チクングニア熱-レユニオン島とマヨット島(2025年5月12日)
海外へ渡航される皆様へ
今回レユニオン島とマヨット島(インド洋西部の島々)で報告されたチクングニア熱は、ネッタイシマカやヒトスジシマカなどの蚊が媒介する、全世界の熱帯から亜熱帯を中心に流行がみられる感染症です。レユニオン島とマヨット島では約20年ぶりに大規模な流行が報告されています。症状は発熱、関節痛が典型的で、通常は2から7日間で回復しますが、時に関節痛が数週間から数年続くことがあります。また、新生児や基礎疾患のある高齢者は重症化リスクが高いと考えられており、重症化すると、臓器障害などにより死亡する場合もあります。
以下の点を事前に確認して、健康に気をつけて渡航してください。
*なお、現在、日本国内で承認されたチクングニア熱のワクチンはありません。
チクングニア熱は、流行国で蚊に刺されることが主な感染経路です。蚊に刺されないよう、以下のような対策をとることで、感染リスクを減らすことができます。
・長袖のシャツや長ズボンを着用し、素足を避けるなど、肌の露出を避ける
・肌が露出している部分には虫よけ剤(忌避剤)を使用する
・屋内では網戸やエアコン、殺虫剤処理された蚊帳を使用し、蚊の侵入を避ける
2.体調不良時の行動
渡航中に発熱、関節痛など、チクングニア熱を疑う症状が出た場合は、同じような症状が出るほかの感染症の可能性も考慮して、速やかに現地の医療機関を受診し、渡航歴・現地での行動を必ず伝えてください。
帰国後1~2週間程度の期間は、ご自身の健康状態に注意し、異常があれば速やかに医療機関に相談してください。この際も渡航歴・現地での行動を伝えてください。
流行地域からの帰国後1週間は、感染している可能性も考慮し、蚊を介して他の方に感染が起こることを防ぐために長袖着用・忌避剤・蚊帳を用いて蚊に刺されないよう徹底してください。
そのほか、海外渡航に関する一般的な注意事項は「ここに注意!海外渡航にあたって」をご参照ください。
以下のDisease Outbreak Newsの翻訳は、厚生労働省委託事業「国際感染症危機管理対応人材育成・派遣事業」にて翻訳・メッセージ原案を作成しています。
以下の点を事前に確認して、健康に気をつけて渡航してください。
- 渡航前の情報収集
*なお、現在、日本国内で承認されたチクングニア熱のワクチンはありません。
- 渡航中の健康管理
チクングニア熱は、流行国で蚊に刺されることが主な感染経路です。蚊に刺されないよう、以下のような対策をとることで、感染リスクを減らすことができます。
・長袖のシャツや長ズボンを着用し、素足を避けるなど、肌の露出を避ける
・肌が露出している部分には虫よけ剤(忌避剤)を使用する
・屋内では網戸やエアコン、殺虫剤処理された蚊帳を使用し、蚊の侵入を避ける
2.体調不良時の行動
渡航中に発熱、関節痛など、チクングニア熱を疑う症状が出た場合は、同じような症状が出るほかの感染症の可能性も考慮して、速やかに現地の医療機関を受診し、渡航歴・現地での行動を必ず伝えてください。
- 帰国後の対応
帰国後1~2週間程度の期間は、ご自身の健康状態に注意し、異常があれば速やかに医療機関に相談してください。この際も渡航歴・現地での行動を伝えてください。
流行地域からの帰国後1週間は、感染している可能性も考慮し、蚊を介して他の方に感染が起こることを防ぐために長袖着用・忌避剤・蚊帳を用いて蚊に刺されないよう徹底してください。
そのほか、海外渡航に関する一般的な注意事項は「ここに注意!海外渡航にあたって」をご参照ください。
以下のDisease Outbreak Newsの翻訳は、厚生労働省委託事業「国際感染症危機管理対応人材育成・派遣事業」にて翻訳・メッセージ原案を作成しています。
状況の概要
