新型コロナウイルス感染症の世界の状況報告
COVID-19 Weekly Epidemiological Update(WHO) 2021年4月27日
世界の概況
2021年4月25日時点で、直近1週間の新規感染者数は約570万人が報告され、9週連続で増加傾向が続いています(図1)。先週のピークをさらに上回る増加となりました。また、新規死亡者数も6週連続で増加しており、8万7,000人以上が報告されました。東南アジア地域と西太平洋地域を除く全ての地域で、新規感染者数が減少しました。
東南アジア地域は3週連続で、新規感染者数、新規死亡数ともに最も高い増加率を示しました(表1)。同地域では、多くの国で増加傾向が報告されていますが、インドが大部分を占めている傾向があり、過去1週間に報告された世界の新規感染者数の38%を占めています。東南アジア地域と東地中海地域を除く全ての地域で、新規死亡者数が減少しました。
直近1週間における新規感染者数が多い上位5か国は、インド(新規感染者数2,172,063人、52%増加)、アメリカ合衆国(新規感染者数406,001人、15%減少)、ブラジル(新規感染者数404,623人、12%減少)、トルコ(新規感染者数378,771人、9%減少)、フランス(新規感染者数211,674人、9%減少)となっており、先週と同じ状況でした。
図1 2021年4月25日時点の週別・WHO管轄地域別のCOVID-19感染者数及び
世界の死亡者数の推移

表1 2021年4月25日時点のWHO管轄地域別の新規・累積COVID-19確定症例数及び死亡者数

東南アジア地域は3週連続で、新規感染者数、新規死亡数ともに最も高い増加率を示しました(表1)。同地域では、多くの国で増加傾向が報告されていますが、インドが大部分を占めている傾向があり、過去1週間に報告された世界の新規感染者数の38%を占めています。東南アジア地域と東地中海地域を除く全ての地域で、新規死亡者数が減少しました。
直近1週間における新規感染者数が多い上位5か国は、インド(新規感染者数2,172,063人、52%増加)、アメリカ合衆国(新規感染者数406,001人、15%減少)、ブラジル(新規感染者数404,623人、12%減少)、トルコ(新規感染者数378,771人、9%減少)、フランス(新規感染者数211,674人、9%減少)となっており、先週と同じ状況でした。
図1 2021年4月25日時点の週別・WHO管轄地域別のCOVID-19感染者数及び
世界の死亡者数の推移
表1 2021年4月25日時点のWHO管轄地域別の新規・累積COVID-19確定症例数及び死亡者数
WHO管轄地域別の概況
アフリカ地域
直近1週間で確認された新規感染者数は4万9,000人以上で、新規死亡者数は1,100人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は9%減少し、新規死亡者数は1%減少しました。新規感染者数は、過去9週間にわたって変動を続けています。新規死亡者数は、1月中旬のピーク以降、全体的に減少傾向が確認されています。
新規感染者が多い上位3か国
新規死亡者が多い上位3か国
新規感染者が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
エチオピア | 10,719人 | 9.3人 | 17%減少 |
南アフリカ共和国 | 8,690人 | 14.7人 | 7%増加 |
ケニア | 5,031人 | 9.4人 | 18%減少 |
新規死亡者が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
南アフリカ共和国 | 414人 | 0.7人 | 9%減少 |
エチオピア | 203人 | 0.2人 | 12%増加 |
ケニア | 140人 | 0.3人 | 5%増加 |
アメリカ地域
直近1週間で確認された新規感染者数は140万人以上で、新規死亡者数は3万6,000人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は8%減少し、新規死亡者数は7%減少しました。新規感染者数は過去8週連続で増加していましたが減少傾向となり、新規死亡者数も過去5週連続で増加していましたが減少傾向に転じました。
新規感染者が多い上位3か国
新規死亡者が多い上位3か国
新規感染者が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
アメリカ合衆国 | 406,001人 | 122.7人 | 15%減少 |
ブラジル | 404,623人 | 190.4人 | 12%減少 |
アルゼンチン | 166,024人 | 367.3人 | 3%増加 |
新規死亡者が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
ブラジル | 17,667人 | 8.3人 | 12%減少 |
アメリカ合衆国 | 4,951人 | 1.5人 | 4%減少 |
コロンビア | 2,882人 | 5.7人 | 26%増加 |
東地中海地域
直近1週間で確認された新規感染者数は37万8,000人以上で、新規死亡者数は6,300人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は2%減少し、新規死亡者数は17%増加しました。新規感染者数は10週連続で増加した後に横ばいで推移していますが、新規死亡者数は9週連続で急激な増加が続いています。
新規感染者が多い上位3か国
新規死亡者が多い上位3か国
新規感染者が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
イラン・イスラム共和国 | 161,594人 | 192.4人 | 3%減少 |
イラク | 54,301人 | 135.0人 | 3%増加 |
パキスタン | 39,858人 | 18.0人 | 17%増加 |
新規死亡者が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
イラン・イスラム共和国 | 2,793人 | 3.3人 | 33%増加 |
パキスタン | 905人 | 0.4人 | 18%増加 |
チュニジア | 514人 | 4.3人 | 7%増加 |
ヨーロッパ地域
直近1週間で確認された新規感染者数は140万人以上で、新規死亡者数は2万5,000人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は12%減少し、新規死亡者数は5%減少しました。新規感染者数、新規死亡者数ともに、過去2週間の減少傾向が確認されています。
新規感染者が多い上位3か国
新規死亡者が多い上位3か国

