麻しん(はしか)-アメリカ大陸地域(2025年4月28日)

海外へ渡航される皆様へ

麻しんは非常に感染力の強いウイルス性疾患で、空気感染や飛沫感染で広がります。通常は感染後10~14日で高熱、鼻水、結膜炎、咳などの症状が現れ、続いて発疹が頭部から全身に広がります。多くは回復しますが、肺炎、脳炎、失明などの合併症を引き起こし重症化する可能性があり、特に5歳未満や30歳以上で合併症を起こしやすいことが知られています。特異的な治療法はありませんが、ワクチン接種で麻しんとその合併症を予防できます。

以下の点を事前に確認して、健康に気をつけて渡航してください。
  • 渡航前の情報収集
1.情報収集
麻しんに関する情報や、南北アメリカ大陸地域で流行している感染症に関する情報、渡航先の医療情報を、FORTHや外務省などの公式な情報源で確認してください。トラベルクリニックなどで、渡航前に感染対策などを相談することも可能です。
2.ワクチン接種
麻しん含有ワクチン(MRワクチン(麻しん・風しん混合)、MMRワクチン(麻しん・流行性耳下腺炎・風しん混合)、麻しんワクチン)の接種記録を母子手帳などで確認しましょう。麻しんを予防するためには原則2回以上の麻しん含有ワクチン接種が必要とされています。
ワクチン未接種の方や接種歴が不明な方は、渡航前に医療機関で相談し、必要性と安全性を考慮したうえで予防接種を受けましょう。
  • 渡航中の健康管理
1.基本的な感染予防策
石鹸と水での手洗いやアルコール消毒液の使用などの手指衛生、マスクの着用や咳エチケットといった基本的な感染予防策は麻しんやその他のさまざまな感染症に対しても有効です。
2.リスクを軽減するための対策
麻しんの症状のある人との接触はできる限り避け、リスクがある場所(混雑した空港、公共交通機関、大規模イベントなど)では、マスクの着用や手洗いを徹底しましょう。
3.体調不良時の行動
渡航中に、発疹を伴う発熱など麻しんを疑わせる症状が出た場合は、速やかに現地の医療機関を受診し、渡航歴・現地での行動を必ず伝えましょう。
  • 帰国後の対応
麻しんの流行がみられる地域から日本へ帰国した時に体調に異常があれば、空港や港の検疫所で渡航歴・現地での行動を伝えたうえで相談してください。
帰国後21日間程度の期間、ご自身の健康状態に注意し、発熱や発疹などの異常があれば速やかに医療機関に相談してください。この際、受診前に電話等で渡航歴・現地での行動を伝え、感染を広げないために指示を受けてから医療機関を訪れるようにしてください。

特に、妊婦、小さなお子さん、免疫不全があるなど重症化のリスクが高い方は、これらの注意を心がけましょう。 そのほか、海外渡航に関する一般的な注意事項はここに注意!海外渡航にあたってをご参照ください。


以下のDisease Outbreak Newsの翻訳は、厚生労働省委託事業「国際感染症危機管理対応人材育成・派遣事業」にて翻訳・メッセージ原案を作成しています。

状況概要

2025年4月18日現在、WHO(WHO; World Health Organization)アメリカ大陸地域の6か国で、3例の死亡例を含む合計2,318例の麻しん(はしか)患者が確認されており、2024年の同時期と比較して11倍に増加しています。症例の大半は1歳から29歳までの、ワクチン未接種または接種状況が不明な人々の間で発生しています。さらに、ほとんどは輸入症例または輸入症例に関連したものとなっています。麻しんは感染力が強く、空気感染するウイルス性疾患で、重篤な合併症を引き起こし死に至ることもあります。ワクチンを2回接種することで予防可能ですが、2023年には世界で2,200万人以上の子どもがワクチンの初回接種を受けていません。このため、2024年には麻しん患者が世界的に増加し、特にウイルスが活発に循環している地域から渡航したワクチン未接種の旅行者による輸入感染のリスクが高まっています。WHOは、WHOアメリカ大陸地域の国々と緊密に協力し、麻しんの流行拡大と再流行を防ぐ取り組みを行っています。現在、地域のリスクは高いと評価されていますが、世界的なリスクは中程度にとどまっています。

発生の詳細

2025年1月1日から4月18日までに、WHOアメリカ大陸地域で、3例の死亡例を含む合計2,318例の麻しん患者が確認され、2024年の同時期に報告された205例と比べて11倍に増加しています。症例は、アルゼンチン(21例)、ベリーズ(2例)、ブラジル(5例)、カナダ[1](1,069例)、メキシコ[2](421例、うち1例死亡)、アメリカ合衆国[3](800例、うち2例死亡)の6か国から報告されています。

