マールブルグ病-エチオピア(2026年1月26日)

海外へ渡航される皆様へ

今回エチオピアで報告されたマールブルグ病(MVD)は、マールブルグウイルスによる感染症です。マールブルグウイルスに感染した動物や患者の血液、体液、排泄物等との直接接触が主な感染経路です。潜伏期間は感染してから2~21日程度で、初期症状は発熱、頭痛、倦怠感、筋肉痛などで、進行すると出血傾向、意識障害などの重篤な症状を示し死亡することがあります。

以下の点を事前に確認して、健康に気を付けて渡航してください。

渡航前の情報収集
MVDに関する情報や、エチオピアで流行している感染症に関する情報、渡航先の医療情報を、FORTHや外務省などの公式な情報源で確認してください。トラベルクリニックなど渡航前に感染対策などを相談することも可能です。

渡航中の健康管理
1.基本的な感染予防策
アルコール消毒や石鹸などを使用した手洗いなどの手指衛生、マスクの着用や咳エチケットといった基本的感染対策、また野生動物の肉(Bushmeat、ジビエ肉)の喫食を避けることは、MVDに限らず、さまざまな感染症に対して有効です。
2.リスクを軽減するための対策
MVDは、感染した動物や患者の血液、体液、排泄物等との接触が主な感染経路なので、これらとの接触や死体に触れること、流行地域での葬儀への参列などは可能な限り避けてください。こうした状況を避けられない場合は手袋やマスクを使用し、直接の接触を避けることで、感染するリスクを減らすことができます。
3.体調不良時の行動
流行地域で上記のようなリスク行動があり、渡航中に発熱、頭痛などMVDを疑う症状が出た場合は、速やかに現地の医療機関を受診し、渡航歴・現地での行動を必ず伝えてください。同じような症状が出るほかの感染症も考えられますので、診断を受けることが重要です。

帰国後の対応
流行地域へ立ち寄り、日本へ帰国した時に発熱など体調に異常があった場合は、空港や港の検疫所で渡航歴・現地での行動を伝えた上で相談してください。
帰国後21日程度の期間、ご自身の健康状態に注意し、異常があれば速やかに医療機関に相談してください。この際も渡航歴・現地での行動を伝えてください。

そのほか、海外渡航に関する一般的な注意事項は「ここに注意!海外渡航にあたって」をご参照ください。

以下のDisease Outbreak Newsの翻訳は、厚生労働省委託事業 国際感染症危機管理対応人材育成・派遣事業 にて翻訳・メッセージ原案を作成しています。

状況の概要

2026年1月26日、エチオピア保健省はマールブルグ病(MVD)のアウトブレイク終息を宣言しました。
この宣言は、最後のMVD確定例が死亡し、2025年12月14日にWHOの勧告に従い、安全かつ尊厳ある埋葬を実施してから、潜伏期間の2倍の期間(合計42日間)が経過した後に行われました。2026年1月25日の時点で、累積で確定例14例(9例の死亡例を含む)と可能性例5例(全例死亡)を含む合計19例が報告されました。2026年1月25日の時点で、観察対象となった合計857人の接触者は全員、21日間の健康観察を完了しています。WHOは、同国事務所およびパートナーと連携し、このアウトブレイクを封じ込めるため、政府に対して技術的、実務的、財政的支援を提供しました。

発生の詳細

2025年11月14日、エチオピアの南エチオピア州ジンカにおけるウイルス性出血熱(VHF)疑い例の検査室での確認後、エチオピア保健省は、マールブルグ病(MVD)のアウトブレイクを宣言しました。エチオピア公衆衛生研究所(EPHI)の国立リファレンス・ラボラトリーで実施された分子生物学的検査により、患者の検体からマールブルグウイルス(MARV)が確認されました。これは、エチオピアで初めて確認されたMVDのアウトブレイクです。

最初に判明した症例は、10月23日に症状が発現したジンカの成人でした。嘔吐、食欲不振、腹部のけいれんがみられた翌日、患者は総合病院を受診しました。2026年1月25日の時点で、累積では、死亡例9例を含む確定例合計14例(致命率(CFR)64.3%)と可能性例5例(いずれも死亡)が、南エチオピア州ジンカ地区、マーレ(Malle)地区およびダサネチ(Dasench)地区、シダマ州アワッサから保健省に報告されました。

2026年1月25日の時点で、南エチオピア州の760人、シダマ州の97人を含む観察対象の合計857人の接触者は、21日間の健康観察を完了していました。2026年1月5日の時点で、3800検体についてこのウイルスの検査を行いました。