新規感染者が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
トルコ | 378,771人 | 449.1人 | 9%減少 |
フランス | 211,674人 | 325.5人 | 9%減少 |
ドイツ | 145,156人 | 174.5人 | 1%増加 |
新規死亡者が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
ポーランド | 3,383人 | 8.9人 | 6%減少 |
ロシア連邦 | 2,650人 | 1.8人 | 2%増加 |
ウクライナ | 2,537人 | 5.8人 | 8%減少 |
東南アジア地域
直近1週間で確認された新規感染者数は220万人以上で、新規死亡者数は1万7,000人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は49%増加し、新規死亡者数は81%増加しました。3月初旬以降、新規感染者数、新規死亡者数の非常に急激な増加が続いています。いずれも、インドにおける爆発的な感染状況を反映しています。
新規感染者が多い上位3か国
新規死亡者が多い上位3か国
新規感染者が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
インド | 2,17,063人 | 157.4人 | 52%増加 |
インドネシア | 37,029人 | 13.5人 | 同程度 |
バングラデシュ | 27,148人 | 16.5人 | 25%減少 |
新規死亡者が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
インド | 15,161人 | 1.1人 | 93%増加 |
インドネシア | 1,172人 | 0.4人 | 32%増加 |
バングラデシュ | 669人 | 0.4人 | 8%増加 |
西太平洋地域
直近1週間で確認された新規感染者数は約13万2,000人で、新規死亡者数は1,300人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は3%増加し、新規死亡者数は10%減少しました。新規感染者数が7週連続で増加している一方で、新規死亡者数は、4月下旬のピーク以降、2週連続で減少しています。
新規感染者が多い上位3か国
新規死亡者が多い上位3か国
新規感染者が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
フィリピン | 63,364人 | 57.8人 | 13%減少 |
日本 | 32,312人 | 25.5人 | 22%増加 |
マレーシア | 17,393人 | 53.7人 | 27%増加 |
新規死亡者が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
フィリピン | 864人 | 0.8人 | 19%減少 |
日本 | 291人 | 0.2人 | 21%増加 |
マレーシア | 56人 | 0.2人 | 14%増加 |
変異株の状況(2021年4月27日時点)
WHOは、各国の保健当局、研究機関、研究者と協力して、新型コロナウイルスの懸念すべき変異株(Variants of Concern:VOC)と注目すべき変異株(Variants of Interest:VOI)の監視を続けており、疫学や公衆衛生・社会的措置への影響など、世界の公衆衛生にもたらされるリスクに基づいて、これらの変異株やその他の新たな変異株を評価しています。
懸念すべき変異株(VOC)の流行状況
・イギリス由来の変異株(VOC 202012/01, N501Y変異):139か国

