西部ウマ脳炎-アルゼンチン共和国
Disease outbreak news 2023年12月28日
発生の概要
12月20日、アルゼンチン共和国(以下、「アルゼンチン」という。)のIHRに基づく連絡窓口(IHR NFP)は、世界保健機関(WHO)に対し、西部ウマ脳炎(以下、「WEE」という。)のヒト感染例を通知しました。アルゼンチンで最後に報告されたヒト感染例は1982年から1983年と1996年であるため、これは20年以上ぶりに報告されたヒト感染例です。WEEは蚊が媒介する、稀なウイルス性疾患で、ウマとヒトに感染します。ヒトの症例のほとんどは、鳥やウマの流行に関連して発生しています。ウイルスは感染した鳥の移動、あるいはウイルスを保有した人や動物の移動によって他の地域に広がる可能性があります。鳥が感染原因となっていることを考えると、鳥は他国へウイルスを広める宿主となる可能性があります。感染リスクのある集団としては、流行地域や動物の間で感染の発生が宣言されている地域に住んでいる人およびそこで働いている人、野外での活動に参加している人が含まれます。
発生の詳細
12月20日、アルゼンチンのIHR に基づく連絡窓口はWHOにWEEのヒト感染例を通知しました。患者はサンタフェ(Santa Fe)州の成人です。 今回の報告は20年以上ぶりになされたWEEのヒト感染例になります。アルゼンチンで最後に報告されたヒト感染例は、1982年から1983年のウマの集団発生に伴い発生したものと、1996年のウマで感染例は検出されずヒト1症例でのみ臨床所見と血清学的所見に基づいて診断されたものです。
患者は2023年11月19日に頭痛、筋肉痛、めまい、見当識障害、突然発症した発熱などの症状を呈しました。2023年11月24日、患者は医師の診察を受け、州内の医療施設に入院し、12日間集中治療と人工呼吸を必要としました。患者は12月20日に退院し、外来で経過観察中です。曝露歴については、疫学調査の情報によると、患者は以前WEE感染陽性と判定されたウマが確認された地域の農村部の労働者です。
患者の検体は2023年11月24日に同州の病院で採取され、12月4日に国立感染症研究所(ANLIS Malbrán)に属する国立ヒトウイルス疾患研究所(Dr. Julio I. Maiztegui、スペイン語では頭文字をとってINEVH)の基準検査所に送られました。検体は2023年12月19日、WEEウイルスの特異的中和抗体の検出で陽性となりました。検体は他の以下のアルファウイルスについては陰性でした: 東部ウマ脳炎(以下、「EEE」という。)ウイルス、ベネズエラウマ脳炎(以下、「VEE」という。)ウイルス、ウナウイルス(UNAV)、マヤロウイルス、チクングニアウイルス。
患者は2023年11月19日に頭痛、筋肉痛、めまい、見当識障害、突然発症した発熱などの症状を呈しました。2023年11月24日、患者は医師の診察を受け、州内の医療施設に入院し、12日間集中治療と人工呼吸を必要としました。患者は12月20日に退院し、外来で経過観察中です。曝露歴については、疫学調査の情報によると、患者は以前WEE感染陽性と判定されたウマが確認された地域の農村部の労働者です。
患者の検体は2023年11月24日に同州の病院で採取され、12月4日に国立感染症研究所(ANLIS Malbrán)に属する国立ヒトウイルス疾患研究所(Dr. Julio I. Maiztegui、スペイン語では頭文字をとってINEVH)の基準検査所に送られました。検体は2023年12月19日、WEEウイルスの特異的中和抗体の検出で陽性となりました。検体は他の以下のアルファウイルスについては陰性でした: 東部ウマ脳炎(以下、「EEE」という。)ウイルス、ベネズエラウマ脳炎(以下、「VEE」という。)ウイルス、ウナウイルス(UNAV)、マヤロウイルス、チクングニアウイルス。
西部ウマ脳炎の疫学
