エムポックスクレードIbの感染拡大-世界情勢(2025年12月5日)

海外へ渡航される皆様へ

エムポックスは、モンキーポックスウイルス(MPXV)によって引き起こされる感染症です。MPXVは、主にヒトの間で病変部や体液との直接の皮膚・粘膜接触およびこれらに汚染された物への濃厚な接触によって感染します。まれに、至近距離で感染性の呼吸器粒子を吸引することで感染することがあります。流行地域では生きた動物との接触や汚染されたブッシュミートの摂取による動物からヒトへ感染も起こり得ます。エムポックスの症状は、通常、曝露後3~7日以内に出現しますが、早ければ1日後、まれに21日後に出現することもあります。症状は通常2~4週間続きますが、免疫力が低下している人の場合はより長く続くこともあります。一般的に、発熱、筋肉痛、咽頭痛が最初に現れ、続いて皮疹や粘膜病変が現れます。リンパ節腫脹も典型的なエムポックスの症状で、ほとんどの症例でみられます。性的接触による感染では、性器のみに病変が出現することがあります。 小児、妊婦、免疫力が低下している人は、合併症を起こしやすく、死亡するリスクもあります。

以下の点を事前に確認して、健康に気を付けて渡航してください。
渡航前の情報収集
エムポックスに関する情報や、各国で流行している感染症に関する情報、渡航先の医療情報を、FORTHや外務省などの公式な情報源で確認してください。トラベルクリニックなどで渡航前に感染対策などを相談することも可能です。

渡航中の健康管理
1.基本的な感染対策
アルコール消毒や石鹸などを使用した手洗いなどの手指衛生、マスクの着用や咳エチケットといった基本的な感染対策を行いましょう。

2.リスクを軽減するための対策
エムポックスは、性的接触など、皮膚や粘膜同士の濃厚な接触が主な感染経路です。これらの濃厚な接触の機会を減らすことで感染のリスクを下げることができます。コンドームの使用は一部の暴露を減らしますが、皮膚・粘膜の接触で感染するため、コンドームだけで感染を完全に防ぐことはできません。
従来エムポックスの流行が起こっていたアフリカ中央から西部地域など、動物がエムポックスに感染している可能性のある地域では、野生動物への接触や、加熱が不十分な肉の喫食を避けることも有効な対策です。

3.体調不良時の行動
渡航中にエムポックスを疑うような症状があらわれた場合は、エムポックスの可能性を伝えたうえで、すぐに現地の医療機関を受診してください。

帰国後の対応
渡航先で、性的接触などの濃厚な接触や、野生動物との接触などがあった場合、渡航後21日間は、自身の健康状態に注意してください。発熱、発疹、リンパ節の腫れなどの症状が現れた場合は医療機関に事前に連絡をした上で、速やかに受診しましょう。
感染が疑われる場合は、他の人との接触を避け、特に性的接触は控えてください。
エムポックスと診断された場合は、保健所や医療機関の指示に従い、必要な治療を受け、自宅等における感染対策を徹底しましょう。

そのほか、海外渡航に関する一般的な注意事項は「ここに注意!海外渡航にあたって」をご参照ください。

以下は、WHOのDisease Outbreak Newsの翻訳であり、厚生労働省委託事業「国際感染症危機管理対応人材育成・派遣事業」にて翻訳・メッセージ原案を作成しています。

状況の概要

この報告は、最近の疫学的な経過、対応活動、関連する世界の公衆衛生リスクをまとめたものです。これまで発生していない国、あるいはこれまで渡航に関連した症例のみが報告されていた国における、男性と性交渉を持つ男性(MSM)でのクレードIbのモンキーポックスウイルス(別名エムポックスウイルス(MPXV))の地域感染に対する認識を高めることを目的としています。
2025年9月5日、エムポックスに対する国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)の2回目の宣言が解除されました。世界レベルでMPXVクレードIとII、ならびにそれらのサブクレードは循環し続けており、その結果としてアフリカ諸国でアウトブレイクが発生しているため、WHOは緊急事態への備えと対応活動に関する助言を継続して行っています。現在起こっているウイルスの循環にはさまざまな様式がありますが、主なものは性的接触によるものです。2025年9月5日以降、WHOの4地域(アフリカ地域、アメリカ地域、ヨーロッパ地域、西太平洋地域)の複数の国で、直近の渡航歴がない人でのクレードIbの感染が確認されています。その多くがMSMでの報告であり、症状がほとんどないか、無症状の症例が多く、診断されないまま感染が持続していることが、地域内での感染になっていることが示唆されています。全体的に、多くの国におけるサーベイランスの情報は、エムポックスのアウトブレイクの発生を探知し、効果的に対応するのに十分です。しかし、感染拡大を抑えるための疫学調査、接触者追跡調査、公衆衛生対策の実施には課題が残っています。エムポックスの多くの症例は2~4週間で自然治癒することがわかっています。しかし、二次性細菌感染やその他の合併症を発見・予防・管理するためには、質の高い医療への迅速なアクセスが不可欠です。免疫抑制状態にある人では、より重症になりやすく死亡のリスクが高くなります。特に未検出および/または未治療などヒト免疫不全ウイルス(HIV)をコントロールできない人において顕著です。新しいパートナーや複数のパートナーを持つMSMにおけるクレードIbおよびIIb感染のリスクは高い状態が持続しています。WHOは、クレードIb のMSMに対する公衆衛生上のリスクは中程度、ほとんどの国では一般集団に対するリスクは低いと評価しています。