[1] カナダの疫学週(EW)別麻しん患者数には確定症例と可能性例が含まれる。

[2] メキシコの疫学週別麻しん患者数はEW14まで報告されたものである。

[3] アメリカの疫学週別麻しん患者数はEW16まで報告されたものである。


図1:2025年1月1日~4月18日の週ごとに、アメリカ大陸地域で確認された麻しん確定症例を示す流行曲線(n = 2,318)



図2:2025年1月1日から4月18日までに確認された確定症例の地理的分布

各国の状況

アルゼンチン
2025年1月1日から4月16日の間に、アルゼンチンではブエノスアイレス自治市で10例、ブエノスアイレス州で11例、合計21例の麻しん確定症例が報告されました。このうち3例は輸入症例であり、13例は輸入症例に関連した接触者であることが確認されました。残り5例の疫学的関連については現在も調査中です。
初発症例は2025年1月31日に報告された海外渡航歴のある小児でした。2例目は2025年2月3日に報告された小児で、初発症例の接触者でした。2例とも麻しんワクチン接種歴はなく、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査により確定診断となりました。 これらの初期症例に続いて、4月16日までに19例が追加確認されました。年齢の幅は5か月から40歳で、このうち2例については海外渡航歴の記録がありました。肺炎のため入院が必要な症例は2例のみで、残りの症例は外来で管理され、順調に回復しています。症例のうち12例は、INEI-ANLIS・カルロス・G・マルブラン国立感染症基準研究所で陽性確認され、遺伝子型はB3でした。輸入症例のうち1例は、最近のタイへの渡航に関連したもので、遺伝子型はD8でした。

ベリーズ
2025年4月12日、ベリーズ保健福祉省は、1991年以来ベリーズ国内初となる2例の麻しん症例を確認しました。症例は、コロサル地区とカヨ地区のワクチン接種歴のないいずれも17歳の男性で、宗教的集会に出席するために2025年1月5日から3月31日までメキシコのチワワに渡航していました。 発症は2025年4月2日と3日でした。 両症例について血液検体と鼻咽頭ぬぐい液が採取され、2025年4月12日に麻しん陽性が確認されました。チワワの宗教的集会に参加した13人の濃厚接触者は保健省チームによって疫学調査され、感染徴候や症状がないか連日確認されました。ワクチン接種率を高めるための多大な努力にもかかわらず、ベリーズのワクチン接種率は目標範囲の92~95%を下回っており、2024年のMMRワクチン2回目の接種率は83.9%でした。

ブラジル
2025年1月1日から4月18日の間に、ブラジル国内の4か所で5例の麻しん確定症例が報告されています(連邦直轄区(1例)、リオデジャネイロ(2例)、リオ・グランデ・ド・スル(1例)、サンパウロ(1例))。 リオデジャネイロの2例は1歳未満の小児で、いずれもワクチン接種歴はなく、発症は2025年2月28日と3月2日でした。 連邦直轄区(2025年3月1日発症)とリオ・グランデ・ド・スル州(2025年4月6日発症)の症例は、海外渡航歴のある成人でした。さらに、サンパウロで報告された成人症例は、ワクチン接種歴があり、海外渡航歴はなく、発症日は2025年4月4日でした。この症例の感染源は現在調査中です。

カナダ
2025年1月1日から4月12日の間に、カナダでは7つの州(アルバータ州、ブリティッシュコロンビア州、マニトバ州、オンタリオ州、プリンスエドワードアイランド州、ケベック州、サスカチュワン州)から1,069例の麻しんの確定症例および可能性例が報告されました。これは2024年に報告された確定症例および可能性例177例をはるかに上回り、1998年に麻しん排除を達成して以来、年間患者数としては最多となります。
2025年に報告された症例の大部分(83%)は、ワクチン接種率が低いコミュニティ(相互に交流し合うこともある)において、ワクチン未接種者の間で発生した大規模かつ複数区域にまたがるアウトブレイクに関連しています。2024年10月27日から2025年4月12日の間に、7つの州で971人の患者が報告されました。この集団発生は、2024年10月にニューブランズウィック州で開催された、複数の州からの参加者を含む大規模な集会に参加した患者(海外輸入例)を発端としています。この集団発生に関連する症例のほとんどはワクチン未接種者(84%)または接種状況不明(12%)です。今までのところ、ワクチン接種率が低いコミュニティ以外で発生したアウトブレイク関連症例はごく少数であり、これらのコミュニティを越えてさらに感染が拡大している証拠はありません。
さらに、2025年1月1日から4月12日までの間に、2例以上の疫学的またはウイルス学的に関連した症例からなる、少数の局地的アウトブレイクが報告されています。これらのアウトブレイクは、上述の複数区域にまたがるアウトブレイクとは異なり、海外からの輸入例に直接関連しています。同じ期間に、カナダでは海外渡航に関連した16例の麻しん患者が確認されています。