2024年8月以降、レユニオン島でチクングニア熱の広範な流行が確認されており、マヨット島でも地域感染例が増加しています。チクングニア熱の流行や風土病としての感染は世界各地の国や地域で毎年報告されていますが、インド洋諸島ではここ20年近く大規模な流行は発生していません。レユニオン島では、2025年5月4日現在、47,500例を超える症例と12例の関連死亡例が報告されており、島全体で高い感染率が続いています。マヨット島では、2005~2006年以来となる地域感染例が確認され、同様の大規模流行への懸念が高まっています。流行を封じ込めるため、監視強化、媒介昆虫駆除活動、新たな標的ワクチン接種活動など、公衆衛生対応策が実施されていますが、インド洋諸島ではさらなる流行が予想されます。
(訳注:現在、日本国内で承認されたチクングニア熱のワクチンはありません。)
(訳注:現在、日本国内で承認されたチクングニア熱のワクチンはありません。)
発生の詳細
レユニオン島、フランス
2024年8月、地域の保健当局であるフランス地域圏保健局(ARS:Agence Régionale de Santé)レユニオン支局は、チクングニア熱の地域内感染例3例を報告しました。2024年8月の発生開始から2025年5月4日までの累計で、島内ではチクングニア熱の確定症例が47,500例以上、疑い患者の受診者数が17万件以上報告されています。症例の急増は2025年初頭から確認され、週ごとの症例数は2024年末の30例から、2025年3月10日から16日の週(疫学週第11週)には4,000例に増加し、100倍を超える増加を示しました。
全体的に症状は軽微でしたが、2025年1月1日から5月4日までに340人の入院例が報告されました。入院患者の約半数(43%)は65歳以上であり、約25%は生後6か月未満の乳児でした。入院患者の95%以上は、基礎疾患、年齢(65歳以上および乳児)、妊娠など、重症化リスクを少なくとも1つ有していました。さらに、妊婦74人と生後6か月未満の乳児48人が短期観察(2~3日間)のために入院しました。
この期間に、重症症例(少なくとも1つの臓器不全を伴う症例と定義される)が66例報告されています。この中には、65歳以上の基礎疾患を持つ成人36人、65歳未満で基礎疾患を持つ人7人、生後3か月未満の乳児23人が含まれています。3月9日から4月27日(疫学週第11週~第17週)の間に発生した、基礎疾患を持つ70歳以上の死亡例12例がチクングニア熱との関連があると分類されました。また、新生児死亡1例を含む28人の死亡例について、現在チクングニア熱との関連が調査されています。
累計感染者数は増加を続けており、特にル・タンポンをはじめとする南部の自治体がウイルスの影響を最も受けています。現在までに、すべての自治体で症例が報告されています。
レユニオン島での前回の大規模な流行は 2005 年から 2006 年の間に発生し、感染例は合計で244,000例から300,000例と推察されています。
2025年3月には、レユニオン島を訪れた旅行者による輸入症例が、マヨット島(2例)、ワリス・フツナ島(1例)、マルティニーク島(1例)で報告されました。
図1:2025年1月1日から4月27日までのレユニオン島におけるチクングニア熱の確定症例数(発症週別)
マヨット島、フランス
2025年5月4日現在、地域保健当局であるARSのフランス・マヨット支局では、チクングニア熱の症例が合計116例報告されており、そのうち29例は輸入症例、57例は地域内感染例、30例は調査中となっています。最初の輸入症例は3月5日に島の北東部で確認され、その後、複数の地区で症例が報告されました。これは、地域内感染によるチクングニア熱の症例としては、約7,300例の症例が発生した2005~2006年のアウトブレイク以来のものです。入院例1例が報告されていますが、これまでのところ死亡例は報告されていません。
2024年8月、地域の保健当局であるフランス地域圏保健局(ARS:Agence Régionale de Santé)レユニオン支局は、チクングニア熱の地域内感染例3例を報告しました。2024年8月の発生開始から2025年5月4日までの累計で、島内ではチクングニア熱の確定症例が47,500例以上、疑い患者の受診者数が17万件以上報告されています。症例の急増は2025年初頭から確認され、週ごとの症例数は2024年末の30例から、2025年3月10日から16日の週(疫学週第11週)には4,000例に増加し、100倍を超える増加を示しました。
