クルーズ船渡航関連のハンタウイルス感染症(ハンタウイルス肺症候群)の集団感染事例 (2026年7月2日)
海外へ渡航される皆様へ
南大西洋を航行していたクルーズ船で、ハンタウイルスの一種であるアンデスウイルスによるハンタウイルス肺症候群(HPS: Hantavirus Pulmonary Syndrome)の集団発生が報告されました。今回の集団発生は封じ込められ、関連するさらなる感染伝播は見込まれない状態となりましたが、HPSは引き続き南北アメリカ地域で報告されています。
HPSは重症の人獣共通感染症で、発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などの症状がみられたのち、咳や息切れなどの呼吸器症状が現れ、重症化すると、急速に呼吸不全や循環不全が進行し、死亡する場合もあります。
ウイルスを保有するげっ歯類の尿・糞・唾液との接触、それらに汚染された物体の表面との接触、排泄物を含む粉塵を吸い込むことなどで感染すると言われています。また、アンデスウイルスでは、感染した者との密接かつ長時間の接触により、ヒトからヒトへ感染した事例が報告されています。今回の事例の正確な感染源および詳細な感染経路は引き続き調査中ですが、初発例は乗船前に南米地域で感染した可能性が高いと考えられています。
以下の点を確認して、健康に気をつけて渡航してください。
渡航前の情報収集
HPSに関する情報に加え、渡航先でのHPS以外の感染症や医療情報を、FORTHや外務省などの公式な情報源で確認してください。トラベルクリニックなどで渡航前に対策について相談することも可能です。
渡航中の健康管理
1.基本的な感染予防策
石けんと水での手洗いやアルコール消毒液の使用などの手指衛生、マスクの着用や咳エチケットといった基本的感染対策は、さまざまな感染症に対しても有効です。
2.リスクを低減するための対策
HPSの原因となるハンタウイルスの感染は、主に流行地域でのげっ歯類やその排泄物・汚染環境への曝露によって起こります。げっ歯類の体液・死骸・排泄物に触る、げっ歯類の排泄物で汚染された環境に不用意に入るなどの行動を避けることにより、感染リスクを減らすことができます。
ただし、アンデスウイルスはハンタウイルスの中で唯一ヒトからヒトへ感染した事例が報告されています。同居家族などでは患者との食器やたばこの共用、キスや性的接触といった行動を避けることも必要になります。
これらの行動が避けられない場合は、手袋やマスクを使用し、直接の接触を避けることで、感染リスクを減らすことができます。
3.体調不良時の行動
渡航中に上記のような曝露の可能性があり、発熱、頭痛、腹痛、下痢など、HPSを疑う症状が出た場合は、HPSを含む感染症の可能性があるので、速やかに現地の医療機関を受診し、渡航歴・現地での行動等を必ず伝えてください。
帰国後の対応
日本へ帰国した時に体調に異状があれば、空港や港の検疫所で渡航歴・現地での行動を伝えたうえで相談してください。
渡航中に曝露した可能性がある場合、帰国後6週間程度の期間は、ご自身の健康状態に注意し、異状があれば速やかに医療機関に相談してください。この際も渡航歴・現地での行動等を伝えてください。
そのほか、海外渡航に関する一般的な注意事項は「ここに注意!海外渡航にあたって」をご参照ください。
以下は、WHOのDisease Outbreak Newsの翻訳であり、厚生労働省委託事業「国際感染症危機管理対応人材育成・派遣事業」にて翻訳・メッセージ原案を作成しています。
HPSは重症の人獣共通感染症で、発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などの症状がみられたのち、咳や息切れなどの呼吸器症状が現れ、重症化すると、急速に呼吸不全や循環不全が進行し、死亡する場合もあります。
ウイルスを保有するげっ歯類の尿・糞・唾液との接触、それらに汚染された物体の表面との接触、排泄物を含む粉塵を吸い込むことなどで感染すると言われています。また、アンデスウイルスでは、感染した者との密接かつ長時間の接触により、ヒトからヒトへ感染した事例が報告されています。今回の事例の正確な感染源および詳細な感染経路は引き続き調査中ですが、初発例は乗船前に南米地域で感染した可能性が高いと考えられています。
以下の点を確認して、健康に気をつけて渡航してください。
渡航前の情報収集
HPSに関する情報に加え、渡航先でのHPS以外の感染症や医療情報を、FORTHや外務省などの公式な情報源で確認してください。トラベルクリニックなどで渡航前に対策について相談することも可能です。
渡航中の健康管理