・南アフリカ由来の変異株(501Y.V2, N501Y+E484K変異):87か国

・ブラジル由来の変異株(P.1, N501Y+E484K変異):54か国

イギリス由来の変異株が流行していた時期に、イギリスやイスラエルの医療従事者や成人を対象に、有症状の感染や重症化に対するファイザー社・バイオンテック社のコミナティワクチンの有効性を示す実例が増えており、中和効果やワクチン有効性の結果が裏付けられています。イスラエルの全国的なサーベイランスデータを分析した結果、16歳以上の成人の大規模なコホート分析において、2回目の投与から14日以上経過した時点での無症候性感染症に対するワクチン有効率は94.1%(93.5~94.6%)であったことが報告されました。また、イギリスの医療従事者において、1回目の投与から12日以上経過した時点での無症候性感染症のリスクが4倍減少したことが報告されました。
また、イギリス由来の変異株の環境下において、アストラゼネカ社のバクスゼブリアワクチンの単回投与が、有症状の感染に対して有効であることを示す世界のエビデンスも増えています。2回接種の有効性については、データが不足しています。ワクチン有効率の信頼区間が広く、サンプル数が限られているため、結果の解釈には注意が必要です。
・南アフリカ由来の変異株(501Y.V2, N501Y+E484K変異):87か国
・ブラジル由来の変異株(P.1, N501Y+E484K変異):54か国
イギリス由来の変異株が流行していた時期に、イギリスやイスラエルの医療従事者や成人を対象に、有症状の感染や重症化に対するファイザー社・バイオンテック社のコミナティワクチンの有効性を示す実例が増えており、中和効果やワクチン有効性の結果が裏付けられています。イスラエルの全国的なサーベイランスデータを分析した結果、16歳以上の成人の大規模なコホート分析において、2回目の投与から14日以上経過した時点での無症候性感染症に対するワクチン有効率は94.1%(93.5~94.6%)であったことが報告されました。また、イギリスの医療従事者において、1回目の投与から12日以上経過した時点での無症候性感染症のリスクが4倍減少したことが報告されました。
また、イギリス由来の変異株の環境下において、アストラゼネカ社のバクスゼブリアワクチンの単回投与が、有症状の感染に対して有効であることを示す世界のエビデンスも増えています。2回接種の有効性については、データが不足しています。ワクチン有効率の信頼区間が広く、サンプル数が限られているため、結果の解釈には注意が必要です。
注目すべき変異株(VOI)の状況
・インド由来の変異株(B.1.617)
B.1.617に属する新型コロナウイルスの変異株がインドから報告され、WHOはVOIに指定しました。2021年4月27日現在、17か国から報告されており、最も多いのはインドで、イギリス、アメリカ合衆国、シンガポールが続きます。インドでは、2020年12月に初めて確認され、現在の大流行に伴い検出率が上昇しています。
インドでは、B.1.617の地理的分布に地域間での不均一性が見られており、VOC(VOC 202012/01や501Y.V2など)や他の変異株(B.1.618など)も併存しているため、複数の変異株の流行が現在の大流行につながっている可能性があります。WHOが行った予備的な調査によると、B.1.617はインドで流行している他の変異株と比較して増殖率が高く、感染力が高まる可能性が示唆されています。要因としては、公衆衛生・社会的措置の実施・遵守に関する課題や、社会的集会(文化的・宗教的な祭典や選挙の際の大規模集会など)が考えられます。これらの要因の相対的な関与を解明するには、さらなる調査が必要です。
疫学的特性(感染性、重症度、再感染リスクなど)への影響や対策への影響を含む、これらの変異株の影響について、さらなる十分な研究が早急に必要です。
B.1.617に属する新型コロナウイルスの変異株がインドから報告され、WHOはVOIに指定しました。2021年4月27日現在、17か国から報告されており、最も多いのはインドで、イギリス、アメリカ合衆国、シンガポールが続きます。インドでは、2020年12月に初めて確認され、現在の大流行に伴い検出率が上昇しています。
インドでは、B.1.617の地理的分布に地域間での不均一性が見られており、VOC(VOC 202012/01や501Y.V2など)や他の変異株(B.1.618など)も併存しているため、複数の変異株の流行が現在の大流行につながっている可能性があります。WHOが行った予備的な調査によると、B.1.617はインドで流行している他の変異株と比較して増殖率が高く、感染力が高まる可能性が示唆されています。要因としては、公衆衛生・社会的措置の実施・遵守に関する課題や、社会的集会(文化的・宗教的な祭典や選挙の際の大規模集会など)が考えられます。これらの要因の相対的な関与を解明するには、さらなる調査が必要です。
疫学的特性(感染性、重症度、再感染リスクなど)への影響や対策への影響を含む、これらの変異株の影響について、さらなる十分な研究が早急に必要です。
変異株に対するWHOの提言
ウイルスの進化は予期されるものであり、新型コロナウイルスが流行すればするほど、突然変異の機会が増えることになります。確立された実証済みの疾病管理方法を遵守して、人同士の接触を避けて感染を減らすことが重要であり、公衆衛生に悪影響を及ぼす突然変異の発生を抑えるための世界的な戦略の重要な側面となっています。
VOCが広く感染伝播している複数の国で得られたエビデンスによると、医療施設における公衆衛生・社会的措置および感染予防・制御対策の実施は、患者発生率の低下に効果的であり、入院や死亡の減少につながっています。国や地方自治体は、既存の公衆衛生・社会的措置、感染予防・制御対策、疾病管理の強化を継続することが奨励されます。また、保健当局は、サーベイランスとシーケンスの能力を強化し、地域の状況に応じて流行範囲を示し、異常な流行を検知するための体系的アプローチを適用することが奨励されます。
VOCが広く感染伝播している複数の国で得られたエビデンスによると、医療施設における公衆衛生・社会的措置および感染予防・制御対策の実施は、患者発生率の低下に効果的であり、入院や死亡の減少につながっています。国や地方自治体は、既存の公衆衛生・社会的措置、感染予防・制御対策、疾病管理の強化を継続することが奨励されます。また、保健当局は、サーベイランスとシーケンスの能力を強化し、地域の状況に応じて流行範囲を示し、異常な流行を検知するための体系的アプローチを適用することが奨励されます。
出典
COVID-19 Situation reports
COVID-19 Weekly Epidemiological Update: 27 April 2021
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---27-april-2021
COVID-19 Weekly Epidemiological Update: 27 April 2021
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---27-april-2021