発生の詳細

2025年9月5日のエムポックスに関する2回目のPHEICの解除以降、11月24日時点で、このウイルス株の市中感染が持続している地域以外の6つのWHO地域で、クレードIbの新規確定例43例が報告されています。このうち4つの地域(アメリカ地域、南東アジア地域、ヨーロッパ地域、西太平洋地域)では、24例が最近の海外渡航歴がなく、地域内感染が示唆されました。これを踏まえると、イタリア、マレーシア、オランダ、ポルトガル、スペイン、アメリカ合衆国は現在、クレードIbの市中感染が発生していると考えられます。また、渡航に関連した症例も多くの国で引き続き報告されています。

43例の半数(22例)はMSMと記録されており、MSMと記載のない他の症例はクレードIbの市中感染が知られている国へ渡航、または渡航関連の症例に続発した家庭内や性的パートナーへの感染でした。

本報告書では、クレードIbの症例について、WHO地域および国別に最近の概要を示すと同時に、入手可能であった主要な疫学的情報をまとめたうえで、WHOによる迅速リスク評価および公衆衛生上の助言をまとめています。


WHO地域及び国々におけるクレードIbの報告の要約(2025年9月5日~11月24日)

アフリカ地域
2025年9月5日のPHEIC解除以降、2025年11月24日時点で、ナミビアが初めてクレードIbの症例を報告しました。一方ブルンジ、コンゴ民主共和国、ケニア、マラウイ、モザンビーク、コンゴ共和国、ルワンダ、南アフリカ、タンザニア、ウガンダ、ザンビアでは市中感染が持続しています。

ナミビア
ナミビアは、クレードIbの可能性例1例および確定例2例をWHOに報告しました。初発例(可能性例)はアフリカ地域内を移動した症例に関連し、確定例2例は初発例の家庭内の接触者でした。このクラスター発見後、ほかの症例は報告されていません。
こちらは、同国で報告された最初のエムポックス症例です。

南北アメリカ地域
WHOアメリカ地域の2か国からクレードIbの確定例、合計4例が報告されています。カナダで探知された1例は直近に渡航歴があり、アメリカ合衆国の3例には直近の渡航歴はなく、旅行者との疫学的関連はありませんでした。

カナダ
カナダは、直近の国外への渡航歴があり、カナダに帰国後は性的パートナーがいない、と報告している成人男性におけるクレードIbの確定例1例をWHOに通知しました。当該症例は、さらなる感染を予防するためカウンセリングを受けました。

アメリカ合衆国
アメリカ合衆国は、カリフォルニア州のロングビーチ(1例)およびロサンゼルス(2例)からお互いに関連性のないクレードIbの合計3例を報告しました。3例すべてMSMであり、直近の海外渡航歴はなく、エムポックス症例への曝露は確認されていませんでした。またエムポックスの感染歴や、オルソポックスウイルスワクチン接種歴のある人はおらず、1例は免疫不全者でした。3例とも入院し、標準的な治療を受け回復しました。アメリカ合衆国は、PHEIC解除の前までにいずれも渡航に関連したクレードIbの症例6例を報告しました。
公衆衛生当局は、家庭内、医療施設、社会的接触者を対象に接触者追跡を実施しました。別のクレードIbによるエムポックス症例はこれまで確認されていません。疫学調査から、南カリフォルニアにおいてMSMとその社会的ネットワークにおいてクレードIbの市中感染が発生していることが示唆されています。ウイルスのゲノム配列解析のデータからは、カリフォルニアの3例が2025年8月の同国の以前の報告例と関連している可能性があることを示しています。

南東アジア地域
2025年9月5日から11月24日までに、WHO南東アジア地域でクレードIbの症例5例が報告されました。全例ともタイからの報告で、直近の海外渡航歴があり、うち3例はMSMであることを自認していました。

タイ
タイはクレードIb症例5例をWHOに報告しました。4例が男性で、1例は女性でした。男性4例のうち3例はMSMを自認しており、アラブ首長国連邦、オマーン、ロシア連邦への直近の渡航歴があり、そこで感染した可能性が高いと考えられました。9月5日以前、クレードIbの症例5例を報告しており、全例が海外渡航に関連していました。

東地中海地域
東地中海地域の3か国、エジプト、レバノン、カタールから、エムポックス症例6例が報告されました。エジプトおよびレバノンからはクレード情報の報告がありませんでしたが、カタールからはクレードIbの2例が報告されていました。

カタール
カタールは、クレードIb症例2例をWHOに報告しました。成人男性1例、成人女性1例のいずれも東地中海地域内の移動と関連していました。この期間以前、カタールはクレードIbの症例を3例報告しており、いずれも海外渡航と関連していました。