1.基本的な感染予防策
石けんと水での手洗いやアルコール消毒液の使用などの手指衛生、マスクの着用や咳エチケットといった基本的感染対策は、さまざまな感染症に対しても有効です。
2.リスクを低減するための対策
HPSの原因となるハンタウイルスの感染は、主に流行地域でのげっ歯類やその排泄物・汚染環境への曝露によって起こります。げっ歯類の体液・死骸・排泄物に触る、げっ歯類の排泄物で汚染された環境に不用意に入るなどの行動を避けることにより、感染リスクを減らすことができます。
ただし、アンデスウイルスはハンタウイルスの中で唯一ヒトからヒトへ感染した事例が報告されています。同居家族などでは患者との食器やたばこの共用、キスや性的接触といった行動を避けることも必要になります。
これらの行動が避けられない場合は、手袋やマスクを使用し、直接の接触を避けることで、感染リスクを減らすことができます。
3.体調不良時の行動
渡航中に上記のような曝露の可能性があり、発熱、頭痛、腹痛、下痢など、HPSを疑う症状が出た場合は、HPSを含む感染症の可能性があるので、速やかに現地の医療機関を受診し、渡航歴・現地での行動等を必ず伝えてください。
帰国後の対応
日本へ帰国した時に体調に異状があれば、空港や港の検疫所で渡航歴・現地での行動を伝えたうえで相談してください。
渡航中に曝露した可能性がある場合、帰国後6週間程度の期間は、ご自身の健康状態に注意し、異状があれば速やかに医療機関に相談してください。この際も渡航歴・現地での行動等を伝えてください。
そのほか、海外渡航に関する一般的な注意事項は「ここに注意!海外渡航にあたって」をご参照ください。
以下は、WHOのDisease Outbreak Newsの翻訳であり、厚生労働省委託事業「国際感染症危機管理対応人材育成・派遣事業」にて翻訳・メッセージ原案を作成しています。
状況の概要
これは、クルーズ船M/Vホンディウス号に関連したアンデスウイルス(ANDV)のアウトブレイクに関する5報目(本事業での和文訳は2報目)のDisease Outbreak Newsです。
今回のアウトブレイクは、2026年5月2日に船内で発生した重症急性呼吸器疾患の症例について世界保健機関(WHO; World Health Organization)へ報告が行われたことを受けて確認されました。2026年5月28日に前回のDisease Outbreak Newsが公表されて以降、可能性例とされていたグレートブリテン及び北アイルランド連合王国(英国)の海外領土であるトリスタン・ダ・クーニャの1例が検査診断されました。7月2日現在、死亡例3例を含む合計13例が報告されています(致命率23%)。このうち12例はANDV感染の検査確定例であり、1例が可能性例です。確定例はいずれも、M/Vホンディウス号に乗船していた人々です。入院した10例のうち、8例は回復して退院し、2例は現在も治療を受けています。特定されたすべての接触者は、WHOのガイダンスに沿って、地域の保健当局による42日間の追跡調査期間を完了しました。新たな二次症例が検出されることなく接触者の追跡が完了したことは、感染伝播が効果的に遮断されたことを示し、アウトブレイクの封じ込めを裏付けています。このアウトブレイクはもはや公衆衛生リスクをもたらしておらず、関連するさらなる感染伝播は見込まれません。
今回のアウトブレイクは、2026年5月2日に船内で発生した重症急性呼吸器疾患の症例について世界保健機関(WHO; World Health Organization)へ報告が行われたことを受けて確認されました。2026年5月28日に前回のDisease Outbreak Newsが公表されて以降、可能性例とされていたグレートブリテン及び北アイルランド連合王国(英国)の海外領土であるトリスタン・ダ・クーニャの1例が検査診断されました。7月2日現在、死亡例3例を含む合計13例が報告されています(致命率23%)。このうち12例はANDV感染の検査確定例であり、1例が可能性例です。確定例はいずれも、M/Vホンディウス号に乗船していた人々です。入院した10例のうち、8例は回復して退院し、2例は現在も治療を受けています。特定されたすべての接触者は、WHOのガイダンスに沿って、地域の保健当局による42日間の追跡調査期間を完了しました。新たな二次症例が検出されることなく接触者の追跡が完了したことは、感染伝播が効果的に遮断されたことを示し、アウトブレイクの封じ込めを裏付けています。このアウトブレイクはもはや公衆衛生リスクをもたらしておらず、関連するさらなる感染伝播は見込まれません。
発生の詳細
