エボラウイルス病-コンゴ民主共和国(2025年12月1日)

海外へ渡航される皆様へ

今回コンゴ民主共和国(DRC)で報告されたエボラウイルス病(EVD)は、エボラウイルスによる感染症です。エボラウイルスに感染した動物や患者の血液、体液、排泄物等との直接接触が主な感染経路です。潜伏期間は感染してから2~21日程度で、初期症状は発熱、頭痛、筋肉痛などで、下痢、嘔吐、発疹などが出現することもあります。進行すると出血傾向、意識障害などの重篤な症状を示し死亡することがあります。
今回のアウトブレイクは終息が宣言されていますが、DRCでは過去にも発生報告があるので、以下の点を事前に確認して、健康に気を付けて渡航してください。

渡航前の情報収集
EVDに関する情報や、その他のDRCで流行している感染症に関する情報、渡航先の医療情報を、FORTHや外務省などの公式な情報源で確認してください。トラベルクリニックなどで渡航前に感染対策などを相談することも可能です。

渡航中の健康管理
1.基本的な感染予防策
アルコール消毒や石鹸などを使用した手洗いなどの手指衛生、マスクの着用や咳エチケットといった基本的感染対策、また野生動物の肉(Bushmeat、ジビエ肉)の喫食を避けることは、EVDに限らず、さまざまな感染症に対して有効です。

2.リスクを軽減するための対策
EVDは、感染した動物や患者の血液、体液、排泄物等との直接接触が主な感染経路なので、これらとの接触や遺体に触れること、流行地域での葬儀への参列などは可能な限り避けてください。こうした状況を避けられない場合は手袋やマスクを使用し、直接の接触を避けることで、感染するリスクを減らすことができます。

3.体調不良時の行動
流行地域で上記のようなリスク行動があり、渡航中に発熱、頭痛などEVDを疑う症状が出た場合は、速やかに現地の医療機関を受診し、渡航歴・現地での行動を必ず伝えてください。同じような症状が出るほかの感染症も考えられますので、診断を受けることが重要です。

帰国後の対応
流行地域へ立ち寄り、日本へ帰国した時に体調に異常があった場合は、空港や港の検疫所で渡航歴・現地での行動を伝えた上で相談してください。
帰国後1~2週間程度の期間、ご自身の健康状態に注意し、異常があれば速やかに医療機関に相談してください。この際も渡航歴・現地での行動を伝えてください。

そのほか、海外渡航に関する一般的な注意事項は「ここに注意!海外渡航にあたって」をご参照ください。

以下は、WHOのDisease Outbreak Newsの翻訳であり、厚生労働省委託事業「国際感染症危機管理対応人材育成・派遣事業」にて翻訳・メッセージ原案を作成しています。

状況の概要

2025年12月1日、コンゴ民主共和国(DRC)保健省は、2025年9月4日に宣言されたエボラウイルス病(EVD)のアウトブレイク終息を宣言しました。最後のEVD確定例が2025年10月19日にウイルス検査で陰性となり退院してから、潜伏期間の2倍の期間(合計42日間)が経過した後に、終息が宣言されました。カサイ州ブラペ(Bulape)の6つの保健区域から、死亡例45例(致命率(CFR):70.3%)を含む合計64 例(確定例53例、可能性例11例)が報告されました。
WHOと関係機関は、流行封じ込めのため、同国政府に技術支援、運営支援、財政支援を提供しました。これは、同国の16回目のEVDのアウトブレイクです。アウトブレイクの終息が宣言されましたが、保健当局は、再発を迅速に探知し対応できるようサーベイランスを維持しています。リスクコミュニケーションとコミュニティエンゲージメントの活動を継続することで、正確な情報を提供し、コミュニティのフィードバックや噂を監視し、このアウトブレイクで感染した人々に対する偏見を抑える取り組みを支援しています。

発生の詳細

2025年9月4日、DRCにおけるEVDアウトブレイクが宣言されました。2025年11月30日時点で、カサイ州ブラペ保健区域の6つの保健地域(バンバライ(Bambalaie)、ブラペ(Bulape)、ブラペ・コム(Bulape Com)、ディコロ(Dikolo)、インゴンゴ(Ingongo)及びムピアンガ(Mpianga))から、死亡例45例(CFR 70.3%)を含む合計64例(確定例53例、可能性例11例)が報告されています。2025年9月25日に報告された最後の確定例以降、EVDの新規確定例は報告されていません。

