季節性インフルエンザ-世界情勢(2025年12月10日)
海外へ渡航される皆様へ
季節性インフルエンザは、インフルエンザウイルスによる急性呼吸器感染症です。飛沫感染が主な感染経路で、接触感染でも拡がります。感染してから1~4日程度で発熱、咳、倦怠感、筋肉痛や関節痛といった症状が出現します。小児ではインフルエンザ脳症、基礎疾患のある方や高齢者ではウイルス性肺炎や二次性の細菌性肺炎により重症化することがあります。
日本を含む温帯地域では主に冬季に流行しますが、熱帯地域では季節を問わず流行します。
以下の点を事前に確認して、健康に気を付けて渡航してください。
インフルエンザウイルスは遺伝子変異を起こし、毎年少しずつその特性が変化していますが、インフルエンザワクチンは変異が起こっても感染予防、重症化予防に有効です。
石鹸と水での手洗いやアルコール消毒液の使用などの手指衛生、マスクの着用を含む咳エチケットといった基本的な感染対策はインフルエンザに対しても有効です。
2.体調不良時の行動
渡航中に発熱、咳などインフルエンザを疑う症状が出現し、現地の医療機関を受診する際は、渡航歴・現地での行動を必ず伝えてください。
帰国後、7日程度の期間、ご自身の健康状態に注意しましょう。体調不良により医療機関を受診する際は、渡航歴・現地での行動を伝えてください。
そのほか、海外渡航に関する一般的な注意事項は「ここに注意!海外渡航にあたって」をご参照ください。
以下は、WHOのDisease Outbreak Newsの翻訳であり、厚生労働省委託事業「国際感染症危機管理対応人材育成・派遣事業」にて翻訳・メッセージ原案を作成しています。
日本を含む温帯地域では主に冬季に流行しますが、熱帯地域では季節を問わず流行します。
以下の点を事前に確認して、健康に気を付けて渡航してください。
- 渡航前の情報収集
インフルエンザウイルスは遺伝子変異を起こし、毎年少しずつその特性が変化していますが、インフルエンザワクチンは変異が起こっても感染予防、重症化予防に有効です。
- 渡航中の健康管理
石鹸と水での手洗いやアルコール消毒液の使用などの手指衛生、マスクの着用を含む咳エチケットといった基本的な感染対策はインフルエンザに対しても有効です。
2.体調不良時の行動
渡航中に発熱、咳などインフルエンザを疑う症状が出現し、現地の医療機関を受診する際は、渡航歴・現地での行動を必ず伝えてください。
- 帰国後の対応
帰国後、7日程度の期間、ご自身の健康状態に注意しましょう。体調不良により医療機関を受診する際は、渡航歴・現地での行動を伝えてください。
そのほか、海外渡航に関する一般的な注意事項は「ここに注意!海外渡航にあたって」をご参照ください。
以下は、WHOのDisease Outbreak Newsの翻訳であり、厚生労働省委託事業「国際感染症危機管理対応人材育成・派遣事業」にて翻訳・メッセージ原案を作成しています。
状況の概要
季節性インフルエンザ(「インフルエンザ」)は、インフルエンザウイルスによって引き起こされる急性呼吸器感染症で、このウイルスは世界で一年中循環しています。病態は軽度から重度までさまざまで、入院や死亡に至ることもあります。ここ数か月で、世界的に季節性インフルエンザの活動性が高まっており、季節性インフルエンザA(H3N2)ウイルスが検出される割合が上昇しています。この上昇は、北半球の冬季の始まりと、毎年この時期に通常観察されるインフルエンザや他の呼吸器ウイルスにより引き起こされる急性呼吸器感染症の増加と一致しています。世界的な活動性はまだ予想される季節的な流行期間内ですが、一部の地域では、例年よりも早い増加と高い活動性が観測されています。
A(H3N2)ウイルスなど季節性インフルエンザウイルスは時間とともに常に進化しています。2025年8月以来、入手可能な遺伝子配列データに基づき検出されたA(H3N2)J.2.4.1、別名サブクレードKのウイルスが、いくつかの国で急速に増加しています。このサブクレードKのウイルスには、近縁のA(H3N2)ウイルスからの変化がいくつかみられます。現在の疫学データは、疾患の重症度の増大は示していませんが、このサブクレードはインフルエンザA(H3N2)ウイルスの重要な進化を示しています。
今シーズンの臨床疾患に対するワクチンの有効性はまだ不明ですが、初期の推定では、インフルエンザワクチンは引き続き小児と成人の両方で病院受診を防ぐことが示唆されています。特にインフルエンザ合併症のリスクが高い人とそのケアをする人にとっては、ワクチンはやはり重要です。循環しているインフルエンザウイルスとワクチンに含まれる株に違いがあっても、抗原ドリフト※1を起こしたウイルスとワクチンに含まれる他のウイルス株に対する予防効果がある可能性があります。ワクチン接種は重症化を予防すると期待されており、最も効果的な公衆衛生対策の1つであることに変わりはありません。
世界保健機関(WHO)は引き続き、世界のインフルエンザの活動性とインフルエンザウイルスを監視し、サーベイランス能力について各国を支援し、必要に応じてガイダンスを更新していきます。
※1 抗原ドリフト:ウイルスの表面タンパク質における小さな遺伝子変異の蓄積
A(H3N2)ウイルスなど季節性インフルエンザウイルスは時間とともに常に進化しています。2025年8月以来、入手可能な遺伝子配列データに基づき検出されたA(H3N2)J.2.4.1、別名サブクレードKのウイルスが、いくつかの国で急速に増加しています。このサブクレードKのウイルスには、近縁のA(H3N2)ウイルスからの変化がいくつかみられます。現在の疫学データは、疾患の重症度の増大は示していませんが、このサブクレードはインフルエンザA(H3N2)ウイルスの重要な進化を示しています。
今シーズンの臨床疾患に対するワクチンの有効性はまだ不明ですが、初期の推定では、インフルエンザワクチンは引き続き小児と成人の両方で病院受診を防ぐことが示唆されています。特にインフルエンザ合併症のリスクが高い人とそのケアをする人にとっては、ワクチンはやはり重要です。循環しているインフルエンザウイルスとワクチンに含まれる株に違いがあっても、抗原ドリフト※1を起こしたウイルスとワクチンに含まれる他のウイルス株に対する予防効果がある可能性があります。ワクチン接種は重症化を予防すると期待されており、最も効果的な公衆衛生対策の1つであることに変わりはありません。