2026年5月2日、改正国際保健規則(2005)(IHR; International Health Regulations)に従い、WHOは英国の国家連絡窓口(NFP; National Focal Point)から、オランダ船籍のクルーズ船M/Vホンディウス号船内で発生した重症急性呼吸器疾患のクラスターに関する報告を受け、その後速やかに、オランダおよび南アフリカの当局へ詳細が報告されました。
7月2日時点で、クルーズ船に関連して、世界全体で合計13例(確定例12例、可能性例1例)が報告されており、このうち3例(確定例2例、可能性例1例)が死亡しました。今回のアウトブレイクのこれまでの致命率は23%です。2026年5月28日に前回のDisease Outbreak Newsが公表されて以降、クルーズ船から降りた後に徴候および症状を呈したトリスタン・ダ・クーニャの可能性例1例では、ANDV感染が検査室で確認されました。この症例は早期に発見され隔離されたため、ウイルスのさらなる感染伝播は防がれましたが、島内では診断能力が限られているため、検体が英国へ送付されて検査されるまで確定が遅れました。当該患者は回復し、退院しました。
入院した確定例のうち、8例は回復して退院しました。2例(南アフリカの1例、フランスの1例)は現在も入院中です。13例すべてがM/Vホンディウス号に乗船していました。
図1.WHOに報告されたアンデスウイルス症例(n=13)の疫学曲線、2026年7月2日現在
報告症例のうち9例が男性、4例が女性でした。年齢中央値は65歳(IQR 56~70)で、船の乗客の年齢中央値と同程度でした(図2)。死亡した3例の年齢はそれぞれ69歳、70歳、79歳でした。
図2.WHOに報告されたアンデスウイルス症例(n=13)の年齢および性別の分布、2026年7月2日現在
現在入手可能な情報によれば、最初の症例は乗船前に陸上で感染した可能性が高いと考えられますが、正確な感染源および曝露経路は依然として不明です。その後は船内でヒトからヒトへの感染が発生したと考えられます。チリおよびアルゼンチンで報告された症例に由来するANDV検体のゲノム配列解析を含め、アウトブレイクの状況および発生源を明らかにするための調査は現在も進行中であり、結果が得られ次第公表される予定です。
このアウトブレイクには国際的に連携した対応が行われ、包括的な疫学調査、症例の隔離および臨床管理、医療搬送、臨床検査、乗客・乗員の帰国支援、国際的な接触者追跡、ならびに隔離・モニタリングが行われました。
クルーズ船関連のハンタウイルス症例との接触者の特定と追跡調査は、33か国および海外領土で実施されました。これには、船内の乗客・乗員、トリスタン・ダ・クーニャの症例の接触者、患者が搭乗した2つの異なる国際便に関連する接触者、アウトブレイク探知前に症例を介助した医療従事者および空港職員が含まれます。2026年7月2日時点で、317人の高リスク接触者が、帰還・搬送・特定された国・領域において地域の保健当局による検疫・監視を完了しました。また、336人の低リスク接触者は、2026年5月17日に公表されたM/Vホンディウス号クルーズ船に由来するアンデスウイルス(ANDV)症例の接触者の管理に関する最新のガイダンスに沿った自己モニタリングを完了しました。
7月2日時点で、クルーズ船に関連して、世界全体で合計13例(確定例12例、可能性例1例)が報告されており、このうち3例(確定例2例、可能性例1例)が死亡しました。今回のアウトブレイクのこれまでの致命率は23%です。2026年5月28日に前回のDisease Outbreak Newsが公表されて以降、クルーズ船から降りた後に徴候および症状を呈したトリスタン・ダ・クーニャの可能性例1例では、ANDV感染が検査室で確認されました。この症例は早期に発見され隔離されたため、ウイルスのさらなる感染伝播は防がれましたが、島内では診断能力が限られているため、検体が英国へ送付されて検査されるまで確定が遅れました。当該患者は回復し、退院しました。
入院した確定例のうち、8例は回復して退院しました。2例(南アフリカの1例、フランスの1例)は現在も入院中です。13例すべてがM/Vホンディウス号に乗船していました。
図1.WHOに報告されたアンデスウイルス症例(n=13)の疫学曲線、2026年7月2日現在報告症例のうち9例が男性、4例が女性でした。年齢中央値は65歳(IQR 56~70)で、船の乗客の年齢中央値と同程度でした(図2)。死亡した3例の年齢はそれぞれ69歳、70歳、79歳でした。
