2013年05月20日更新 新種のコロナウイルス感染症について (更新16)

5月18日付で公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、サウジアラビア保健省は、新種のコロナウイルス(nCoV)に感染した確定患者が新たに1人発生したとWHOに報告しました。

この患者は、複数の基礎疾患(持病)のある81歳の女性です。4月28日に発症し、現在は重篤ですが、容態は安定しています。

この患者は、今年4月の初めから医療機関で発生した集団感染の調査が進められている中で確認されました。この患者は、以前に確認された集団感染の発生場所となった医療機関に4月8日から28日まで入院していました。サウジアラビア東部の医療機関に関連したこの集団感染による患者数は、これまでに22人と報告されており、このうち9人が死亡しました。政府は、この集団感染の調査を進めています。

昨年9月以降、これまでに、WHOに報告されたnCoVに感染したと検査で確定された患者は41人で、このうち20人が死亡しました。患者は、中東のヨルダン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦で発生しているほか、ヨーロッパのフランス、ドイツ、英国の3か国でも報告されています。ヨーロッパの患者はいずれも、中東と直接的または間接的な関係がありました。フランスと英国では、中東への渡航歴がなく、最近中東から帰国した渡航者の濃厚接触者に限定的な地域内感染がみられました。

現在の状況と利用可能な情報に基づいて、WHOはすべての加盟国へ、重症急性呼吸器感染症(SARI)のサーベイランスを継続し、通常でないパターンの症例を慎重に検討するよう推奨しています。

医療従事者は、最近、ウイルス感染の発生した地域からの帰国者で、SARIが発生していないか注意深く警戒するよう推奨されます。可能であれば、診断のために患者の下気道からの検体を採取すべきです。また、臨床医は、特に免疫不全患者では、下痢のような非特異的な症状・所見がみられた場合でも、nCoVへの感染を考慮すべきです。

nCoVの感染が疑われる患者に医療を提供する施設では、他の患者や医療従事者、医療機関を訪れる人にウイルスが感染するリスクを減らすために適切な対策を行うべきです。医療機関では、感染予防・制御を総合的に実施する必要性を再認識すべきです。

WHOは、すべての加盟国に対し、nCoVの新たな感染者が発生した際には、考えられる感染源と臨床経過の情報を合わせて、速やかに評価して報告するよう呼びかけています。感染様式を確認するための感染源調査は速やかに実施されるべきで、それにより、ウイルスの更なる伝播を防ぐことができます。

WHOは、この事例に関して入国時の特別なスクリーニングおよび渡航や貿易を制限することを推奨していません。

WHOは引き続き、状況を注視しています。

海外渡航時には、手洗いの励行や動物との接触を避けるなど、一般的な衛生対策を心がけていただくとともに、nCoVの患者が発生している国に滞在した後に、発熱や咳などの呼吸器症状が現れた場合には、検疫所にご相談ください。

出典

WHO(GAR):Novel Coronavirus infection– update
http://www.who.int/csr/don/don_updates/en/index.html

参考

FORTH新着情報
新種のコロナウイルス感染症について (更新15) (2013年5月16日)
https://www.forth.go.jp/topics/2013/05161025.html