新型コロナウイルス感染症に係る世界の状況報告(更新109)

COVID-19 Weekly Epidemiological Update(WHO)2023年4月6日

世界の概況

新規感染者数については、2023年3月6日から2023年4月2日までの期間(以下「過去28日間」という。)に3,269,486人と報告され、前の過去28日間(2023年2月6日から3月5日までの期間をいう。以下同じ。)と比較して28%減少しました(図1及び表1)。新規死亡者数については、過去28日間に23,849人と報告され、前の過去28日間と比較して30%減少しました(図1及び表1)。この全体的な減少傾向にもかかわらず、74か国(31%)が前の過去28日間と比較して20%を超える感染者数の増加を報告している点に注意が必要です。2023年4月2日時点で、全世界の累積感染者数にあっては762,128,709人、累積死亡者数にあっては6,892,741人です。
 
報告された新型コロナウイルス感染症の感染者における現在の傾向については、有病率の調査で示されたとおり、世界的な感染及び再感染の真の数値を過小評価したものです。これについては、部分的には多くの国における検査数の減少及び報告の遅延によるものです。この報告に示されたデータについては、不完全のおそれがあり、それゆえ、慎重に解釈する必要があります。さらに、過去数週間のデータについては、各国によって提出された新型コロナウイルス感染症の感染者数及び死亡者数における後ろ向きの変化を組み込みながら継続して更新されています。
 
WHOは、28日間の間隔を使用して疫学的傾向の変化を示します。この比較的広い時間間隔は、報告の遅延を説明し、新規感染者数の週毎の変動が緩徐となり、パンデミックが加速又は失速する点が明らかな図を継続して提供します。集計されたデータについては、WHOの新型コロナウイルス感染症ダッシュボードでいまだ利用可能であり、データのダウンロードが可能です。
 
管轄地域別の新規感染者数(過去28日間)については、西太平洋地域で48%、アフリカ地域で30%、北米・中南米地域で29%及び欧州地域で13%減少しました(東地中海地域で147%及び東南アジア地域で289%増加しました。)。管轄地域別の新規死亡者数(過去28日間)については、西太平洋地域で65%、アフリカ地域で43%、北米・中南米地域で34%及び欧州地域で5%減少しました(東地中海地域で118%及び東南アジア地域で36%増加しました。)。
 
各国別では、新規感染者数が多い上位5か国(過去28日間)は、米国(626,532人、39%減少)、ロシア(313,998人、9%増加)、韓国(271,162人、11%減少)、日本(202,631人、61%減少)及びフランス(193,359人、98%増加)でした。また、過去28日間における新規死亡者数が多い上位5か国は、米国(7,458人、31%減少)、英国(2,678人、7%減少)、日本(1,168人、65%減少)、ドイツ(1,090人、39%減少)及びロシア(1,014人、同等)でした。
 
図1 2023年4月2日時点のWHO管轄地域別の新型コロナウイルス感染者数及び世界の死亡者数の推移(28日間隔)
 
表1 2023年4月2日時点におけるWHO管轄地域別の新規又は新型コロナウイルス感染者の累積感染者数及び死亡者数(28日間隔)

新型コロナウイルスの注目すべき変異株及び監視中である変異株

世界的な拡散及び有病率

世界的に2023年3月5日から2023年4月2日までの期間(28日間)において、65,864の検体がGISAIDを通じて共有されました。
 
WHOは、現在1の注目すべき変異株(以下「VOI」という。)、XBB.1.5系統及び7の監視下にある変異株(以下「VUM」という。)を詳細に調査しています。VUMは、BA.2.75系統、CH.1.1系統、BQ.1系統、XBF系統、XBB系統、XBB.1.16系統及びXBB.1.9.1系統です。XBB.1.9.1系統は、F486P変異(XBB.1.5系統及びXBB.1.16系統と共有している。)により2023年3月30日にVUMの一覧へ追加されました。XBB.1.16系統及びXBB.1.9.1系統は、XBB.1.5系統と同じスパイクタンパク質の変異(E180V及びF486P)を有しています。オープンリーデングフレーム領域における追加の変異については、その効果がいまだ特徴化されていません。新型コロナウイルスのスパイクタンパク領域における478位の変異については、中和抗体価の減少、感染・伝播性の増強及び病原性と関連しています。合計1,497のXBB.1.16系統及び9,644のXBB.1.9.1系統の検体がそれぞれ27か国及び68か国から4月2日時点で報告されています。
 
現在流行している変異株の高い重症度は今日まで報告されていませんが、複数の国が感染者数の増加の後における入院数の増加を報告しています。しかしながら、現在流行しているXBB系統の下位系統により、ICU入室数又は死亡者数の増加が報告されていません。XBB.1.5系統、XBB.1.16系統又はXBB.1.9.1系統の重症度の指標に関する実験研究が現在報告されていません。
 