世界保健機関(WHO)は引き続き、世界のインフルエンザの活動性とインフルエンザウイルスを監視し、サーベイランス能力について各国を支援し、必要に応じてガイダンスを更新していきます。
※1 抗原ドリフト:ウイルスの表面タンパク質における小さな遺伝子変異の蓄積
発生の詳細
2025年10月以降、世界的にインフルエンザの活動性が高まっており、世界で検出されたウイルスの中ではインフルエンザAウイルスが優勢です。
北半球の多くの国では、この時期に急性呼吸器感染症のレベルが高まります。この高まりは通常、インフルエンザ、RSウイルス(RSV)、その他の一般的な呼吸器系ウイルスなどの呼吸器病原体の季節的流行によって引き起こされます。それぞれの流行の正確な発生時期、期間、程度および重症度は場所によって異なる可能性があり、循環しているウイルスのタイプ(インフルエンザやその他の呼吸器病原体など)、相対的な集団免疫、環境条件など複数の要因に影響されます。
北半球の一部の国は、インフルエンザシーズンの早期開始を報告しています。その他の国では、インフルエンザの活動性が高まり始めているものの流行の閾値にはまだ達していません。
南半球では、前年に比べてシーズンが異常に長く、ここ数か月、ウイルスの活動性が通常より高いままの国があります。
世界のインフルエンザサーベイランスと監視は、世界インフルエンザ・サーベイランス・レスポンス・システム(GISRS)を通して行われます。GISRSは、WHOが調整した加盟国131か国の160以上の施設のネットワークです。GISRSは、年間を通じてサーベイランスを実施し、インフルエンザウイルスを監視し、パンデミックになる可能性のある新規のインフルエンザウイルスおよびその他の呼吸器病原体の出現に対する世界の警報機構の役割を果たしています。
北半球の温帯および亜熱帯の国・地域・領域では、2025年6月から8月までインフルエンザの活動性が全般的に低い状態でした。9月に活動性が徐々に高まり、11月まで増加し続けました。この期間中は、インフルエンザAウイルス、特にA(H3N2)ウイルスが優勢でした(図1)。
南半球の温帯および亜熱帯の国・地域・領域では、2025年6月からインフルエンザの活動性が全般的に低下し、8月まで低いままでした。しかし、9月以降はやや高まっています。6月および7月にはインフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスが優勢でしたが、9月以降はA(H3N2)ウイルスが優勢になっています(図2)。
熱帯地域では、6月から11月までインフルエンザの活動性が持続しています。7月までは、インフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスが優勢でした。それ以降、検出の報告においてインフルエンザA(H3N2)ウイルスの割合が高まり、9月末以降は優勢になっています(図3)。
図1 北半球の温帯および亜熱帯の国・地域・領域で2025年6月1日から11月30日にFluNet※2に報告されたウイルス検出、亜型別

出典:GISRS: https://worldhealthorg.shinyapps.io/flunetchart/
図2 南半球の温帯および亜熱帯の国・地域・領域で2025年6月1日から11月30日にFluNet※2に報告されたウイルス検出、亜型別

出典:GISRS: https://worldhealthorg.shinyapps.io/flunetchart/
図3 熱帯の国・地域・領域で2025年6月1日から11月30日にFluNet※2に報告されたウイルス検出、亜型別

出典:GISRS: https://worldhealthorg.shinyapps.io/flunetchart/
※2 FluNet:世界保健機関(WHO)が運営する、世界各国のインフルエンザウイルス学的サーベイランスデータを収集・共有するためのウェブベースのデータベースシステム
北半球の多くの国では、この時期に急性呼吸器感染症のレベルが高まります。この高まりは通常、インフルエンザ、RSウイルス(RSV)、その他の一般的な呼吸器系ウイルスなどの呼吸器病原体の季節的流行によって引き起こされます。それぞれの流行の正確な発生時期、期間、程度および重症度は場所によって異なる可能性があり、循環しているウイルスのタイプ(インフルエンザやその他の呼吸器病原体など)、相対的な集団免疫、環境条件など複数の要因に影響されます。
北半球の一部の国は、インフルエンザシーズンの早期開始を報告しています。その他の国では、インフルエンザの活動性が高まり始めているものの流行の閾値にはまだ達していません。
南半球では、前年に比べてシーズンが異常に長く、ここ数か月、ウイルスの活動性が通常より高いままの国があります。
世界のインフルエンザサーベイランスと監視は、世界インフルエンザ・サーベイランス・レスポンス・システム(GISRS)を通して行われます。GISRSは、WHOが調整した加盟国131か国の160以上の施設のネットワークです。GISRSは、年間を通じてサーベイランスを実施し、インフルエンザウイルスを監視し、パンデミックになる可能性のある新規のインフルエンザウイルスおよびその他の呼吸器病原体の出現に対する世界の警報機構の役割を果たしています。
北半球の温帯および亜熱帯の国・地域・領域では、2025年6月から8月までインフルエンザの活動性が全般的に低い状態でした。9月に活動性が徐々に高まり、11月まで増加し続けました。この期間中は、インフルエンザAウイルス、特にA(H3N2)ウイルスが優勢でした(図1)。
南半球の温帯および亜熱帯の国・地域・領域では、2025年6月からインフルエンザの活動性が全般的に低下し、8月まで低いままでした。しかし、9月以降はやや高まっています。6月および7月にはインフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスが優勢でしたが、9月以降はA(H3N2)ウイルスが優勢になっています(図2)。