全体的に症状は軽微でしたが、2025年1月1日から5月4日までに340人の入院例が報告されました。入院患者の約半数(43%)は65歳以上であり、約25%は生後6か月未満の乳児でした。入院患者の95%以上は、基礎疾患、年齢(65歳以上および乳児)、妊娠など、重症化リスクを少なくとも1つ有していました。さらに、妊婦74人と生後6か月未満の乳児48人が短期観察(2~3日間)のために入院しました。
この期間に、重症症例(少なくとも1つの臓器不全を伴う症例と定義される)が66例報告されています。この中には、65歳以上の基礎疾患を持つ成人36人、65歳未満で基礎疾患を持つ人7人、生後3か月未満の乳児23人が含まれています。3月9日から4月27日(疫学週第11週~第17週)の間に発生した、基礎疾患を持つ70歳以上の死亡例12例がチクングニア熱との関連があると分類されました。また、新生児死亡1例を含む28人の死亡例について、現在チクングニア熱との関連が調査されています。
累計感染者数は増加を続けており、特にル・タンポンをはじめとする南部の自治体がウイルスの影響を最も受けています。現在までに、すべての自治体で症例が報告されています。
レユニオン島での前回の大規模な流行は 2005 年から 2006 年の間に発生し、感染例は合計で244,000例から300,000例と推察されています。
2025年3月には、レユニオン島を訪れた旅行者による輸入症例が、マヨット島(2例)、ワリス・フツナ島(1例)、マルティニーク島(1例)で報告されました。
図1:2025年1月1日から4月27日までのレユニオン島におけるチクングニア熱の確定症例数(発症週別)

マヨット島、フランス
2025年5月4日現在、地域保健当局であるARSのフランス・マヨット支局では、チクングニア熱の症例が合計116例報告されており、そのうち29例は輸入症例、57例は地域内感染例、30例は調査中となっています。最初の輸入症例は3月5日に島の北東部で確認され、その後、複数の地区で症例が報告されました。これは、地域内感染によるチクングニア熱の症例としては、約7,300例の症例が発生した2005~2006年のアウトブレイク以来のものです。入院例1例が報告されていますが、これまでのところ死亡例は報告されていません。
チクングニア熱の疫学
チクングニア熱は、発熱と重度の関節痛を引き起こす節足動物媒介性のウイルス感染症(アルボウイルス感染症)です。トガウイルス科アルファウイルス属に属するRNAウイルスによって引き起こされます。チクングニアウイルス(CHIKV)は、感染した雌の蚊、特にネッタイシマカとヒトスジシマカに刺されることでヒトに感染します。これら2種の蚊は、デングウイルスやジカウイルスなどの他のウイルスも媒介します。これらの蚊は主に日中に活動しますが、活動が活発になるのは早朝と夕方です。
チクングニア熱の症状は、感染した蚊に刺されてから4~8日後(範囲:2~12日後)に現れます。症状は2~7日間続くことがありますが、一般的には自然に治まります。この病気は突然の発熱を特徴とし、しばしば激しい関節痛を伴います。その他のよくある症状や兆候には、関節のこわばり、関節炎、頭痛、倦怠感、発疹などがあります。関節痛はしばしば生活に支障をきたし、通常は数日間続きますが、数週間、数か月あるいは数年続くこともあります。チクングニア熱の症状は他のアルボウイルス感染症と類似しているため、デング熱などが流行している地域では誤診される可能性があります。
ほとんどの患者は完全に回復しますが、まれに眼、心臓、神経の合併症が報告されています。感染した母親から出産時に感染したり、感染した蚊に生後数週間以内に刺された新生児、基礎疾患のある高齢者では重症化リスクが高くなります。重症患者は、致命的な臓器障害を起こすリスクがあるため、入院が必要です。