メキシコ
2025年1月1日から4月16日の間に、メキシコでは421例(輸入例2例、輸入関連35例、調査中384例)の麻しん患者が確認されました。症例はカンペチェ州(4例)、チワワ州(403例、うち1人死亡)、オアハカ州(4例)、ケレタロ州(1例)、シナロア州(1例)、ソノラ州(5例)、タマウリパス州(2例)、サカテカス州(1例)で報告されています。
最初の確定症例は、2024年10月から2025年1月にかけての海外渡航歴があるオアハカ州のワクチン未接種の小児です。この小児は1月29日にメキシコに到着し、2月10日に症状が現れました。2月14日、オアハカ州公衆衛生研究所は当該症例の麻しんRT-PCRとIgMが陽性であり、遺伝子型はB3であったと報告しました。その後3例の関連症例が確認されました。
2月20日、チワワ州でワクチン未接種の小児における2例目の確定症例が報告されました。発症は2月11日で、チワワ州公衆衛生研究所で麻しんのRT-PCRとIgMが陽性であると確認されました。遺伝子型はD8でした。 接触者追跡と積極的な症例検索の結果、さらに419人の症例が確認されました。
症例の大半は25~44歳で全体の34.4%(n= 145)を占め、次いで5~9歳の小児が全体の13.5%(n= 57)を占めています。ワクチン接種歴については、症例の92.4%(n=389)が未接種で、3.8%(n=16)がMMRワクチンを1回接種、3.8%(n=16)が2回接種していました。

アメリカ合衆国
2025年4月17日現在、25の管轄区域(アラスカ州、アーカンソー州、カリフォルニア州、コロラド州、フロリダ州、ジョージア州、ハワイ州、インディアナ州、カンザス州、ケンタッキー州、メリーランド州、ミシガン州、ミネソタ州、ニュージャージー州、ニューメキシコ州、ニューヨーク州、ニューヨーク市、オハイオ州、オクラホマ州、ペンシルバニア州、ロードアイランド州、テネシー州、テキサス州(死亡2例を含む)、バーモント州、ワシントン州)から合計800例の麻しん確定例が報告されています。全症例のうち93%(n=751)がアウトブレイク(3例以上と定義する)に関連しており、今年に入ってから10件のアウトブレイクが確認されています。テキサス州、ニューメキシコ州、オクラホマ州でのアウトブレイクが報告症例の82%を占めています。
年齢別には、5歳未満の小児が31%(n=249)、5~19歳が38%(n=304)、20歳以上の成人が29%(n=231)、年齢不明が2%(n=16)を占めています。症例の大部分(96%)はワクチン未接種または接種状況不明で、1%はMMRワクチンを1回接種、2%は2回接種していました。入院が必要な症例は全体の11%(800例中85例)でした。5歳未満の小児では、19%(249例中47例)に入院が必要でした。小児のMMRワクチン接種率は近年、2019-2020年の95.2%から2023-2024年の92.7%へと低下しています。

麻しんの疫学

麻しんは感染力の強い急性ウイルス性疾患で、あらゆる年齢の人が感染する可能性があり、依然として、世界中で小児の主要な死亡原因の一つです。感染経路は、空気感染、および感染者の鼻、口、喉から出る飛沫による飛沫感染です。初期症状としては通常、感染後10~14日目に、高熱や、鼻水・目の充血・咳・口の中の小さな白い斑点などを伴う発疹が現れます。特に発疹は発熱の2~4日後に現れ、頭部から体幹、下肢へと広がります。感染力があるのは、発疹が現れる4日前から4日後までです。麻しんに対する特異的な抗ウイルス治療はなく、ほとんどの人は2~3週間以内に回復します。
麻しんは通常、軽症から中等症ですが、肺炎、下痢、中耳炎、脳の炎症(脳炎)、失明、死亡などの合併症を引き起こすことがあります。感染後、脳炎は約1000人に1人の割合で起こります。また、麻しんは他の感染症に対する獲得免疫の喪失も引き起こします。これは、麻しんに感染することで免疫系が感染から身を守る方法を忘れ、他の感染症にかかりやすくなる病理学的過程のことです。
麻しんワクチンは最も効果的なワクチンのひとつです。2回の接種により、麻しんを生涯にわたって予防する97%の効果が得られます。
2016年にアメリカ大陸地域で麻しん排除宣言が出された後、2017年から2019年にかけて、麻しん確定症例の異常な増加が一定したペースで見られました。2019年、アメリカ大陸地域は人口100万人あたり21.5例という過去最高の罹患率を記録しました。この増加は、ベネズエラとブラジルで大規模なアウトブレイクが発生したことが主な原因で、これらの国では麻しんの流行伝播が再確立され、排除状態が失われました。2018年から2023年の間に、アメリカ大陸地域では18か国で49,187例の確定症例が報告されましたが、これは世界の他の地域からのウイルスの輸入と、ベネズエラとブラジルでの流行感染の復活によるものです。アメリカ大陸における最後の地域内感染は2022年6月にブラジルから報告されました。その後2024年までに465例の確定例が登録されましたが、すべて輸入症例や輸入に関連したものでした。同年、アメリカ大陸地域における麻しんの排除が再認定されました。