医療従事者は5例(看護師4例、検査技師1例)で、うち3例が死亡しました。アウトブレイクの流行の中心地はディコロ保健地域(26例、死亡例15例)とブラペ保健地域(24例、死亡例22例)であり、報告された全症例の78.1%、全死亡例の82.2%を占めています。アウトブレイクは当初、院内感染と感染リスクの高い葬儀が関わっており、幼児の高い死亡率が認められました。2025年10月12日時点で、合計572人の接触者が追跡されていました。

2025年12月1日、保健省は、アウトブレイクの終息を宣言しました。これは、WHOの勧告に基づき、最後のEVD確定例が2025年10月19日にウイルス検査で陰性となり退院してから、潜伏期間の2倍の期間(合計42日間)が経過した後に宣言されました。



図1. コンゴ民主共和国(DRC)カサイ州ブラペ保健区域におけるエボラウイルス病(EVD)の確定例、可能性例および死亡例の分布、2025年11月30日時点



図2:コンゴ民主共和国(DRC)カサイ州ブラペ保健区域におけるエボラウイルス病(EVD)の確定例および可能性例の発生状況、2025年11月30日時点

EVDの疫学

EVDは、エボラウイルス(EBOV)によって引き起こされる重症疾患です。このウイルスは、感染した野生動物の血液または分泌物との濃厚接触によりヒトに伝播し、その後、体液、臓器、または汚染された表面および物質との直接接触によりヒトからヒトへ感染し、感染が拡大します。

潜伏期間は2~21日で、通常7~11日です。感染者は、潜伏期間中は感染力を持ちませんが、初期症状が出現すると共に感染源にもなります。したがって、伝播リスクは発症時に生じ、疾患が重症になるに従って高まります。

過去のアウトブレイクでは致命率(CFR)が25~90%と報告されています。この疾患は、非特異的な症状/徴候(腹痛、食欲不振、疲労、倦怠感、筋肉痛、喉の痛みなど)を伴う突然の発熱が特徴で、通常、その数日後に悪心、嘔吐、下痢、ときにさまざまな発疹が出現します。重症になると、出血症状、脳症、ショック/低血圧、多臓器不全が生じ、感染した妊婦では自然流産が生じる可能性があります。回復しても長期の後遺症(関節痛、神経認知障害、ぶどう膜炎など、場合により、白内障が起きることもあります) や免疫特権部位(中枢神経系、眼、精巣など)に、有症状もしくは無症状の持続感染が発生する可能性があります。家族、医療従事者や介護者、遺体に直接接触する埋葬の儀式への参加者は特に感染リスクがあります。

公衆衛生上の取り組み

保健当局は、WHOと関係機関の支援を受けて、以下のような公衆衛生対策を実施していますが、取組みはこれらに限定されるものではありません。

調整
  • 保健省は、WHO及び関係機関とアウトブレイクへの対応を調整し、ブラペ保健区域のインシデントマネジメントチームが実地作業を監視しました。
  • 保健大臣が率いる高レベルの国家代表団がカサイ州を訪れ、対応行動を評価し、政府の関与を再確認し、あらたに建設されたエボラ治療センターを開設しました。
  • WHOは、同国の当局による速やかな対応の拡大・維持を支援するため、112名の専門家と最前線の対応者を派遣しました。
  • サーベイランス、症例管理、診断、ワクチン接種、感染予防と管理(IPC ; Infection Prevention and Control)、コミュニティエンゲージメント、運営準備における取り組みを進めるために、地域の戦略的備えと対応計画を立て、普及させました。
  • WHOは、対応業務を拡大するため2100万米ドルの支援を要請し、関係機関から拠出金の支援を受けました。

サーベイランス
  • ブラペ及び近隣地域でのサーベイランス活動を拡大し、100件以上のアラートを調査しました。
  • 簡略化した症例定義を用いて、地域社会ベースのサーベイランスを支援するよう地域保健従事者を訓練しました。
  • DRC赤十字のボランティアは、地域社会での死亡事例の報告、サーベイランスの取り組みの支援に関わる一方で、保健施設での死亡者サーベイランスが開始されました。
  • 疑い例を検知し管理するために、入国地点のスタッフの意識を高め、入国地点及び国境を含む管理地点でのサーベイランス、健康診査およびリスクコミュニケーションを強化しました。
  • 国境のコミュニティを、早期警告システムおよび全国サーベイランスネットワークに統合しました。
  • WHOは、ブラペに疫学者を配置し、アウトブレイクの終息宣言後の90日間のサーベイランス強化期間を支援します。

検査室
  • 保健省と関係機関は、検査室の能力を強化し、検査結果の所要時間を短縮するため移動検査室を配備しました。
  • 保健省は、最初に確認された症例の検体について全ゲノム塩基配列の解析を実施し、その結果からは今回のアウトブレイクは動物からヒトへの感染(スピルオーバー事象)による可能性が高いことが示唆されています。