WEEは、EEEウイルスやVEEウイルスも属するトガウイルス科アルファウイルス属に属すウイルスによって引き起こされる稀な蚊媒介性疾患です。EEEおよびWEEウイルスの主な保菌宿主となる鳥はスズメ目です。ヒトでは、WEEウイルスは、不顕性または中等度の症状から重症型の無菌性髄膜炎や脳炎まで、さまざまな疾患を引き起こす可能性があります。
ウイルスは感染した鳥の移動、あるいはウイルスを保有する人や動物の移動を通じて、他の地域に広がる可能性があります。鳥が保有宿主となっていることを考えると、鳥は他国へウイルスを広める宿主となる可能性があります。感染リスクのある集団としては、流行地域や動物の間で感染の発生が宣言されている地域に住んでいる人およびそこで働いている人、野外での活動に参加している人が含まれます。
アルゼンチンでは、2023年11月25日から12月27日の間に、国内の12の州で合計1,182件のWEEの発生がウマで確認されており、内訳は以下の通りです。ブエノスアイレス(Buenos Aires)で717例、サンタフェで149例、コルドバ(Córdoba)で141例、エントレ・リオス(Entre Ríos)で69例、コリエンテス(Corrientes)で41例、チャコ(Chaco)19例、ラ・パンパ(La Pampa)18例、リオ・ネグロ(Río Negro)11例、フォルモサ(Formosa)で8例、サンティアゴ・デル・エステロ(Santiago del Estero)で6例、サン・ルイス(San Luis)で2例、サルタ(Salta)で1例。
ウイルスは感染した鳥の移動、あるいはウイルスを保有する人や動物の移動を通じて、他の地域に広がる可能性があります。鳥が保有宿主となっていることを考えると、鳥は他国へウイルスを広める宿主となる可能性があります。感染リスクのある集団としては、流行地域や動物の間で感染の発生が宣言されている地域に住んでいる人およびそこで働いている人、野外での活動に参加している人が含まれます。
アルゼンチンでは、2023年11月25日から12月27日の間に、国内の12の州で合計1,182件のWEEの発生がウマで確認されており、内訳は以下の通りです。ブエノスアイレス(Buenos Aires)で717例、サンタフェで149例、コルドバ(Córdoba)で141例、エントレ・リオス(Entre Ríos)で69例、コリエンテス(Corrientes)で41例、チャコ(Chaco)19例、ラ・パンパ(La Pampa)18例、リオ・ネグロ(Río Negro)11例、フォルモサ(Formosa)で8例、サンティアゴ・デル・エステロ(Santiago del Estero)で6例、サン・ルイス(San Luis)で2例、サルタ(Salta)で1例。
公衆衛生上の取り組み
ウマからWEEウイルスが検出されたことを受け、アルゼンチン保健省は2023年11月28日、全国的な疫学的警戒態勢を発動しました。 これは、ウマで発生した病気に関するさらなる情報を提供し、ヒトに感染する可能性のある症例の疫学的サーベイランスを強化するために行われています。疫学的サーベイランスには、受動的および能動的な症例発見の両方が含まれ、後者は、アルゼンチンにおける西ウマ脳炎の疫学的・検査室的サーベイランス、予防および制御のための通達(英文)で定められた症例定義に従い、動物で活発に病気が発生している地域で行われます。
保健省はまた、国家食品安全品質局(スペイン語でSENASA)、サンタフェ州および他の被害州の保健省と協力し、予防措置、疫学的サーベイランス、発生対策に取り組んでいます。
保健省はまた、国家食品安全品質局(スペイン語でSENASA)、サンタフェ州および他の被害州の保健省と協力し、予防措置、疫学的サーベイランス、発生対策に取り組んでいます。
WHOによるリスク評価
