海外渡航のためのワクチン

海外渡航のためのワクチン(予防接種)

海外渡航者の予防接種には、主に二つの側面があります。一つは、入国時などに予防接種を要求する国(地域)に渡航するために必要なものです。もう一つは、海外で感染症にかからないようにからだを守るためのものです。ここでは、日本国内で行われている一般的な予防接種について説明します。

予防接種の計画は余裕をもって早めに!

予防接種の種類によっては、数回(2~3回)接種する必要のあるものもあります。海外に渡航する予定がある場合には、なるべく早く(できるだけ出発3か月以上前から)、トラベルクリニック、渡航外来等の医療機関で、接種するワクチンの種類と接種日程の相談をしてください。

予防接種の種類

予防接種 対象
黄熱 感染リスクのある地域に渡航する人
入国に際して証明書の提示を求める国へ渡航する人
A型肝炎 途上国に長期(1か月以上)滞在する人、特に60歳以下
B型肝炎 血液に接触する可能性のある人
破傷風 冒険旅行などでけがをする可能性の高い人
狂犬病 イヌやキツネ、コウモリなどの多い地域へ行く人で、特に近くに医療機関がない地域へ行く人
動物研究者など、動物と直接接触する人
ポリオ 流行地域に渡航する人
日本脳炎 流行地域に長期滞在する人(主に東南アジアでブタを飼っている農村部)
麻しん風しん 海外へ渡航しない人も含めて、すべての人
髄膜炎菌 流行地域に渡航する人、定期接種実施国へ留学する人

予防接種で予防できる病気

破傷風

破傷風菌は世界中の土壌の至る所に存在し、日本でも毎年患者が発生しています。破傷風は傷口から感染するので、冒険旅行などで怪我をする可能性の高い人におすすめするワクチンです。特に、途上国では、けがをしやすく、命に関わることもあるので、接種を検討してください。
破傷風ワクチンは1968年(昭和43年)から始まった3種混合ワクチン(ジフテリア、破傷風、百日せき)に含まれていますので、定期予防接種で破傷風・ジフテリアワクチンを12歳の時に受けていれば、20代前半位までは免疫がありますので、接種は不要です。その後は、1回の追加接種で10年間有効な免疫がつきます。現在、小児の定期接種では、ジフテリア・百日咳・ポリオとの4種混合ワクチン(DPT-IPV)、ジフテリア・百日咳との3種混合ワクチン(DPT)、ジフテリアとの2種混合ワクチン(DT)が用いられます。

A型肝炎

A型肝炎は食べ物から感染する病気で、アジア、アフリカ、中南米に広く存在します。発症すると倦怠感が強くなり、重症になると1か月以上の入院が必要となる場合があります。途上国に長期(1か月以上)滞在する人におすすめするワクチンです。特に60歳以下の人は抗体保有率が低いため、接種をおすすめします。
ワクチンは2~4週間隔で2回接種します。6か月以上滞在するのであれば6か月目にもう1回接種すると約5年間効果が続くとされています。

狂犬病

狂犬病は、発病すればほぼ100%が死亡する病気です。海外では、オセアニアなど一部を除きイヌだけでなくキツネ、アライグマ、コウモリなどの動物に咬まれることによって感染する危険性が高く、長期滞在、研究者など動物と直接接触し感染の機会の多い場合や、奥地・秘境などへの渡航ですぐに医療機関にかかることができない人におすすめするワクチンです。
ワクチンは4週間隔で2回接種し、さらに6か月から12か月後に3回目を接種します。3回のワクチン接種後、6か月以内に咬まれた場合には0日(咬まれた日)、3日の2回の接種が必要です。また、6か月経過後に咬まれた場合には0日、3日、7日、14日、30日、90日の6回のワクチン接種が必要です。

日本脳炎

日本脳炎は、日本脳炎ウイルスを保有する蚊に刺されることによって起こる重篤な急性脳炎で、死亡率が高く、後遺症を残すことも多い病気です。
流行地(東アジア、南アジア、東南アジア)へ行く人におすすめするワクチンです。ワクチンは1~4週間間隔で2回接種し、1年後追加接種を1回します(基礎免疫が完了)。基礎免疫の完了後は、1回の接種で4~5年間有効な免疫がつきます。

