黄熱-世界情勢(2026年6月24日)

海外へ渡航される皆様へ

黄熱は、アフリカおよびアメリカ大陸の熱帯地域でみられ、黄熱ウイルスに感染した蚊(主にネッタイシマカ)に刺咬されることで感染するウイルス性疾患です。感染後3~6日で、発熱、筋肉痛、頭痛、悪心、嘔吐などの症状が現れます。多くは軽症ですが、一部は黄疸、出血、多臓器不全を伴う重症型に進行します。ワクチン接種が最も有効な予防手段です。
以下の点を事前に確認し、必要な予防策を講じて渡航してください。

渡航前の情報収集
渡航先で流行している感染症、黄熱感染リスク、黄熱ワクチンの接種推奨、入国・出国時の接種証明書要件、現地の医療情報を、FORTHや外務省などの公式な情報源で確認してください。必要に応じて、渡航前にトラベルクリニックなどへ相談してください。

渡航中の健康管理
1.リスクを軽減するための対策
  • ワクチン接種による予防が最も重要です。WHOが定める黄熱感染リスク地域へ渡航する生後9か月以上の人には、黄熱ワクチン接種が推奨されます。生後9か月未満、妊娠・授乳中、重度の免疫不全などでは慎重な検討が必要なため、渡航前に黄熱ワクチン接種機関へ相談してください。
  • 蚊に刺されないよう注意しましょう。
  • 露出した皮膚には、虫よけスプレーや防虫ローションなどの虫除け剤(忌避剤)を使用してください。
  • 長袖のシャツや長ズボンを着用し、裸足でサンダルを履くことを避けるなど、肌の露出は可能な限り避けましょう。
  • 屋内では網戸やエアコンを使用し、蚊の侵入を防ぎましょう。
  • 蚊のいる環境では、就寝時には殺虫剤処理された蚊帳を利用し、夜間だけでなく、昼寝の際も使用することをお勧めします。
  • 黄熱の予防と対策について、現地のガイドラインに従ってください。
2.体調不良時の行動
渡航中に発熱や体調不良を感じた場合は、速やかに現地の医療機関を受診し、渡航歴・現地での行動を必ず伝えてください。

帰国後の対応
黄熱の発生がみられる地域から日本へ帰国した際に体調に異状があれば、空港や港の検疫所で渡航歴・現地での行動を伝えたうえで相談してください。
帰国後10日間程度は、ご自身の健康状態に注意し、発熱や体調不良などの症状があれば、速やかに医療機関に相談してください。その際、受診前には必ず渡航歴や現地での行動を医療機関に伝えてください。
そのほか、海外渡航に関する一般的な注意事項は「ここに注意!海外渡航にあたって」をご参照ください。
以下は、WHOのDisease Outbreak Newsの翻訳であり、厚生労働省委託事業「国際感染症危機管理対応人材育成・派遣事業」にて翻訳・メッセージ原案を作成しています。

状況の概要

黄熱は、アフリカ地域およびアメリカ大陸地域にみられるウイルス性疾患で、感染した蚊を介して広がります。2025年にアメリカ大陸地域で症例が増加し、2026年に入っても感染伝播は継続しています。2026年1月1日から5月26日までに、6か国から合計79例のヒト感染例が報告され、非ヒト霊長類動物の黄熱感染事例も複数報告されており、活発な森林型感染サイクルが持続していることが示されています。アフリカ地域では、地域の一部で感染伝播が継続しており、13の高リスク国(黄熱流行排除戦略(EYE戦略;Eliminate Yellow fever Epidemics Strategy)の分類による)で発生しています。2026年1月から5月にかけて、アフリカの3か国で確定例16例が報告され、さらに他の5か国の疑い例32例について調査が進められています。最近の迅速リスク評価では、ワクチン接種率の地理的なばらつき、ウイルスの循環の証拠、媒介能力のある媒介蚊の存在を評価し、黄熱の伝播歴がある国または地域におけるワクチン未接種の集団が最もリスクが高いと結論付けました。伝播の動態は、季節的な生態学的要因、特に降雨量、気温、蚊の生息状況の影響も受けます。2025年10月から2026年5月にかけて黄熱の伝播歴がある国または地域で報告されたアウトブレイクは、概ね季節的パターンと一致するか、またはワクチン接種率の格差を反映するものでした。一方、これまで発生していなかった地域で検出された症例は、ウイルスの侵入と都市部での伝播リスクの増大を示唆しています。感染が発生した2つのWHO地域以外では輸入症例は検出されませんでしたが、媒介蚊の生息適性の拡大、急速な都市化、気候の変化、人の移動の増加が、国際的拡大を助長する条件を引き続き生み出しています。
WHOは、積極的なサーベイランス、適時の臨床検査、国境を越えた連携、情報共有の重要性を強調しています。ワクチン接種は、黄熱の予防と制御のための主要な手段です。WHOは、定期予防接種プログラムおよび予防接種キャンペーンを通じてワクチン接種率を拡大し、集団免疫を強化し、アウトブレイクのリスクを低減するため、各国を引き続き支援しています。