ヨーロッパ地域
ヨーロッパ地域からは、クレードIbの症例合計27例の報告がありました。このうち18例は国内感染であり、直近の海外渡航歴はなく、未検出の地域内感染が示唆されました(イタリア、オランダ、ポルトガル、スペイン)。2例(ベルギーと英国)はヨーロッパ内の移動に関連し、5例はヨーロッパ外(東アフリカ、ウガンダ、アラブ首長国連邦)への渡航に関連しており、クレードIbの地域内感染がみられる国への出入国だけでなく、アンゴラ、アラブ首長国連邦、ベトナムなど、地域内感染が報告されていない国への渡航に関連していました。さらに、27例中15例以上、また地域内で感染した症例18例中14例は、MSMを自認している人でした。

ベルギー
ベルギーは、直近オランダへ渡航した、クレードIbの症例1例をWHOに報告しました。この症例は、オランダで男性と複数の性的接触がありました。9月5日以前、ベルギーは、クレードIbの症例6例を報告しましたが、いずれも渡航に関連していました。

フランス
フランスは、東アフリカから帰国した成人男性のクレードIbの症例1例をWHOに報告しました。この報告以前は、フランスは、クレードIbの症例3例を報告しており、いずれも渡航に関連していました。

ドイツ
ドイツは、クレードIbの症例3例をWHOに報告しました。3例すべて、直近の海外渡航歴がありました。1例はアンゴラに渡航した成人男性、1例はウガンダに渡航した成人女性、1例はベトナムに渡航した成人男性でした。ウガンダではクレードIbの地域内感染が発生しています。ベトナムではこれまで、このサブクレードの報告はありませんでした。9月5日以前、ドイツは、クレードIbの症例12例を報告しており、そのほとんどが渡航と関連していました。

ギリシャ
ギリシャは、アラブ首長国連邦への直近の渡航歴がある成人男性における初めてのクレードIbの症例をWHOに報告しました。

アイルランド
アイルランドは、2025年9月5日以前に報告された、小規模クラスターに関連する2例を報告しました。初発例は、ヨーロッパ外への直近の渡航歴がありました。初発の症例に関連する最初の地域内感染の症例は、家庭内感染した5歳未満の小児で、2人目は、以前のクラスターの症例の1人の対応にあたっていた医療従事者でした。この限局的な症例以外に、ほかの症例はありませんでした。この期間以前、アイルランドは、クレードIbの確定例1例を報告しており、それは同じクラスターの一部である可能性例の渡航者に関連したものです。

イタリア
イタリアは、直近の海外渡航歴がなく、エムポックス症例との接触歴もない成人男性のクレードIbの症例2例をWHOに報告しました。これらの患者間に疫学的関連性はありませんでした。疫学調査と接触者の追跡調査を実施しましたが、ほかの症例は特定されませんでした。
イタリアにおいて渡航に関連しないこれらのクレードIb症例が確認されたことから、同国内のクレードIbの地域内感染が示唆されました。この期間以前には、イタリアは、タンザニアへの渡航に関連するクレードIbの症例1例を報告しています。

オランダ
オランダは、クレードIbの症例9例を報告しました。直近の渡航歴とは関連していませんでした。同国でこうした症例が報告されたのは初めてです。8例は、MSMで、うち6人は、同じ性風俗店を頻繁に訪れたと報告していました。これらの症例は、同国におけるクレードIbの地域内感染を示唆しています。9月5日以前、オランダによるクレードIbの症例の報告はありませんでした。

ポルトガル
ポルトガルは、初めてのクレードIbの確定例1例をWHOに報告しました。この症例は成人男性で、最近の海外渡航歴はなく、曝露状況は明らかでなく、症例に関する情報はありませんでした。接触者は特定されず、症例には自宅隔離、性的接触の中止、病変が完全に消失するまでの衛生対策の遵守に関する指導が行われました。その後、この症例は保健当局とのコミュニケーションを終了しました。
ポルトガルでは、アウトブレイクの予防・管理対策は国および地方レベルで現在も実施されています。臨床、検査、疫学的な検出の強化に加え、市民社会や最もリスクの高いコミュニティと連携し、ワクチン接種を推進しています。ポルトガルでは、冒頭の症例以降クレードIbの新たな症例は確認されていません。 ポルトガルにおいて、渡航歴がなく、他に症例が確認されていないにも関わらず検知したクレードIbの症例が確認されたことは、同国におけるクレードIbの地域内感染を示唆しています。

スペイン
スペインは、直近に海外渡航歴がなく、エムポックス症例と未接触者においてクレードIbの症例6例を報告しました。ほかのクレードI の2例が報告されましたが、詳細なサブクレードの情報はありませんでした。これらは、同国で報告されたクレードIbの初めての症例であり、全例MSMと自認していました。スペインにおける渡航と関連のないクレードIbの症例が確認されたことは、同国におけるクレードIbの地域内感染を示唆しています。

グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(英国)
英国は、ヨーロッパ内の渡航歴のある、クレードIbの症例1例をWHOに報告しました。この症例は他の男性と性交渉を行ったことが報告されています。この症例以前に、英国は、クレードIbの症例18例を報告しており、その多くが、クレードIbが循環している国への渡航と直接的または間接的に関連しています。

WHO西太平洋地域
2025年9月5日から11月24日に、WHO西太平洋地域でクレードIbの症例3例(オーストラリア、日本、マレーシア各1例)が報告されました。

オーストラリア
オーストラリアは、クレードIbの症例1例をWHOに報告しました。この症例は成人男性で、直近に、中国とフィリピンに旅行し、そこで感染した可能性が高いと考えられます。フィリピンでは、クレードIbの症例は報告されていません。9月5日以前、オーストラリアではクレードIbの症例3例が報告されていますが、いずれも渡航と関連していました。

日本
日本は、直近でアフリカに渡航し、そこでウイルスに暴露した可能性が高い成人女性におけるクレードIbの最初の症例をWHOに報告しました。

マレーシア
マレーシアは、初めてのクレードIbの症例をWHOに報告しました。症例は成人男性で、MSMを自認していました。最近の海外渡航歴はなく、既知の症例との関連性はみられませんでした。症例は、症状発生前の3週間、少なくとも1人との性的接触がありました。接触者追跡により、家庭内および医療関係者15人が接触者として特定され、モニタリングが行われました。追加の症例は発生しませんでした。マレーシアで、移動歴がないにもかかわらず、クレードIbの症例が確認されたことは、国内でクレードIbの地域内感染が起こっていることを示唆しています。

表1 2025年9月5日から11月24日のクレードIbのMPXVによるエムポックスの概要

エムポックスの疫学

エムポックスは、MPXVによって引き起こされる感染症で、クレードI(サブクレードIaとIb)とクレードII(サブクレードIIaとIIb)の2つのクレードに分けられます。エムポックスは、歴史的に東、中央、西アフリカの熱帯雨林における人獣共通感染症に関連し、近年、主にヒトからヒトへの感染で拡がり、全WHO地域で急速に拡大しています。サブクレードIaとIbは、2023年にコンゴ民主共和国の南キブ州で出現したサブクレードIbの後に出現しました。クレードIaは現在、クレードIのIb以外のすべての株を包含すると考えられます。クレードIIbは、2022年以降、すべてのWHO地域で循環が継続しています。

このウイルスは、主にエムポックスに感染した人との密接な身体的接触、性的接触、あるいは親から子への接触など、直接的な皮膚接触によって感染します。
その他に確認されている感染経路には、汚染された物品との間接的接触、まれに感染性呼吸器粒子の近距離吸入などの非身体的接触、ならびに妊娠中または分娩時における母子間の垂直感染が挙げられます。歴史的に流行がみられる地域では、生きた動物との接触や汚染されたブッシュミートの摂取を通じて動物からヒトへの感染も起こる可能性があります。近年の知見から、エムポックスへの曝露は、他者における不顕性感染や、特に性器および肛門の分泌物を介したウイルスの無症候性排出によっても生じ得ることが示されており、これが性的接触時のさらなる感染拡大を促進する可能性があります。

エムポックスの徴候および症状は、通常、曝露後3~7日以内に出現しますが、早ければ次の日、まれに21日経ってから発症することもあります。症状は通常2~4週間続きますが、進行した未治療のHIV感染などにより免疫力が低下している人の場合はより長く続くこともあります。最初に発熱、筋肉痛、咽頭痛が現れ、続いて皮疹や粘膜病変が現れますが、そうした病変の出現が、全身症状よりも先行する可能性があります。リンパ節腫脹も典型的なエムポックスの特徴であり、ほとんどの症例でみられます。性的接触による感染では、時に性器病変のみが出現することが観察されています。小児、妊婦、免疫力が低下している人(一般的には進行したHIV感染によるもの)は、合併症を起こしやすく、死亡するリスクもあります。

エムポックスを確認するには、特にアウトブレイクの初発例、もしくは新たな地域での初発例において、臨床検査が必要です。エムポックスウイルス感染の主な診断検査はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)です。診断に最も適した検体は、病変から直接採取したもの(病変部の液体や痂皮といった皮膚や粘膜)で、スワブを用いて擦り取り採取します。皮膚または粘膜の病変がない場合は、口腔咽頭、肛門、直腸のスワブで検査を行うことが可能です。口腔咽頭、肛門、直腸の検体が陽性であればエムポックスと確定しますが、陰性であってもエムポックスウイルス感染を除外するには十分ではありません。ウイルス血症は通常短く、感染後数日で陰性になる可能性があるので、血液検査は推奨されません。血清学検査では異なるオルソポックスウイルスを区別できないため、この方法は、後方視的な症例分類や特別な研究において抗体検出法を適用できる基準検査機関に限定されます。

治療は主に、臨床症状の管理、皮膚や眼の処置、痛みの軽減、二次性細菌感染および他の合併症の予防と管理が基本です。臨床研究または緊急アクセスプロトコルを通じて入手可能な場合には、特に重症例や合併症リスクの高い患者に対して、特定の抗ウイルス薬がエムポックスの治療にも使用される可能性があります。