2026年1月26日、潜伏期間の2倍の期間(合計42日間)後、新たな確定例の報告はなく、最後の確定例が死亡し、安全かつ尊厳ある埋葬を行った後、2025年12月14日、エチオピアの保健省はWHOの勧告に従い、MVDアウトブレイク終息を宣言しました。

図1:エチオピアにおけるマールブルグ病確定例および可能性例を報告した地区(2026年1月25日現在)

マールブルグ病の疫学

マールブルグ病(MVD)は、近縁の2つのウイルス、マールブルグウイルスとラブンウイルスのいずれかによって引き起こされる重症疾患です。MVDの致命率は高く、過去のアウトブレイクでは24%から88%でした。早期の支持療法によって致命率を下げることができます。このウイルスは、まずフルーツコウモリ(Rousettus aegyptiacus)からヒトに感染し、その後、体液、汚染された表面、または物品との直接接触によってヒトの間で広がります。医療従事者、介護者、埋葬に携わる人々は適切な感染予防管理対策が講じられていない場合、特にリスクが高くなります。

MVDの症状は通常、2日から21日の潜伏期間の後、突然出現し、高熱、激しい頭痛、倦怠感、筋肉痛、下痢や嘔吐といった進行性の消化器症状などが見られます。重症の場合、患者は複数の部位から出血し、発症から1週間以内にショックや臓器不全で死亡することもあります。

MVDに対する承認された治療法やワクチンはありませんが、早期の支持療法によって生存率は向上します。現在、いくつかの候補ワクチンと治療薬が研究されています。

これまでに世界中で19件のMVDのアウトブレイクが報告されています。直近のアウトブレイクは、2025年1月から3月にかけてタンザニア共和国で報告されました。アフリカ地域でMVDのアウトブレイクが報告されているその他の国には、アンゴラ、コンゴ民主共和国、赤道ギニア、ガーナ、ギニア、ケニア、ルワンダ、南アフリカ、ウガンダがあります。

公衆衛生上の取り組み

エチオピアの地方および国家保健当局は、以下の公衆衛生対策を実施しました。

  • 保健省には、戦略的な指導、意思決定、資源の動員を行う国家タスクフォースが設立されました。
  • 費用算出済みの国家3か月対応計画が保健省、EPHIによって策定され、開始されました。
  • 保健省は、一般の人々および主なパートナーにMVDのアウトブレイクに関する情報を定期的に提供しています。
  • 公衆衛生緊急オペレーションセンターが国レベルおよび地域レベルで設置され、対応を調整するためのインシデント管理体制が整備されています。
  • 保健省は、EPHIおよび地域保健事務所と協力して、優先入国地点(PoE)および管理地点(PoC)などで統合的な監視および対応活動を実施しています。
  • 地域でのサーベイランス、接触者追跡、戸別訪問、医療サービスの提供が強化されました。
  • 2つの病院が治療センターに指定され、症例を管理するため、専任の医療従事者が配置されました。
  • 適時に確認するため、国レベルとジンカの移動検査室の配備の両方で検査室能力を強化しました。
  • 迅速対応チーム(RRT)によって現場評価が実施されました。
  • リスクコミュニケーションおよびコミュニティエンゲージメント(RCCE)チームは、MVD予防に関するメッセージを広め、コミュニティでの対話を行い、対象を絞った介入のための活動計画を策定し、誤情報に対処するためにソーシャルメディアを監視し、一般市民の認識を高め、ローカルネットワークおよびインフルエンサーに関わるために信頼できるコミュニケーションチャネルを評価しました。

WHOは、同国事務所およびパートナーを通して、このアウトブレイクを封じ込めるため、政府に対して技術支援、運営支援、財政支援を提供しました。これらには以下が含まれます:
  • WHOは、PoEでのサーベイランス、検査室、症例管理、IPC、安全かつ尊厳ある埋葬、RCCE、物流および国境を越えた調整など、すべての対応の柱に政治的支援、技術支援、運営支援を提供しました。
  • 検査キット、VHFキット、治療センターのモジュールなどの緊急時対応用品を提供しました。
  • すべての対応の柱に運営支援を提供するため、技術者を配備しました。
  • 能力強化およびサーベイランスの監視のため、技術的支援を提供し、症例管理およびIPC活動を統合しました。
  • 必須の保健医療サービスにMVD対応を組み込むなど、移行計画のための技術支援および戦略支援を引き続き提供しました。
  • 地域社会ベースの積極的な症例検索およびさまざまなクラスターでの死亡サーベイランスにより州保健局(Regional Health Bureau;RHB)を支援しました。
  • サバイバープログラム(Survivors Programm)の開発および実施についてRHBに対し技術的支援およびプログラムの支援を提供しました。

