新型コロナウイルス感染症の世界の状況報告

COVID-19 Weekly Epidemiological Update(WHO) 2021年5月9日

世界の概況

2021年5月9日時点で、直近1週間の新規感染者数は550万人以上が報告され、新規死亡者数は9万人以上が報告されました(図1)。いずれもパンデミック開始以降、高い水準を維持しています。新規感染者数は、ヨーロッパ地域と東地中海地域で減少しましたが、東南アジア地域では9週連続で増加傾向が続いており、前週と比較して6%以上の増加が報告されました(表1)。新規死亡者数は、東南アジア地域と西太平洋地域で増加しました。インドは、東南アジア地域における新規感染者数の95%と新規死亡者数の93%を占め、世界における新規感染者数の50%と新規死亡者数の30%を占めており、近隣諸国の大きな懸念事項となっています。
 
直近1週間における新規感染者数が多い上位5か国は、インド(新規感染者数2,738,957人、5%増加)、ブラジル(新規感染者数423,438人、前週と同程度)、アメリカ合衆国(新規感染者数334,784人、3%減少)、トルコ(新規感染者数166,733人、35%減少)、アルゼンチン(新規感染者数140,771人、8%減少)でした。
 
図1 2021年5月9日時点の週別・WHO管轄地域別のCOVID-19感染者数及び
世界の死亡者数の推移

 
表1 2021年5月9日時点のWHO管轄地域別の新規・累積COVID-19確定症例数及び死亡者数

WHO管轄地域別の概況

アフリカ地域

直近1週間で確認された新規感染者数は4万人以上で、新規死亡者数は1,000人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は5%減少し、新規死亡者数は3%増加しました。地域全体における新規感染者数と新規死亡者数は、長期的な減少傾向を示しつつありますが、一部の国々では再流行して増加する可能性が示唆されています。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
南アフリカ共和国 11,975人 20.2人 41%増加
エチオピア 4,155人 3.6人 42%減少
カメルーン 4,126人 15.5人 10%減少
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
南アフリカ共和国 318人 0.5人 13%増加
エチオピア 162人 0.1人 9%減少
ケニア 139人 0.3人 1%減少
 

アメリカ地域

 直近1週間で確認された新規感染者数は120万人以上で、新規死亡者数は約3万3,000人でした。前週と比較して、新規感染者数は4%減少し、新規死亡者数は8%減少しました。新規感染者数は3週連続で減少しましたが、一部の国々では新規感染者数と新規死亡者数が増加傾向を示しています。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
ブラジル 423,438人 199.2人 同程度
アメリカ合衆国 334,784人 101.1人 3%減少
アルゼンチン 140,771人 311.5 8%減少
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
ブラジル 15,333人 7.2人 12%減少
アメリカ合衆国 4,940人 1.5人 4%増加
コロンビア 3,147人 6.2人 4%減少
 


 

東地中海地域

直近1週間で確認された新規感染者数は28万人以上で、新規死亡者数は5,600人以上でした。前週と比較して、新規感染者数、新規死亡者数ともに13%減少しました。新新規死亡者数は、11週連続で増加が続いた後、減少に転じました。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
イラン・イスラム共和国 124,513人 148.2人 10%減少
イラク 38,192人 95.0人 15%減少
パキスタン 28,721人 13.0人 19%減少
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
イラン・イスラム共和国 2,434人 2.9人 18%減少
パキスタン 840人 0.4人 12%減少
チュニジア 542 4.6人 6%減少
 
 
 
 

ヨーロッパ地域

直近1週間で確認された新規感染者数は89万7,000人以上で、新規死亡者数は1万9,000人でした。前週と比較して、新規感染者数は25%減少し、新規死亡者数は18%減少しました。いずれも、過去1か月間の減少傾向が確認されています。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
トルコ 166,733人 197.7人 35%減少
フランス 122,487人 188.3人 26%減少
ドイツ 103,507人 124.5人 20%減少
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
ロシア連邦 2,464人 1.7人 6%減少
トルコ 2,242人 2.7人 10%減少
ポーランド 1,944人 5.1人 27%減少
 