熱帯地域では、6月から11月までインフルエンザの活動性が持続しています。7月までは、インフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスが優勢でした。それ以降、検出の報告においてインフルエンザA(H3N2)ウイルスの割合が高まり、9月末以降は優勢になっています(図3)。
図1 北半球の温帯および亜熱帯の国・地域・領域で2025年6月1日から11月30日にFluNet※2に報告されたウイルス検出、亜型別

出典:GISRS: https://worldhealthorg.shinyapps.io/flunetchart/
図2 南半球の温帯および亜熱帯の国・地域・領域で2025年6月1日から11月30日にFluNet※2に報告されたウイルス検出、亜型別

出典:GISRS: https://worldhealthorg.shinyapps.io/flunetchart/
図3 熱帯の国・地域・領域で2025年6月1日から11月30日にFluNet※2に報告されたウイルス検出、亜型別

出典:GISRS: https://worldhealthorg.shinyapps.io/flunetchart/
※2 FluNet:世界保健機関(WHO)が運営する、世界各国のインフルエンザウイルス学的サーベイランスデータを収集・共有するためのウェブベースのデータベースシステム
最近の季節性インフルエンザウイルスの遺伝的特徴
インフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザB/ビクトリア系統のウイルスは低レベルですが、全地域で循環し続けています。
インフルエンザA(H3N2)ウイルス
全世界インフルエンザデータ共有推進機構(GISAID)で入手可能な遺伝子配列データによると、現在、世界的にA(H3N2)の赤血球凝集素(HA)クレードとサブクレードが混在して循環していますが、最近、A(H3N2)J.2.4.1(別名Nextclade/Nextstrain命名法でサブクレードK)という特定のサブクレードが急増しています。A(H3N2)サブクレードKウイルスは、関連するJ.2.4ウイルスから抗原ドリフトを起こし、比較するとHAのいくつかのアミノ酸が変化しています。サブクレードKウイルスの検出数は、これまで南アメリカを除き、世界の多くの場所で増加しつつあります。オーストラリアおよびニュージーランドでは2025年8月から、サブクレードKウイルスが特に顕著で、現在、過去6か月に34か国以上で検出されています。
図4 2025年疫学週第48週(11月24日~30日)に報告されたインフルエンザA(H3N2)陽性率

出典:GISRS: https://www.who.int/teams/global-influenza-programme/surveillance-and-monitoring/influenza-surveillance-outputs
インフルエンザA(H3N2)ウイルス
全世界インフルエンザデータ共有推進機構(GISAID)で入手可能な遺伝子配列データによると、現在、世界的にA(H3N2)の赤血球凝集素(HA)クレードとサブクレードが混在して循環していますが、最近、A(H3N2)J.2.4.1(別名Nextclade/Nextstrain命名法でサブクレードK)という特定のサブクレードが急増しています。A(H3N2)サブクレードKウイルスは、関連するJ.2.4ウイルスから抗原ドリフトを起こし、比較するとHAのいくつかのアミノ酸が変化しています。サブクレードKウイルスの検出数は、これまで南アメリカを除き、世界の多くの場所で増加しつつあります。オーストラリアおよびニュージーランドでは2025年8月から、サブクレードKウイルスが特に顕著で、現在、過去6か月に34か国以上で検出されています。
図4 2025年疫学週第48週(11月24日~30日)に報告されたインフルエンザA(H3N2)陽性率

出典:GISRS: https://www.who.int/teams/global-influenza-programme/surveillance-and-monitoring/influenza-surveillance-outputs
WHO地域別の季節性インフルエンザの概況
アフリカ地域
2025年10月に入ってWHOアフリカ地域全体のインフルエンザの検出数が増加し、インフルエンザA(H3N2)が優勢でした。時期と優勢なウイルスは区域によって異なっていました。この地域の西部では、9月および10月にインフルエンザの検出数が増加し、10月以降はA(H3N2)が優勢でした。この地域の中部および東部では、すべての季節性の亜型が引き続き検出されています。南アフリカでは2025年5月に、インフルエンザの活動性がピークになり、検出されたのはほぼすべてA(H3N2)でした。ここ数週間で、インフルエンザの活動性がわずかに高まったものの、依然として低い状態です。
東地中海地域
2025年10月に、WHO東地中海地域全体のインフルエンザの活動性が高まり、A(H3N2)ウイルスが優勢で、区域によるばらつきがありました。この地域の北部の国々では、10月にインフルエンザの検出数が増加し、インフルエンザA(H1N1)pdm09が優勢であり、インフルエンザA(H3N2)ウイルスとBウイルスの検出報告のほうが、割合が低い状態でした。アラビア半島でも、10月にインフルエンザの検出数が増加しましたが、インフルエンザA(H3N2)ウイルスが優勢でした。
ヨーロッパ地域
2025年11月21日現在、WHOヨーロッパ地域のほとんどの国および地域では、初期診療(プライマリケア)で報告されたインフルエンザ様疾患(ILI)や急性呼吸器感染症(ARI)の割合はベースラインの水準でした。しかし、検出数は増加しており、初期診療の定点サーベイランスにおいて地域別に集積された検査陽性率は第45週および第46週(11月15日まで)に上昇して10%を超え、ヨーロッパ地域の2025/26年のインフルエンザシーズンの開始が示されました。これは、中央値よりも約4週間早いものの、例年と大きな差はなく、疫学的傾向は2022/23年のインフルエンザシーズンで観察されたものと同様でした。