B型肝炎

以前は輸血や医療従事者の注射針による針刺し事故など血液を介した感染が問題とされていましたが、現在ではB型肝炎(活動期)の母親から生まれる新生児期を中心とした感染と、思春期以降の性行為(唾液や体液の濃厚接触)を通じた感染の2つが主な原因となっています。
一般に健康な(免疫不全でない)成人の感染では一過性感染が多く、急性肝炎の経過をとるものと不顕性感染となるものがあります。一過性感染例では劇症化して死亡する例(約2%)を除くと、多くは、およそ3か月で肝機能が正常化します。
ワクチンは4週間間隔で2回接種し、さらに、20~24週間後に1回接種します。

ポリオ(急性灰白髄炎)

ポリオはポリオウイルスによって、急性の麻痺が起こる病気です。
野生株ポリオが流行しているアフガニスタン、パキスタン、ナイジェリアのほか、ワクチン由来ポリオが発生している国(パプアニューギニア、モザンビーク、ニジェール、コンゴ民主共和国、シリアなど)に渡航する人は追加接種を検討してください。WHOでは、患者が発生している国に渡航する場合には、以前にポリオの予防接種を受けていても、渡航前に追加の接種をすすめています。特に、1975年(昭和50年)から1977年(昭和52年)生まれの人は、ポリオに対する免疫が低いことがわかっていますので、海外に渡航する場合は、渡航先が流行国でなくても、渡航前の追加接種を検討してください。

黄熱

黄熱は蚊によって媒介されるウイルス性の感染症で、致死率は5~10%ですが、流行時や免疫をもたない渡航者などでは、60%以上に達するという報告もあります。アフリカや南米の熱帯地域に渡航する人に必要なワクチンです。黄熱予防接種証明書を入国時に要求する国や、乗り継ぎの時に要求する国もありますので、検疫所で確認して下さい。黄熱予防接種証明書は接種後10日目から生涯有効です。過去に発行された有効期間10年の証明書も、そのまま生涯有効となりますので、廃棄せずに大切に保管してください。

ジフテリア

ジフテリアは、患者の咳などにより、ヒトからヒトに感染します。
小児の定期接種では、百日咳・破傷風・ポリオとの4種混合ワクチン(DPT-IPV)、百日咳・破傷風との3種混合ワクチン(DPT)、破傷風との2種混合ワクチン(DT)が用いられますが、成人向けにはジフテリア単独のワクチン(トキソイド)もあります。
ジフテリアワクチンは1968年(昭和43年)から始まった3種混合ワクチン(DPT)、2012年(平成24年)から始まった4種混合ワクチン(DPT-IPV)に含まれています。定期の予防接種で2種混合ワクチン(DT)を12歳の時に受けていれば、20代前半くらいまでは免疫がありますので、それまでは接種は不要です。その後は、1回の追加接種で10年間有効な免疫がつきます。

麻しん

感染力が非常に強く、簡単に人から人に感染する急性のウイルス性発しん性感染症です。
主な症状は発熱、咳、鼻汁、結膜充血、発しんなどですが、まれに肺炎や脳炎になることがあり、先進国であっても、患者1,000人に1人が死亡するとされています。
現在は定期の予防接種で2回接種が行われています。
麻しんにかかったことがない方、麻しんの予防接種を受けたことがない方、ワクチンを1回しか接種していない方または予防接種を受けたかどうかがわからない方には、ワクチン接種をおすすめします。
麻しんについての詳しい情報は厚生労働省「麻しん・風しん」、国立感染症研究所「麻疹」、「はしかから身を守るために」(ビデオ)をご参照下さい。

風しん

感染力が強く、人から人に感染する急性のウイルス性発しん性感染症です。主な症状は発熱、発しん、リンパ節腫脹などですが、感染しても症状がでない人が15~30%程度います。
通常は自然に治りますが、まれに脳炎になったりして入院が必要になることがあります。
妊娠20週頃までの妊婦が風しんウイルスに感染すると、生まれてくる子どもが先天性風しん症候群になり、難聴・白内障・心臓の病気などをもって生まれてくることがあります。
現在は定期の予防接種で2回接種が行われています。
風しんにかかったことがない方、風しんの予防接種を受けたことがない方、ワクチンを1回しか接種していない方または予防接種を受けたかどうかがわからない方には、ワクチン接種をおすすめします。
風しんについての詳しい情報は厚生労働省「麻しん・風しん」、国立感染症研究所「風しん」をご参照下さい。