エムポックス予防用のワクチンは、どの国でも入手可能です。WHOは、MVA-BN(非複製性の)またはLC16m8(最小限の複製性)ワクチンを推奨しています。もしくはほかを利用できない場合は個々のリスク-ベネフィット評価に基づきACAM2000(複製性)ワクチンの使用を推奨しています。アウトブレイクが発生している状況では、セックスワーカー、ゲイ・バイセクシュアル男性またはその他のMSM、または複数の性的パートナーを持つ人、医療従事者および現場で働く人、既知のエムポックス症例との接触者、地理的に定義された地域又はコミュニティにおけるその他の感染発生グループ(地域疫学に基づく)など、エムポックスへの曝露リスクが高い人に対して、WHOはワクチン接種を推奨しています。

公衆衛生上の取組

WHOは、世界的なエムポックスサーベイランスを維持し、複数のパートナーとの連携を通じて、すべての国へ対応ガイダンスの提供および診断薬とワクチンへのアクセス支援を継続しています。WHOとパートナーは、アウトブレイクへの迅速な対応を加速し、将来の持続可能な支援を確実にするため、エムポックスワクチン供給のための国際調整グループ(ICG)を設立しました。さらに、WHOは現場で使用できる迅速診断検査の評価を継続しています。

エムポックスの感染の影響をうけているWHO地域では、以下の公衆衛生対策が実施されています。

アフリカ地域
  • この地域では、すべての主要な対応の柱を含め、大陸規模のエムポックス対応が進められています。
  • サーベイランス活動が継続され、ほとんどの国でエムポックスの診断能力が整備されています。
  • 16か国がエムポックスワクチンを受けとり、アウトブレイクを封じ込めるため、リスクのある人にワクチン接種をしています。

南北アメリカ地域
  • WHOは、加盟国に対し、エムポックス発生国におけるサーベイランス、備え、アウトブレイク対応の支援をしています。
  • WHOは、状況報告書とエムポックスダッシュボードにより情報を提供します。
  • ワクチンは汎アメリカ保健機関(PAHO;Pan American Health Organization)リボルビングファンド(Revolving Fund)から各国入手可能です。
  • WHOの対応は、リスクの高いコミュニティとのコミュニケーションとエンゲージメント、症例の迅速な検出と患者の治療、検査による確認、サーベイランス、ならびに感染連鎖の封じ込めに重点を置き、重要な医療物資へのアクセスと医療従事者の保護に重点を置いています。

南東アジア地域
  • WHOは、臨床検査、感染症危機対応医薬品等(MCMs; Medical Countermeasures)へのアクセスなどの備えを強化するため、加盟国に対して毎週、説明と技術ガイダンスを提供しています。
  • MCMへのアクセスは、診断薬の配分およびサプライチェーン調整、および、地域規制ネットワークを通じた規制上の備えへの支援により行われています。
  • WHOは、安全かつ拡張可能なケアの能力強化を目的として、臨床管理と感染予防・制御に関するガイダンスを提供しています。
  • 早期発見および報告のための協調的なサーベイランス体制には、HIV/性感染症プログラムと緊急対応プログラム間の連携が含まれます。支援には、地域能力向上のためのゲノム配列決定、試薬供給、研修、バイオインフォマティクス支援が含まれます。
  • コミュニティ保護およびコミュニケーション戦略は、高リスク集団への重点的アウトリーチ、ソーシャルリスニング、風評の把握、地域に合わせたメッセージングに加え、ゲノム解析能力および診断に関する規制体制の備えの改善の取り組みを通して強化・拡大されています。

東地中海地域
  • WHOは、IHRのメカニズムを通して各国間の調整、報告、情報共有を継続的に支援しています。
  • WHOは、日常的な性感染症(STI)対策サービスにエムポックスの予防とケアを統合するよう国の関係機関に対して働きかけを続けています。
  • WHOは、検査キットの調達や流通を円滑にすることによって、各国がエムポックスの診断サービスにアクセスできるよう支援します。
  • WHOは、サーベイランスを強化し、エムポックスを定期サーベイランスの対象に含めるため、国の保健当局と緊密に連携します。

ヨーロッパ地域
  • WHOおよび欧州疾病予防管理センター(ECDC)はすべての加盟国に、正式な国際保健規則(IHR;Internatioanl Health Regulations)やサーベイランスのメカニズムを通してクレードIを報告するよう要請しました。
  • WHOは、この地域におけるエムポックスの伝播要因の理解を深めるため、モデリングを実施しました。
  • ECDCは、EU/EEAにおけるクレードIbの地域内感染の確認を受け、リスク評価の概要を発表しました。
  • 医療従事者に対するリスクコミュニケーション、コミュニティエンゲージメント、およびインフォデミック管理パッケージ、渡航アドバイスは、IHR担当者を通じて加盟国に共有されました。
  • エムポックスに関するQ&Aが更新されました。
  • WHOとECDCは、コミュニティの人々が持つ認識を理解するために、コミュニティへの状況説明を計画しています。