現在得られているエビデンスから、回復した人は将来のチクングニア熱に対する免疫を獲得する可能性が高いことが示唆されています。治療は主に症状の緩和に重点が置かれ、関節痛には鎮痛剤、発熱には解熱剤を使用します。出血リスクを軽減するため、デング熱が否定されるまでは、アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬は避けてください。チクングニア熱に特異的な抗ウイルス薬による治療法はありません。
チクングニア熱の症状は、感染した蚊に刺されてから4~8日後(範囲:2~12日後)に現れます。症状は2~7日間続くことがありますが、一般的には自然に治まります。この病気は突然の発熱を特徴とし、しばしば激しい関節痛を伴います。その他のよくある症状や兆候には、関節のこわばり、関節炎、頭痛、倦怠感、発疹などがあります。関節痛はしばしば生活に支障をきたし、通常は数日間続きますが、数週間、数か月あるいは数年続くこともあります。チクングニア熱の症状は他のアルボウイルス感染症と類似しているため、デング熱などが流行している地域では誤診される可能性があります。
ほとんどの患者は完全に回復しますが、まれに眼、心臓、神経の合併症が報告されています。感染した母親から出産時に感染したり、感染した蚊に生後数週間以内に刺された新生児、基礎疾患のある高齢者では重症化リスクが高くなります。重症患者は、致命的な臓器障害を起こすリスクがあるため、入院が必要です。
現在得られているエビデンスから、回復した人は将来のチクングニア熱に対する免疫を獲得する可能性が高いことが示唆されています。治療は主に症状の緩和に重点が置かれ、関節痛には鎮痛剤、発熱には解熱剤を使用します。出血リスクを軽減するため、デング熱が否定されるまでは、アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬は避けてください。チクングニア熱に特異的な抗ウイルス薬による治療法はありません。
公衆衛生上の取り組み
レユニオン島、フランス
レユニオン県は、2025年1月13日に市民安全対策機構(Organisation de la Réponse de Sécurité Civile:ORSEC)のアルボウイルス対策計画のうち低い程度の流行を意味するレベル3を発動しました。その後3月14日に中程度の流行を意味するレベル4に強化されました。ORSECアルボウイルス対策計画は、フランスで使用されている包括的な緊急対応の枠組みである県別ORSEC計画の特定の部門の1部です。デング熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症などの蚊媒介性疾患への対策を行うために設計されており、アルボウイルスの予防と監視の確保、関係者の調整、介入方法の決定などを目的としています。ORSECアルボウイルス対策計画レベル4の発動以来、レユニオンの地域保健当局はさまざまな対策を実施しています。
1.新生児および乳児におけるチクングニア熱の重症例の管理:レユニオン大学病院センター(Centre Hospitalier Universitaire Sud Réunion)の新生児科、集中治療室、小児集中治療室では、小児チクングニア熱の重症例の管理プロトコルを策定しました。これには、専門の新生児科医または小児神経科医による1か月後のフォローアップが含まれており、脳炎や神経学的異常が認められた場合は追加のフォローアップ診察が予定されています。
2.媒介昆虫対策:レユニオン島保健局の能力強化のため、媒介昆虫対策の専門家を増員しました。さらに、現地の媒介昆虫対策チームは島内の介入拠点の数を増やしました。子供と妊婦向けに、長期間殺虫効果が続く処理をされた蚊帳の調達も進められています。
3.フランス国家保健予備軍の動員による病院における媒介昆虫対策と救命医療のための人的支援:フランスは国家保健予備軍を通じて、環境技術者と媒介昆虫対策の専門家を動員し、レユニオン島の媒介昆虫対策能力を強化してきました。今後、島内の病院を支援するために、医療従事者のさらなる動員が期待されています。