WEEウイルスの主な感染経路は、媒介動物である感染した蚊に刺されることです。主な媒介蚊はイエカ(Culex tarsalis)ですが、Aedes melanimon、セスジヤブカ(Aedes dorsalis)、Aedes campestrisなど複数の媒介蚊が感染に関与しています。これらの媒介蚊は、鳥類がウイルスの保有宿主となる野生下におけるウイルス蔓延サイクルでウイルスの循環を維持する役割を果たします。ヒトとウマは、蚊にウイルス感染させることができない終末宿主となります。屋外で働いたり活動したりするヒトは蚊に刺されやすいため、感染のリスクがより高くなります。
ヒトにおけるWEEのアウトブレイクは、一般に中等度の症状を伴う単発の症例として現れ、ほとんどの感染は無症状です。神経学的症状には髄膜炎、脳炎、脊髄炎が含まれます。他のアルボウイルス性脳炎と同様にWEEによる脳炎は、精神状態の変化、痙攣、または運動障害を含む局所神経徴候を伴う発熱を特徴とします。特定の抗ウイルス治療はなく、治療は主には支持療法が用いられます。
ヒトにおけるWEEのアウトブレイクは、一般に中等度の症状を伴う単発の症例として現れ、ほとんどの感染は無症状です。神経学的症状には髄膜炎、脳炎、脊髄炎が含まれます。他のアルボウイルス性脳炎と同様にWEEによる脳炎は、精神状態の変化、痙攣、または運動障害を含む局所神経徴候を伴う発熱を特徴とします。特定の抗ウイルス治療はなく、治療は主には支持療法が用いられます。
WHOからのアドバイス
以下は、ヒトにおける検査室診断、サーベイランス、予防対策に関する主な推奨事項の要約です。
ヒトにおけるWEEの検査診断
WEE感染の診断には、臨床症状が特異的でないため、検査での確定が必要です。検査法には、核酸増幅法や細胞培養によるウイルス学的(直接)診断法と、ウイルスに対する抗体を検出する血清学的(間接)診断法があります。一般的に、診断のための検体には血清と脳脊髄液(CSF)が含まれます。CSFは神経症状があり、臨床的適応がある場合にのみ採取します。診断法については、西部ウマ脳炎ウイルスヒト感染の検出と診断のための検査ガイドラインに詳しく記載されています。
サーベイランス
動物におけるアウトブレイクが盛んに報告されている高リスク地域では、潜伏期間、地理的地域、環境条件を考慮し、他の確定診断のつかない、適合する神経学的症候について、ヒトの症例検索を積極的に行い、サーベイランスを強化することが推奨されます。
予防対策
以下に列挙する予防措置は、動物の健康、人間の健康、環境の間の組織的かつ包括的な行動を考慮し、ワン・ヘルスの枠組みの中で実施すべきです。
環境管理
WEEウイルスの主な媒介生物である蚊の生態と生物学を考慮すると、推奨される主な予防策は、蚊の数を減らし、ウマやヒトとの接触を減らすための環境改善と環境管理です。これらの対策には以下が含まれます:
・メスの産卵場所や蚊の幼虫(ボウフラ)の繁殖場所となる可能性のある水たまり、池、一時的な浸水場所を埋める、または排水する。
・敷地周辺の雑草を除去し、蚊の休息場所や隠れ場所を減らす。
・特に蚊が最も活発に活動する時間帯には、馬を蚊帳のある厩舎に避難させて保護する。
・主な媒介蚊は屋内では活動しませんが、ドアや窓に蚊帳を張って家屋を保護することが望ましく、これによりその他のアルボウイルスによる感染も予防が可能です。
媒介蚊対策
WEEウイルスの媒介虫対策は、統合的ベクター管理(IVM)の枠組みの中で検討すべきです。殺虫剤による媒介蚊対策活動を行うかどうかは、昆虫学的調査データと、殺虫剤耐性データを含む、疾病の感染リスクを高める可能性のある変数を考慮して決定することが重要です。殺虫剤散布は、蚊の個体数が多く検出される感染発生地域においては、技術的に可能であれば、追加的な対策として考慮されます。その方法は、現地の媒介蚊の生態や行動に基づいて決定すべきものになります。
ウマのワクチン接種
ウマにはワクチンが使用可能です。リスクがあると考えられる地域では、免疫のないウマのワクチン接種率を高め、年1回のブースター接種を実施することが望ましいです。
個人防護措置
・特に病気の人がいる家庭では、足や腕を覆う衣類を使用する。