西太平洋地域
  • この地域におけるクレードIbによる地域での感染例、およびクレードIbの地域からの輸出症例の通知後、WHOは疫学調査、接触者の追跡調査、潜在的な感染伝播の状況評価について各国の当局と協働し、他の症例がないかサーベイランスを継続し、国境を越えた支援を提供しています。
  • WHOは、IHRチャンネルを通じて各国のエムポックスが疑われる症例に対するサーベイランス、準備、調査の支援を継続しています。これにはエムポックスが疑われる事象の迅速なリスク評価、症例管理および感染予防・管理(IPC)に関する技術的助言が含まれます。
  • WHOは、診断能力を強化するため標的を絞った支援を行っています。その中には、臨床検体採取に関するガイダンス、クレードIおよびクレードIIのPCR検査へのアクセス、クレードおよびサブクレード同定のための塩基配列同定能力向上のための、国の検査室連携が含まれます。
  • WHOは、エムポックスへの備えをHIVおよび性感染症関連サービスに統合する取り組みを進めており、WHOの臨床ケアおよび感染予防・管理に関するガイダンスに沿って、エムポックス感染者に対する早期のHIV検査と、迅速な抗レトロウイルス療法(ART)の開始を推進しています。
  • WHOは、地域のウェビナー、技術的情報交換、実践共同体による臨床対応を支援し、各国が最新の臨床管理ガイダンス、ピアサポート、疑い例および確定例の管理のための状況に応じたツールへのアクセスを可能にしています。
  • リスクコミュニケーションおよびコミュニティエンゲージメント活動は、ソーシャルリスニング、情報・教育・コミュニケーション(IEC)資材の作成、医療従事者およびMSM、セックスワーカー、コミュニティ基盤組織を含む主要集団ネットワークとの緊密な連携に重点を置き、症状に対する認識を高め、早期の受診行動を促進し、エムポックスに関連する偏見を抑えるようにしています。
  • WHOは、活動中評価への支援および、あらゆるハザードを想定した緊急時の備えおよび対応フレームワークへのエムポックスの統合などにより、各国の備えの対策の精査や強化を支援します。

WHOによるリスク評価

上記の疫学の発展と、全WHO地域におけるクレードIbの地域内感染の確認を踏まえ、WHOは、クレードIbによる公衆衛生上のリスクを、新規および/または複数のパートナーがいるMSMでは中程度、一般集団においては低いと評価しています。

この評価の理論的根拠の概要は以下のとおりです。

適切なタイミングに良質なケアが受けられる場合、エムポックスは一般に、全身症状と局所的な皮膚や粘膜の病変を特徴とする軽度から中等度の症状の疾患となります。しかし、二次性細菌感染やその他の合併症がある場合は重篤な病態や死亡につながる可能性があります。多くの場合、死亡例の割合(致命率)は1%未満です。重篤な病態や死亡するリスク因子には、コントロール不良のHIV、若齢(0~4歳)、妊娠など、何らかの原因による免疫抑制が関連します。近年、エムポックス関連死の負荷が最も大きいのは未治療またはコントロール不良のHIV感染者です。アフリカ諸国では、幼児、妊婦やその胎児や新生児、その他免疫不全状態の人でも死亡例が発生しています。

WHOは、近年、エムポックスについて2度PHEICを宣言しています。2022年の1度目の宣言は、世界の全地域の性的接触ネットワークを通して、主に複数のパートナーを持つMSMの中で拡大しているクレードIIbのアウトブレイクに関するものでした。世界的なアウトブレイクの中、この集団以外への感染は極めて限定的であり、2023年後半には制御下におかれましたが、その後も、同集団において、性的接触を介した軽症、未検出、または不顕性感染によると思われる低いレベルで散発的感染が、継続しています。

2度目のPHEICの宣言はアフリカで報告されたエムポックス症例数の増加と、アフリカの複数の国で新たに特定されたクレードIbが拡大していることにより宣言されました。ほとんどの国ではエムポックス感染が初の発生であり、性的接触と非性的接触の両方で感染がみられました。これらのアウトブレイクは、主に、中央アフリカおよび東アフリカのいくつかの国において、この株の地域内の持続感染につながっています。多くの状況で、感染は当初、セックスワーカーを含むがそれに限定されない、不特定多数の性的パートナーを有する人に関連する性的ネットワーク内における異性間接触により広がり、その後、家庭内での二次感染が生じました。これらの多くの状況において、ウイルスの循環は、把握されている感染と、潜在的な(未検出または未報告)感染の両方により持続しています。