WHOによるリスク評価

これはエチオピアで初めて確認されたMVDのアウトブレイクです。アウトブレイクの調査および、接触者追跡、警戒管理、積極的な症例検索、死亡サーベイランスを含む対応中のサーベイランス活動に基づき、WHOの勧告に従い、42日間のカウントダウン期間中に追加の症例は報告されていません。しかし、アウトブレイクの終息宣言後もMVDが再流行するリスクは残っており、動物保有宿主との接触によるスピルオーバーの可能性があります。

リスクコミュニケーションとコミュニティエンゲージメントの活動を継続することで、適時に正確な情報を提供し、コミュニティのフィードバックや噂を監視・対処し、このアウトブレイクで感染した人々に対する偏見を抑える取り組みを支援しています。

WHOからのアドバイス

WHOは、アウトブレイク終息後の迅速な対応能力を維持することに加え、早期発見とケアの能力を維持することを奨励しています。これは、感染症が再流行した場合、保健当局が直ちに発見し、感染症の再拡散を防ぎ、最終的に命を救うことができるようにするためです。

ヒトへの感染を効果的に減らすために、MVDのリスク因子や個人が実施できる防御策についての認識を高めなければなりません。WHOは、医療施設やコミュニティでのMVD感染を減らす効果的な方法として、以下のリスク軽減策を助言しています:
  • フルーツコウモリのコロニーが生息する鉱山や洞窟での長期滞在によるコウモリからヒトへの感染リスクを低減してください。フルーツコウモリのコロニーが生息する鉱山や洞窟への訪問や作業を行う場合は、手袋やその他の適切な防護服(マスクを含む)を着用すべきです。
  • MVD患者の早期発見能力は、MVDのリスクがある環境において長期にわたって維持されるべきです。
  • 感染患者との直接接触または濃厚接触、特に体液との接触に起因する、地域社会におけるヒトからヒトへの感染リスクを低減します。MVD患者との濃厚接触は避けるべきです。MVDが疑われる、あるいは確認された患者は、早期治療と家庭内での感染防止のため、指定された治療センターで隔離する必要があります。
  • MVDが発生したコミュニティは、保健当局とともに、疾病自体の性質と必要なアウトブレイク封じ込め対策の両方について、住民に十分な情報を提供する必要があります。
  • アウトブレイク封じ込め対策には、死者を安全かつ尊厳を持って埋葬すること、MVDに感染した人と接触した可能性のある人を特定し、その人の健康状態を21日間監視すること、感染が確認された患者にケアを提供することなどが含まれます。MVDに一致する症状がある病人は適切な能力のある医療施設へ紹介される必要があります。
  • WHOのエボラウイルス病およびMVDの感染予防管理ガイドラインに従い、すべての医療施設において重要な感染予防および管理措置を実施または強化、あるいはその両方を行う必要があります。MVDの確定例または疑い例をケアする医療従事者は、患者の血液やその他の体液、および汚染された表面や物体との接触を避けるため、WHOの5つの行動指針に従った個人用保護具(PPE)の適切な使用と手指衛生などの標準予防策に加えて、感染経路別の予防策を講じる必要があります。医療施設で発生する廃棄物は、安全に分別、収集、輸送、保管、処理、そして最終処分を行う必要があります。安全な廃棄物処理に関する国のガイドライン、規則、規制に従うか、 WHOの安全な廃棄物管理に関するガイドラインに従ってください。
  • 医療における必須環境衛生基準に概説されているように、患者のケアは、医療関連感染症(HAI)の予防と管理に関連する活動を促進する清潔で衛生的な環境で実施されるべきです。医療施設では、安全な水、適切な衛生設備、衛生インフラとサービスが提供されるべきです。推奨事項と改善の詳細については、 WASH FIT実施パッケージをご覧ください。
  • WHOは各国に対し、MVDから回復した人々とその後の後遺症を支援するための包括的なケアプログラムを実施し、体液検査を受けられるようにし、適切な習慣によって感染した体液を介した感染リスクを軽減するよう奨励しています。

現在のリスク評価に基づき、WHOはエチオピアへの渡航や貿易を制限しないよう勧告しています。

出典

World Health Organization(26 January 2026)Disease Outbreak News; Marburg virus disease - Ethiopia
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON592

備考

This is an adaptation of an original work “Marburg virus disease - Ethiopia. Geneva: World Health Organization (WHO); 2026 License: CC BY-NC-SA 3.0 IGO”. This adaptation was not created by WHO. WHO is not responsible for the content or accuracy of this adaptation. The original edition shall be the binding and authentic edition.