図2.WHOに報告されたアンデスウイルス症例(n=13)の年齢および性別の分布、2026年7月2日現在現在入手可能な情報によれば、最初の症例は乗船前に陸上で感染した可能性が高いと考えられますが、正確な感染源および曝露経路は依然として不明です。その後は船内でヒトからヒトへの感染が発生したと考えられます。チリおよびアルゼンチンで報告された症例に由来するANDV検体のゲノム配列解析を含め、アウトブレイクの状況および発生源を明らかにするための調査は現在も進行中であり、結果が得られ次第公表される予定です。
このアウトブレイクには国際的に連携した対応が行われ、包括的な疫学調査、症例の隔離および臨床管理、医療搬送、臨床検査、乗客・乗員の帰国支援、国際的な接触者追跡、ならびに隔離・モニタリングが行われました。
クルーズ船関連のハンタウイルス症例との接触者の特定と追跡調査は、33か国および海外領土で実施されました。これには、船内の乗客・乗員、トリスタン・ダ・クーニャの症例の接触者、患者が搭乗した2つの異なる国際便に関連する接触者、アウトブレイク探知前に症例を介助した医療従事者および空港職員が含まれます。2026年7月2日時点で、317人の高リスク接触者が、帰還・搬送・特定された国・領域において地域の保健当局による検疫・監視を完了しました。また、336人の低リスク接触者は、2026年5月17日に公表されたM/Vホンディウス号クルーズ船に由来するアンデスウイルス(ANDV)症例の接触者の管理に関する最新のガイダンスに沿った自己モニタリングを完了しました。
疫学
ハンタウイルス感染症は、ブニヤウイルス綱(Bunyaviricetes)エリオウイルス目(Elliovirales)、ハンタウイルス科(Hantaviridae)、オルソハンタウイルス属(Orthohantavirus)のハンタウイルスによって引き起こされる人獣共通感染症のウイルス性疾患です。この属の中では、20種を超えるウイルス種が同定されています。
ヒトのハンタウイルス感染症は、主に、ハンタウイルスに感染している特定の種のげっ歯類の尿、糞便、または唾液との接触や、汚染された物体の表面に触れることによって感染します。曝露は通常、げっ歯類が侵入した建物の清掃などの活動中に起こりますが、大量発生している地域での日常的な活動中にも起こり得ます。ヒトの症例は、げっ歯類が生息し曝露の機会が多い、森林、野原、農場などの農村部で最も多く報告されています。
ヒトからヒトへの感染は、現在のところ、ANDV感染に関連するHPSについてのみ報告されています。ANDVは南米に常在しており、流行とヒト感染が確認されているのは主にアルゼンチンとチリで、ウルグアイ、ブラジル南部、パラグアイでも追加の症例および関連する株が確認されています。
ヒト-ヒト間のアンデスウイルス感染
入手可能な情報および今回のアウトブレイクでのこれまでの観察に基づくと、限られた環境下ではANDVのヒトからヒトへの感染が起こることがわかっています。しかし、大規模なヒトからヒトへの感染による流行はこれまで観察されていません。ANDVはアメリカ大陸地域の特定の種のげっ歯類の間で循環しており、アルゼンチンとチリでは、その後感染が広がらなかった散発的な症例が多く報告されています。ヒト症例のクラスターは過去の複数のアウトブレイクで報告されており、家庭など、共有された屋内環境での長時間の濃厚な関わりと関連していました。報告されている最大のANDVのアウトブレイクは2018~2019年にアルゼンチンで報告され、高いウイルス力価に加え、大規模な集会への参加や多くの人との接触が、伝播と関連していました。ANDVでは複数の感染様式が起こることを示唆する証拠がある一方で、その後さらにヒト-ヒト間で伝播する確率は依然として低いと考えられます。
特定された症例の初期の疫学調査およびゲノム解析によれば、今回のANDV感染のアウトブレイクでは、船内でヒトからヒトへの感染が発生したことが示されました。症例間の相互作用や船内の汚染された環境との関わりに関する詳細な情報は現在得られていませんが、これらの正確な感染様式は、詳細な疫学調査における今後の結果や、下船後に実施された環境検体採取の公表によって解明される可能性があります。
対応活動は、ANDVの感染伝播について以下を想定して行われました。
船内の乗客における罹患率と、船外の接触者に二次症例がみられないことを踏まえると、このウイルスは、感染性の高い、空気感染する病原体(麻しんなど)に一致するような伝播の様相は示しませんでした。
