複数国におけるmpox(サル痘)のアウトブレイク(更新15)

External Situation Report 15, published 2 February 2023
Date as received by WHO national authorities by 17:00 CEST, 30 January 2022
 
確定された感染者数 死亡者数 国・地域数
85,449人 89人 110
 
リスクアセスメント
世界的なリスク
WHO管轄地域別のリスク 欧州地域
アフリカ地域
北米・中南米地域
東地中海地域
東南アジア地域
西太平洋地域
 
 

焦点

2023年1月19日に発行された前回の報告以降において、716人の新規感染者数(0.8%の増加)及び9人の新規死亡者数が報告されています。
 
過去3か月間(2022年10月21日から2023年1月30日までをいう。)に受け取ったmpox感染者に基づくデータのWHO分析については、世界的な報告される感染者数が緩徐に減少しているため、年齢及び性別の分布、重症度及び臨床症状が変化していないままとなっています。39か国が継続してmpox感染者を報告しています。
 
複数国におけるmpoxのアウトブレイクに関するIHR緊急会合が2023年2月9日に第4回目として開催されます。
 

疫学的な更新情報

2022年1月1日から2023年1月30日までにWHO管轄である全6地域の110か国・地域から、85,449人の累積感染者数及び89人の累積死亡者数がWHOに報告されています(表1)。2023年1月19日に発表された状況報告以降、716人の新規感染者数(0.8%の増加)及び9人の新規死亡者数が報告されています。
 
過去7日間において、22か国にあっては継続して感染者を報告しており、13か国にあっては週毎の新規感染者数の増加を報告しました(メキシコで最大の増加が報告されました(72人)。)。感染した110か国のうち39か国が新規感染者数を報告しています(2023年1月30日時点で過去21日間にわたる。21日は、潜伏期間の最大値となる。)。
 
世界的に毎週報告される新規感染者数は、疫学的第3週(2023年1月16日から1月22日まで。以下同じ。)の294人と比較し、疫学的第4週(2023年1月23日から2023年1月29日まで。以下同じ。)の403人まで37.1%増加しています(北米・中南米地域で5%及び欧州地域で85%と最大の増加率でした。)。特記事項については、アフリカ地域が過去1週間で最多の新規感染者数(88人)を報告している点です(コンゴ民主共和国(69人)、モザンビーク(12人)、中央アフリカ共和国(7人))。
 
2023年1月16日から2023年1月30日までの期間において、米国(5人)、ペルー(3人)及びブラジル(1人)と合計9人の新規死亡者数が北米・中南米地域から報告されました。
 
2023年1月30日時点で、世界的に累積感染者数が多い10か国は、米国(29,891人)、ブラジル(10,739人)、スペイン(7,518人)、フランス(4,128人)、コロンビア(4,066人)、メキシコ(3,768人)、英国(3,735人)、ペルー(3,723人)、ドイツ(3,692人)及びカナダ(1,460人)です。当該の10か国を合算すると、世界的に報告された新規感染者数の85%を占めています。
 
表1  WHOへ報告されたWHO管轄地域別のmpoxに係る累積感染者数及び死亡者数(2022年1月1日から2023年1月30日17時(欧州夏時間)まで)
 
図1 週毎に集計されたWHO管轄地域別のmpoxに係る新規感染者数を示したグラフ(2022年1月1日から2023年1月30日17時(欧州夏時間)まで)
 
※当該のグラフについては、日曜日に終了する疫学的週を反映した集計の週報を示しています。現在の週に係るデータについては、次回の状況報告で提示されます。
 
他の重要な疫学的知見
 
2023年1月30日時点における利用可能なデータを伴う感染者数の96.6%(75,600人中の73,000人)は男性であり、年齢の中央値は34歳です(四分位範囲は、29から41歳まで。)。データが利用可能である感染者数の1.0%(802人)にあっては0歳から17歳までであり、0.3%(221人)にあっては0歳から4歳までとなります。この割合は管轄地域によって異なり、北米・中南米地域については、0歳から17歳までの感染者の割合が最も高いと報告されました(802人中の648人、81%)。
 
性的指向が報告された感染者のうち、84%(31,545人中の26,532人)がゲイ、バイセクシャル及び男性と性交渉を行う男性であると特定されました。報告された感染経路のうち、性交渉中の皮膚及び粘膜を介した接触感染が最も報告されており、感染曝露機会が報告された21,714件中の14,934件(69%)でした。
 
