2015年11月27日更新 ラオスでワクチン由来のポリオが発生しています(更新)

2015年11月26日付で公表されたWHOの情報によりますと、ラオスから新たにワクチン由来のポリオウイルス1型(VDPV1)患者2人が報告されました。これで、この集団発生における患者数は3人となりました。

11月6日から8日の間に、ラオスの国際保健規約(IHR)国家担当者はワクチン由来のポリオウイルス1型患者2人が確定診断されたことをWHOに報告しました。また、伝播しているVDPV1は、12人の健康な接触者の糞便からも確認されました。これらすべての接触者は同じ村、Bolikhan地域[Bolikhamxay(ボリカムサイ)県]に住んでいます。

症例の詳細情報

追加報告された1人目の患者は15歳の男性です。彼は最初に確認されたワクチン由来のポリオウイルス1型(VDPV1)患者と同じ村に住んでいます。彼は、経口ポリオワクチン(OPV)の接種歴がありませんでした。この15歳のVDPV1患者から分離した株とSabin株の1型との間には遺伝子配列に2.6%の違いが検出されましたが、3人の濃厚接触者が伝播しているVDPV1(cVDPV1)に対して陽性であったことから、15歳の患者もcVDPV1として分類されました。

2人目の患者は、4歳の男児です。9月28日に発熱で発症し、9月29日に下肢の脱力を起こしました。患者は、10月1日にボリカムサイ県立病院の集中治療室に入院しましたが、10月2日に糞便検体を採取する間もなく亡くなりました。10月19日にボリカムサイ県立病院で行われたレトロスペクティブの症例検討会で急性弛緩性麻痺患者に分類されました。彼には経口ポリオワクチンの接種歴がありませんでした。10月20日と21日には、家族接触者および隣人家族での接触者を含めた彼との接触者4人から糞便検体が集められました。11月6日に、これら接触者のうち3人からcVDPV1に陽性の検査結果を得ました。 WHOの診断基準にしたがって、4歳の急性弛緩性麻痺患者はcVDPV1患者として確定され分類されました。

国際保健規約(IHR)国家担当者も最初に確認されたcVDPV1患者(10月10日発表)の接触者について調査した更新情報を提出しました。接触者の糞便検体が採取され、このうちの6人でcVDPV1が分離されました。

この集団発生の以前より、Bolikhan地域は恒常的に予防接種率が低く、2009年から2014年における幼児への3回の経口ポリオワクチン接種率は40%から66%と報告されています。ラオスでは常在した野生型ウイルスの患者が1993年まで報告されていました。

公衆衛生上の取り組み

ラオスで最初のcVDPV1確定患者が発見されて以降、集団発生への対策の取り組み活動が感染の影響を受けたボリカムサイと近隣のXaisounbounとXiengkhuangの3県で行われています。国の緊急対策本部が、取り組み活動を調整するために設置されており、ポリオの集団発生への取り組み計画が策定されました。強化された調査活動が、毎日の急性弛緩性麻痺患者がゼロであることの報告を含めて全国で展開されています。積極的な患者の発見活動が、病院や医療施設の記録を遡って検討することを含めて3県で続けられています。

2015年10月から2016年3月にかけて、三価のOPVワクチンを使った6回の接種活動が2か国と国に次ぐ規模の4つの地域で計画されています。ここでは860万回分のワクチンが15歳未満の小児に投与されます。この年齢幅は、患者とその接触者の年齢分布によって決定されました。最初のOPVワクチンによる補完的な予防接種活動(SIA)はボリカムサイ、Xaisounboun、Xiengkhuangの各県で実施され10月に完了しました。接種機会を逃した子どもがいる地域を確認し、接種機会を逃した子どもをなくす計画を立てるために、10月のOPVの補完的な予防接種活動のモニタリングが行われています。次回の活動期間でも、新たな接種機会を必要とする村を発見することが続ける計画になっています。個々に独立した活動調査員が、活動の質を評価するために集められました。

補完的な予防接種活動を確実に成功させるために、予防接種に対する信頼を構築し障害について呼びかける活動調査員の研修および説明会を含めて、緊急のリスク情報の伝達と地域の動員活動が実施されています。鍵となるメッセージがラジオや拡声器に合わせて作成され、患者が発見された地域に狙いを定めて伝えられています。

WHOのリスク評価

ワクチン由来のポリオウイルスの流行は、稀ではありますが、経口ポリオワクチンの遺伝子から変異したポリオウイルスの遺伝子株で時に報告されます。これらは、予防接種が不十分ないくつかの集団では発生することがあります。

永久にポリオを終結させるためには、野生型とワクチン由来、両方のポリオを撲滅する必要があります。ワクチン由来のポリオウイルスにリスクがあるために、永続的にポリオのない世界を確保するためには経口ポリオウイルスは使用を停止していかなければなりません。経口ポリオウイルスワクチンは、経口ポリオワクチンの2型の除去に始まり、段階的に取り除かれていっています。2016年4月に予定されている経口ポリオワクチンの3価から2価への切り替えは実質的なワクチン由来のポリオウイルスのリスクの軽減となります(ワクチン由来のポリオウイルスの90%が2型を原因とするため)。最終的には、全ての経口ポリオワクチンの使用を停止し、ワクチン由来のポリオウイルスを引き起こすことのない不活化ワクチンへ移行する段階が設定されています。

相対的にこの地域で出入りする人々は限定されており、ワクチンの予防接種活動が計画されていることから、WHOはラオスからワクチン由来のポリオウイルス1型(cVDPV1)が国際的に拡大する危険性は低いと評価しています。

WHOからのアドバイス

すべての国、特に、頻繁にポリオ発生の影響を受けた国や地域を旅行したり接触を持ったりする人のいる国では、新たないかなるウイルスの感染輸入をも速やかに検出し、迅速に対策しやすくするために、急性弛緩性麻痺(AFP)患者のサーベイランスを強化することが重要です。加えて、国、領土および地域はいかなるウイルスの新たな侵入の影響も最小限にとどめるために、地域レベルで一様に定期予防接種の高い接種率を維持することが必要です。

WHO海外旅行および健康情報では、ポリオ発生の影響を受けた地域に旅行するすべての者に対して十分にポリオの予防接種を受けることを勧めています。感染地域からの住民および4週間以上の滞在者は、その出発に先立つこと4週から12か月の間に、経口ポリオワクチンまたは不活化ポリオワクチンの追加接種を受けることが必要です。

感染症情報

ポリオ(急性灰白髄炎)

出典

WHO. Disease outbreak news. Circulating vaccine-derived poliovirus - Lao People's Democratic Republic. 26 November 2015.
http://www.who.int/csr/don/26-november-2015-polio/en/