・DEET(ディート)、IR3535、Icaridin(イカリジン)を含む虫よけ剤を、使用法の指示に従い、露出した皮膚や衣服に塗布する。
・ドアや窓に網戸や蚊帳を使用する。
・昼間寝ている人(妊婦、乳幼児、寝たきりの人、高齢者、夜勤者等)には、殺虫剤処理または非殺虫剤処理した蚊帳を使用する。
・発生時には、蚊の活動が最も活発になる時間帯、つまり夜明けや夕暮れ時の屋外活動を避ける。
ヒトにおけるWEEの検査診断
WEE感染の診断には、臨床症状が特異的でないため、検査での確定が必要です。検査法には、核酸増幅法や細胞培養によるウイルス学的(直接)診断法と、ウイルスに対する抗体を検出する血清学的(間接)診断法があります。一般的に、診断のための検体には血清と脳脊髄液(CSF)が含まれます。CSFは神経症状があり、臨床的適応がある場合にのみ採取します。診断法については、西部ウマ脳炎ウイルスヒト感染の検出と診断のための検査ガイドラインに詳しく記載されています。
サーベイランス
動物におけるアウトブレイクが盛んに報告されている高リスク地域では、潜伏期間、地理的地域、環境条件を考慮し、他の確定診断のつかない、適合する神経学的症候について、ヒトの症例検索を積極的に行い、サーベイランスを強化することが推奨されます。
予防対策
以下に列挙する予防措置は、動物の健康、人間の健康、環境の間の組織的かつ包括的な行動を考慮し、ワン・ヘルスの枠組みの中で実施すべきです。
環境管理
WEEウイルスの主な媒介生物である蚊の生態と生物学を考慮すると、推奨される主な予防策は、蚊の数を減らし、ウマやヒトとの接触を減らすための環境改善と環境管理です。これらの対策には以下が含まれます:
・メスの産卵場所や蚊の幼虫(ボウフラ)の繁殖場所となる可能性のある水たまり、池、一時的な浸水場所を埋める、または排水する。
・敷地周辺の雑草を除去し、蚊の休息場所や隠れ場所を減らす。
・特に蚊が最も活発に活動する時間帯には、馬を蚊帳のある厩舎に避難させて保護する。
・主な媒介蚊は屋内では活動しませんが、ドアや窓に蚊帳を張って家屋を保護することが望ましく、これによりその他のアルボウイルスによる感染も予防が可能です。
媒介蚊対策
WEEウイルスの媒介虫対策は、統合的ベクター管理(IVM)の枠組みの中で検討すべきです。殺虫剤による媒介蚊対策活動を行うかどうかは、昆虫学的調査データと、殺虫剤耐性データを含む、疾病の感染リスクを高める可能性のある変数を考慮して決定することが重要です。殺虫剤散布は、蚊の個体数が多く検出される感染発生地域においては、技術的に可能であれば、追加的な対策として考慮されます。その方法は、現地の媒介蚊の生態や行動に基づいて決定すべきものになります。
ウマのワクチン接種
ウマにはワクチンが使用可能です。リスクがあると考えられる地域では、免疫のないウマのワクチン接種率を高め、年1回のブースター接種を実施することが望ましいです。
個人防護措置
・特に病気の人がいる家庭では、足や腕を覆う衣類を使用する。
・DEET(ディート)、IR3535、Icaridin(イカリジン)を含む虫よけ剤を、使用法の指示に従い、露出した皮膚や衣服に塗布する。
・ドアや窓に網戸や蚊帳を使用する。
・昼間寝ている人(妊婦、乳幼児、寝たきりの人、高齢者、夜勤者等)には、殺虫剤処理または非殺虫剤処理した蚊帳を使用する。
・発生時には、蚊の活動が最も活発になる時間帯、つまり夜明けや夕暮れ時の屋外活動を避ける。
出典
Western equine encephalitis - Argentina
Disease Outbreak News 28 December 2023
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2023-DON499
Disease Outbreak News 28 December 2023
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2023-DON499