4.ワクチン接種:65歳未満の基礎疾患のある成人、および媒介昆虫対策従事者など、感染リスクの高い職業従事者へのワクチン接種を実施します。現段階では、妊婦および65歳以上の方への接種は推奨されません。ワクチン接種キャンペーンは4月7日に開始されました。
5.病院レベルでの緩和戦略:病院におけるチクングニア熱症例の急増の影響を緩和するために、入院能力を高め、患者の流れを合理化するためのさまざまな戦略が実施されています。
マヨット島、フランス
レユニオン県は、2025年1月13日に市民安全対策機構(Organisation de la Réponse de Sécurité Civile:ORSEC)のアルボウイルス対策計画のうち低い程度の流行を意味するレベル3を発動しました。その後3月14日に中程度の流行を意味するレベル4に強化されました。ORSECアルボウイルス対策計画は、フランスで使用されている包括的な緊急対応の枠組みである県別ORSEC計画の特定の部門の1部です。デング熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症などの蚊媒介性疾患への対策を行うために設計されており、アルボウイルスの予防と監視の確保、関係者の調整、介入方法の決定などを目的としています。ORSECアルボウイルス対策計画レベル4の発動以来、レユニオンの地域保健当局はさまざまな対策を実施しています。
1.新生児および乳児におけるチクングニア熱の重症例の管理:レユニオン大学病院センター(Centre Hospitalier Universitaire Sud Réunion)の新生児科、集中治療室、小児集中治療室では、小児チクングニア熱の重症例の管理プロトコルを策定しました。これには、専門の新生児科医または小児神経科医による1か月後のフォローアップが含まれており、脳炎や神経学的異常が認められた場合は追加のフォローアップ診察が予定されています。
2.媒介昆虫対策:レユニオン島保健局の能力強化のため、媒介昆虫対策の専門家を増員しました。さらに、現地の媒介昆虫対策チームは島内の介入拠点の数を増やしました。子供と妊婦向けに、長期間殺虫効果が続く処理をされた蚊帳の調達も進められています。
3.フランス国家保健予備軍の動員による病院における媒介昆虫対策と救命医療のための人的支援:フランスは国家保健予備軍を通じて、環境技術者と媒介昆虫対策の専門家を動員し、レユニオン島の媒介昆虫対策能力を強化してきました。今後、島内の病院を支援するために、医療従事者のさらなる動員が期待されています。
4.ワクチン接種:65歳未満の基礎疾患のある成人、および媒介昆虫対策従事者など、感染リスクの高い職業従事者へのワクチン接種を実施します。現段階では、妊婦および65歳以上の方への接種は推奨されません。ワクチン接種キャンペーンは4月7日に開始されました。
5.病院レベルでの緩和戦略:病院におけるチクングニア熱症例の急増の影響を緩和するために、入院能力を高め、患者の流れを合理化するためのさまざまな戦略が実施されています。
- 大学病院センターの前には、チクングニア熱の患者を迅速に識別し、チクングニア熱専門の治療経路に誘導するためのトリアージテントが設置されています。
- 追加の入院ベッドが設置されました。
- 緊急でない場合は救急外来の受診を避け、まずかかりつけ医に相談するか、救急サービスに連絡するように勧告されています。
マヨット島、フランス
-
- 3月26日、マヨット県は、チクングニア熱の地域内感染流行の確認を受けて、ORSECアルボウイルス対策計画のレベル2Aを発動しました。
- 特定された症例の周囲に蚊帳や忌避剤を重点的に配布し、殺虫剤や幼虫駆除剤を散布するといった、媒介蚊の駆除活動が強化されました。
- 保健当局は、診断能力と検査能力を高め、院内サーベイランスを強化し、スタッフと患者を守るための感染予防措置を実施することで、病院の能力を強化しました。
- 予防策や症状に関する情報を地域社会に伝え、疑わしい場合には早期に医師の診察を受けるよう促すための、一般向け啓発キャンペーンが拡大されました。