ヒトのハンタウイルス感染症は、主に、ハンタウイルスに感染している特定の種のげっ歯類の尿、糞便、または唾液との接触や、汚染された物体の表面に触れることによって感染します。曝露は通常、げっ歯類が侵入した建物の清掃などの活動中に起こりますが、大量発生している地域での日常的な活動中にも起こり得ます。ヒトの症例は、げっ歯類が生息し曝露の機会が多い、森林、野原、農場などの農村部で最も多く報告されています。
ヒトからヒトへの感染は、現在のところ、ANDV感染に関連するHPSについてのみ報告されています。ANDVは南米に常在しており、流行とヒト感染が確認されているのは主にアルゼンチンとチリで、ウルグアイ、ブラジル南部、パラグアイでも追加の症例および関連する株が確認されています。
ヒト-ヒト間のアンデスウイルス感染
入手可能な情報および今回のアウトブレイクでのこれまでの観察に基づくと、限られた環境下ではANDVのヒトからヒトへの感染が起こることがわかっています。しかし、大規模なヒトからヒトへの感染による流行はこれまで観察されていません。ANDVはアメリカ大陸地域の特定の種のげっ歯類の間で循環しており、アルゼンチンとチリでは、その後感染が広がらなかった散発的な症例が多く報告されています。ヒト症例のクラスターは過去の複数のアウトブレイクで報告されており、家庭など、共有された屋内環境での長時間の濃厚な関わりと関連していました。報告されている最大のANDVのアウトブレイクは2018~2019年にアルゼンチンで報告され、高いウイルス力価に加え、大規模な集会への参加や多くの人との接触が、伝播と関連していました。ANDVでは複数の感染様式が起こることを示唆する証拠がある一方で、その後さらにヒト-ヒト間で伝播する確率は依然として低いと考えられます。
特定された症例の初期の疫学調査およびゲノム解析によれば、今回のANDV感染のアウトブレイクでは、船内でヒトからヒトへの感染が発生したことが示されました。症例間の相互作用や船内の汚染された環境との関わりに関する詳細な情報は現在得られていませんが、これらの正確な感染様式は、詳細な疫学調査における今後の結果や、下船後に実施された環境検体採取の公表によって解明される可能性があります。
対応活動は、ANDVの感染伝播について以下を想定して行われました。
- 感染者または汚染された物体の表面との接触が含まれる可能性がある
- および/または、飛沫感染(感染性呼吸器飛沫粒子が、顔面の露出した粘膜面〔口、鼻、または眼〕へ直接付着することによる)
- および/または、空気感染(感染性呼吸器飛沫粒子の吸入による)
船内の乗客における罹患率と、船外の接触者に二次症例がみられないことを踏まえると、このウイルスは、感染性の高い、空気感染する病原体(麻しんなど)に一致するような伝播の様相は示しませんでした。
公衆衛生上の取り組み
症例や接触者を管理する締約国の当局、WHO、ならびに欧州疾病予防管理センター(ECDC;European Centre for Disease Prevention and Control)などのパートナーは、以下を含む対応策を協調して実施しました。
○ANDV関連クラスターの状況における乗客・乗員の下船およびその後の管理に関する技術ノート
○M/Vホンディウス号クルーズ船に由来するアンデスウイルス(ANDV)症例の接触者の管理
○アンデスウイルス(Orthohantavirus andesense)感染の検査:暫定ガイダンス
- WHOと、症例や接触者を管理する各国のNFPとの継続的な関与により、適時の情報共有と対応行動の調整が確実に行われました。
- 国際的な接触者追跡と接触者のフォローアップが、各国の取り決めに沿って地域の保健当局により実施されました。
- WHOは、接触者の追跡調査およびその健康状態について、IHRの枠組みを通じた締約国との定期的な情報共有と定期的な更新を要請しました。
- 症例間の疫学的関連や船内の曝露要因を明らかにし、また潜在的な曝露源を理解するための、継続的な疫学調査が行われました。
- 曝露された個人を対象とした調和された縦断的追跡を通じて、ANDVの伝播動態、潜伏期間、免疫応答、ウイルス動態、重症疾患の決定因子への理解を深めるために設計された前向きの自然経過研究が実施されました。この研究には標準化された前向きプロトコルが用いられ、21の参加国で実施されました。
- WHOは、本事象への対応を支援するため、以下を含む具体的な技術ガイダンス文書を作成・公表しました。
○ANDV関連クラスターの状況における乗客・乗員の下船およびその後の管理に関する技術ノート
○M/Vホンディウス号クルーズ船に由来するアンデスウイルス(ANDV)症例の接触者の管理
○アンデスウイルス(Orthohantavirus andesense)感染の検査:暫定ガイダンス
