2013年05月23日更新 新種のコロナウイルス感染症について (更新17)

5月22日付で公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、チュニジア保健省は、新種のコロナウイルス(nCoV)に感染した確定患者が2人と疑い患者1人が発生したとWHOに報告しました。

この2人の確定患者は、34歳の男性と35歳の女性で姉弟です。2人とも軽い呼吸器症状であり、入院は必要ありませんでした。この症例の遡及調査により、疑い患者が明らかになりました。この姉弟の66歳の父親が、カタールとサウジアラビアを訪問し5月3日に帰国してから3日後に発症しました。この父親は、急性呼吸器症状を発症し入院しました。父親の状態は悪化し、5月10日に死亡しました。父親には基礎疾患があり、初期の臨床検査でnCoVは陰性でした。

この流行のさらなる調査が続けられており、この家族との濃厚接触者は、病気の異常な兆候がないか注意深く観察されています。これらはチュニジアで初めてnCoV感染が確定した症例です。

サウジアラビアでは、今年4月の初めから医療機関で発生した集団感染の調査が進められている中で報告されていた患者1名が死亡しました。サウジアラビア東部での集団感染では、これまでに22人の患者が報告され、このうち10人が死亡したと報告されています。政府は、この集団感染の調査を進めています。

全体として、昨年9月からこれまでに、nCoVの感染が検査で確定されWHOに報告された患者は43人で、このうち21人が死亡しました。中東の複数の国(ヨルダン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦)で感染が起こっています。症例報告は、この他4つの国(フランス、ドイツ、チュニジア、英国)からも出ています。全ての症例において、中東と直接的または間接的な関係があり、このうち2件の症例では、直近でアラブ首長国連邦への渡航歴がありました。フランスと英国では、中東への渡航歴がなく、最近中東から帰国した渡航者の濃厚接触者の中で限定的な地域内感染がみられました。

現在の状況と利用可能な情報に基づいて、WHOはすべての加盟国へ、重症急性呼吸器感染症(SARI)のサーベイランスを継続し、通常でないパターンの症例を慎重に検討するよう推奨しています。

医療従事者は、最近、ウイルス感染の発生した地域から帰国し、SARIを起こした患者には、現在のサーベイランス推奨にあるようnCoVの検査をすべきです。可能であれば、診断のために患者の下気道からの検体を採取すべきです。また、臨床医は、特に免疫不全患者では、下痢のような非特異的な症状・所見がみられた場合でも、nCoVへの感染を考慮すべきです。

医療機関では、感染予防・制御(ICP)を総合的に実施する重要性を再認識すべきです。

nCoVの感染が疑われる患者に医療を提供する施設では、他の患者や医療従事者、医療機関を訪れる人にウイルスが感染するリスクを減らすために適切な対策を行うべきです。

WHOは、すべての加盟国に対し、nCoVの新たな感染者が発生した際には、考えられる感染源と臨床経過の情報を合わせて、速やかに評価して報告するよう呼びかけています。感染様式を確認するための感染源調査は速やかに実施されるべきで、それにより、ウイルスの更なる伝播を防ぐことができます。

WHOは、この事例に関して入国時の特別なスクリーニングおよび渡航や貿易を制限することを推奨していません。

WHOは引き続き、状況を注視しています。

海外渡航時には、手洗いの励行や動物との接触を避けるなど、一般的な衛生対策を心がけていただくとともに、nCoVの患者が発生している国に滞在した後に、発熱や咳などの呼吸器症状が現れた場合には、検疫所にご相談ください。

出典

WHO(GAR):Novel Coronavirus infection– update
http://www.who.int/csr/don/2013_05_22_ncov/en/index.html

参考

FORTH新着情報
新種のコロナウイルス感染症について (更新16) (2013年5月20日)
https://www.forth.go.jp/topics/2013/05201620.html