症例管理
  • 保健省はWHOと関係機関の支援を受けて、ブラペにエボラ治療センターを設置しました。
  • 症例の管理戦略を強化し、すべてのホットスポットで可能性例と確定例にケアを提供できる能力を確保しました。
  • 緊急対応チームと関係機関が診療を支援しました。患者はモノクローナル抗体による治療を受けました。
  • WHOの専門家が、症例管理、必要不可欠な保健医療サービスの提供、回復者支援プログラムの実施を支援しました。

ワクチン接種
  • ブラペ保健区域、ブランバエ(Bulambae)保健区域、ムウェカ(Mweka)保健区域において合計47,577人がrVSVΔG-ZEBOV-GP(Ervebo®)エボラワクチンを接種しました。
  • 接触者および接触の可能性のある人、リスクの高い医療従事者や最前線で働く労働者に対して、リングワクチン接種戦略が実施され、ホットスポットでの地域的な対策を補完しました。
  • ワクチンの保管および流通を支援するため、カナンガ(Kananga)、ムウェカ、ツィカパ(Tshikapa)に超低温の設備が設置されました。

感染予防と管理(IPC)
  • IPC対応の調整機能を活性化し、確定例が立ち寄った場所での清掃・消毒を含むIPCリング対策を実施しました。
  • 医療従事者、地区指導者、一般市民に対し、疑い例の発見を強化し、適切なIPC対策を実施するよう勧告しました。
  • ブラペ総合病院、エボラ治療センター、ならびに4つの保健センターを監督し支援しました。

リスクコミュニケーションとコミュニティエンゲージメント(RCCE)
  • 統合的なコミュニティエンゲージメントアプローチが実施され、RCCEチームは、他の対応の柱と連携して感染が発生したコミュニティへ安全にアクセスすることができ、地域のサーベイランス、接触者追跡およびワクチン接種といった対応行動の受け入れを強化することができました。
  • 対象に合わせたリスクコミュニケーションのメッセージが作成・周知され、予防行動と早期の医療受診が促進されました。また、宗教指導者、教師、伝統的なヒーラー、その他のコミュニティにおいて信頼され影響力のある人々と継続的な地域連携活動を行うことで、信頼関係の構築と、より広範な対応活動におけるコミュニティの協力を支援しました。
  • EVDアウトブレイクの発生地域のコミュニティの知識、認識、経験、ニーズに対する理解を深め、解決策をよりよいものにするため、WHOは、コミュニティの評価を迅速に行い、技術ガイダンスと現場の専門知識を提供しました。これらは、コミュニティを保護するための適切かつ局所的な公衆衛生対策を知らせるために使用されています。地域保健ボランティアを訓練、支援し、コミュニティへ働きかけ、連携する地域の能力を高めました。

運営の支援と物流
  • WHOと関係機関は、感染地域へ補給品や人員の提供を加速するため、一時的な空路による輸送体制を確立しました。
  • WHOは、医療従事者とコミュニティを保護するため、150トン以上の医療用品と医療用具を届けました。他の後方支援には、アイソレーター、発電機、バイク、マットレス、患者用の食料品が含まれます。
  • 関係機関と調整し、遠隔地の保健区域に迅速にアクセスできました。

備えと準備
  • 近隣9か国のうち8か国は準備状況の評価を終えました。
  • 計画の立案にあたり、DRCにおいてリスクが高い州を支援しました。
  • 5つの保健区域の準備体制を構築しました。

性的搾取、虐待およびハラスメントの防止
  • 性的搾取、虐待およびハラスメントの防止(PRSEAH:Prevention of Sexual Exploitation, Abuse and Harassment)を、対応者への説明会、コミュニティ啓発、およびリスク分析を通して対応活動に統合しました。
  • 3つの教会の人と対応者/地域社会のメンバーに対して、PRSEAHの内容と報告方法を説明しました。
  • ブラペ保健区域の当局と協力するためのPRSEAHの連絡担当者を選定しました。
  • PRSEAHの原則と、情報の報告についてのポスターを、保健センターと保健局に掲示しました。

WHOによるリスク評価

これは、DRCにおける1976年以降16回目のEVDのアウトブレイクです。同国における直近のEVDアウトブレイクは、2022年に北キヴ州で報告されています。

このアウトブレイクは、既存のインフラが限られている、アクセスの悪い地域で発生しました。EVDが同国に常在していることから、今後もアウトブレイクの可能性が十分にあります。エボラウイルスは動物由来の感染に加え、近年の流行では生存者におけるウイルスの持続感染による再発生も報告されています。EVDの再流行は、DRCにおける公衆衛生の大きな懸念事項であり、国の回復する能力、アウトブレイクへの備えと対応力には依然として格差が残っています。DRCは、エムポックス、コレラ、麻しん(はしか)などいくつかのアウトブレイクに直面しています。また、同国は、長期にわたり経済的危機および政治的危機を経験しています。そのため、アウトブレイクに効率的に対応するための国の資源および能力は限られていました。