複数の国および上述の地域内で感染したクレードIbの症例は、このサブクレードの未検出の伝播がこれらの状況で独立して発生していることを示唆しています。この伝播は、無症状または軽症の症例の存在により加速し、特に性的接触によりさらなる伝播が起こる可能性があります。この仮説は、MSM間のクレードIb症例の割合が増加していることによって裏付けられます。クレードIbは今後も拡大し続け、主に広範な性的接触ネットワークを介してより多くの国で地域内感染が起きる可能性があります。MSM、特に不特定多数との性的接触の数が多い者では、クレードIb感染など、エムポックスのリスクは高いままです。現在、この集団のエムポックスに対する免疫は、一部の国における2022年以降のワクチン接種の取り組みと、クレードIIbのアウトブレイク中に、エムポックスへの曝露により獲得されています。しかしながら、多くの国がエムポックスワクチン接種を提供できておらず、ワクチンが入手可能な一部の国でもアクセスには制約があり、多くの人がワクチン接種のコースを完遂していません。また、2022年後半のワクチン接種活動のピーク以降、新たな若齢層が、性的に活発な人口層に入ります。こうした若年層は感染歴もなく、ワクチン接種活動の対象でもないため、免疫学的に感受性のある状態である可能性が高くなります。さらに、ワクチンの有効性に関する入手可能なデータ、ワクチン接種後または感染前のエムポックスに対する防御持続期間の不確実性、ウイルス株の進化が進んでいるアウトブレイクの状況下における、既存免疫のクレード間での防御効果の不確実性に加え、体液性免疫の時間的経過にともなう減弱化を示す新たなデータが得られていることから、2022年および2023年にワクチン接種を受けた、または感染した人が防御免疫を維持しているとする確からしさは限定的です。
さらに、9月5日から11月24日までここに記載された国が報告した全症例のうち、半数のみがMSMであり、他の集団においてもリスクが継続していることが示唆されています。

ここで報告された全症例は臨床的に安定しており、隔離されているか回復しています。大半のこれらの症例の既知の接触者は、症状の早期探知と診断が確実に行われるために21日間の健康観察を受けました。これらの症例やその接触者における臨床的リスクは低く、特にワクチン接種を受けた人、免疫不全状態にない人はその傾向が顕著です。

クレードIIbに関連する世界的なアウトブレイクのデータ、および昨年のクレードIbの複数回の輸入は、ほとんどの高所得国において性的ネットワーク外でのエムポックス感染は比較的限定的であることを示唆しています。この状況では、性的ネットワークを有するグループ以外においてはエムポックスの地域内感染のリスクは依然として低いと考えられます。しかしながら、アフリカにおけるクレードIbの大規模なアウトブレイクと広範な地域内感染が、小児を含むさまざまな集団に影響を及ぼしていることを考慮すると、すべての地域特に性的感染のリスクが高い集団に対しては警戒を維持することが引き続き極めて重要です。

発生国はエムポックスのアウトブレイクを効果的に検出し対応する能力が開発されていますが、詳細な疫学調査および接触者追跡調査は依然として困難です。エムポックス感染者は、曝露歴または現在の性的接触に関する情報を明らかにすることを躊躇することが多く、そのことが感染連鎖の完全なマッピングの妨げとなり、未検出で感染が拡大する可能性を高めます。理想的には曝露後4日以内の症例の迅速な隔離、報告された接触者の特定と監視、リスクのある接触者に対する曝露後の適時のワクチン接種はいずれも、二次感染の即時リスクを軽減できます。しかし、多くの国でクレードIbの性的感染が現在発生していることを考えれば、クレードIb感染が新たに発生した国や、世界の他の国へ拡大し続けるリスクは高いと思われます。

最近の動向を踏まえ、WHOは、クレードIbによる公衆衛生リスクは新しいパートナーや複数のパートナーを持つMSMでは中程度、一般集団では低いと評価しています。一般的に、男性のリスクは、MSM集団では曝露リスクが高いこと、多くの状況で一般集団と比べて進行したHIV感染の有病率が高いことから妥当と思われます。この高いリスクは、一部の地域においては、この集団における過去の自然感染や予防接種による残存した防御効果によって軽減されます。集団内の免疫が、若年者や過去にワクチン接種歴または感染歴のない人々に間接的な利益をもたらし得る程度は不明であり、ワクチンへのアクセスが維持されなければ、その効果は時間の経過とともに低下し続けることになります。

地域内で感染した個々の症例を含むすべてのエムポックスのアウトブレイクは、疫学、感染パターン、重症化のリスク因子、ウイルスのリザーバーとその進化、そして予防・制御のための戦略的アプローチと対策の妥当性をより深く理解するために、各地域の状況に応じて評価する必要があります。地理的地域、疫学的状況、性自認または性行動にかかわらず、個人のリスクは曝露のリスクや免疫の状態などの因子に大きく左右されます。

WHOからのアドバイス

アフリカ内外の多くの国でクレードIbの地域内感染が発生しています。WHOは、各国に対し2023年に発出され2026年8月20日まで延長された恒常的な勧告、特にWHOのガイドラインに沿ったエムポックスの疫学的サーベイランスおよび検査室診断能力の強化、ならびにリスクコミュニケーションとコミュニティエンゲージメント、リスクのある人に対するエムポックスワクチンへのアクセス確保に関して、引き続き遵守することを強く勧告しています。各国は、エムポックスウイルスのクレードおよびサブクレードの両方を検出するための診断能力を有するか、検査にアクセスできるように整備をしなければなりません。公衆衛生当局は、包括的な予防および対応策の一環として、新規症例およびクラスターに対するウイルスのクレード同定を行うためのゲノム配列解析へのアクセスを確保することが強く求められます。