感染経路に関する詳細な情報については、アフリカ地域からの大半の感染者を入手できず、感染・伝播性に関する情報については、アフリカ地域におけるウイルスの疫学的な拡散を完全には記述できないおそれがあります。当該地域の国々については、ヒトからヒトへの感染及び感染した動物との接触による感染の両方があります。
 
最も一般的に報告された感染曝露状況は性的接触を伴う集会であり、曝露状況が報告された5,191件中の3,434件(66%)でした。
 
少なくとも1つの症状を報告した感染者(38,399人)のうち、最も一般的な症状は発疹であり(感染者の79%)、発熱(57%)、全身性及び性器発疹(50%及び44%)となります。
 
感染者に基づくデータ解析に関する要約(20221021日から20231月までの過去3か月間)
 
感染者に基づくデータ解析(2022年10月21日から2023年1月までの過去3か月間)については、疫学的な傾向及び報告された感染者の概要を確認するために、行われました。解析の結果は、次のとおりです。
 
報告された感染者数は、世界的に緩徐に減少しています。
 
アウトブレイクの記述疫学に関する主要な特徴(例えば年齢及び性別)は、不変のままです。最も影響を受けた人々については、29歳から41歳までの若年男性となります。
 
性的接触は最も報告された感染経路でありながら、ゲイ、バイセクシャル及び男性と性交渉を行う男性として性的自認をして影響を受ける人々はより少数となります。偏見に対する懸念については、性的自認の報告に影響を及ぼすおそれはあります。
 
最も報告された曝露状況については、性的活動が関与するイベントよりもむしろ家庭であり、全体的な感染者データで観察されているためです。
 
性的接触が過去3か月間にいまだ最も報告されている感染経路ですが、他の感染経路(例えば人から人への感染)が増加しています。感染・伝播性の動態が変化している、又は報告の偏りがあるのかは、不明です(2022年の複数国におけるアウトブレイクによって以前に影響を受けた集団外において、世界的に報告される感染者数が少数であるためです。)。
 
感染者の臨床症状は、類似したままです。
 
入院及びICU入室の観点における重症度は、不変である、又は低いままです。
 
報告された死亡者数については、継続して低いものの、過小評価されている可能性が高くなっています。
 
図2 mpox感染者の概要の比較(2022年1月1日から2022年10月20日までの期間対2022年10月21日から2023年1月30日までの期間。WHOのmpoxの世界的な調査に基づく。)
 
図3  mpox感染者の曝露状況の比較(2022年1月1日から2022年10月20日までの期間対2022年10月21日から2023年1月30日までの期間。WHOのmpoxの世界的な調査に基づく。)
 
図4  mpox感染者の感染経路の比較(2022年1月1日から2022年10月20日までの期間対2022年10月21日から2023年1月30日までの期間。WHOのmpoxの世界的な調査に基づく。)
 
図5 公式の情報源からWHOに報告又は特定されたmpox感染者の地理的分布(2022年1月1日から2023年1月30日17時(欧州夏時間)まで)
 
 

HIVとmpox

mpoxと性感染症の交差感染(臨床及び公衆衛生への影響)
 
新たに影響を受けた国における世界的なmpoxアウトブレイクの感染者の大半については、ゲイ、バイセクシャル及び男性と性交渉を行う男性の性的ネットワークで発生しており、詳細なデータがWHOに報告されている感染者の84%(31,193人中の26,284人)を占めています。影響を受けているとされて出現している他の集団については、選択された人口集団においてトランスジェンダーの女性(女性及びノンバイナリージェンダーである個人のmpox感染者の46%を占める。)及びセックスワーカー(研究において影響を受けたとされる女性の26%がセックスワーカーでした。)です。mpoxの影響を受ける集団については、WHOが以前に説明したとおり、これらの感染症が共通の感染経路及び決定因子を有しているため、HIV、肝炎及び他の性感染症の負担が他の人口集団よりも重大な負担を経験しています。HIVとmpoxの交差感染及びmpoxの罹患率及び死亡率の記述については、WHOの状況報告14に直近で概要が記載されました。
 
mpoxと性感染症の疫学的な相関性については、臨床及び公衆衛生上の意義を有します。臨床については、患者が肛門・性器潰瘍、鼠径部リンパ節腫脹、二次性梅毒に類似した皮疹、性的に活発な成人の直腸炎を例とした泌尿生殖器の症状を呈するときにmpoxを考慮する必要があります。
 