WHOの対応-
世界アルボウイルス・イニシアチブ(Global Arbovirus Initiative)の一環として、WHOは各国と積極的に協力し、医療および監視能力の強化に取り組んでいます。WHOは、以下の分野で各国を支援してきました。
- 医療サービスの組織化を含む、発生の可能性に対する準備と対応
- ガイドラインの公表、疫学的監視資料の提供、国家当局への技術支援を通じて、影響を受けた国々による効果的な統合的媒介昆虫監視・制御の実施
- 地域全体でタイムリーかつ正確な診断と症例検出を可能にするための、検査能力の増強
- ウェビナーや復習セッションを通じて、医療従事者や介護従事者に対する臨床研修を実施 - WHOの感染症情報ネットワーク(EPI-WIN)によるチクングニア熱に関するウェビナーを2025年5月7日に開催
- 大規模な流行が発生している国への専門家を派遣
- リスク評価とリスクコミュニケーションに関するアドバイスを提供
WHOによるリスク評価
チクングニア熱は主にヤブカ属の蚊によって媒介される疾患で、突然の発熱を特徴とし、しばしば重度の関節痛や炎症を伴います。これらの症状は時に強い衰弱を引き起こし、数か月から数年にわたって持続することがあります。感染に伴う死亡例の報告がありますが、通常は稀であり、重症患者で起こる可能性があります。重症のチクングニア熱は、主に基礎疾患のある高齢者や出産時に感染した乳児で発生します。チクングニアウイルスは、特にチクングニアウイルスへの免疫を持たない(未感染の)集団に侵入した場合、大規模な流行を引き起こす可能性があります。これらのアウトブレイクは高い罹患率を示し、公衆衛生システムには、チクングニア熱と、デング熱などの共存する蚊媒介性ウイルスによる疾患を鑑別するためのサーベイランス、症例管理、鑑別診断検査の実施という大きな負担がかかっています。チクングニアウイルスは、ウイルス血症の母親から生まれた新生児、分離したチクングニアウイルスや患者の検体を取り扱う検査担当者への感染、さらに輸血や血液製剤、臓器移植を介した感染がおこることもあります。
チクングニア熱の流行は、ネッタイシマカをはじめとするヤブカ属の蚊の個体数が多い、インド洋と太平洋の沿岸諸国および島しょ部で記録されています。一方で、2005年から2007年にかけてインド洋諸島で発生した大規模な流行は、当時レユニオン島とモーリシャス島でより多く生息していたヒトスジシマカによる感染拡大が特徴的でした。ウイルスの変異により、ヒトスジシマカの体内における増殖能が高まったことがこの流行を助長しました。レユニオン島では再びチクングニア熱の大規模な流行が発生しており、また、マヨット島では約20年ぶりに地域内感染例が報告されており、ウイルスの再侵入が示唆されています。
チクングニア熱は感染した旅行者によって新たな地域に持ち込まれる可能性があり、媒介蚊と、感受性のある集団が存在する場合には現地で伝播する可能性があります。
現在の流行の影響は、協調的な公衆衛生対応と臨床管理の能力、そしてアルボウイルスに感受性のある人口の割合など、いくつかの要因に左右されます。この感受性のある人口には、過去にウイルスに曝露したことがなく免疫を持たない人々が含まれます。現在の状況では、過去20年間は感染伝播が確認されていません。小児、高齢者、そして糖尿病、高血圧、心血管疾患などの既往症のある人は、重症化するリスクが高くなります。さらに、蚊の個体数が多く、媒介蚊の駆除対策が不十分な地域に住む人々は、感染リスクが高くなります。ワクチン接種、媒介蚊の駆除、地域社会への教育といった効果的な公衆衛生戦略は、感受性のある人の割合を下げ、流行を予防するために不可欠です。
一部の地域では、医療施設が不足し、地理的なアクセスが制限されているため、人々が基本的な医療を受けることが困難になっています。また、予防と管理に必要な物資の在庫切れ、臨床検査のための試薬や消耗品の不足、現場チームや医療従事者への再訓練の必要性といった課題も生じています。