公衆衛生上の取り組み

アメリカ大陸地域の地域および国の公衆衛生当局は、流行をコントロールするための公衆衛生対策を実施しており、WHOは以下のような支援を行っています。
  • 2024年から始まったWHOアメリカ大陸地域内数か国における麻しん患者の増加に関する疫学的警告や最新情報の発表。
  • WHOアメリカ大陸地域における麻しんに関する公衆衛生リスクアセスメントの発表。特にワクチン接種率が低い国々におけるリスクを「高」に分類している。
  • 麻しんの流行拡大と再流行を防ぎ、全住民の健康を守るための、WHOアメリカ大陸地域の国々との緊密な協力の継続。特にワクチン接種、サーベイランス、迅速な対応への支援と状況のモニタリングを実施。
  • 麻しんのアウトブレイクや症例が発生した国の検査室に対する技術支援とフォローアップ。
  • 以下のような活動を通した各国の迅速な対応能力の強化。(1)ハイブリッド・ワークショップやバーチャル・コースを利用して、アウトブレイクへの迅速な対応に関する医療従事者の研修を行う。(2)ラテンアメリカ・カリブ地域で最も被害が大きかった地域に国際コンサルタントを派遣するための資金を提供する。(3)各国とのバーチャル・フォローアップ会議を開催する。
  • 地域の国々で麻しんと風しんが再流行するリスクを迅速に減らすために、ワクチン未接種の人々を抱える国々での大規模フォローアップ・ワクチン接種キャンペーンを推進。
  • アウトブレイクが発生した国々において、予防接種や推奨される行動へのコミットメントを強化するために、リスクコミュニケーションとコミュニティ・エンゲージメントを強化。

WHOによるリスク評価

WHOアメリカ大陸地域では、2025年に、2024年の同時期と比較して11倍の麻しん患者数の増加が見られています。麻しんや風しんのサーベイランス指標では改善が見られるものの、他の指標に加えて、人口10万人あたり2例の疑い例という最低届出率を満たしていない国がまだ存在します。これにより症例の検出、通知、確認、迅速な対応行動が遅れる可能性があります。
地域内の移民集団、ワクチン接種を忌避する集団、その他のリスクのある集団において、適切なレベルのワクチン接種率を維持することは困難であり、大きな課題となっています。ヨーロッパ、中央アジア、アフリカのいくつかの国には麻しんウイルスが循環している地域があり、これらの地域からの輸入症例が確認されると予想されます。麻しんが流行している地域から、そうでない地域への移動が激しくなると、新たなアウトブレイクや症例が発生するリスクが高まる可能性があります。人の移動、海外旅行、大規模な集会などを考慮すると、国際的な感染拡大のリスクは否定できません。流行が続いている地域からの旅行者は、ワクチン接種率が高い国にもウイルスを持ち込む可能性があり、そこにはまだ脆弱な集団、特に麻しんワクチンの初回接種を受けていない乳幼児がいる可能性があります。

アメリカ大陸地域における麻しんの全体的なリスクは、複数の要因により、高いと考えられています:
  • 2025年に入って、輸入症例からの継続的なウイルス循環により、感染連鎖の拡大、二次感染の症例、新たな地域や国へのウイルス拡散を伴うアウトブレイクが発生しています。
  • ワクチン接種率のレベルが最適でない状態が地域全体で継続しています。2023年には、MMRの1回目(MMR1)接種率が95%を超えた国は28.6%、2回目(MMR2)接種率に関してはわずか16.7%でした。地域全体での接種率は、MMR1が87%、MMR2が76%でした。2024年のデータは現在統合中です。
  • COVID-19のパンデミック、ワクチン忌避、医療へのアクセスの制限などの要因により、特に移民、避難民、先住民族などの脆弱な集団の間で、低い接種率が続いており、感染しやすい人の数が増加しています。