このアウトブレイクの流行の中心地は、アンゴラ共和国との国境付近(最も近い国境検問所から約100~200 km)でした。発生地域は、主要都市の中心部であるムブジマイ(Mbuji Mayi)およびカナンガ(Kananga)から比較的遠い、アクセスしにくい農村部ですが、州内の異なる地域間、特にブラペとツィカパの間では人の移動が頻繁にみられます。

今回のアウトブレイクは、人獣共通感染症の新たなスピルオーバー事象から生じ、ヒトからヒトへの感染が持続した可能性が最も高いと考えられます。医療従事者の感染および死亡が報告されており、これにより院内感染のリスクが上昇し、医療機関内でさらに感染が拡大しました。

2025年11月30日時点で、42日間連続で新規感染者が報告されなかったため、アウトブレイクの終息が宣言されました。

WHOからのアドバイス

調整
  • アウトブレイクを制御するには、多部門で調整したアプローチが必要です。
  • 重要な介入としては、臨床診療、サーベイランス、検査サービス、IPC/WASH、安全な埋葬、コミュニティエンゲージメントなどがあります。
  • 共同調査、報告の調和、リアルタイムのデータ共有のため、近隣諸国との協力が不可欠です。
  • 生存者のモニタリングを行いつつ生存者の団体との協力関係を維持することが、潜在的なリスクを軽減するための優先事項です。

サーベイランスと検査
  • コミュニティレベル、保健施設、入国地点/国境検問所でのサーベイランスを強化しなければなりません。
  • 疑い例を迅速に特定し、検査を行って隔離する必要があります。
  • 検査室の能力は、症例の適時の診断と確認を支援するものである必要があります。
  • さらなる伝播を予防するためには、接触者の追跡と生存者のモニタリングが不可欠です。

症例管理
  • EVDによる死亡率を低下させるためには、早期に診断し、支持療法を開始することが不可欠です。
  • WHOが推奨する治療には、Inmazeb®(3種の抗体を組み合わせたモノクローナル抗体)および Ebanga®(単一抗体)が含まれています。
  • エボラ治療センターは、バイオセキュリティとIPCを確実に行い、レッドゾーン内の患者の直接観察を可能にしなければなりません。安全かつ有効なケアを確実に提供するため、WHOと関係機関の革新的な解決策を用いる必要があります。

ワクチン接種
  • EBOVにより引き起こされたEVDアウトブレイク中のリングワクチン接種では、Ervebo®ワクチンが推奨されます。
  • 接種対象者は、確定例/疑い例の接触者および接触の可能性のある人、ならびに最前線で働く労働者などです。

リスクコミュニケーションとコミュニティエンゲージメント(RCCE)
  • コミュニティがEVDの徴候を確実に理解し、症状の迅速な報告の重要性を理解して、利用できる保健サービスを認識するため、可能であればRCCE介入の強化を維持すべきです。新たに出現したリスクや再興を示す可能性のある、懸念や噂、コミュニティの意識の変化を迅速に検知するため、コミュニティエンゲージメントとフィードバックシステムを維持する必要があります。
  • 回復した患者およびその家族に対する良いイメージを広め、差別を避けるため、地域の指導者、生存者のグループ、医療従事者と協働して、偏見を抑え、生存者の復帰を支援し続ける必要があります。

感染予防の管理/水・衛生プログラム(IPC/WASH)
備えと準備
  • 周辺諸国は、症例の早期発見、隔離、治療のための準備活動を強化する必要があります。
  • サーベイランス、検査室の能力、調整機能を強化する必要があります。
  • 医療施設を確保し、IPC/WASH及び症例管理についてスタッフの訓練を行う必要があります。

WHOは、今回のアウトブレイクについて入手可能な情報に基づき、DRCへの渡航や貿易を制限することを推奨していません。

出典

World Health Organization [1 December 2025]. Ebola virus disease - Democratic Republic of the Congo Available at:
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2025-DON589

備考

This translation was not created by the World Health Organization (WHO). WHO is not responsible for the content or accuracy of this translation. The original English edition “Ebola virus disease - Democratic Republic of the Congo. Geneva: World Health Organization; 2025. License: CC BY-NC-SA 3.0 IGO” shall be the binding and authentic edition.