ドイツにおける志賀毒素産生性大腸菌のアウトブレイクについて

ECDC 2011年6月13日

5月22日にドイツ政府は志賀毒素産生性大腸菌(STEC)による溶血性尿毒症症候群(HUS)と血性下痢症の患者数が顕著に増加していることを報告しました。2011年5月2日以降、HUS817例と、非HUSのSTEC感染症2,508例(このうちドイツ国内ではHUS781例、非HUSのSTEC感染症が2,447例)が欧州連合の加盟国により報告されました。EU加盟国内では、23人がHUSによって死亡し、1人が非HUSのSTEC感染により死亡しました。下の表をご参照ください。

従来、STEC感染によるHUSは、5歳未満の小児に見られることが多いのですが、今回のアウトブレイクでは、ほとんどの症例は成人のもので、約2/3が女性によるものとなっています。

ほとんどの症例はドイツ北部(主としてSchleswig- HolsteinLower SaxonyNorth-Rhine-WestphaliaHamburg)で発生したものか、当地への渡航歴のある人によるものです。EU/EEA内では、オーストリア、デンマーク、ドイツ、オランダ、ポーランド、スペイン、スウェーデンおよび英国でHUSの症例を報告し、他の5カ国は、非HUSのSTEC症例のみを報告しています。

実験室での試験結果により、血清型O104:H4のSTEC(Stx2陽性、eae陰性、hly陰性、ESBL、aataggRaap)が原因となる病原体であることがわかりました。PFGEを行ったところ、7株のドイツでアウトブレイクしたO104:H4と、2株のデンマークで分離したO104:H4はいずれも同じパターンを示しました。STECとは、志賀毒素を産生する病原性大腸菌の一種であり、ヒトの腸管および全身に重篤な疾患を引き起こすものです。この病気の臨床症状は非常に重篤なものとなる可能性があります。6月13日11:00現在におけるEU/EEA加盟国ごとのHUSおよび非HUSのSTEC症例数ならびに死亡者数を次に示します。

図.EU/EEA加盟国ごとのHUSおよび非HUSのSTEC症例数ならびに死亡者数

6月8日以降、新しい欧州連合の症例定義(Forthに日本語訳を掲載)に従って加盟国が報告を行うようになったことにご注意ください。その結果、フィンランド(症例報告がなくなりました)、フランス、オランダ、スウェーデンおよび英国の5加盟国において、過去の報告と比較すると数値が多少補正されました。

ドイツ保健衛生当局は、ニーダーザクセン州(ドイツ)の特定の生産者に由来する食品が感染を媒介している可能性が高いと述べています。さらに、当局はこのニーダーザクセン州の生産者が生産した全ての食品(芽野菜(bean sprouts)およびその他の野菜類)は市場から全て撤去されることになると発表しました。

ドイツの保健衛生当局は、食品を取り扱うときおよび患者を処置するときには、衛生的な手技を徹底することと生の芽野菜類を食べないようにすることを勧告しています。ドイツ国内の各家庭および食品業界において現在貯蔵している芽野菜類と、これら芽野菜類に接触した可能性のある食品を直ちに廃棄してください。ドイツ北部においてキュウリ、トマトおよびレタスを食べないことを勧める過去にドイツ保健当局が行った勧告には従う必要はなくなりました。勧告の詳しい内容はこちらです(ロベルト・コッホ研究所)。

参考文献