WHOのエムポックス予防と制御強化のための戦略的枠組み(2024~2027年)は、あらゆる状況におけるヒトからヒトへの感染を特徴とするアウトブレイクの予防と制御、エムポックス研究の進展と対策手段へのアクセスの推進、ならびに一部のアフリカ諸国において関連する人獣共通感染を最小限に抑えるためのロードマップの概要を提示しています。

各国およびコミュニティは、特に移動性が高い人々や、脆弱な人々が多く居住・滞在する地域では、備えを強化し、地域社会の主体性をはぐくみ、リスクのある人にワクチン接種へのアクセスを広げ、国境を越えた連携を確保することが強く推奨されます。リスクコミュニケーション、コミュニティエンゲージメントおよびインフォデミックマネジメント(RCCE-IM)に関して、各国は以下のことを行うよう推奨されています。
  • MSM、セックスワーカー、それ以外のリスクのある集団など、リスクのあるコミュニティと緊密に連携し、予防措置の普及を促進すること
  • エムポックスが現在流行している国からの移民や当該国への渡航者を対象にアウトリーチを拡大し、入国地点における公衆衛生上のアドバイスを提供すること
  • すべてのコミュニケーションおよび介入が、偏見を生まず、敬意を持った包括的な形で提供され、否定的な固定観念や差別を助長する表現を避けること

ワクシニアウイルスで作成されたエムポックスワクチンは、エムポックスから防御します。WHOは、エムポックスワクチンに関するWHO予防接種専門家戦略諮問グループ(SAGE)の勧告ならびにWHOのポジションペーパーに沿って、エムポックスへの曝露リスクが最も高い人におけるアウトブレイク、また、オルソポックスウイルスを扱う検査室の人に対して予防的に、エムポックスに対するワクチン接種を行うよう推奨しています。エムポックスに対して現在使用されている2つのワクチンが推奨されています。MVA-BN(非複製性)はWHOによって事前認定されており、アウトブレイクの対応に広く使用されています。LC16m8(複製能性が最小限)はWHO緊急時使用リストに登録され、日本およびDRCで使用されているほか、コロンビアでも使用されてきました。妊婦、免疫不全者、増殖性皮膚疾患の患者に対するLC16の使用は禁忌です。WHOは、感染伝播を遮断するため、リスクのある人またはリスクのある地理的地域にいる関係者にワクチン接種を推奨しています。各国の当局は、一時的なアウトブレイク対応策として、MVA-BNワクチンを皮内注射により、通常の皮下投与量の5分の1の量で投与すること(分割投与)を推奨しています。これは、曝露リスクのある個人を保護し、4~5倍の人々にワクチンを接種することを可能にするためです。MVA-BNを用いる皮内ワクチン接種は有効かつ安全であることが示されています。

臨床的にエムポックスと診断された人、または検査室で確認された人は、感染期間中の保健施設または自宅での隔離など、地域の保健当局の指示に従う必要があります。エムポックス感染者は、医師の診察を受けるための移動でない限り、エムポックスの症状がなくなり、痂皮(かさぶた)が剥がれ落ち、その下に新しい皮膚層が形成されるまで、国内外の旅行を避ける必要があります。確定例との接触者は、症状が出現するまでの最大潜伏期間であり監視期間である21日間、移動を制限する(ならびに、性的関係を持たない)ことが求められます。

WHOは、合併症のリスクと長期後遺症のリスクを軽減し、健康状態を改善するため、エムポックス感染者への最適な臨床ケアの実施を強く推奨しています。エムポックスは、HIV感染者に偏って発生しており、進行したHIV疾患患者では重症化や入院または死亡のリスクが高くなります。WHOは、エムポックスの疑い例又は確定例全例に対する早期のHIV検査を実施すること、エムポックスと診断された、未治療のHIV感染者における抗レトロウイルス療法(ART)の迅速な開始を強く推奨しています。

どのレベルの保健当局も、エムポックス発生国への渡航者に対して、またはエムポックスのリスクがある可能性のあるイベントや集会へ参加する者に対して、渡航やイベント等の前、渡航中・イベント参加中、渡航後・イベント参加後に、自身と関係者を守るための情報を提供する必要があります。WHOは、この報告書に記載されている国への渡航や貿易を制限することを推奨していません。

エムポックスのリスク軽減のためのWHOからの公衆衛生上のアドバイスに関する追加情報については、下記の出典に挙げた情報源を参照してください。

出典
World Health Organization(5 December 2025)Disease Outbreak News; Broadertransmission of mpox due to clade Ib MPXV – Global situation. Available at:
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2025-DON587

備考
This is an adaptation of an original work “Broader transmission of mpox due to clade Ib MPXV – Global situation. Geneva: World Health Organization (WHO); 2025. License: CC BY-NC-SA 3.0 IGO”. This adaptation was not created by WHO. WHO is not responsible for the content or accuracy of this adaptation. The original edition shall be the binding and authentic edition.