ナイジェリアの一連のmpox感染者(2017年から2018年まで)のうち、62%にあっては性器潰瘍を呈し、30%にあっては鼠径部リンパ節腫脹を呈したことが確認されました(これについては、全年齢層でmpoxに共通する特徴でもあります。)。
 
女性及びノンバイナリーの個人における一連の世界的なmpox感染者については、74%が肛門・性器病変を経験すると報告されました。
 
男性における一連の世界的なmpox感染者の、73%にあっては肛門・性器症状があり、14%にあっては直腸炎があります。
 
これらの臨床的特徴については、特にmpox感染が増加している時期において、医療従事者はこれらの症候群の潜在的な病因(mpoxを含む。)としてリスクのある集団にmpox検査を提供する必要があることを示唆しています。さらに、複数の設定で鍵となる集団の定期的な性感染症のスクリーニング検査にmpoxを含めることについては、監視調査がmpoxの再興を追跡する機会を提供します(これは、試み及び評価を必要とする手法です。)。
 
Mpoxの診断が確定した場合においても、mpoxが疑われる、又は確定された人については、性感染症検査による利益を被ることもあります。世界的な一連のmpox感染者の最大29%が性感染症を併発しており、淋病(8%)、梅毒(9%)、クラミジア(5%)を例とする最近感染が頻繁にありました。mpoxと他の性感染症の共感染率が高いことを加味すると、mpoxと性感染症の同時検査を提供することについては、性感染症の効果的な診断及び治療を支援し、世界的な保健部門の目標(2030年までに梅毒及び淋病の新規感染者数を減少することを例とする。)を達成するのに有用です。
 
性感染症とmpoxの重複するエピデミックに集団を中心として包括的かつ統合的な手法で対処することについては、mpoxの感染防止という戦略的目標を達成するために重要です。同一集団で性感染症をコントロールするために既に実施されている目標を設定した活動(一次予防、統合された検査、調査、協力者への通知を含む。)を強化する必要があるかもしれません。性的な健康サービス及びHIVプログラムを統合した提供については、経費削減し、効率を改善し、サービスの適切な利用や向上につながり、臨床的な結果を改善することに直結する可能性があります。性感染症の予防及び感染者管理については、mpox予防及び治療サービスに密接に相関する可能性があります(鍵となる集団に対する集団に基づいた奉仕サービスを含む。)。
 
要約すると、性感染症及びmpoxの、調査、早期検出、予防、臨床的な治療及び研究を強化するために、一連の行動を取ることができます。
 
公衆衛生当局
 
Mpoxの監視調査を確立すること
鍵となる集団における定期的な性感染症のスクリーニング検査にmpoxの検査を試験的に導入し、評価すること
性的な健康サービスにmpoxの調査を関連付けて統合させること
標的となった性感染症の予防接種プログラム及びサービスにmpoxの予防接種を統合させること
重症化させるおそれのある集団に特定のmpoxに対する抗ウイルス治療の利用を維持すること
 
臨床医
 
リスクのある集団に対してmpoxの予防接種を継続して引用し、提供すること
特に鍵となる集団で関連した臨床症状の鑑別診断でmpoxを考慮し、適切な検査を言及すること
Mpox疑い又は確定の感染者に性感染症検査を提供すること
Mpoxが重症化するおそれのある人々(例えば新たなHIV感染の診断又はコントロール不良なHIV感染)に特定の抗ウイルス薬治療(例えばテコビリマット)を提供し、言及すること
 
国・地方の保健当局は、高品質でより広範に利用しやすい人々中心のサービスを供給するために、関連した公衆衛生上のプログラム及び状況や健康システムの特徴に基づいた臨床サービスの関連付け又は統合を適切に開発する必要があります。
 
 

特別な焦点(HIVとmpoxの重複感染)

HIVmpox(世界的な調査データの解析)
 
高い割合の感染者(複数の国では最大50%がHIVの状態に関する情報を伴う。)がHIVとともに生存していると報告されています(現在のmpoxのアウトブレイク)。アウトブレイクにおけるHIVの高い有病率については、HIVとともに生存する人々に関してmpoxのリスクが高いおそれがあることを示唆しています(この事象については、複数の説明があります。)。ゲイ、バイセクシャル及び男性と性交渉を行う男性については、このアウトブレイク中に主として影響を受けており、世界的に不均一にHIVの影響を受けています。さらに、mpoxのアウトブレイクについては、性的ネットワークの感染・伝播性によって主に惹起されており、mpox又はHIVの感染判明は新たな性交渉の相手との性的接触に関連付けています。
 