インフルエンザの活動性は国によって異なり、この地域の西部では一般に、他に比べてインフルエンザの指標が早く増大しました。病院のサーベイランスではインフルエンザによる入院、検出、陽性率も季節ごとの水準から上昇し、割合が高いのは65歳以上でした。初期診療と病院の定点・非定点サーベイランスシステムで検出されたインフルエンザの大部分はA(H3N2)ウイルスでした。
南北アメリカ地域
南北アメリカでの2025年の南半球のシーズン中、インフルエンザ伝播は3月半ばに季節性の閾値を超え、主に低レベルから中程度のレベルの流行となっています。循環しているのは主にインフルエンザA(H1N1)pdm09であり、陽性率のピークは19%に達しました。活動性は低下し、8月末まで低レベルとなり、ブラジルおよびチリではインフルエンザA(H3N2)と関連し、循環の増加が観察されました。11月初め時点で、チリではインフルエンザA(H3N2)伝播が中程度のままで、重症度の上昇や外来患者の受診の増加はありませんでした。2025年11月4日現在、南アメリカでサブクレードKは検出されていません。
南北アメリカの北半球の国では、2025年の第45週中、季節性インフルエンザの循環は低いままであり、カリブ海諸国および中央アメリカではインフルエンザA(H1N1)pdm09が優勢でした。北アメリカでは、インフルエンザの活動性——まだ低いですが——は高まりつつあり、その中心はインフルエンザAウイルスでした。メキシコで検出されたのはほとんどがインフルエンザA(H1N1)pdm09であるが、インフルエンザA(H3N2)の優勢は米国とカナダで観察され、A(H3N2)サブクレードKの検出数が増加しました。
南東アジア地域
南東アジア地域におけるインフルエンザの検出数は6月から増加し始め、8月にピークに達した後、それ以来、一部の例外を除き一般的に低いレベルで推移しています。2025年11月まで、検査で陽性結果が出たすべてのインフルエンザウイルスのうちインフルエンザAの割合は66%でした。インフルエンザA(H3N2)が伝播の優勢な亜型(43%)であり、次いでA(H1N1)pdm09が優勢でした(約20%)。タイでは、A(H3N2)が優勢なインフルエンザの検出数が10月および11月に増加しました。バングラデシュでは7月以降、スリランカでは10月以降、インフルエンザA(H3N2)の検出数も増加しました。この地域ではインフルエンザA(H3N2)の増加がみられ、11月30日現在、GISAIDでは、22件のサブクレードKの配列が、ネパール(1件)、インド(4件)、タイ(17件)から報告されています。
西太平洋地域
2025年10月の初め以来、西太平洋地域で季節性のインフルエンザの活動性が高まっています。日本や韓国など一部の国では、典型的な季節性インフルエンザの活動期間は過去の年よりも早く始まりました。2025年11月9日現在、北半球の国々ではインフルエンザの陽性率は8%から56%でした。南半球の国々のインフルエンザの活動性の傾向はさまざまで、オーストラリアでは陽性率が低下し、ニュージーランドでは高いまま、フィジーでは急速に上昇しています。ニュージーランドおよびフィジーでのインフルエンザの活動性の上昇は1年のこの時期では異常です。
循環している優勢なインフルエンザウイルスの亜型はインフルエンザA(H3N2)で、2024~2025年の北半球の冬季に優勢であったA(H1N1)pdm09から変化していました。インフルエンザの増加は主に、西太平洋地域からGISAIDに提出された配列の89%を占めるA(H3N2)サブクレードKの拡大によって引き起こされました(2025年11月21日現在)。
2025年10月に入ってWHOアフリカ地域全体のインフルエンザの検出数が増加し、インフルエンザA(H3N2)が優勢でした。時期と優勢なウイルスは区域によって異なっていました。この地域の西部では、9月および10月にインフルエンザの検出数が増加し、10月以降はA(H3N2)が優勢でした。この地域の中部および東部では、すべての季節性の亜型が引き続き検出されています。南アフリカでは2025年5月に、インフルエンザの活動性がピークになり、検出されたのはほぼすべてA(H3N2)でした。ここ数週間で、インフルエンザの活動性がわずかに高まったものの、依然として低い状態です。
東地中海地域
2025年10月に、WHO東地中海地域全体のインフルエンザの活動性が高まり、A(H3N2)ウイルスが優勢で、区域によるばらつきがありました。この地域の北部の国々では、10月にインフルエンザの検出数が増加し、インフルエンザA(H1N1)pdm09が優勢であり、インフルエンザA(H3N2)ウイルスとBウイルスの検出報告のほうが、割合が低い状態でした。アラビア半島でも、10月にインフルエンザの検出数が増加しましたが、インフルエンザA(H3N2)ウイルスが優勢でした。
ヨーロッパ地域
2025年11月21日現在、WHOヨーロッパ地域のほとんどの国および地域では、初期診療(プライマリケア)で報告されたインフルエンザ様疾患(ILI)や急性呼吸器感染症(ARI)の割合はベースラインの水準でした。しかし、検出数は増加しており、初期診療の定点サーベイランスにおいて地域別に集積された検査陽性率は第45週および第46週(11月15日まで)に上昇して10%を超え、ヨーロッパ地域の2025/26年のインフルエンザシーズンの開始が示されました。これは、中央値よりも約4週間早いものの、例年と大きな差はなく、疫学的傾向は2022/23年のインフルエンザシーズンで観察されたものと同様でした。
インフルエンザの活動性は国によって異なり、この地域の西部では一般に、他に比べてインフルエンザの指標が早く増大しました。病院のサーベイランスではインフルエンザによる入院、検出、陽性率も季節ごとの水準から上昇し、割合が高いのは65歳以上でした。初期診療と病院の定点・非定点サーベイランスシステムで検出されたインフルエンザの大部分はA(H3N2)ウイルスでした。
南北アメリカ地域
南北アメリカでの2025年の南半球のシーズン中、インフルエンザ伝播は3月半ばに季節性の閾値を超え、主に低レベルから中程度のレベルの流行となっています。循環しているのは主にインフルエンザA(H1N1)pdm09であり、陽性率のピークは19%に達しました。活動性は低下し、8月末まで低レベルとなり、ブラジルおよびチリではインフルエンザA(H3N2)と関連し、循環の増加が観察されました。11月初め時点で、チリではインフルエンザA(H3N2)伝播が中程度のままで、重症度の上昇や外来患者の受診の増加はありませんでした。2025年11月4日現在、南アメリカでサブクレードKは検出されていません。
