チクングニア熱 -モルディブ
Eurosurveillance, Volume15, Issue 8 2010年2月25日
チクングニアウイルスは、蚊によって媒介されるアルファウイルスで、アフリカとアジアの熱帯地域で流行がみられる、急性熱性発疹性疾患です。チクングニア熱は、インド洋の島での再興と、その後、南アジアに広がったことにより、海外渡航者での報告が増加しています。さらに、アフリカと南アジアの数ヶ国ではウイルスの流行がみられ、渡航者で疾患が発生することに関与しているのかもしれません。この病気は、インド洋では、ケニアで2004年、レユニオン島で2005年、インド南部で2006年に最初の流行が起こり、アウトブレイクが広範囲に続き、モルディブ諸島では2007年に発生したと思われています。ここでは、2009年1月にチクングニア熱のアウトブレイクが始まったと報告された、モルディブのマレ島から帰国したフランス人の渡航者におけるチクングニア熱の患者について報告します。
患者は30代の男性で、周期的に繰り返す発熱(40℃まで)と、頭痛、全身の筋肉痛、主に指・手首・膝・足首に起こったひどい関節痛、かゆみのある発疹が3日間続き、ボルドーの大学病院にある内科・熱帯疾患科の渡航者クリニックを受診しました。モルディブのマレ島の北部に14日間滞在して、2日前に帰国しました。
受診時、軽い斑状発疹が体幹と手足にみられ、右膝と手足の小関節がわずかに腫れていました。
受診後に熱は下がりましたが、ひどい関節痛は、対症療法を行ったものの、12月末まで、6週間以上続きました。
この地域は、おそらく、インド洋地域で、最も人気のある渡航先の1つでしょう。このことは、この地域から帰国した渡航者で、症状が出現して、医療機関を受診する人が増加することにつながるのかもしれません。そのため、このような患者では、チクングニア熱は、デング熱とともに、インドやインド洋地域で同じように流行し、症状も似ていると思って、重要な鑑別診断として考慮に入れなければなりません。
モルディブでは、10年以上、デング熱が、蚊によって媒介される疾患として報告された唯一の疾患でした。ネッタイシマカやヒトスジシマカはデングウイルスを媒介しますが、チクングニアウイルスも媒介します。モルディブでは、どちらも確認されており、マレ島では媒介蚊として、ネッタイシマカが優勢です。最初のチクングニア熱のアウトブレイクは、2006年12月から2007年4月に起こりましたが、集団免疫がなかったため、突然の発生で、高い発病率でした。病気の流行は、西アフリカやマレーシアのように、ウイルスが流行しない20~30年の間隔をあけて起こるかもしれません。渡航者での確定診断がついた輸入例は、インド洋地域でチクングニア熱の流行が広がって、ウイルスが風土的に流行しているという仮定を支持します。