発生の詳細

世界的にみると、2025年と2026年初頭、高リスク地域での黄熱の森林型伝播は、降雨量、気温、蚊の生態に強く影響を受けました。2025年の疫学的状況の特徴は、アフリカにおける持続的な伝播と、アメリカ大陸地域での顕著な増加(低リスク区域への拡大を含む)でした。

アフリカ地域:WHOアフリカ地域の26か国およびWHO東地中海地域の1か国が、EYE戦略による分類で黄熱の高リスク国とされています。これら27か国のうち26か国は定期予防接種スケジュールに黄熱ワクチンを組み込んでいますが、ワクチン接種率が目標を下回っている国が多く、2024年の地域全体の平均接種率は65%でした。

2023年以降、感染伝播が最近みられなかった8か国で新たな症例が検出され、ワクチン接種率が低くサーベイランス能力が限られた地域でのウイルスの流行が示されています。2025年には、2件のアウトブレイクが記録され(アンゴラおよび中央アフリカ共和国)、緊急のワクチン接種を要する複数の事象が発生しました。2026年1月から5月にかけて、3か国(ブルキナファソ、中央アフリカ共和国、カメルーン)から16例の確定例が報告され、5か国(アンゴラ、コートジボワール、ガボン、ガーナ、ナイジェリア)の疑い例について調査が進められています。感染のほとんどは、ワクチン接種率の低い農村部へ波及している継続的な森林型伝播に関連しています。繰り返し発生する事象は、医療制度に負担をかけ、国境を越えた拡大リスクを高めています。

アメリカ大陸地域:EYE戦略の分類に基づき黄熱の高リスク国とされる13か国はいずれも、定期予防接種に黄熱ワクチンを含めていますが、ワクチン接種率は国によって大きく異なります。2024年の感染の発生は限定的でしたが、2025年には伝播が急激に拡大し、数十年間症例が報告されていなかった地域にも及びました。2024年後半から2025年前半にかけて、241例の症例と100例の死亡が記録され、前年の8倍に増加しました。2026年1月から5月にかけて、6か国(ボリビア、ブラジル、コロンビア、エクアドル、ペルー、ベネズエラ)で79例の確定例が報告され、コロンビアは、森林型曝露とワクチン未接種の訪問者の移動による発生が最も多くみられました。媒介蚊にとっての生態学的適性、不均一なワクチン接種率、人の移動の増加、森林環境への都市域の拡大が、引き続きウイルス伝播を促進しています。

その他の地域:アフリカおよびアメリカ大陸地域以外の地域では、黄熱のリスクは主に輸入症例に関連しており、確立された地域内の伝播サイクルは存在しません。多くの国が、リスクのある地域からの渡航者にワクチンの接種証明を求めています。2025~2026年には輸入症例は検出されていませんが、他地域での継続的な伝播、媒介蚊の生息地の拡大、急速な都市化、国家間の人の移動が多いことは、侵入リスクが持続していることを意味しています。輸入症例の影響は、媒介能力のある蚊が存在する地域における迅速な検出と効果的な対応能力に左右されます。

疫学

黄熱は、日中に刺咬する感染蚊、主にAedes属、Haemagogus属、Sabethes属によって媒介される急性ウイルス性疾患であり、アフリカおよびアメリカ大陸の熱帯地域で発生します。アフリカの合計27か国と中南米の13か国が黄熱伝播の高リスク国とされており、世界の疾病負荷の大部分はアフリカから報告されています。この疾患は、その流行の可能性と国際的拡大のリスクのため、特に媒介能力を持つ媒介蚊が存在し集団免疫が低い地域では、依然として重大な公衆衛生上の懸念事項となっています。