HIVの情報を伴うmpox感染者の記述疫学(WHOからの世界的なmpox調査)については、著明な違いはありません(性別、年齢、性的自認、入院、ICU入室及びHIV状態による死亡率。表2に示す。)。主たる違いについては、おそらく大部分は未治療のHIVによるものであり、HIV感染者で免疫抑制状態にある人々の高い割合であります。また、主たる感染経路及び曝露状況については、違いは観察されませんでした(感染者の大半については、その情報が不明でした。)。WHO独自の分析(データが示されず。)によれば、mpoxの入院患者はおそらくHIV陽性であり、しかしながら、免疫抑制状態を調整したとき、入院のおそれが高いとされたのは免疫抑制状態にあるHIV陽性者のみであり、その一方、免疫抑制状態ではないHIV陽性者はHIV陰性者と同様に入院するおそれを有しています。HIV状態によって臨床症状に著明な差は、ありません(表2)。
 
表2 mpox感染者の記述疫学、感染経路、曝露状況及びHIV情報を含む主たる症状(2022年1月から12月までの世界的なWHO調査)

 

世界的なmpoxのアウトブレイク状況に関する要約

Mpoxが2022年5月以降に世界的に拡大した後に、複数国のアウトブレイクが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」と2022年7月23日にWHO事務局長により宣言されました。2022年10月20日に開催された第3回の緊急会合は、当該のアウトブレイクがいまだ緊急事態であるという合意を形成しました。WHO事務局長は、次の懸念に基づき、各国に一次的な勧告を発表しました。
 
継続したアウトブレイクに対する継続した事前準備行動及び事態対処行動の不均一性
(WHO加盟国内及び加盟国間)
 
脆弱な集団におけるより大きい健康上の影響が出現する可能性
 
偏見及び差別の継続したリスク
 
一部の開発途上国において未報告に直結する脆弱な公衆衛生システム
 
診断、抗ウイルス薬及び予防接種への適切な利用に関する継続した不足
 
対処する必要のある研究の格差
 
WHOは、このアウトブレイクに対する公衆衛生上の事態対処行動(世界、地域及び国)に続き、リスクについて、世界及び4つの地域で中等度であり、北米・中南米地域で高く、西太平洋地域で低いと2022年10月に評価しました。世界的に報告されたmpox感染者数は著明に減少していますが、影響を受けた110か国のうち39か国は過去21日間に感染者を継続して報告しています。一部の国については、先週の感染者数の増加が報告されています。特にゲイ、バイセクシャルの男性及び男性と性交渉を行う男性という脆弱な集団間で集団感染が継続して発生しています。HIV感染を伴って生存する人々にあっては世界的なmpox感染者のうち継続して48%を構成しており、コントロール不良なHIV感染を伴う人々にあっては中等度の重症化リスクがあると判明しています。女性及び小児については、感染者の割合が増加しています。地域内又は地域間の輸入感染については、同様に継続して発生しています。
 
北米・中南米地域は、継続して多数の感染者数(大半が予防接種及び医療サービスへの利用が限定される脆弱な集団となる。)を報告しています。当該の地域は、ラテンアメリカ及びカリブ諸国を支援するために、事態対処行動の戦略及び提供者の警戒報を開発しました。欧州地域については、感染者数におけるリスクの減少を経験しており、mpox根絶に向けた見通しを示しています。英国は、mpox根絶に向けた国家戦略を出版しています。更なるアウトブレイクを惹起するおそれのある新たな輸入感染は、いまだ継続している懸念事項です。
 
Mpoxの調査及び検査診断能力の取組を緩めること、多国における予防接種提供サービス数の減少、抗ウイルス薬治療を利用する課題を継続することは、他の競合する公衆衛生上の重要事項の中でも、依然として重要な課題のままです(一部の国におけるコレラ、ラッサ熱、麻疹及びマラリアのアウトブレイクを含む。)。mpoxの真の負担については、アフリカ地域の国々では不明のままです。WHOは、適切なコントロール手段を確実にし、対策の利用を促進するための計画を開発するため、継続して支援を提供しています。
複数国のアウトブレイクへの事態対処行動は、報告された感染者数の減少を達成することを通じ、過去又は新規の影響を受けた国において、維持されたコントロール戦略及び取組を必要とします。調査の維持は、世界的な健康保全の一部としてmpoxアウトブレイクの終結に不可欠であり、天然痘の事故又は意図による再興の調査としても機能します。更なる取組については、全地域における脆弱な集団が予防接種及び抗ウイルス薬を確実に利用できるために必要です。WHOは、勧告を実施して世界的なmpoxコントロールを確実にするために、mpoxの戦略的事項を次のとおり取り組んでいます。
 
