2013年10月29日更新 中米でのコレラの流行状況について (更新8)

コレラは、コレラ菌によって、下痢や嘔吐が生じる病気です。症状が軽いことも多いですが、重い下痢が起こることがあり、大量の水分が失われ、脱水から死亡することもあります。

10 月26日付で公表された汎米保健機関(PAHO)の情報と10月28日付で公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、キューバ、ドミニカ共和国、ハイチ、メキシコにおけるコレラの発生状況は下記の通りです。

キューバの状況
キューバでは、複数の地域で発見された疑い患者の調査が継続されています。今年8月23日に国際保健規則の担当から報告された情報によりますと、2012年第27週から今年第34週までに、合計678人の患者が発生し、このうち3人が死亡しました。

ドミニカ共和国の状況
ドミニカ共和国では、コレラの流行が始まり(2010年11月)から、今年第41週までに、31,090人の疑い患者が報告され、このうち458人が死亡しました。今年第41週に20人の疑い患者が報告されましたが、死亡者は発生していません。17州では過去2週間に疑い患者の報告はありませんでした。過去4週間における疑い患者の68%は、プエルト・プラタ(Puerto Plata)、サン・フアン(San Juan)、サンティアゴ(Santiago)、サント・ ドミンゴ(Santo Domingo)で発生しました。

今年第1週から第9週までの期間と第32週から第40週までの期間に、患者数が増加しましたが、第41週時点では、疑い患者の報告数は減少傾向にあります。今年の致死率は2.2%で、2011年の致死率(1.7%)と2012年の致死率(0.8%)に比べ、高くなっています。保健当局は調査を行い、対応策を実施しています。

ハイチの状況
ハイチでは、コレラの流行が始まり(2010年10月)から、今年10月17日までに報告されたコレラの患者は合計684,085人に達しており、そのうち380,846人(55.6%)が入院し、8,361人が死亡しました。2011年11月以降、全国の致死率は1.2%ですが、地域によって異なり、南東(Sud Est)県では4.3%であり、ポルトープランス(Port-au-Prince)では0.6%です。10月19日付の更新情報以降、新たに1,512人の患者が発生し、31人が死亡しました。新たな患者はハイチの全10県から報告されました。

メキシコの状況
メキシコの国際保健規則の担当は、今年9月9日から10月25日までに、コレラ菌(Viblio cholerae)O1、血清型Ogawaに感染した確定患者が176人発生したと報告しました。このうち1人が死亡しました。7,000検体以上が検査され、その中から患者が発見されました。

10月12日の更新情報以降、新たに5人の患者が発生しました。そのうち4人はベラクルス(Veracruz)から報告され、1人はサン・ルイス・ポトシ(San Luis Potosi)から報告されました。5人の患者は、都市化が進み、飲用水の確保や基本的な保健衛生サービスが制限されているワステカ(la Huasteca)地域で発生しました。

176人の確定患者のうち、2人(1.1%)は連邦区、157人(89.2%)はイダルゴ(Hidalgo)州、9人(5.1%)はメヒコ(Mexico)州、2人(1.1%)はサン・ルイス・ポトシ州、6人(3.4%)はベラクルスで発生しました。確定患者のうち89人(50.9%)が女性で、87人(49.1%)は男性でした。また、確定患者のうち57人(32.5%)が入院しました。

疫学診断・レファレンス研究施設(Institute of Epidemiological Diagnostics and Reference)で行われたコレラ菌の感受性検査では、ドキシサイクリンとクロラムフェニコールに対しては感受性がありましたが、シプロフロキサシンに対する感受性が低下しており、トリメトプリム・スルファメトキサゾールに対しては耐性を示しました。

メキシコの保健当局は、国レベルで集団発生の調査とサーベイランスの強化、医療へのアクセスと医療の質の確保を継続しています。様々なレベルの医療システムで保健の専門家がコレラの予防・治療・制御に関するトレーニングを受けています。地域レベルでの飲用水の確保と基本的な衛生対策が実施されています。特に、水と食品の安全に関する市民への啓発活動は、スペイン語のほか、先住民族の言語でも行われています。

メキシコにおけるコレラの地域内感染は、1991年から2001年の間に発生したコレラの流行以来、初めてのことです。メキシコの患者から分離された系統の遺伝子学的な特徴は、カリブ海の3か国(ハイチ、ドミニカ共和国、キューバ)で流行している系統と高い相同性(95%)がみられ、1991年から2001年の間にメキシコで流行した系統とは異なっています。

PAHOと世界保健機関(WHO)は、メキシコのこの事例に関して渡航や貿易を制限することを推奨していません。中米へ渡航、滞在される方は、今後の情報に注意していただくとともに、以下の対策を行ってください。

  • 飲料水や歯みがき、うがいの水にはミネラルウォーターを使うか、十分に沸騰させた水を使うこと。氷は生水から作られている可能性があるので食べないこと。
  • 食事は加熱されたものを、冷めないうちに食べること。
  • 食事の前、トイレの後には石けんと水で十分に手洗いすること。
  • 下痢になった場合、以下の作り方で作った水を十分にとり、できるだけ早く医療機関で診療を受けること。

図.吸収のよい水の作り方

感染症情報食べ物・水にご注意を!コレラ

出典

PAHOEpidemiological UpdateCholera 26 October 2013
http://www.paho.org/hq/index.php?option=com_docman&task=doc_view&gid=23431&Itemid=

WHOGlobal Alert and Response(GAR) :Cholera in Mexico– update
http://www.who.int/csr/don/2013_10_28/en/index.html

参考

FORTH 新着情報
中米でのコレラの流行状況について (更新7) (2013年10月21日)
https://www.forth.go.jp/topics/2013/10211024.html