世界全体では、黄熱は毎年67,000例から173,000例の重症例を引き起こし、約31,000例から82,000例の死亡をもたらすと推定されています。伝播は、森林型(ジャングル型)、中間型、都市型の3つの疫学的サイクルにおける蚊の刺咬により発生し、都市型の場合、人口密集地域での大規模なアウトブレイクのリスクが最も高くなります。

潜伏期間は通常3~6日です。ほとんどの感染は無症候性感染であるか、発熱、頭痛、筋肉痛、悪心、嘔吐を特徴とする軽度の発熱性疾患を呈し、通常は数日以内に回復します。しかし、症例の約15%が重症化し、高熱の再発、黄疸、出血、多臓器不全を特徴とする重篤な病態に進行します。重症化した患者の致命率は、7~10日以内に約50%に達することがあります。

アウトブレイクの検出および定量は困難な場合があります。臨床症状がマラリア、デング熱、ウイルス性肝炎などの他の地域流行性疾患と重複し、サーベイランスシステムが症例をアウトブレイクの検出および定量は困難な場合があります。過少報告する場合があります。流行期間中の実際の感染者数は報告数の10倍から250倍と推定されています。そのため、アウトブレイクの制圧には迅速な検査診断と適時の対応が極めて重要です。
ワクチン接種は最も効果的な予防対策であり、1回の接種で、黄熱に対する生涯にわたる免疫を付与し予防効果が持続します。また、媒介昆虫サーベイランスと媒介蚊対策と並んで、アウトブレイクの予防・制御戦略の中核をなしています。海外渡航者に対する黄熱ワクチン接種に関するWHO事務局の勧告については、INTERNATIONAL TRAVEL AND HEALTH – 18 NOVEMBER 2022を参照してください。

公衆衛生上の取り組み

WHOは、以下を含め、国、地域、世界レベルで黄熱への備えと対応のための能力を以下を含めて強化しています。
  • 黄熱および疾患活動状況の継続的なグローバルサーベイランス、ならびにサーベイランスとアウトブレイク対応の取り組みへの支援。
  • 予防・制御戦略の策定・実施のため各国への支援。
  • 診断能力と検査室ネットワークの強化。
  • ワクチン接種率向上の推進。
  • リスクコミュニケーションの強化。

黄熱のアウトブレイクに効果的に対応するため、WHOアフリカ地域とWHOアメリカ大陸地域で公衆衛生対策が実施されてきました。各国は、特定された黄熱の症例とアウトブレイクに対応するための協調行動を実施し、予防対策の強化、サーベイランスの改善、ワクチン接種活動の実施に焦点を当てています。WHO地域の黄熱の非流行地域では、公衆衛生対策は黄熱の侵入と二次伝播を防ぐための備えに重点が置かれています。渡航者へのワクチン接種、早期発見、備えに優先的に取り組み、媒介能力を持つ媒介蚊が存在する地域では重点的に行われています。

調整
上記の2つの地域では、確認された黄熱の症例とアウトブレイクに対応するため、調整行動を実施してきました。

WHOアフリカ地域
  • 備えと対応活動を支援するため、加盟国、EYEパートナー、技術ネットワークとの継続的な連携を通じて、地域レベルの調整体制が強化されました。
  • ブルキナファソ、カメルーン、コートジボワール、ガーナ、ナイジェリア、ウガンダ、コンゴ共和国のPRNT陽性症例の地域的な精査を含め、アウトブレイクの検証、リスク評価、症例分類のための技術的支援が提供されました。
  • 情報共有と運営の意思決定に役立てるため、黄熱の事象に関する毎週の最新情報が、黄熱パートナー技術フォーラム(Yellow Fever Partners Technical Forum)を含む地域およびグローバルな調整プラットフォームを通じて共有されました。