レユニオン島では、約20年ぶりの大規模な流行が報告されており、加えてマヨット島での島内での感染が始まったことは、免疫を持たないヒト-蚊-ヒト間の感染環を維持するのに十分な数のネッタイシマカの個体数が存在し、インド洋諸島でのさらなる流行が予想されることを示唆しています。
チクングニア熱の流行は、ネッタイシマカをはじめとするヤブカ属の蚊の個体数が多い、インド洋と太平洋の沿岸諸国および島しょ部で記録されています。一方で、2005年から2007年にかけてインド洋諸島で発生した大規模な流行は、当時レユニオン島とモーリシャス島でより多く生息していたヒトスジシマカによる感染拡大が特徴的でした。ウイルスの変異により、ヒトスジシマカの体内における増殖能が高まったことがこの流行を助長しました。レユニオン島では再びチクングニア熱の大規模な流行が発生しており、また、マヨット島では約20年ぶりに地域内感染例が報告されており、ウイルスの再侵入が示唆されています。
チクングニア熱は感染した旅行者によって新たな地域に持ち込まれる可能性があり、媒介蚊と、感受性のある集団が存在する場合には現地で伝播する可能性があります。
現在の流行の影響は、協調的な公衆衛生対応と臨床管理の能力、そしてアルボウイルスに感受性のある人口の割合など、いくつかの要因に左右されます。この感受性のある人口には、過去にウイルスに曝露したことがなく免疫を持たない人々が含まれます。現在の状況では、過去20年間は感染伝播が確認されていません。小児、高齢者、そして糖尿病、高血圧、心血管疾患などの既往症のある人は、重症化するリスクが高くなります。さらに、蚊の個体数が多く、媒介蚊の駆除対策が不十分な地域に住む人々は、感染リスクが高くなります。ワクチン接種、媒介蚊の駆除、地域社会への教育といった効果的な公衆衛生戦略は、感受性のある人の割合を下げ、流行を予防するために不可欠です。
一部の地域では、医療施設が不足し、地理的なアクセスが制限されているため、人々が基本的な医療を受けることが困難になっています。また、予防と管理に必要な物資の在庫切れ、臨床検査のための試薬や消耗品の不足、現場チームや医療従事者への再訓練の必要性といった課題も生じています。
レユニオン島では、約20年ぶりの大規模な流行が報告されており、加えてマヨット島での島内での感染が始まったことは、免疫を持たないヒト-蚊-ヒト間の感染環を維持するのに十分な数のネッタイシマカの個体数が存在し、インド洋諸島でのさらなる流行が予想されることを示唆しています。
WHOのアドバイス
WHOは、すべての国に対し、1)症例を迅速に探知し、管理するための医療能力、2)症例を適時に認識・確定するための検査能力、3)発生動向を迅速に把握し、制御措置を実施するためのサーベイランス能力を強化することの重要性を改めて強調しています。近隣諸国で症例が発生する可能性もあるため、国境を越えた積極的な連携と情報共有を行い、地域の状況を注意深く監視し続けることが重要です。
WHOは、各国に対し、症例の検出・確認、患者の管理、そして地域社会の支援を得た媒介蚊を減らすための社会的コミュニケーション戦略の実施能力の開発・維持を推奨しています。これには、医療従事者に対する症例や潜在的な合併症の診断に関する研修と注意喚起、重症化リスクの高いグループの特定、適切な臨床管理の確保、そして死亡を防ぐための症例のフォローアップが含まれます。感染率を低減するには、標的を絞った総合的な媒介昆虫監視と制御対策が不可欠です。
チクングニア熱は、高い罹患率を伴う大規模な流行を引き起こす可能性があり、免疫のない人の3分の1から4分の3に影響を与え、医療システムに大きな負担をかける可能性があります。重症例の早期発見と適切な医療へのアクセスは、合併症への対処と死亡率の低減に不可欠です。
予防策は主に日中に刺咬するヤブカ属の蚊の監視と制御に重点が置かれています。 蚊に刺されないようにするには、屋内外を問わず、蚊への皮膚の露出を最小限に抑える服装が推奨されます。忌避剤は、製品ラベルの指示に従って、露出した皮膚や衣類に塗布することができます。
