タジキスタンでのポリオの事例-欧州で根絶後の初輸入症例
WHO(GAR) 2010年4月23日
タジキスタンで急性弛緩性麻痺(AFP)と診断された症例からⅠ型ポリオウイルスが検出されました。これは、2002年にWHOヨーロッパ地域でのポリオ根絶が確認されてから初のポリオ輸入症例となります。
2010年4月21日現在、タジキスタンで120例の急性弛緩性麻痺例が報告されています。この大部分が2週間以内の発生例であることから、タジキスタン政府は緊急にWHOに集団発生を通知しました。10人の子供が死にました。ほとんどの症例が5歳未満の小児です。予備段階での情報では45%を超える例では4回以上経口ポリオワクチンの投与を既に受けていたようです。
これまでⅠ型ポリオウイルスがこれらの症例由来の診断用検体7つから分離されました。全ての症例はこの国の南西部で発生しており、アフガニスタンやウズベキスタンとの国境地帯に位置します。アフガニスタンはいまだにポリオが流行している4ヵ国のうちの一つです。タジキスタンと国境を接するアフガニスタン地域からの症例は報告されていません。
タジキスタン政府はWHOに技術的な指導と支援を求めています。3つの集団発生に対応するためのワクチンは対タジキスタンUNICEF供給部門によって用意されています。
タジキスタンで最後のポリオの臨床診断症例は1997年でした。また、ウイルスが証明された症例は1991年が最後となっています。報告によりますと2008年の3価経口ポリオワクチンの施行率は87%であり、これがWHO/UNICEF 合同報告で得られた最新のものです。タジキスタンのAFP調査チームは流行が国家レベルである可能性を示唆しました。2009年にタジキスタンは35例の急性弛緩性麻痺を報告していますが、この中にポリオ野生株によるものはありませんでした。全世界的には2009年には90,000例以上の急性弛緩性麻痺の報告があり、このうち1606例が野生株に起因するものでした。
タジキスタンと国境を接するウズベキスタンのタジキスタン国境地帯からは3例の急性弛緩性麻痺が報告されましたが、検査室検査でポリオウイルスはまだ分離されていません。更にタジキスタンの子供が一名、麻痺発症直後に治療のためにDushanbeからTashkentへ移動したようです。ウズベキスタン政府は全国で一回のポリオワクチン投与を計画しています。キルギスタン政府は5歳未満の子供に、ヨーロッパワクチン週間(4月26-30日)に予防接種を予定しています。
WHOは集団発生が生じた地域の関連国と集団発生について情報交換をしています。近隣諸国が急性弛緩性麻痺に対するサーベーランス調査に力を入れることが重要で、それによって新たにポリオウイルスが侵入してきても速やかに検出し対応できるようになります。また、各国は定期ワクチン接種率の解析を行い、これを基にその国の下位集団での免疫状態の差を知り、ワクチンの追加接種を行うための指標とすることで新たなウイルスの侵入による影響を最小限に抑えなければなりません。特に、侵入のリスクが高く、OPV3/DPT3の接種率が80%未満の地域では優先的に対応しなければなりません。
今回の集団発生から、世界規模でポリオ伝播が根絶されるまで、高いレベルでの集団免疫が維持される必要があることが実証されました。
サーベーランスやワクチンの強化といった公衆衛生学的な対応が、国境地域でタジキスタンの保健関係者や隣国の保健関係者によって実行されることになるでしょう。海外旅行者はポリオ汚染地域へ行く人も、汚染地域からくる人もInternational Travel and Healthの第6章(下記のリンク参照)に勧奨されているように、ポリオに対して適切なワクチン接種を受けなくてはなりません。
WHOは感染制御のために個人の国際間の移動を制限することは推奨しません。