WHOアメリカ大陸地域
  • 黄熱のアウトブレイクに対する地域の対応の方向を決定するため、継続的なリスク評価が実施されました。対応は、レベル2の緊急事態に相当する体制下で運営され、PAHO本部および発生国において調整体制が稼動されました。
  • さまざまな技術部門および部局の専門家で構成される学際的なインシデント・コマンド・システム(ICS)が設置されました。
  • 備えと対応活動を支援するための財政・技術資源の動員に連動した戦略的地域行動計画が策定されました。
  • 地域緊急対応チームが配備され、発生国への専門家の派遣を調整し、サーベイランス、検査診断、予防接種、臨床管理、媒介蚊対策、リスクコミュニケーションにおける国の能力を強化しました。
  • 加盟国との定期的な調整・フォローアップメカニズムが構築され、アウトブレイクの疫学的推移を監視し、技術情報を共有し、地域全体で調和のとれた対応措置の実施を促進しました。

サーベイランス
症例が報告された地域では、以下の活動が実施されています。

アフリカ地域
  • 黄熱の症例の探知、調査、検証、疑い例の分類を支援することにより、サーベイランス活動が強化されました。
  • リスク評価を支援し対応活動の方向性を決めるため、黄熱に関する事象の毎週の地域的な監視と分析が実施されました。これには、AFRO Yellow Fever Weekly Update(AFRO; Regional Office for Africaの黄熱週報)の作成と配信が含まれます。
  • 発生国における検査確定例およびPRNT陽性症例の疫学調査と分類のための技術的支援が提供されました。

アメリカ大陸地域
  • 地域別疫学アラートの発令とアメリカ大陸の疫学的状況を継続的に監視しました。
  • 非ヒト霊長類における動物間流行の疾病サーベイランスを早期警戒システムとして強化するための各国へ技術的支援を提供しました。
  • 動物間流行の監視に関する地域ガイドラインを策定しています(進行中)。
  • 症例の定義、アウトブレイクの定義、アウトブレイク終息基準を含む、黄熱の疫学的サーベイランスに関する地域ガイドラインを策定・更新しています(進行中)。
  • 地域の技術ガイドラインの見直し・更新と地域の専門家間のコンセンサス促進を目的にRegional Meeting of Experts on Yellow Fever(黄熱に関する地域専門家会議)(ボゴタ、2026年)を開催しました。
  • 生態学的回廊と伝播拡大地域の地域分析を実施しました。
  • 疫学的状況(流行地域/非流行地域)に基づく公衆衛生対策のマトリックスを策定しています(進行中)。

検査
地域レベルでは、以下の活動が実施されています。

アフリカ地域
  • WHOは、黄熱の症例の検査室での確認と症例分類を支援しました。
  • 確認検査、検査結果の解釈、品質が保証された診断を支援するため、地域の黄熱検査室ネットワークを通じて技術的支援が提供されました。
  • 症例分類と公衆衛生上の意思決定を支援するために、ブルキナファソ、カメルーン、コートジボワール、ガーナ、ナイジェリア、ウガンダ、コンゴ共和国からのPRNT陽性所見など検査結果の地域レビューが実施されました。

アメリカ大陸地域
どの黄熱流行国も現在、血清および組織検体の両方でウイルスを検出する分子診断能力があります(死亡例の確認に不可欠です)。さらに、非ヒト霊長類におけるウイルス検出を拡大するための支援も行われ、早期警戒システムとしての動物間流行のサーベイランスを強化しています。蚊の個体群におけるウイルス検出の実施に向けた取り組みも進められており、サーベイランス戦略をさらに拡充しました。同時に、選定された国々との連携を進めて検査の分散化を推進し、適時の検出が重要な遠隔地域や国境地域においても診断できる体制にしています。

症例管理
地域レベルでは以下のような特別な措置が講じられています。

アメリカ大陸地域
  • Regional Clinical Management Guideline for Critical Patient with Suspected or Confirmed Yellow Fever(黄熱の疑いまたは重症確定例の臨床管理に関する地域ガイドライン)を策定・公表しました(2025年公表)。
  • 早期発見、重症度評価、患者紹介、重症例の管理を強化するための地域的な対面研修と技術的支援を提供しました。
  • 臨床プロトコルの見直し・更新を行い、医療需要の増加に対応するための保健サービスの備えに関する各国への支援を行いました。
  • 黄熱の臨床管理に関するバーチャルコースを開発しました。
  • 黄熱に関連する死亡の最小侵襲的剖検技術に関する各国への研修を実施しました。
  • 患者ケア経路と臨床管理アプローチの定義・強化のための専門家協議を開催しました。

予防接種
アフリカ地域
予防目的・即時対応のためのワクチン接種キャンペーン、定期予防接種の強化、キャンペーンの計画・実施に対する技術的支援の提供を通じて、ワクチン接種活動が支援されました。

