エボラウイルス病(Ebola virus disease)

エボラウイルス病(Ebola virus disease)とは

エボラウイルス病(エボラ出血熱)はエボラウイルスによる感染症です。出血症状は、以前考えられていたよりもまれなため、最近はエボラ出血熱ではなく、エボラウイルス病(EVD)と言われます。感染症法では1類感染症に分類されています。

どうやってうつる

自然界ではオオコウモリなどの野生動物がエボラウイルスを保有していると考えられますが、ヒトの間では家族内、医療機関内で感染を繰り返すことにより、大きな流行が生じることがあります。 エボラウイルスに感染した動物(コウモリ、霊長類など)や感染した人の体液等(血液、分泌物、吐物・排泄物など)に、皮膚の細かな傷や、眼や口の粘膜等が接触するとウイルスが体内に侵入し、感染します。また、症状が出ている患者の体液(血液、糞便、嘔吐物など)やそれに汚染された物品(シーツ、衣類、医療器具、患者が使用した生活用品など)に傷口や粘膜が触れても感染することがあります。

症状

2~21日の潜伏期間の後、突然の発熱、全身倦怠感、筋肉痛、頭痛、喉の痛みなどの症状に始まり、その後、嘔吐、下痢、発疹が出現します。さらに症状が増悪すると、出血傾向や意識障害が生じます。エボラウイルス病の致死率はエボラウイルスの種類と患者に提供される医療のレベルによって、25~90%の範囲で変化しますが、概ね50%程度です。

治療

確立した特別な治療法はありません。症状を軽くするための補液(点滴)と対症療法を行います。早期の治療により生存の可能性が高まるため、直ちに医療機関で治療を開始することが重要と考えられています。

予防

確立したワクチンはありません。感染が疑われる人や死亡した人との接触、流行地域での葬儀への参列、医療機関の受診などは可能な限り避けてください。動物(コウモリ、霊長類など)も感染しますので、動物の死体に近づくこと、触ることも避けましょう。加熱処理の信頼できない野生動物の肉(Bushmeat、ジビエ肉)を食べることはエボラウイルス以外の病原体に感染する可能性もあり、極めて危険です。
一方、症状のない人が他の人に感染させることは性行為など特別な場合を除き、ほとんどありません。流行地を支援する人々には過剰な懸念を抱くことなく、冷静に対応しましょう。
アルコールなどの消毒薬だけでなく、流水と石けんによる洗浄も感染予防に効果があります。

危険のある地域

主にコンゴ民主共和国などアフリカ中央部で発生し、1976年以降これまでに30回を超える流行が報告されています。2013年末から2014年夏には、初めて西アフリカ (ギニア、リベリア、シエラレオネ)でも爆発的な流行(outbreak)が発生しました。
2018年には東アフリカ(ウガンダ、ルワンダ、南スーダンなど)に隣接するコンゴ民主共和国北東部(北キブ州、イツリ州)でも流行が発生し、2019年6月には隣国ウガンダ共和国のカセセ県、同年7月には北キブ州の州都ゴマで患者が確認されています。世界保健機関(WHO)は、コンゴ民主共和国におけるエボラ出血熱の発生が新たに北キブ州の州都ゴマに及んだことを受けて、日本時間7月18 日、この事態が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」に該当すると宣言しました。2020年6月に終了しています。2021年2月に再度、コンゴ民主共和国におけるエボラ出血熱の発生が北キブ州で確認されましたが、2018年から2020年時の流行と関係していた(再発や性感染)可能性が高いとされています。2022年9月にウガンダ共和国にて同国における6度目の流行が起きています。2023年1月11日に終息宣言が出されています。


図.種類別、感染者数別にみた1976年から2022年までのエボラウイルスの流行状況
出典:アメリカ疾病管理予防センターCDC:Ebola virus disease(英文)

さらに詳しい情報

▶世界保健機構(WHO):Fact Sheets,Ebola virus disease(英文)
▶アメリカ疾病管理予防センター(CDC):CDC Yellow Book 2024,Viral Hemorrhagic Fevers(英文)
▶アメリカ疾病管理予防センターCDC:Ebola virus disease(英文)
▶国立感染症研究所:エボラ出血熱とは

2024年3月更新