南北アメリカの北半球の国では、2025年の第45週中、季節性インフルエンザの循環は低いままであり、カリブ海諸国および中央アメリカではインフルエンザA(H1N1)pdm09が優勢でした。北アメリカでは、インフルエンザの活動性——まだ低いですが——は高まりつつあり、その中心はインフルエンザAウイルスでした。メキシコで検出されたのはほとんどがインフルエンザA(H1N1)pdm09であるが、インフルエンザA(H3N2)の優勢は米国とカナダで観察され、A(H3N2)サブクレードKの検出数が増加しました。
南東アジア地域
南東アジア地域におけるインフルエンザの検出数は6月から増加し始め、8月にピークに達した後、それ以来、一部の例外を除き一般的に低いレベルで推移しています。2025年11月まで、検査で陽性結果が出たすべてのインフルエンザウイルスのうちインフルエンザAの割合は66%でした。インフルエンザA(H3N2)が伝播の優勢な亜型(43%)であり、次いでA(H1N1)pdm09が優勢でした(約20%)。タイでは、A(H3N2)が優勢なインフルエンザの検出数が10月および11月に増加しました。バングラデシュでは7月以降、スリランカでは10月以降、インフルエンザA(H3N2)の検出数も増加しました。この地域ではインフルエンザA(H3N2)の増加がみられ、11月30日現在、GISAIDでは、22件のサブクレードKの配列が、ネパール(1件)、インド(4件)、タイ(17件)から報告されています。
西太平洋地域
2025年10月の初め以来、西太平洋地域で季節性のインフルエンザの活動性が高まっています。日本や韓国など一部の国では、典型的な季節性インフルエンザの活動期間は過去の年よりも早く始まりました。2025年11月9日現在、北半球の国々ではインフルエンザの陽性率は8%から56%でした。南半球の国々のインフルエンザの活動性の傾向はさまざまで、オーストラリアでは陽性率が低下し、ニュージーランドでは高いまま、フィジーでは急速に上昇しています。ニュージーランドおよびフィジーでのインフルエンザの活動性の上昇は1年のこの時期では異常です。
循環している優勢なインフルエンザウイルスの亜型はインフルエンザA(H3N2)で、2024~2025年の北半球の冬季に優勢であったA(H1N1)pdm09から変化していました。インフルエンザの増加は主に、西太平洋地域からGISAIDに提出された配列の89%を占めるA(H3N2)サブクレードKの拡大によって引き起こされました(2025年11月21日現在)。
季節性インフルエンザの疫学
季節性インフルエンザ(「インフルエンザ」)は、世界的に年間を通して循環するインフルエンザウイルスによって引き起こされる急性呼吸器感染症です。温帯地域では、季節性インフルエンザは通常、冬季にピークを迎え、熱帯地域では、インフルエンザウイルスは1年を通して循環する可能性があり、季節性と流行の強度は国によって異なります。
インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型、D型の4種類があります。A型とB型のウイルスが循環し、季節的な流行を引き起こします:
インフルエンザAウイルスは、ウイルス表面のタンパク質の組み合わせにより、さらに亜型(サブタイプ)に分類されます。現在、ヒトに感染するインフルエンザウイルスは、インフルエンザA(H1N1)とA(H3N2)です。インフルエンザBウイルスは、亜型には分類されず、系統に分類することができます。インフルエンザB型ウイルスは、B/山形系統とB/ビクトリア系統のいずれかに属します。
インフルエンザは咳やくしゃみで容易に拡がります。病態は軽度から重度までさまざまで、入院または死亡に至ることがあります。ほとんどの人は1週間以内に回復し、医療ケアを必要としませんが、特に幼児や高齢者、妊婦、基礎疾患がある人など高リスクグループでは死亡など重篤な合併症に至る可能性があります。医療・介護従事者は、患者へ曝露されることが多いため、インフルエンザウイルス感染のリスクが高く、特に脆弱な人へさらに拡がるリスクが高まります。
インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型、D型の4種類があります。A型とB型のウイルスが循環し、季節的な流行を引き起こします:
インフルエンザAウイルスは、ウイルス表面のタンパク質の組み合わせにより、さらに亜型(サブタイプ)に分類されます。現在、ヒトに感染するインフルエンザウイルスは、インフルエンザA(H1N1)とA(H3N2)です。インフルエンザBウイルスは、亜型には分類されず、系統に分類することができます。インフルエンザB型ウイルスは、B/山形系統とB/ビクトリア系統のいずれかに属します。
インフルエンザは咳やくしゃみで容易に拡がります。病態は軽度から重度までさまざまで、入院または死亡に至ることがあります。ほとんどの人は1週間以内に回復し、医療ケアを必要としませんが、特に幼児や高齢者、妊婦、基礎疾患がある人など高リスクグループでは死亡など重篤な合併症に至る可能性があります。医療・介護従事者は、患者へ曝露されることが多いため、インフルエンザウイルス感染のリスクが高く、特に脆弱な人へさらに拡がるリスクが高まります。
公衆衛生上の取り組み
WHOは、以下のような国、地域、世界のインフルエンザに対する備えと対応力を強化しています:
- 世界のインフルエンザウイルスと疾患の活動性を引き続き監視する;
- 北半球・南半球両方で、季節性インフルエンザワクチンの組成に関する推奨を公表する;
- ワクチンの選択およびキャンペーンのタイミングに関する技術的ガイダンスを加盟国に提供する;
- 予防と制御の戦略開発において各国を支援する;
- 診断能力と検査室ネットワークを強化する;
- ワクチンの有効性、承認された抗ウイルス薬への感受性を監視する;
- 疾患サーベイランスとアウトブレイクへの対応活動を支援する;