1 国の調査システムにmpoxを統合することによりmpoxの調査を強化し、疫学的な状況に適切に基づいて国及び地域のmpox根絶を支援すること
 
2 HIV及び性感染症のプログラム及びサービスへmpoxを統合すること
 
3 ワンヘルスという手法を通じてアフリカ諸国に技術及び実務的な支援を提供すること
 
4 診断、治療及び予防接種の改善された利用を継続して支援すること
 
5 緊急事態の段階における知見に基づいた広範な研究課題の事項を支援すること
 

地域の更新情報

欧州地域におけるMpoxの状況に関する更新(2023年1月31日時点)

WHO管轄の欧州地域の45の国・地域から合計25,824人(5人の死亡者数を含む。)のmpox確定感染者数が報告されています。
 
感染者に基づくデータについては、41の国・地域から欧州疾病予防管理センター及びWHO欧州地域事務局(以下「TESSy」という。)を通じて25,726人の感染者が報告されました(2023年1月31日10時まで)。TESSyで報告された25,726人の感染者のうち、25,542人が検査室で確定されました。さらに、ゲノム解析が利用可能である場合、報告された感染者からの489検体がクレードⅡ(かつて西アフリカのクレードとされていた。)と判明しました。当該地域で報告された週毎の感染者数は現在夏期の最大レベルの95%未満ですが、当該地域の多くの国では低い段階の国内感染が継続しています。
 
最も早期に判明していた感染者については、2022年3月7日時点の検体を報告しており、残りの検体を後ろ向きに検査することにより特定されました。発症の最も早期である日付は、2022年4月17日と報告されました。感染者の大半は、31歳から40歳まで(39%、25,696人中の10,138人)であり、男性(98%、25,664人中の25,230人)でした。性的自認の情報を伴う11,089人の男性感染者のうち、96%が男性と性交渉を行う男性と自認していました。HIV状態の情報を伴う感染者のうち、38%(10,458人中の3,963人)がHIV陽性でした。感染者の大半は、発疹(96%、15,965人中の15,251人)及び全身症状(68%で15,965人中の10,806人を占め、発熱、倦怠感、筋肉痛、悪寒又は頭痛を例とする。)を呈しました。777人の入院感染者(6%)については、そのうち271人が臨床的な治療を必要としました。7人の感染者にあってはICUに入室し、5人の感染者にあっては死亡したと報告されました。
 
最も可能性の高い感染経路に関する情報が利用可能である場合、欧州地域における感染者の94%が性的接触であると報告しています。WHO及びECDCは、今日に至るまで欧州地域における5人の職業性曝露による感染者の報告を受けています。職業性曝露の4人の感染者については、医療従事者は推奨される個人用保護具を着用していましたが、検体採取中に体液へ曝露していました。5人目の感染者については、個人用保護具を着用していませんでした。
 
WHOは、同様に加盟国におけるmpox感染者の管理及び濃厚接触を調査しています。Mpoxの確定感染者を伴う全ての国が感染者の隔離を2023年1月24日時点で必要としています(41か国にあっては自宅、3か国にあっては行動制限、1か国にあっては病院又は施設の隔離となります。)。WHOの勧告に従い、15の加盟国にあってはmpoxの濃厚接触者を隔離することを推奨しておらず、23の加盟国にあっては行動制限又は他者との濃厚接触(例えば性的接触または特定の脆弱な集団との濃厚接触)の制限を推奨しています。6の加盟国にあってはリスクの高い濃厚接触者に曝露後21日間の隔離を求めており、1の加盟国にあっては全ての濃厚接触者の隔離を求めています。
 
欧州地域のmpoxに対するWHOの事態対処行動
 
このアウトブレイクにおける性感染の中心的な役割を考慮すると、性に関する権利の手法(偏見及び差別の低減を含む。)は、影響を受けた集団の意義ある参画と同様に、全ての事態対処行動の活動に浸透しています。
 
