2012年09月10日更新 ギリシャでデング熱に感染する可能性があります

2012年9月7日付の欧州疾病予防管理センター(ECDC)の情報によりますと、8月3日に、ギリシャ西部(アグリニオ)の住民でデング熱に感染した可能性が高い患者が報告されました患者は84歳で、重篤な基礎疾患と敗血症があり、8月30日に死亡しました。その患者には、デング熱の伝播のリスクのある地域への渡航歴はありませんでした。患者は、血清中のデング熱IgM抗体が高値であったため、デング熱に感染した可能性が高い症例に分類されました。また、血清のPCR検査でデング熱NS1抗原が検出されましたが、核酸は検出されませんでした。

デング熱は、デングウイルスによって起こる病気で、ウイルスを持つ蚊に刺されることによって起こる病気です。デングウイルスには、4種類の血清型があります。感染は、ほとんどが熱帯地域で起こっており、毎年、125か国で5千万人から1億人が感染していると推計されています。デングウイルスは、人から人に直接感染することはありません。世界中で、主に、デングウイルスを媒介しているネッタイシマカは、ギリシャに生息していません。二番目に効率的にデングウイルスを媒介するヒトスジシマカは、少なくとも2003年以降、ギリシャ西部に生息しています。現在、患者が住んでいた地域のヒトスジシマカの存在に関する情報はありません。

デング熱はヨーロッパでは稀な病気であり、大部分の患者は熱帯地域で感染した輸入例です。ヨーロッパでのデングウイルスの地域内感染は、非常に稀です。ギリシャでデングウイルスの地域内伝播が最後に記録されたのは、1927年から1928年の集団発生の事例で、ネッタイシマカが関与していました。ヨーロッパでの地域内感染は、2010年にフランスとクロアチアで報告されました。

ギリシャの疾病予防管理センターは、デング熱の地域内伝播の危険性を評価するために重要な情報となる疫学調査や昆虫学的な調査を始めました。調査には、活発な後ろ向き及び前向きの患者発見、症例定義に合う患者の再調査、患者の住んでいた場所から半径200m圏内の中に住んでいる人々の調査が含まれています。地域の臨床医と公衆衛生の専門家には、デング熱の臨床症状と地域内伝播の可能性が伝えられています。個人の防蚊対策についての注意喚起は、ウエストナイルウイルスが伝播しているため、既に行われています。

患者の死亡にデング熱がどの程度影響したのか、完全には明らかにならないかもしれませんが、検査結果は明らかに急性デングウイルス感染を示しています。フランスとクロアチアで地域内伝播の報告に示されるように、感染した渡航者からデングウイルスが持ち込まれ、地域内に伝播することは起こり得ます。昆虫学的な調査によって、地域でのヒトスジシマカの存在に関する更なる証拠がもたらされることが期待されます。また、疫学的調査と血清学的調査によって、デングウイルスが地域住民の間で伝播しているかどうかに関する情報がもたらされることが期待されます。

ギリシャでは、デング熱以外にも、ウエストナイル熱など、蚊に刺されることで感染する病気が発生しています。滞在中は、蚊に刺されないように、以下の点に注意してください。

蚊に刺されないための対策

  • 可能な限り、しっかりと網戸がとりつけられているか、エアコンが備わっている、または、蚊をしっかりと駆除しているホテルやリゾートに滞在してください。蚊取り線香も有効です。
  • 長袖のシャツ、ズボンを着て、できるだけ皮膚の露出部を少なくするようにしてください。
  • 流行地域では屋外にでかける場合や網戸が備わっていない建物にいる場合には、ディート(DEET)などの有効成分が含まれている虫よけ剤を、皮膚の露出部につけてください。使用する場合には、必ず添付文書に記載されている使用法を守ってください。日焼け止めを使う場合は、先に日焼け止めをつけてから、虫よけ剤を使用してください。
  • 子ども、とくに乳児への虫よけ剤の使用については、小児科医にご相談ください。虫よけ剤が使用できない場合、ベビーカーにぴったりと合う蚊帳でベビーカーをおおってください。

心配な場合には早めの受診を

海外で熱などの症状が出たら、できる限り早く医療機関を受診してください。

また、ご帰国の際に、発熱や心配な症状のある方は検疫所の担当者にご相談ください。帰国後に発症した場合や、症状が良くならない場合は、お近くの医療機関または検疫所にご連絡ください。

医療機関を受診する時には、医師に、渡航先や渡航期間、渡航先での活動などについて、詳しく伝えてください。

●感染症情報:デング熱

出典

ECDCEpidemiological update:Possible local transmission of dengue virus in Greece,6September2012
http://www.ecdc.europa.eu/en/press/news/Lists/News/ECDC_DispForm.aspx?List=32e43ee8%2De230%2D4424%2Da783%2D85742124029a&ID=720&RootFolder=%2Fen%2Fpress%2Fnews%2FLists%2FNews