- 高リスクグループのワクチン接種率の上昇を促進する;
- 新しい治療薬および対応に関する研究開発を促進する;および
- インフルエンザシーズンの始まりに関するリスクコミュニケーションを強化する。
WHOによるリスク評価
ここ数か月で、季節性インフルエンザの活動性が世界的に高まり、インフルエンザA(H3N2)ウイルスが優勢です。この高まりは北半球の冬季の始まりと一致しています。季節性インフルエンザおよびその他の循環している呼吸器ウイルスの流行およびアウトブレイクは、医療体制を大きく圧迫する可能性があります。世界的な活動性はまだ予想される季節的な流行期間内ですが、地域によっては毎年のこの時期よりも早く増加し、活動性が高いことが観測されています。季節性インフルエンザは、温帯地域でない国であっても医療体制を大きく圧迫する可能性があります。多くの国で、サブクレードKウイルスとして知られる抗原ドリフトを起こしたインフルエンザA(H3N2)ウイルスが検出されています。ワクチンが今シーズンの臨床疾患にどれほど有効なのかというデータはまだ限られていますが、それでもワクチン接種には重症化に対する予防効果があることが期待され、最も有効な公衆衛生対策のひとつであることに変わりはありません。
WHOからのアドバイス
サーベイランス
インフルエンザウイルスの常に変化する性質を踏まえ、WHOは引き続き、ヒトの健康に影響を与える新興または流行中のインフルエンザウイルスに関連するウイルス学的・疫学的・臨床的変化を検出・監視するための通年の世界的サーベイランスと、リスク評価を行うためのウイルスの迅速な共有の重要性を強調しています。各国は、インフルエンザウイルスの脅威に油断することなく、異常な疫学的パターンがあれば精査することが奨励されています。
WHOは加盟国に、国内事情、優先事項、資源、能力を考慮し、統合的なアプローチを通して呼吸器病原体のサーベイランスを維持するよう助言しています。WHOは、統合的な呼吸器ウイルスのサーベイランスに関するガイダンスを発表しました。WHOは、医療施設に対する影響を含め、インフルエンザ流行とパンデミックの重症度の評価に関するガイダンスも更新しました。
臨床管理と予防
季節性インフルエンザの臨床ケアは、疾患の重症度の特定、進行リスクの評価、適切な医療に繋げることに焦点を当てます。ほとんどの症例は軽度で自己限定的ですが、呼吸困難、敗血症、急性呼吸窮迫症候群または多臓器不全がみられる重症疾患は緊急の支持療法を必要とし、入院が必要になることもよくあります。インフルエンザの臨床管理では、酸素投与、モニタリング、水分補給、呼吸補助といった質の高い支持療法が基本であり、特に重症例では転帰の改善に不可欠です。
診断検査は迅速な意思決定を支援するものであるべきです。核酸増幅試験(NAAT)は、重症の患者では疑い例を確認するため条件付きで推奨され、国内事情と資源の利用可能性によっては、非重症例に対してNAATまたはデジタルイムノアッセイのいずれかが使用される可能性があります。治療を必要とする人を特定し、必要であれば抗ウイルス薬など治療と関連づけるため、検査を早期に実施すべきです。
重症化リスクの高い患者は、入院の可能性を低減するため、抗ウイルス薬による治療が有効である場合があります。高リスクグループには、65歳以上の成人、免疫不全状態、慢性の心血管疾患、神経疾患または呼吸器疾患を有する人が含まれ、悪性腫瘍、妊娠、糖尿病はさらにリスクを高めます。85歳以上の人または複数のリスク因子がある人は極めて高リスクと考えられ、インフルエンザに曝露されれば抗ウイルス薬による予防が検討される可能性があります。
医療環境における感染予防管理対策
季節性インフルエンザは、特に長期ケア施設で医療関連感染のアウトブレイクを引き起こすことが知られています。WHOは、医療環境へ入るすべての時点で、また、インフルエンザなど伝播性の感染の疑い例または確定例をできるだけ早く特定し、適切な感染経路別予防策を確実に行うための日常の入院患者の評価の一部として、症状に基づくスクリーニングを助言しています。WHOは、インフルエンザの疑い例または確定例をケアする際、飛沫予防策を講じるよう助言しています。これには、疑い例または確定例の適切な配置(隔離)、インフルエンザ疑い例または確定例をケアする際のすべての医療・介護従事者および訪問者による医療用マスクの使用が含まれます。
追加の個人防護具(眼の防護具、フィルター式フェイスピースレスピレーター、ガウン、手袋など)の適切なリスク評価は、インフルエンザの患者をケアする際に、医療・介護従事者が行う必要があります。医療活動または患者の症状により眼の粘膜、鼻または口に対し、血液、体液、分泌物、排出物の飛沫や飛散が生じる可能性が高い場合、インフルエンザが伝播するリスクが増大する場合があります。あるいは、呼吸器症状(咳/くしゃみなど)がある患者と濃厚接触した場合、分泌物が、汚染された手を介して直接的または間接的に眼、鼻または口の粘膜に飛散する可能性があります。インフルエンザの疑い例または確定例に対してエアロゾルを発生させる手技を行う場合、空気感染隔離室へ患者を入れること、眼の防護とともに空気予防策および接触予防策を講じることが助言されます。
ワクチン接種
ワクチン接種はインフルエンザ疾患を予防する最良の方法です。60年以上前から、安全かつ有効なワクチンが使われています。インフルエンザウイルスは常に変化しているため、季節性インフルエンザワクチンの組成は、これらの循環しているウイルスとの関連性が強いウイルスを含むよう定期的に更新されています。WHOは、世界インフルエンザプログラム(Global Influenza Programme)およびGISRSを通してパートナーと協力して、引き続き世界のインフルエンザウイルスと活動性を監視し、次の北半球および南半球のインフルエンザシーズンに対し、2月と9月に季節性インフルエンザワクチンの組成を推奨します。
WHOは、医療・介護従事者を含め高リスクグループへの年1回のワクチン接種を推奨しています。理想的には、最も高い予防効果を得るためインフルエンザシーズンが始まる直前にワクチンを接種すべきですが、インフルエンザシーズン中のどの時点でもワクチン接種がインフルエンザ感染予防に役立つ可能性があります。ワクチンの有効性は季節やリスクグループによって異なる可能性がありますが、疾患の重症度を低減し、合併症や死亡の可能性を低下させます。インフルエンザ合併症のリスクが高い人やその世話をする人にとって、ワクチン接種は特に重要です。