WHOは、2022年のmpoxに対する事態対処行動に関し、18の加盟国に調査、コミュニケーション、公衆衛生、臨床的な管理及び予防接種の領域で60の技術支援活動を提供しました。また、WHOは、欧州地域のための、8の技術指針文書、ファクトシート及びツールキットを開発し、患者、医療従事者、他の利害関係者の個人的な経験に関する22のニュース記事を共有しました。
 
WHOは、20221年11月9日から11月10日までにmpoxアウトブレイクの管理、コントロール及び根絶に関する地域訓練ワークショップを開催しました(よりよい調整及び計画を通じて事前準備行動及び事態対処行動を改善することによりmpoxアウトブレイクを管理するための地域における公衆衛生上の体制を構築することを目的とする。)。参加者については、IHR2005の中心的な事項からの34人の国際的な専門家、公衆衛生研究所からの疫学者、専門家(臨床的な管理、IPC、検査、リスクコミュニケーション及びコミュニティエンゲージメント(以下「RCCE」という。))を含みます。さらに、同様のワークショップが国規模での長期的なコントロール及び根絶の計画を定義するために計画されています。
 
MpoxのSPRPの目的に対するWHO及び欧州の事態対処行動は、次のとおりです。
 
リスクコミュニケーション及びコミュニティエンゲージメント
影響を受けた集団及び標的となった対象集団を巻き込み、科学的根拠に基づいた適切な管理及び予防政策を策定し、実施し、及び調査すること
 
WHOは、当該地域からmpox根絶をコントロールして究極的には維持するという全体的な目的のため、8つの優先事項にわたる活動を支援し、国の事前準備行動及び事態対処行動の戦略を支援するための一連の政策要綱を作成しました。
 
WHO及びEDCは、欧州地域におけるmpoxアウトブレイク中のRCCEに関する暫定的な勧告集(アウトブレイクの疫学と状況、推奨される予防手段、人々の認識及び行動に基づいて人口集団のリスク及び関与に関するコミュニケーションの手法に関する助言を提供する。)を発行しました。
 
WHOは、奉仕活動や情報を提供するために、革新的なコミュニケーションチャンネルを使用して鍵となる利害関係者を巻き込んだリスク管理に関するメッセージを発信し、集団を基礎とした組織と協同しました。これについては、集団を伴う一連の情報ウェビナー、欧州地域からの100超である研究機関、研究者、RCCE実務者を巻き込んだRCCEに関する総括専門家会合(2022年11月)を含みます。
 
WHO欧州地域事務局及びECDC協同のmpoxツールキット(大規模集会イベントの計画・調整に関する国家当局及びイベント主催者を支援することを目的とする。)が開発され、公開されています。
 
開発された公衆衛生上の助言及びQ&A(優先的な集団であるゲイ、バイセクシャル、男性と性交渉を行う男性)
 
調査及び調整
感染者に基づく強力な国家調査を確立し、感染・伝播性の段階を調査するための国・地域の調査システムに全ての感染者を報告すること
 
WHO及びECDCは、プラットフォーム(直近の傾向、臨床症状及び管理、ハイリスク又は脆弱である集団、濃厚接触及び予防接種に関する情報共有を目的とする。)を提供するために、加盟国向けの定期的なウェビナーを開催しています。
 
WHO及びECDCは、欧州地域全ての国・地域からのmpox調査を促進するために、TESSyを通じて毎週の国内感染者に基づく報告を実施しました。
 
隔週の調査速報については、当該地域における流行状況を報告するために、同様にWHO及びECDCによって開発・作成されました。WHOは、利害関係者と協同し、標準的な手順(mpox感染者及び濃厚接触者の公衆衛生上の包括的な調査を支援するために地域の状況に適用可能である。)を設計しました。
 
WHO及びECDCは、9月に疫学的な状況を記載した欧州調査における査読済みの論文を発表しました(2022年3月7日から8月23日までの欧州地域41か国にわたる複数国のmpoxアウトブレイク)。
 