2025年には、予防的な集団ワクチン接種キャンペーンにより、コンゴ民主共和国カタンガ州で約1,520万人、ギニアビサウ全国で160万人、ニジェールのマラディ、アガデス、タフアの各地域で960万人、ウガンダの13地区で420万人がワクチン接種を受けました。2026年5月までに、ニジェールのドッソ地区での予防キャンペーンを通じてさらに240万人がワクチン接種を受けました。

2025年1月から2026年5月にかけて、ブルキナファソ、カメルーン、コートジボワールでアウトブレイクまたは流行の可能性がある状況に対応して、発生対応のためのワクチン接種キャンペーンが実施されました。2025年には、これらのキャンペーンにより、発生地区の100万人以上がワクチン接種を受けました。2026年5月までに、追加の発生対応のためのキャンペーンにより、コートジボワールで約491,000人、マリで162,000人、カメルーンで400,000人以上がワクチン接種を受けました。

ワクチン要請、配布、モニタリング、評価への支援など、国際調整グループ(ICG)の枠組みを介した加盟国への技術的支援が提供されました。これには、中央アフリカ共和国におけるアウトブレイク対応ワクチン接種活動、およびアンゴラ、リベリア、マリにおけるワクチン配布計画への支援が含まれます。

定期予防接種活動の周期的な強化など、定期予防接種の強化にも取り組みました。ガボンでも、2回の定期予防接種の周期的な強化で8,156人の小児がワクチン接種を受けました。

全体として、WHOおよびパートナーが支援する予防目的・即時対応のためのワクチン接種キャンペーンで、2025年から2026年5月にかけて、高リスク国および発生国全体で3,500万人以上がワクチン接種を受けました。

アメリカ大陸地域
各国への技術的支援は、以下の活動に重点を置いています。
地域の黄熱ワクチン接種ガイドラインの更新(分割量の使用に関するプログラム的文脈、単回接種スケジュール、麻しん・おたふくかぜ・風しん(MMR)第1回ワクチン(MMR1)との同時接種に関する勧告、注意が必要な集団への接種に関する検討事項、都市部のアウトブレイク対応に関するガイダンス、安全に在庫管理するためのパラメータを含む)。このガイドラインは、2026年のボゴタでのYellow Fever Expert Meeting(黄熱専門家会議)にて地域の専門家によりレビューと承認を経ており、合意と最新のエビデンスとの整合性が確認されました。

ワクチン接種又は予防接種に起因すると思われる事象(ESAVI)のサーベイランスを、アウトブレイク対応および注意が必要な集団へのワクチン接種において強化するため、各国との技術会議が実施されました。予防目的・即時対応のためのワクチン接種キャンペーンの計画立案を支援するための感受性集団推定ツールが開発され、地域のすべての国に提供されました。予防接種チームはまた、アウトブレイク対応キャンペーンのマイクロプランニングを含め、備えの際およびアウトブレイク対応時のワクチン接種計画への支援を提供しました。

昆虫学的サーベイランスと媒介蚊対策
地域レベルで、アルボウイルス対策の一環として開発された媒介蚊のサーベイランスと媒介蚊対策能力は以下のとおりです。

アフリカ地域
  • WHOは、伝播リスクの特徴をより正確に評価し、公衆衛生対策の方向を決定するため、昆虫学的調査を黄熱のアウトブレイク調査へ組み込むことを推進しました。
  • 統合的な黄熱予防・対応戦略の一環として媒介蚊のサーベイランスと媒介蚊対策を検討するための技術的ガイダンスにより加盟国を支援しました。

アメリカ大陸地域
  • 黄熱の昆虫学的サーベイランスと媒介蚊対策に関する地域技術ガイドライン(2025年)を策定・公表しました。
  • 人材育成と検査室能力の構築に重点を置いた、黄熱の昆虫学的ウイルス学を含む各国能力を強化しました。これには媒介蚊におけるウイルスの検出と特性評価が含まれます。
  • 生物学的検体の標準化された採取方法、分類学的同定、生体サンプルの安全な輸送に関する研修、ならびに都市部での伝播リスク評価と高リスク地域における媒介蚊対策の実施に関する技術的支援など、黄熱の森林部および都市部の媒介蚊のサーベイランス能力の強化を行いました。