XBB.1.5系統は、疫学的第7週(2023年2月13日から2月19日までの期間をいう。以下同じ。)の39.8%と比較して疫学的第11週(2023年3月13日から3月19日までの期間をいう。以下同じ。)に47.1%を世界的に占めていました。XBB.1.5系統は、94か国で現在まで検出されています。疫学的第7週から11週までにGISAIDに提出された検体を比較すると、全てのVUM(XBB系統、XBB.1.16系統及びXBB.1.9.1を除く。)が減少傾向を示しています。表2については、VOI及びVUMを報告している国の数及び有病率(疫学的第7週から第11週までの期間)の有病率を示しています。
 
表2 新型コロナウイルスのVOI及びVUMに関する週毎の有病率(2023年の疫学的第7週から疫学的第11週までの期間)
 
*印は、下位系統を示します。
$XBB.1.16系統の有病率は、核酸(T12730A、T28297C及びA28447G)を用いて2023年4月5日にGISAIDから抽出されました。
+他のものについては、他の流行している系統です(VOI、VUM、BA.1*系統、BA.2*系統、BA.3*系統、BA.4*系統及びBA.5*を除く。)。
 

WHO管轄地域別の概況

アフリカ地域

新規感染者数については、過去28日間で12,036人と報告され、前の28日間と比較して30%減少しました。アフリカ地域内におけるデータが利用可能な50か国の13か国(全体の26%)については、20%以上の新規感染者数の増加が報告され、サントメ・プリンシペで15,500%(1人から156人)、ギニア・ビサウで5,471%(7人から390人)及びモーリタニアで3,700%(2人から76人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、過去28日間で21人と報告され、前の28日間と比較して43%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前の28日間との比較
南アフリカ 6,790人 11.4人 21%減少
モーリシャス 1,432人 112.6人 20%増加
エチオピア 525人 1.0人未満 33%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
ジンバブエ 10人 1.0人未満 17%減少
カメルーン 4人 1.0人未満 300%増加
ウガンダ 2人 1.0人未満
※過去28日間の報告がない。

北米・中南米地域

新規感染者数については、過去28日間で1,047,358人と報告され、前の28日間と比較して29%減少しました。当該地域内におけるデータが利用可能な56か国の14か国(全体の25%)については、20%以上の新規感染者数の増加が報告され、サバで7,000%(1人から71人)、サン・バルテルミーで270%(10人から37人)及びセントビンセント及びグレナディーン島で120%(5人から11人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、過去28日間で10,152人と報告され、前の28日間と比較して34%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前の28日間との比較
米国 626,532人 189.3人 39%減少
ブラジル 182,610人 85.9人 13%減少
チリ 86,560人 452.8人 69%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
米国 7,458人 2.3人 31%減少
ブラジル 963人 1.0人未満 50%減少
カナダ 593人 1.6人 20%減少
 

東地中海地域

新規感染者数については、過去28日間で42,675人と報告され、前の28日間と比較して147%増加しました。東地中海地域内におけるデータが利用可能な22か国中の11か国(全体の50%)では、20%以上の新規感染者数の増加が報告され、クウェートで437%(310人から1,666人)、ソマリアで400%(2人から10人)及びパキスタンで269%(729人から2,687人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、過去28日間で537人と報告され、前の28日間と比較して118%増加しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前の28日間との比較
イラン 18,771人 22.3人 268%増加
UAE 5,481人 55.4人 96%増加
カタール 4,826人 167.5人 139%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
イラン 418人 1.0人未満 243%増加
レバノン 33人 1.0人未満 21%減少
チュニジア 31人 1.0人未満 35%増加
 

欧州地域

新規感染者数については、過去28日間で1,384,908人と報告され、前の28日間と比較して13%減少しました。欧州地域内におけるデータが利用可能な61か国中の22か国(全体の36%)では、20%以上の新規感染者数の増加が報告され、ウクライナで155%(26,127人から66,723人)、ブルガリアで116%(1,452人から3,131人)及びフランスで98%(97,903人から193,359人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、過去28日間で10,417人と報告され、前の28日間と比較して5%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前の28日間との比較
ロシア 313,998人 215.2人 9%減少
フランス 193,359人 297.3人 98%増加
ドイツ 139,261人 167.4人 64%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
英国 2,678人 3.9人 7%減少
ドイツ 1,090人 1.3人 39%減少
ロシア 1,014人 1.0人未満 同等
 

 

