JOHAC 海外勤務健康センター 研究情報部



JOHAC(海外勤務健康管理センター)は独立行政法人労働者健康福祉機構の中で、海外勤務者の健康管理に貢献してきた組織です。 JOHACは平成22年3月に閉鎖されましたが、 FORTHでは旧JOHACホームページ情報の一部を転載しています。 JOHAC関連情報のご利用にあたっては、閉鎖以降の情報更新はなく、今後も更新される予定はないことをご了承ください。このため、情報内容が現状と異なっている可能性がございますので、ご利用にあたっては他の方法でのご確認もお願いいたします。
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海外勤務健康管理センター

病気になったら家庭医へ、病気でなくとも家庭医へ

Japan Overseas Health Adiministration Center

日本には、病気になったら総合病院に行くという患者が多いようです。 そこで、下痢なら消化器外来に、発熱なら血液内科に受診するといった判断を患者がします。 しかし海外では、飛び込み患者が専門外来を受診することを許さない体制になっていることが多いようです。 海外では、「病気になったらまず地域の開業医に相談する」のが原則です。 家庭医とは、

  • 地域の開業医で、日頃から患者と話し合い、患者の健康状態を継続的に把握してくれる。
  • 医学全般に広い知識をもち、様々なの健康問題に関して相談にのってくれる。
  • 必要なら、専門医への紹介、総合病院への入院などの便宜をはかってくれる。

といったものです。

地域の開業医 公立病院の一般外来 総合病院の専門外来
受診方法 原則、予約が必要 飛び込みでも可能 原則、指定医の紹介が必要
医療費 高額 無料~安い さまざま
患者数 少ない(医療費を払える患者) 多い 少ない(専門治療を要する患者)
診療内容 患者をみる 画一的(施し) 病気をみる

開放型病院( オープン・システム Open System )

海外の総合病院( general hospital )は、雇用関係のない医師に対してサービスを提供する形態となっていることが多く、こういった体制はオープン・システム Open System (開放型)と呼ばれます。

  • 指定医(主に地域の開業医)の患者を入院させ、同じ医師が継続して診療にあたる。
  • 同じ病院の一般外来で働く医師であっても、指定医でなければ、患者を入院させる権限がない。
  • 病院と専門外来の医師との間に雇用関係がなく、病院機能と各種外来機能が独立している。
  • 受診受付けは各科毎に行われる(注.ここで家庭医の紹介や医療保険の確認が行われる)。

これは、医療資源(入院ベッド、専門治療)の有効活用、医療の透明性確保を目的とした措置です。

これに対し日本の総合病院は、雇用関係のある医師に対してサービスを提供する形態となっており、閉鎖型( Closed System )と呼ばれます。日本の総合病院(医療法で定義)と海外の総合病院(general hospitalの訳語) の間には大きな違いがあります。

開放型病院 日本の総合病院
院内医師との関係 原則として、雇用関係なし スタッフ丸抱え
運営単位 各診療科毎に別々 病院全体として一括運営
患者の視点から 開業医の紹介で、単品のサービスを供給 とりあえず病院に行けば全てのサービスがある
開業医との関係 開業医に各機能を開放し、共同で診療にあたる 開業医と競合する

日本の病院では、専門外来の患者過多、入院ベッドの常時不足、医療の不透明性、開業医との利害相反などが問題になっています。 この点、オープン・システムの方が優れていますが、日本人患者の評判は、「手続きが煩雑」、「内部の連絡が悪い」といった意見が主流です。


家庭医を選ぶにあたって

家庭医を選ぶ場合、以下の点に着目して下さい。

  • 現地の一般医として適切である
    • 医学全般に広い知識をもち、的確な判断が下せないといけません。日本ではかかりつけの内科医師や外科医を家庭医として利用する方がいますが、海外の内科医や外科医はより専門化しています。海外の専門医を同様に使う場合、料金が割高になること、医学知識が偏るので判断を誤る可能性があること、一般開業医に比べ連絡をとるのが難しい等の点が問題になります。
    • 専門治療が必要な場合、専門医に紹介してもらう必要があります。地域の総合病院から指定を受けているか、紹介する専門医の人脈が豊富かといった点も重要です。ただし、こういった条件を満たしていても、専門医に紹介したがらない医師もいます。専門医紹介の実績が多い医師が良いでしょう。
  • 日本人患者と十分なコミニュケーションが可能である。
    • 家庭医の仕事は「納得のできる医療」を行うことです。言葉が通じないと話になりません。少なくとも英語、できれば日本語が話せる医師が良いでしょう。
    • 言葉が通じても、日本人の心情や習慣が理解できないと、診療が円滑に進みません。日本に長期滞在した経験のある医師なら心強いでしょう。

後者の視点から医師を選ぶ場合、「日本語で受診できる医療機関(海外邦人医療基金)」が役に立ちます。


家庭医を決めよう

自分の健康は自分で管理する自覚をもとう
海外では、予防から治療に至るまで、自分の健康は自分で管理するのが原則です。家庭医はアドバイザーに過ぎません。この自覚なくして、いくら良い家庭医を選んでも意味がありません。検査や治療を決めるのは、あなた自身なのです。
家庭医に会いに行こう
健康な時に家庭医にアドバイスを求めることも珍しくありません。家庭医として適当な医師を決めたら、相談に行ってみましょう。とりあえず赴任前の健康診断の結果を見せて、その結果に対するコメントをもらう口実で受診すれば良いでしょう。ついでに専門治療が必要な場合、どういった手続きが必要で、その時に医療保険が使えるかどうか聞いてみましょう。一度でも家庭医と相談しておけば、いざ病気になった場合、円滑に診療が進むと期待できます。
受診方法を確認しておこう
まずクリニックの営業時間を確認して、通常の場合の連絡方法(予約を必要とする場合が多いです)を確認します。そして、時間外や急病時の対応法についても確認しておきましょう。ここで聞いた連絡先は、必ずメモしておいて下さい。
医療に関する情報を集めましょう
海外では、医療に関するさまざまな広告や情報が氾濫しています。この中から、信用のおける情報を自分で集めましょう。時には、別の医師に相談してみるのも良いでしょう。

Q&Aの回答

Q.健康な間に家庭医を決めておくと良いと聞きましたが、どういうことでしょう?

健康な間に開業医に相談しておけば、いざ病気になった時、

  • すぐに医師に連絡がとれる。
  • 医師は健康な時の状態を知っているので、より質の高い診療ができる。
  • 医療保険に関する手続きも、1回目よりも簡単。

といった利点があるということでしょう。

Q.総合病院より、開業医に行った方が良いと言われましたが本当でしょうか?

どちらが良いか一概には言えません。高度の専門治療が必要なら総合病院に行く以外ありません。

  • 公立の総合病院は貧困層の医療を行う場所です。好んで行く場所ではないでしょう。
  • 総合病院を受診する場合でも、開業医の紹介があると手続きが簡単です。

重病でなければ、まず開業医を訪れるのが賢明でしょう。


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