ワクチン株の選択からインフルエンザシーズンまでの間を含め、インフルエンザシーズン前またはシーズン中に、循環しているインフルエンザウイルスで遺伝的変化や抗原ドリフトによる変異が発生する可能性があります。循環しているインフルエンザウイルスとワクチンに含まれる株に遺伝的な違いがあっても、季節性インフルエンザワクチンはそれでも抗原ドリフトを起こしたウイルスに対して予防効果がある可能性があります。現在のワクチンには、A(H1N1)pdm09、A(H3N2)、B/ビクトリア系統という3種類のインフルエンザウイルスが含まれています。したがって、抗原ドリフトを起こしたウイルスの循環が、季節性インフルエンザワクチンがインフルエンザ関連の疾患を防ぐうえで有効性が低いことに必ずしもつながるわけではありません。
現時点で、今シーズン中にワクチンがインフルエンザをどれほど予防できるかは未だ不明です。しかし、ワクチンの有効性に関する初期の推定では、現行のワクチンは2~17歳の小児の病院受診を防ぐワクチンの有効性は70~75%であり、成人では30~40%です。
コミュニティにおける公衆衛生・社会的対策
適切かつ相応な公衆衛生・社会的対策(PHSM)の実施は、季節性インフルエンザ流行に対する全体的な対応の重要な構成要素です。手指衛生、呼吸器衛生および咳エチケットの実施、ならびに症状のある人またはインフルエンザウイルスの陽性結果が出た人の自発的な自己隔離およびマスクの着用などの対策は、インフルエンザウイルスの伝播を抑制できます。各国は、大規模な流行または極めて大規模な流行の場合には追加のPHSMを拡大する計画を作成することを検討すべきです。
リスクコミュニケーションとコミュニティ・エンゲージメント
加盟国は、呼吸器ウイルスを統合して、リスクコミュニケーションとコミュニティ・エンゲージメント(RCCE;Risk Communication and Community Engagement)戦略を更新、強化することを検討すべきです。強化されたRCCEアプローチは、人々が情報に基づいて意思決定を行う力を高め、誤情報に対抗し、コミュニティ主導の予防戦略を支援します。
関係者および影響を受ける集団との信頼を構築・維持し、介入、実践、行動の採用を確実にするためには、文化的に受け入れ可能で状況に適合した、明確かつ定期的で、科学的根拠に基づいたRCCEアプローチが不可欠です。RCCEの取り組みを成功させるには、RCCEの国の政策が、コミュニティ・エンゲージメントと、さまざまな集団グループ、特に最も脆弱な集団が直面する状況の課題を認め対処するフィードバック機構を組み込むことが重要です。インフルエンザに対するワクチン接種を促進するため、RCCEアプローチを統合することも推奨されます。
WHOは、今回の事象について入手可能な情報に基づき、本報告で挙げた国への渡航や貿易を制限することを推奨していません。
インフルエンザウイルスの常に変化する性質を踏まえ、WHOは引き続き、ヒトの健康に影響を与える新興または流行中のインフルエンザウイルスに関連するウイルス学的・疫学的・臨床的変化を検出・監視するための通年の世界的サーベイランスと、リスク評価を行うためのウイルスの迅速な共有の重要性を強調しています。各国は、インフルエンザウイルスの脅威に油断することなく、異常な疫学的パターンがあれば精査することが奨励されています。
WHOは加盟国に、国内事情、優先事項、資源、能力を考慮し、統合的なアプローチを通して呼吸器病原体のサーベイランスを維持するよう助言しています。WHOは、統合的な呼吸器ウイルスのサーベイランスに関するガイダンスを発表しました。WHOは、医療施設に対する影響を含め、インフルエンザ流行とパンデミックの重症度の評価に関するガイダンスも更新しました。
臨床管理と予防
季節性インフルエンザの臨床ケアは、疾患の重症度の特定、進行リスクの評価、適切な医療に繋げることに焦点を当てます。ほとんどの症例は軽度で自己限定的ですが、呼吸困難、敗血症、急性呼吸窮迫症候群または多臓器不全がみられる重症疾患は緊急の支持療法を必要とし、入院が必要になることもよくあります。インフルエンザの臨床管理では、酸素投与、モニタリング、水分補給、呼吸補助といった質の高い支持療法が基本であり、特に重症例では転帰の改善に不可欠です。
診断検査は迅速な意思決定を支援するものであるべきです。核酸増幅試験(NAAT)は、重症の患者では疑い例を確認するため条件付きで推奨され、国内事情と資源の利用可能性によっては、非重症例に対してNAATまたはデジタルイムノアッセイのいずれかが使用される可能性があります。治療を必要とする人を特定し、必要であれば抗ウイルス薬など治療と関連づけるため、検査を早期に実施すべきです。
重症化リスクの高い患者は、入院の可能性を低減するため、抗ウイルス薬による治療が有効である場合があります。高リスクグループには、65歳以上の成人、免疫不全状態、慢性の心血管疾患、神経疾患または呼吸器疾患を有する人が含まれ、悪性腫瘍、妊娠、糖尿病はさらにリスクを高めます。85歳以上の人または複数のリスク因子がある人は極めて高リスクと考えられ、インフルエンザに曝露されれば抗ウイルス薬による予防が検討される可能性があります。
医療環境における感染予防管理対策
季節性インフルエンザは、特に長期ケア施設で医療関連感染のアウトブレイクを引き起こすことが知られています。WHOは、医療環境へ入るすべての時点で、また、インフルエンザなど伝播性の感染の疑い例または確定例をできるだけ早く特定し、適切な感染経路別予防策を確実に行うための日常の入院患者の評価の一部として、症状に基づくスクリーニングを助言しています。WHOは、インフルエンザの疑い例または確定例をケアする際、飛沫予防策を講じるよう助言しています。これには、疑い例または確定例の適切な配置(隔離)、インフルエンザ疑い例または確定例をケアする際のすべての医療・介護従事者および訪問者による医療用マスクの使用が含まれます。