東南アジア地域

新規感染者数については、過去28日間で46,322人と報告され、前の28日間と比較して289%増加しました。東南アジア地域内におけるデータが利用可能な11か国中の7か国(全体の64%)では、20%以上の新規感染者数の増加が報告され、インドで680%(4,457人から34,785人)、ネパールで533%(43人から272人)及びモルディブで324%(17人から72人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、過去28日間で228と報告され、前の28日間と比較して36%増加しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前の28日間との比較
インド 34,785人 2.5人 680%増加    
インドネシア 10,204人 3.7人 69%増加
タイ 617人 1.0人未満 35%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
インド 106人 1.0人未満 253%増加
インドネシア 97人 1.0人未満 1%減少
タイ 20人 1.0人未満 44%減少
 

 

西太平洋地域

新規感染者数については、過去28日間で736,177人と報告され、前の28日間と比較して48%減少しました。西太平洋地域内におけるデータが利用可能な35か国中の7か国(全体の20%)では、20%以上の新規感染者数の増加が報告され、サモアで892%(25人から248人)、マーシャル諸島で460%(65人から364人)及びミクロネシアで188%(524人から1,508人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、過去28日間で2,494人と報告され、前の28日間と比較して65%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前の28日間との比較
韓国 271,162人 528.9人 11%減少
日本 202,631人 160.2人 61%減少
中国 136,071人 9.2人 69%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
日本 1,168人 1.0人未満 65%減少
中国 715人 1.0人未満 73%減少
韓国 247人 1.0人未満 41%減少
 

入院及び集中治療室入室

合計63,376件の新規入院数及び2,561件のICU入室数が世界的に報告されました(2023年2月27日から2023年3月26日までの期間(以下本項における「過去28日間」という。))。これについては、過去28日間の前の28日間(2023年1月30日から2月26日までの期間をいう。以下同じ。)と比較して新規入院数が0.4%増加し、新規ICU入室数が2%減少したことを示しています。当該の提示された入院数に関するデータについては、暫定的なものであり、新規のデータが利用可能になると、変更となるおそれがあります。さらに、入院データは、報告遅延の対象です。これらのデータについては、新型コロナウイルスの偶発的な感染による入院及び新型コロナウイルス感染症の重症化による入院の双方が含まれる可能性があります。
 
過去28日間に50か国(21%)が新たな入院に関するデータを少なくとも1回WHOへ報告しました。新規入院数に関する高い割合を報告した地域については、欧州地域(38%、23か国)、東地中海地域(32%、7か国)、東南アジア地域(27%、3か国)、アフリカ地域(18%、9か国)、北米・中南米地域(9%、5か国)及び西太平洋地域(9%、3か国)です。合計31か国(13%)が当該の期間中に一貫して新規入院数を報告しました。
 
新規入院数を一貫して報告した31か国のうち9か国(29%)が前の28日間と比較して20%以上の増加を記録しました(カタール(150%、48件から120件)、ボスニア・ヘルツェゴビナ(68%、123件から207件)、オランダ(65%、1,744件から2,880件)、ウクライナ(45%、11,376件から16,535件)、マルタ(43%、51件から73件)、ベルギー(41%、2,593件から3,644件)、フランス(26%、7,163件から9,040件)、ラトビア(24%、497件から616件)及びキルギス(22%、45件から55件))。新規入院数が最多の国については、ウクライナ(45%増加、11,376件から16,535件)、フランス(26%増加、7,163件から9,040件)及びイタリア(31%減少、6,376件から4,398件)です。
 
WHO管轄6地域全体の過去28日間に合計37か国(16%)が新たなICU入室に関するデータを少なくとも1回WHOに報告しました。新たなICU入室に関するデータを報告している国の割合が最も高い地域については、欧州地域(30%、18国)、東地中海地域(23%、5か国)、西太平洋地域(14%、5か国)、東南アジア地域(9%、1か国)、アフリカ地域(8%、4か国)及び北米・中南米地域(7%、4か国)です。当該期間中にICU入室を一貫して報告した国の割合については、11%(25か国)でした。

一貫して新たなICU入室数を報告した25か国のうち、8か国(32%)が前の28日間と比較して20%以上の増加を示しました(ブルネイ・ダルサラーム(300%増加、1件から4件)、オランダ(74%増加、103件から179件)、パキスタン(62%増加、13件から62件)、エストニア(60%増加、5件から8件)、チリ(59%増加、27件から43件)、チェコ(31%増加、98件から128件)及びカタール(25%増加、4件から5件))。ICU入室数が最多の国については、フランス(19%増加、715件から852件)、ウクライナ(10%増加、418件から458件)及びイタリア(74%増加、103件から179件)でした。

図4 WHOへ週毎に報告された新型コロナウイルス感染症の感染者数、死亡者数、入院数及びICU入室数(2023年3月26日時点)
※直近の数週間は報告遅延の対象のため、減少傾向として解釈しません。

出典

World Health Organization. “Weekly epidemiological update on COVID-19 – 06 April 2023”.WHO.2023.https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---6-april-2023,(参照2023-04-07).