東南アジア地域

直近1週間で確認された新規感染者数は280万人以上で、新規死亡者数は2万9,000人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は6%増加し、新規死亡者数は15%増加しました。いずれも、9週連続で増加しています。現在、この増加傾向の大部分はインの流行が反映されていますが、ネパールやスリランカなど、他の地域でも顕著な増加傾向が見られます。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
インド 2,738,957人 198.5人 5%増加
ネパール 56,997人 195.6人 79%増加
インドネシア 36,882人 13.5人 2%増加
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
インド 26,820人 1.9人 15%増加
インドネシア 1,190人 0.4人 3%増加
バングラデシュ 368人 0.2人 34%減少
 

西太平洋地域

直近1週間で確認された新規感染者数は12万7,000人以上で、新規死亡者数は1,700人でした。前週と比較して、新規感染者数は4%減少し、新規死亡者数は34%増加しました。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
フィリピン 48,197人 44.0人 16%減少
日本 35,802人 28.3人 2%増加
マレーシア 25,350人 78.3人 19%増加
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
フィリピン 915人 0.8人 35%増加
日本 527人 0.4人 38%増加
マレーシア 136人 0.4人 43%増加
 

変異株の状況(2021年5月4日時点)

前回の更新日の5月4日以降、VOC 202012/01が7か国、501Y.V2が5か国で、P.1が4か国で新たに報告されました。2021年5 月 11日時点で、VOC 202012/01 は 149か国 (図 2)、501Y.V2 は 102 か国 (図 3)、P.1 が 60か国 (図 4)で報告されました。
 
WHOは、新型コロナウイルス変異作業部会との協議の結果、インドで流行しているB.1.617系統のウイルスについて、注目すべき変異株(VOI)から懸念すべき変異株(VOC)に分類を変更することを決定しました。B.1.617には3つのサブ系統(B.1.617.1, B.1.617.2, B.1.617.3)があり、スパイクタンパクにわずかな変異があるかどうか、また世界的に検出頻度が高いかどうかで異なっています。5月11日の時点で、WHOが管轄する全6地域の49か国(図5)から報告されています。
 
B.1.617系統のウイルスは、2020年10月にインドで初めて報告されました。WHOが最近実施したインドの状況に関するリスク評価によると、インドにおけるCOVID-19感染の再流行と伝播加速は、感染力が高まっている可能性がある新型コロナウイルスの変異株の割合が増加していること、宗教的・政治的な大規模集会が複数開催されて社会的な密状態が進んでいること、公衆衛生・社会的措置の適用不足や遵守率の低下など、いくつかの潜在的な要因の存在が判明しています。
 
インドで報告された新規感染者の急増に伴い、B.1.1.7とB.1.617亜種を含め、複数のVOCの流行が増加しました。B.1.1.7とB.1.617.1はここ数週間で減少し始めていますが、B.1.617.2の割合は、同期間に著しく増加しています。2021年4月下旬までの間に、インドで遺伝子配列が確認された検体のうち、B.1.617.1が21%、B.1.617.2が7%を占めていました。
 
WHOが行った予備的な分析によると、B.1.617.1とB.1.617.2は、インドで流通している他の変異株に比べて増殖率が大幅に高く、感染性が比較的に高いことが示唆されています。B.1.617.3については、これまでの検出数が少なかったため、その相対的な感染力を評価することはできませんでした。
 
なお、掲載された情報は、国ごとの遺伝子情報の配列確定能力や配列確定のための検体の優先順位の違いなどがあるため、サーベイランスの限界を十分に考慮した上で解釈する必要があります。

懸念すべき変異株(VOC)の流行状況(2021年5月11日時点, 括弧内は前週比)

図2 イギリス由来の変異株(VOC 202012/01, N501Y変異):149か国(+7)


図3 南アフリカ由来の変異株(501Y.V2, N501Y+E484K変異):102か国(+5)


図4 ブラジル由来の変異株(P.1, N501Y+E484K変異):60か国(+4)


図5 インド由来の変異株(B.1.617, L452R+E484Q変異):49か国(+5)

出典

COVID-19 Situation reports
COVID-19 Weekly Epidemiological Update: 9 May 2021
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---11-may-2021

翻訳協力:関西空港検疫所