WHOアメリカ大陸地域、特にワクチン接種率が低い国々におけるこの事象の全体的なリスクは、入手可能な情報に基づき、高い信頼度をもって高リスクに分類されます。
世界レベルでの全体的なリスクは、他のすべてのWHO地域で感染が続いているため、中程度と評価されています。いくつかの国では、資源の制限、ワクチン忌避、政情不安、保健システムの脆弱性などの様々な要因のために、予防接種プログラムが最適なレベルに達していません。その結果、ワクチン接種率に格差が生じ、ワクチン未接種の人口が拡大し、麻しんの流行拡大の要因となっています。これはその国にとって公衆衛生上の懸念となるだけでなく、海外渡航や人の移動により、他の地域や国にとっても潜在的なリスクとなります。世界的な感染リスクは依然として健康への脅威であり、特にワクチン接種率が中程度または低い地域では、ワクチン未接種の集団における新たなアウトブレイクにつながる可能性があります。このリスクは、検査システムやサーベイランス、アウトブレイクの検出や迅速な対応能力におけるギャップと相まって、世界的な麻しん排除目標に向けた前進を妨げ、蔓延の脅威をさらに悪化させています。

WHOからのアドバイス

WHOは、麻しん含有ワクチン(MCV;measles-containing vaccine)の1回目と2回目の接種率を少なくとも95%に維持するとともに、公的・民間医療機関において疑われる症例を迅速に発見するため、麻しんおよび風しんの総合的な疫学サーベイランスを強化するよう推奨しています。
WHOは、麻しんの疑いがある症例を迅速に発見し対応するために、人の移動が多い国境地帯における疫学的サーベイランスとアウトブレイクに対する準備・対応能力を強化することを推奨します。輸入症例に迅速に対応し、再び国内流行が定着するのを避けるために、この目的に向かって訓練された迅速対応チームを活性化し、輸入症例がいる場合には迅速な対応のためのプロトコルを実施します。ひとたび迅速対応チームが活動を開始したら、国、地方、地域の各レベル間の継続的な連携を確保し、すべてのレベルにわたる継続的かつ効果的なコミュニケーションチャンネルを確保しなければなりません。アウトブレイク発生時には、医療関連感染の拡大を防ぐために、適切な病院症例管理と感染予防管理能力を確立することが推奨されます。どのレベルの医療機関においても、患者を適切に空気感染隔離室へ収容し、待合室や他の病室での他の患者との接触を避けることが必要です。
WHOは、一般住民の予防接種率を高く維持し、また医療・介護従事者や海外渡航者など曝露のリスクが高い人が最新の予防接種を受けられるよう、麻しん・流行性耳下腺炎・風しん(MMR)または麻しん風しん(MR)の予防接種を広く提供することを推奨しています。流行地域に住んでいる人は、地域の公衆衛生当局の指導に従うことが推奨されます。世界全体では、2000年から2023年の間に、ワクチン接種によって推定6000万人の死亡(アメリカ大陸では600万人の死亡)を防ぐことに成功し、麻しんによる推定死亡者数は2000年の800,062人から2023年には107,500人へと87%減少しました。
WHOは、輸入症例に対応するため、MRワクチンやMMRワクチン、ワクチン接種に必要な注射器などの備品の十分な在庫を確保することを推奨しています。また国内外を問わず、麻しんの流行が続いている地域、避難民、先住民族、その他の脆弱な人々の中で活動を行う予定の人を含め、出入国する海外渡航者が国のスキームに従ってワクチン接種サービスを受けられるようにすることを奨励しています。

WHOは、海外渡航者に対し、出発前に麻しん含有ワクチンの接種状況を確認し、更新するよう勧告しています。麻しんが流行している地域から渡航したワクチン未接種の人で、麻しん患者との接触歴や、麻しん感染と一致する症状や徴候がある人は、海外渡航に出る前に現地の保健当局に相談するべきです。現時点では、海外渡航を厳格に制限するような追加措置は必要ありません。

出典

World Health Organization (28 April 2025). Disease Outbreak News; Measles – Region of the Americas.
Availble at:
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2025-DON565

備考

This translation was not created by the World Health Organization(WHO). WHO is not responsible for the content or accuracy of this translation. The original English edition “Measles – Region of the Americas. Geneva: World Health Organization; 2025. License: CC BY-NC-SA 3.0 IGO” shall be the binding and authentic edition.