現在、複数の国で承認を受けている、もしくはリスクのある集団への使用が推奨されているチクングニア熱ワクチンが2種類ありますが、これらのワクチンはまだ広く入手可能ではなく、広く使用されているものでもありません。WHOと外部の専門家アドバイザーは、世界的なチクングニア熱の発生状況を踏まえ、ワクチンの臨床試験および市販後の有効性・安全性に関するデータを検証し、使用に関する推奨事項を策定しています。
各国の血液製剤の管理当局は、チクングニアウイルスの輸血による感染の可能性を特定するために、疫学情報を監視し、血液監視体制を強化する必要があります。疫学状況とリスク評価に基づき、チクングニアウイルスの輸血による感染を防ぐための適切な安全対策を講じる必要があります。
現時点では、国際的な交通および貿易に関連する措置は必要とされていません。
WHOは、各国に対し、症例の検出・確認、患者の管理、そして地域社会の支援を得た媒介蚊を減らすための社会的コミュニケーション戦略の実施能力の開発・維持を推奨しています。これには、医療従事者に対する症例や潜在的な合併症の診断に関する研修と注意喚起、重症化リスクの高いグループの特定、適切な臨床管理の確保、そして死亡を防ぐための症例のフォローアップが含まれます。感染率を低減するには、標的を絞った総合的な媒介昆虫監視と制御対策が不可欠です。
チクングニア熱は、高い罹患率を伴う大規模な流行を引き起こす可能性があり、免疫のない人の3分の1から4分の3に影響を与え、医療システムに大きな負担をかける可能性があります。重症例の早期発見と適切な医療へのアクセスは、合併症への対処と死亡率の低減に不可欠です。
予防策は主に日中に刺咬するヤブカ属の蚊の監視と制御に重点が置かれています。 蚊に刺されないようにするには、屋内外を問わず、蚊への皮膚の露出を最小限に抑える服装が推奨されます。忌避剤は、製品ラベルの指示に従って、露出した皮膚や衣類に塗布することができます。
現在、複数の国で承認を受けている、もしくはリスクのある集団への使用が推奨されているチクングニア熱ワクチンが2種類ありますが、これらのワクチンはまだ広く入手可能ではなく、広く使用されているものでもありません。WHOと外部の専門家アドバイザーは、世界的なチクングニア熱の発生状況を踏まえ、ワクチンの臨床試験および市販後の有効性・安全性に関するデータを検証し、使用に関する推奨事項を策定しています。
各国の血液製剤の管理当局は、チクングニアウイルスの輸血による感染の可能性を特定するために、疫学情報を監視し、血液監視体制を強化する必要があります。疫学状況とリスク評価に基づき、チクングニアウイルスの輸血による感染を防ぐための適切な安全対策を講じる必要があります。
現時点では、国際的な交通および貿易に関連する措置は必要とされていません。
出典
World Health Organization(12 May 2025) Disease Outbreak News; Chikungunya - La Réunion and Mayotte
Available at:
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2025-DON567
Available at:
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2025-DON567
備考
This translation was not created by the World Health Organization (WHO). WHO is not responsible for the content or accuracy of this translation. The original English edition “Chikungunya - La Réunion and Mayotte.Geneva: World Health Organization; 2025. Licence: CC BY-NC-SA 3.0 IGO” shall be the binding and authentic edition. “