検査
安全かつ高品質な診断(ウイルスの特徴化を含む。)を確立すること
 
WHOは、18の加盟国(アウトブレイクの適切な事態対処行動を提供するために必要な診断能力又は供給が不足している。)に集中的な国の支援を提供しています
 
WHOは、分子診断のための検査物資及び試薬の調達及び供給を支援しています。WHO        は、アウトブレイクの開始直後に実施された必要性に関する調査の結果に基づき、優先的な支援の対象となる18の国・地域を特定しました(診断能力を欠き、アウトブレイクの適切な事態対処行動を提供するための物資を必要としていた。)。
 
これらの試験の適切な使用については、対面及び遠隔手段で共有される新しい訓練プログラムを通じて支援されています。
 
ゲノム解析能力を有する優先国に対してゲノム解析用の供給品が調達されています。臨床検査情報システムは、要求した国のWHOからの支援を伴うmpoxウイルスの診断を包括するように適用されています。
 
Mpoxウイルス検査のための世界的な外部品質評価プログラムが調整されており、欧州地域の39か国から57の研究所が参加に意欲を表明しています。当該プログラムの配布については、2023年3月から4月までに予定されています。
 
予防接種
最もリスクの高い人口集団における高いワクチン接種率を確保し、優先的な集団が安全で効果的なワクチン及び抗ウイルス薬を利用できるようにすること
 
欧州地域のmpoxワクチンの利用可能性はいまだ高所得国に限定されており、WHOは関心を示す様々な加盟国及び協力者と緊密に連携して当該地域における他の加盟国とのmpoxワクチンの寄付及び共有を促進しています。
 
欧州地域の加盟国によって共有されたデータによれば、55の加盟国・地域のうち37の国・地域が全国的な予防接種の政策を有しています。これらのうち25の国・地域については、曝露のおそれがある個人及び集団に対して曝露前予防接種を推奨しています。
 
2023年1月30日時点の31か国で合計680,365回の接種が行われ、現在までにデータが利用可能な当該地域の30か国で383,981回の接種が行われています。
 
WHOは、当該地域においてmpox予防接種を早期に導入した経験から得た知見に基づき、欧州地域におけるmpox予防接種に関する政策要綱を発表しました。政策指針の考慮事項を概説することに加え、政策要綱はmpoxワクチン及び予防接種に関する知識の格差に焦点を当てています。
 
加盟国がmpoxワクチンの需要及びハイリスクの集団による受入れに関して戦略を立案する必要があることを考慮し、WHOは考慮事項(当該地域におけるmpox予防接種行動の側面に関連した課題に対処するための機構を説明する。)の文書を発表しました。
 
感染予防対策
感染者(重篤な疾患を含む。)を適切に管理し、システムを導入して医療現場における感染拡大のおそれを最小限に抑制すること
 
WHOは、オンライン及び対面のウェビナーやワークショップを通じて地域全体で臨床的な管理に関するトレーニングを提供してきました(6か国における400人超の医療従事者で実施された13のウェビナー、訓練及びワークショップ)。
 
WHOは、重症例に対して臨床チーム及び公衆衛生当局を速やかに招集し、詳細な臨床情報と分析を信頼できる環境で共有し、重症のmpox感染者に関する理解を深めました。
 
EMAを通じて発行された販売の権利化により、WHOは、加盟国に対してWHOの資源(限定数かつ慎重な使用のみ)を通じてテコビリマット治療を利用できる方法に関して支援を提供しています。
 
さらに、全てのEU加盟国及び7つの参加国(ボスニア、アイスランド、モンテネグロ、北マケドニア、ノルウェー、セルビア及びトルコ)は、テコビリマット(欧州市民保護及び人権援助活動総局が供給する。)を要請できます。
 
IPCの構成要素に関する懸念は、国及び施設に基づいたIPCプログラムを増やすために、全てのプログラム作業に組み込まれました。
 
医療従事者への曝露のおそれが詳細に監視され、特定のコミュニケーション(少数かつ散発的な職業性曝露後である患者からの安全かつ適切な検体収集に関する。)が行われました。
 
ワンヘルス
欧州地域における新しい動物宿主の確立を予防すること
 
WHO及び欧州の世界動物衛生機構は、新型コロナウイルス及びmpoxの報告された感染者を監視しており、当該地域の状況に関する月報を公表しています。1例のmpox感染者が今日までに欧州地域の飼い犬で報告されています。
 

出典

World Health Organization. “Multi-country outbreak of mpox External Situation Report #15, published 2 February 2023”.WHO.2023. https://www.who.int/publications/m/item/multi-country-outbreak-of-mpox--external-situation-report-15--2-february-2023, (参照2023-02-03).