リスクコミュニケーションとコミュニティエンゲージメント
リスクコミュニケーションとコミュニティエンゲージメントが強化されました。

アメリカ大陸地域
  • 地域社会、医療従事者、渡航者向けの地域リスクコミュニケーション資料の策定・普及を行いました。
  • ワクチン接種の促進、動物疾病のアウトブレイクの報告、アウトブレイクおよびワクチン接種キャンペーン期間中の人々の信頼を強化するためのリスクコミュニケーションおよびコミュニティエンゲージメント戦略の策定に関する各国への技術的支援を行いました。
  • ワクチンの安全性に関連する噂、誤情報、懸念の管理に関するメッセージとガイダンスの策定を行いました。
  • 地域ガイド「Risk Communication and Community Engagement for Yellow Fever Outbreaks in the Americas: Operational Guide for National, Subnational, and Community Teams(アメリカ大陸における黄熱アウトブレイクに対するリスクコミュニケーションとコミュニティエンゲージメント:国、地方、地域社会チームのための運用ガイド)」を策定しています(進行中)。

WHOによるリスク評価

黄熱は、伝播歴のある地域、特にアフリカおよび南米の一部では、依然として重大な公衆衛生上の脅威です。ウイルスは主に蚊と霊長類の間の伝播サイクルを通じて維持されていますが、特に森林や農村環境において、ヒトへの周期的な感染の種間伝播が引き続き起こっています。媒介能力を持つ媒介蚊が広範に存在し、自然環境および都市近郊での生息地が拡大しているため、特に免疫を持たない人の多い地域では、都市部を含め新たな地域への拡大の可能性が依然として大きいと考えられます。アウトブレイクのリスクは、人の移動、脆弱な医療制度、定期予防接種の格差によってさらに高まります。

大部分の発生国はサーベイランスシステムを構築していますが、治安の悪化、医療への限られたアクセス、受診の遅延がアウトブレイク調査と適時の治療を頻繁に妨げています。初期症状が地域で流行している他の疾患と類似し、検査室能力がしばしば制約されているため、特に遠隔地域では、診断の遅れが過少報告の一因となっています。その結果、黄熱の負荷は実態とは異なり過小評価されている可能性があります。

農村部や森林縁辺部に住むワクチン未接種者が最も曝露リスクが高く、一方で、新たな発生地域の都市部や都市周辺部の住民も、媒介能力を持つ媒介蚊が存在し多くの人が免疫をもたない状態が続く場合にリスクにさらされる可能性があります。高い伝播地域に移動するワクチン未接種の渡航者もまた、同様にリスクが高まります。

ネッタイシマカが定着している地域への黄熱の侵入は、流行地域から渡航するウイルスの保有者を通じて引き続き起こり得ます。2025~2026年に高リスク国で都市型伝播は報告されていませんが、媒介蚊のサーベイランスと媒介蚊対策能力が不足していた場合、十分に予防接種を受けていない集団にウイルスが侵入すると、感染拡大が起こる可能性があります。これまで黄熱の循環がない地域では森林型感染サイクルは確立されていませんが、生態学的適性、国境を越えた移動、非ヒト霊長類の存在、免疫とサーベイランスの格差が、中程度のリスクに分類される複数のアフリカ諸国において脆弱性を引き続き生み出しています。媒介能力を持つ媒介蚊が存在しない国では輸入症例が発生する可能性がありますが、二次伝播の可能性は低く、これらの環境では、適時の臨床診断が主要な課題となります。

ワクチン接種がリスクの最も強力な決定要因であることは変わりません。ワクチン接種を受けた集団は十分な予防効果がありますが、リスク地域のワクチン未接種の個人は感染と重症化の可能性が最も高くなります。ウイルス循環が記録されていない地域でも、限られたサーベイランスの下では未検出の伝播を完全に排除することはできません。

2026年6月17日現在、WHOは黄熱伝播のリスクを世界レベルでは「低」、伝播歴が報告されている地域、すなわちWHOアフリカ地域とWHOアメリカ大陸地域では「中」と評価しています。WHOのリスク評価の詳細についてはこちらを参照してください。