- 症例や接触者を管理する各国のNFPは、乗客・乗員に関する情報を交換してきました。
- WHOは、リスクコミュニケーションの調整と支援を提供し、適時の科学的根拠に基づく情報共有を確実に行い、本部・地域・国の3層での調整体制を発動し、IHRの規定に沿ったものを含めて国の当局による公衆衛生対策の実施を支援しました。
- WHOは、定期的な加盟国との打ち合わせ、主要な技術・検査・臨床ケア・感染予防と管理(IPC)に関するトピックを扱う専門家討議、および経験の共有と支援の調整を促進するためのEPI-WIN知識プラットフォームを介した世界的なウェビナーを実施しました。
- WHOは、国内外のパートナーとともに研究プロトコルの策定を支援し、医療対策に関するハンタウイルス協議を計画しました。
- WHOは、チリおよびアルゼンチンから提供された検査試料および標準試料、ならびに診断プロトコルや利用可能な検査キットとその性能に関する情報の配布を調整しました。
WHOによるリスク評価
M/Vホンディウス号クルーズ船に関連したANDVのアウトブレイクは、もはや公衆衛生リスクをもたらしておらず、関連するさらなる感染伝播は見込まれません。南米では、ANDVが引き続き常在しており、致命率の高いHPSと関連していますが、その伝播性は限定的なままで、通常は密接かつ長時間の曝露を要し、発生するクラスターは時間的・空間的に限定される傾向があります。
今回の事象では、閉鎖的な海上環境が航海中の伝播を促進した可能性が高い一方で、疫学的な証拠およびゲノム解析の証拠は、このアウトブレイクが単一の感染源によるものであり、感染動物または感染者との接触に端を発し、その後の限定的なヒトからヒトへの二次感染が続いたことを示唆しています。持続的な感染の証拠は認められていません。
特定されたすべての接触者について、42日間の追跡調査期間が完了し、新たな二次症例は検出されませんでした。これは、感染伝播が効果的に遮断され、アウトブレイクが封じ込められたことを裏付けています。また、現在も入院している2例は、引き続きIPC対策を実施しながら管理されています。
WHOからのアドバイス
WHOは、すべての国に対し、成功と運用上の課題の双方を含め、今回のアウトブレイク対応を記録して学ぶために積極的な関与と緊密な連携を維持し、将来の公衆衛生上の緊急事態に備えて、得られた教訓を備え、国際的な接触者の追跡・追跡調査を含むサーベイランス、臨床ケア、IPC、リスクコミュニケーション、対応能力の強化に活用するよう助言しています。
WHOはさらに、アウトブレイクとその伝播動態、リスク因子、疾患重症度の決定因子への理解を深めるため、疫学、臨床、検査、生態学の研究を継続するよう勧めています。
WHOは、ハンタウイルスが常在する地域では、強化サーベイランス、公衆の意識向上、環境管理、宿主であるげっ歯類および汚染された環境への曝露の低減、ならびに早期発見、IPC対策の実施、症例管理を通じて、感染伝播を予防・制御する対策を強化することを推奨しています。
WHOはまた、効果的な診断法、治療薬、ワクチンの利用可能性を高め、将来のハンタウイルス感染症のアウトブレイクに対する備えと対応能力を向上させるため、研究開発への継続的な投資を奨励しています。
出典
World Health Organization(2 July 2026)Disease Outbreak News; Hantavirus outbreak linked to cruise ship travel, Multi-locations
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON611
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON611
備考
This is an adaptation of an original work “Hantavirus outbreak linked to cruise ship travel, Multi-locations. Geneva: World Health Organization (WHO); 2026. License: CC BY-NC-SA 3.0 IGO”. This adaptation was not created by WHO. WHO is not responsible for the content or accuracy of this adaptation. The original edition shall be the binding and authentic edition