髄膜炎菌感染症

髄膜炎(脳の周りを覆う髄膜の炎症)は様々な細菌、ウイルスが原因となって起こる病気ですが、その中でも髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)は、髄膜炎の大きな流行をもたらします。 髄膜炎菌は感染者の呼吸中に生じる飛沫や咽頭分泌物を介して感染します。感染者とのキスやコップの共用などのほか、狭い空間での共同生活(寮生活)など、長時間の緊密な接触が感染の原因となります。
髄膜炎菌にはいくつかのタイプがあり、A群はアフリカのサハラ砂漠の南側、髄膜炎ベルト地帯と呼ばれる大西洋からインド洋に至る東西に細長い地域が流行の中心ですが、メッカへの巡礼などにより西アジアでも時に流行が見られます。日本や欧米でもB群、C群、Y群、W-135群などが学生などの間で集団感染を起こします。
予防には、髄膜炎菌のA、C、Y、W-135に対する4価の多糖体ワクチンが有効ですが、このワクチンではB群は予防できません。
米国のように髄膜炎菌ワクチンを小児(10代)の定期接種としている国もあり、このような国へ留学する場合には、入学前に接種済証の提示を求められる場合があります。

海外渡航で検討する予防接種の種類の目安(地域別)

United_Nations_geographical_subregions.jpg

United Nations geographical subregions

【短期観光客向け】
地域 Area 黄熱 A型
肝炎
髄膜炎菌 麻しん
風しん
水痘 インフル
エンザ
北アメリカ Northern America
カリブ Caribbean
中央アメリカ Central America
南アメリカ South America
中央アジア Central Asia
東アジア Eastern Asia
東南アジア South-eastern Asia
南アジア Southern Asia
西アジア Western Asia
豪州・ニュージーランド Australia and New Zealand
メラネシア Melanesia
ミクロネシア Micronesia
ポリネシア Polynesia
北アフリカ Northern Africa
東アフリカ Eastern Africa
中央アフリカ Middle Africa
西アフリカ Western Africa
南アフリカ Southern Africa
北ヨーロッパ Northern Europe
東ヨーロッパ Eastern Europe
西ヨーロッパ Western Europe
南ヨーロッパ Southern Europe
【冒険旅行及び長期(1ヶ月以上)滞在者向け】
  地域   Area 黄熱 A型
肝炎
B型
肝炎
ポリオ 狂犬病 日本
脳炎
髄膜
炎菌
麻しん
風しん
水痘 インフル
エンザ
破傷風
北アメリカ Northern America
カリブ Caribbean
中央アメリカ Central America
南アメリカ South America
中央アジア Central Asia
東アジア Eastern Asia
東南アジア South-eastern Asia
南アジア Southern Asia
西アジア Western Asia
豪州・ニュージーランド Australia and New Zealand
メラネシア Melanesia
ミクロネシア Micronesia
ポリネシア Polynesia
北アフリカ Northern Africa
東アフリカ Eastern Africa
中央アフリカ Middle Africa
西アフリカ Western Africa
南アフリカ Southern Africa
北ヨーロッパ Northern Europe
東ヨーロッパ Eastern Europe
西ヨーロッパ Western Europe
南ヨーロッパ Southern Europe

:黄熱に感染するリスクがある地域に渡航する場合は予防接種が必要
▲:北アフリカのうちスーダン南部に渡航する場合は予防接種が必要
◎:渡航前の予防接種をお勧めしています
〇:局地的な発生があるなど、リスクがある場合には接種を検討してください
△:ワクチンの供給が限られているので、入手可能であれば、接種を検討してください。
※:麻しん、風しん、水痘、インフルエンザ、破傷風は渡航先にかかわらず、必要な方には予防接種をお勧めしています。

2019年3月更新