WHOからのアドバイス

予防接種はこの疾患を予防するための最も効果的な公衆衛生上の介入の一つですが、2025年と2026年に報告されたヒトの黄熱の症例のほとんどには黄熱のワクチン接種歴がありませんでした。黄熱のアウトブレイクに対する適切な備えと対応には、ワクチン接種に加えていくつかの要素を統合することが必要です。動物間流行のサーベイランスと昆虫学的サーベイランス、媒介蚊対策、リスクコミュニケーションを考慮すべきです。

WHOは加盟国に対し、黄熱の伝播歴がある地域(アフリカ地域およびアメリカ大陸地域)においてサーベイランスとワクチン接種の取り組みを継続するよう奨励しています。各国が高いワクチン接種率(リスク地域の住民の80%超を均質に)を達成することが不可欠であり、保健当局は、定期予防接種を維持しながら同時に起こり得るアウトブレイクに効果的に対応するための戦略的な備蓄を確保する必要があります。国際調整グループ(ICG)が調整する黄熱ワクチンの世界的な備蓄は、迅速なアウトブレイク対応と予防的ワクチン接種活動を促進するためにすべての国に提供されています。

サーベイランス
黄熱リスクのある地域を有するアフリカ地域およびアメリカ大陸地域の加盟国には、ウイルスを早期発見し地域社会を守るため、強固な疫学的サーベイランスを維持することが奨励されます。保健当局は、疑い例の特定方法を概説するアラートを適時に発令し、検査室での確認前であっても必ず即座に報告すべきです。発熱と黄疸を呈する患者を対象とした積極的症例発見は、発生地域のみならず、近隣地域および患者が症状発現前に訪れた場所でも実施すべきです。さらに、最近の死亡記録の遡及的レビューにより、見逃された症例を特定できる可能性があります。WHOは、積極的なサーベイランス、国境を越えた調整、適時の情報共有を強調しています。系統的な調査とすべての疑い例の臨床検査を通じてサーベイランスを強化することが推奨されます。調査には、推定される感染場所の評価、野生動物やその他の潜在的媒介蚊への曝露の記録、ワクチン接種状況の確認、二次症例の可能性の特定を含む接触者追跡、伝播の状況の特徴づけが含まれるべきです。

動物間流行のサーベイランス
黄熱の高リスク地域があるアメリカ大陸地域の加盟国にとって、非ヒト霊長類の動物間流行のサーベイランスは、黄熱のモニタリングにおける極めて重要な早期警戒の要素です。これらの種は、ヒトに先んじて感染・死亡するため、霊長類において確認された疾病や死亡は、森林型感染サイクルにおけるウイルス循環の最も早期の指標の一つとなります。これらの事象を迅速に検出することにより、保健当局は、ヒトを対象としたサーベイランスの強化、現地調査、媒介蚊対策、リスク集団への的を絞った予防的ワクチン接種など、迅速な対応措置を開始することができます。このワンヘルス・アプローチは、ヒト、動物、環境の保健部門にわたって体系的に実施・調整すれば、アウトブレイクへの備えを強化し、ヒトへの感染リスクを減らします。

検査診断
黄熱の診断は、主にウイルス学的方法(血清または組織中のウイルスまたは遺伝物質の検出)および抗体を検出するための血清学的検査を用いて行われます。

黄熱のウイルス学的診断は主にRT-PCRに依存します。RT-PCRでは発症後5~10日間にウイルスRNAを検出でき、陽性の場合には診断が確定します。死後診断は肝臓の組織病理学的検査と免疫組織化学検査によって行うことが最も適切で、組織検体の分子生物学的検査も行います。血清学的検査は5日目以降に有用となりますが、他のフラビウイルスとの交差反応やワクチン接種の影響があるため、結果を慎重に解釈する必要があります。PRNT検査はより高い特異性を有しますが、複数のフラビウイルスが循環する地域では依然として交差反応を示す可能性があります。全体として、確認には検査結果と疫学的文脈の統合、ならびに他のフラビウイルス感染の除外が必要です。

ワクチン接種後の免疫応答
ワクチン接種により、比較的低いウイルス血症が生じ4~7日後に低下します。同時に、自然感染によるIgM応答と区別できないIgM型の応答が発現します。ワクチン接種の約10日後に、自然感染に対する予防効果が得られると見なされます。ワクチンによるIgM応答は5日目頃から検出可能であり、一般的にワクチン接種の2週間後にピークが出現します。その後、これらの抗体レベルは低下する傾向があります。しかし、IgM抗体はワクチン接種後数年間持続する可能性があります。ワクチン接種により誘導される中和抗体は、数十年にわたり検出可能です。このことが、ワクチン接種者における血清学的検査結果の解釈を特に複雑にしており、慎重な評価が必要となります。