追加の個人防護具(眼の防護具、フィルター式フェイスピースレスピレーター、ガウン、手袋など)の適切なリスク評価は、インフルエンザの患者をケアする際に、医療・介護従事者が行う必要があります。医療活動または患者の症状により眼の粘膜、鼻または口に対し、血液、体液、分泌物、排出物の飛沫や飛散が生じる可能性が高い場合、インフルエンザが伝播するリスクが増大する場合があります。あるいは、呼吸器症状(咳/くしゃみなど)がある患者と濃厚接触した場合、分泌物が、汚染された手を介して直接的または間接的に眼、鼻または口の粘膜に飛散する可能性があります。インフルエンザの疑い例または確定例に対してエアロゾルを発生させる手技を行う場合、空気感染隔離室へ患者を入れること、眼の防護とともに空気予防策および接触予防策を講じることが助言されます。
ワクチン接種
ワクチン接種はインフルエンザ疾患を予防する最良の方法です。60年以上前から、安全かつ有効なワクチンが使われています。インフルエンザウイルスは常に変化しているため、季節性インフルエンザワクチンの組成は、これらの循環しているウイルスとの関連性が強いウイルスを含むよう定期的に更新されています。WHOは、世界インフルエンザプログラム(Global Influenza Programme)およびGISRSを通してパートナーと協力して、引き続き世界のインフルエンザウイルスと活動性を監視し、次の北半球および南半球のインフルエンザシーズンに対し、2月と9月に季節性インフルエンザワクチンの組成を推奨します。
WHOは、医療・介護従事者を含め高リスクグループへの年1回のワクチン接種を推奨しています。理想的には、最も高い予防効果を得るためインフルエンザシーズンが始まる直前にワクチンを接種すべきですが、インフルエンザシーズン中のどの時点でもワクチン接種がインフルエンザ感染予防に役立つ可能性があります。ワクチンの有効性は季節やリスクグループによって異なる可能性がありますが、疾患の重症度を低減し、合併症や死亡の可能性を低下させます。インフルエンザ合併症のリスクが高い人やその世話をする人にとって、ワクチン接種は特に重要です。
ワクチン株の選択からインフルエンザシーズンまでの間を含め、インフルエンザシーズン前またはシーズン中に、循環しているインフルエンザウイルスで遺伝的変化や抗原ドリフトによる変異が発生する可能性があります。循環しているインフルエンザウイルスとワクチンに含まれる株に遺伝的な違いがあっても、季節性インフルエンザワクチンはそれでも抗原ドリフトを起こしたウイルスに対して予防効果がある可能性があります。現在のワクチンには、A(H1N1)pdm09、A(H3N2)、B/ビクトリア系統という3種類のインフルエンザウイルスが含まれています。したがって、抗原ドリフトを起こしたウイルスの循環が、季節性インフルエンザワクチンがインフルエンザ関連の疾患を防ぐうえで有効性が低いことに必ずしもつながるわけではありません。
現時点で、今シーズン中にワクチンがインフルエンザをどれほど予防できるかは未だ不明です。しかし、ワクチンの有効性に関する初期の推定では、現行のワクチンは2~17歳の小児の病院受診を防ぐワクチンの有効性は70~75%であり、成人では30~40%です。
コミュニティにおける公衆衛生・社会的対策
適切かつ相応な公衆衛生・社会的対策(PHSM)の実施は、季節性インフルエンザ流行に対する全体的な対応の重要な構成要素です。手指衛生、呼吸器衛生および咳エチケットの実施、ならびに症状のある人またはインフルエンザウイルスの陽性結果が出た人の自発的な自己隔離およびマスクの着用などの対策は、インフルエンザウイルスの伝播を抑制できます。各国は、大規模な流行または極めて大規模な流行の場合には追加のPHSMを拡大する計画を作成することを検討すべきです。
リスクコミュニケーションとコミュニティ・エンゲージメント
加盟国は、呼吸器ウイルスを統合して、リスクコミュニケーションとコミュニティ・エンゲージメント(RCCE;Risk Communication and Community Engagement)戦略を更新、強化することを検討すべきです。強化されたRCCEアプローチは、人々が情報に基づいて意思決定を行う力を高め、誤情報に対抗し、コミュニティ主導の予防戦略を支援します。
関係者および影響を受ける集団との信頼を構築・維持し、介入、実践、行動の採用を確実にするためには、文化的に受け入れ可能で状況に適合した、明確かつ定期的で、科学的根拠に基づいたRCCEアプローチが不可欠です。RCCEの取り組みを成功させるには、RCCEの国の政策が、コミュニティ・エンゲージメントと、さまざまな集団グループ、特に最も脆弱な集団が直面する状況の課題を認め対処するフィードバック機構を組み込むことが重要です。インフルエンザに対するワクチン接種を促進するため、RCCEアプローチを統合することも推奨されます。
WHOは、今回の事象について入手可能な情報に基づき、本報告で挙げた国への渡航や貿易を制限することを推奨していません。
出典
World Health Organization(10 December 2025)Disease Outbreak News; Seasonal influenza - Global situation
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2025-DON586
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2025-DON586
備考
This is an adaptation of an original work "Seasonal influenza - Global situation. Geneva: World Health Organization (WHO); 2025. License: CC BY-NC-SA 3.0 IGO". This adaptation was not created by WHO. WHO is not responsible for the content or accuracy of this adaptation. The original edition shall be the binding and authentic edition.
