2022年10月21日から2023年1月30日までの期間。WHOのmpoxの世界的な調査に基づく。)
 
図5 公式の情報源からWHOに報告又は特定されたmpox感染者の地理的分布(2022年1月1日から2023年1月30日17時(欧州夏時間)まで)