臨床管理
黄熱は、突然の発症と重症例での高い致命率を特徴とする重度のウイルス性出血性疾患です。病態は、感染期、寛解期、黄疸、出血、急性肝不全を特徴とする中毒期を経て進行します。特異的な抗ウイルス治療はないため、臨床管理は早期発見、綿密な臨床モニタリング、支持療法に依存しています。患者の予後の改善には、重度の合併症、特に肝不全を適時に認識することが不可欠です。

1次予防手段としてのワクチン接種:ワクチン接種は、黄熱を予防し制圧する主要な手段です。黄熱ワクチンは安全で手頃な価格であり、1回の接種で、黄熱に対する持続的な免疫と生涯にわたる予防効果をもたらします。WHOのEYE戦略では、すべての高リスク国において生後9か月から60歳までの集団を、定期予防接種と予防的集団ワクチン接種キャンペーンの組み合わせにより守るよう勧告しています。強力な集団免疫を維持するためには、小児の高いワクチン接種率を達成・維持することが不可欠です。流行地域への渡航者のワクチン接種は、感染の予防と国際的拡大のリスク低減に不可欠です。予防的・アウトブレイク対応キャンペーンは、最新のリスク評価に基づいて実施され、リスクのある集団における十分なワクチン供給と高い接種率を確保すべきです。ワクチン接種の決定にあたっては、幼年齢、妊娠、高齢者、特定の免疫状態などの注意事項を考慮するとともに、禁忌のある個人への使用は厳密に避ける必要があります。伝播を防止しアウトブレイクの影響を軽減するためには強固なワクチン接種戦略を維持することが不可欠です。

媒介蚊の駆除とリスクコミュニケーション:都市環境における効果的な媒介蚊の駆除は一般的な蚊に刺されることを防ぐ方策とともに、黄熱の伝播を防ぐために推奨されます。効果的なリスクコミュニケーションは黄熱に対して不可欠であり、適時の一般向け啓発、予防行動とワクチン受容の促進を可能にします。これは高リスク国の渡航者および居住者の両方を対象とすべきです。

海外渡航と貿易:WHOが定めた黄熱感染のリスクがある地域(持続的または定期的な黄熱ウイルスの循環の証拠がある地域を含む)に渡航する生後9か月以上のすべての海外渡航者は、ワクチン接種を受けることが推奨されます。黄熱ワクチンは安全かつ非常に効果的であり、生涯にわたる免疫を提供します。ただし、生後9か月未満の乳児、妊娠中または授乳中の女性および重度の免疫不全者に対するワクチン接種の推奨は慎重な検討が求められ、高リスクの環境では潜在的な利益とリスクを比較した上でのワクチン接種が推奨されます。

国際保健規則(2005)(IHR)の下では、各国は、入国者や出国者に黄熱のワクチン接種証明を求める権限を有します。国際渡航のため、黄熱ワクチンの接種は国際予防接種証明書(ICVP)に記載される必要があり、WHO承認の黄熱ワクチンの1回接種の記録は生涯有効なものとして認められます。

WHOは黄熱伝播の進展する性質を踏まえ、加盟国に対し、WHO International Travel and Healthのウェブサイトで入手できる最新の情報とガイドラインを常に入手するよう助言します。地方の保健当局は、WHOおよびその他の関係者と緊密に協力し、効果的な黄熱の予防・制御対策を実施し、リスクにさらされている人々の安全と福祉を確保することが奨励されます。

WHOは、この報告書で言及されている国への渡航や貿易について、現在の事象に関する入手可能な情報に基づき、いかなる制限も勧告しません。ワクチン接種を含む予防対策について渡航者を教育する継続的な取り組みが奨励されます。

出典

World Health Organization(24 June 2026)Disease Outbreak News; Yellow fever - Global https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON610

備考

This is an adaptation of an original work “Yellow fever - Global. Geneva: World Health Organization (WHO); 2026. License: CC BY-NC-SA 3.0 IGO”. This adaptation was not created by WHO. WHO is not responsible for the content or accuracy of this adaptation. The original edition shall be the binding and authentic edition

2026年8月更新