2016年02月16日更新 黄熱の発生 -アンゴラ

野口英世が研究していた病気としても知られる黄熱は、蚊によって伝播します。発症すると、発熱、頭痛、筋肉痛、嘔吐などの症状が現れ、皮膚が黄色くなったり、出血しやすくなったりします。死に至ることも多い病気です。黄熱の感染拡大を防ぐには、予防接種が最も重要な方法です。特別な治療法はなく、脱水や発熱などの症状を和らげる治療が行われます。

2月12日付けで公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、1月21日にアンゴラの国際保健規約(IHR)国家担当者は黄熱の集団発生をWHOに報告しました。

報告の詳細

最初の患者は、2015年12月5日にLuanda(ルアンダ州)Vianaで確認されました。黄熱への感染は、南アフリカ共和国ヨハネスブルグにある国立の人獣共通感染症および新興感染症病・研究施設でポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)検査によって、患者3人から確認されました。また、セネガル・ダカールのパスツール研究所でも確認されました。

2月8日までに、アンゴラでは疑い患者164人と死亡者37人が報告されました。ほとんどの患者(138人)は、ルアンダ州から報告されました。他に感染の影響を受けた地域は、Cabinda(カビンダ)、Cuanza Sul(クアン・ザ・スル)、Huambo(ウアンボ)、Huila(ウイラ)、 Uige(ウイジェ)の各州です。その他の病因と黄熱と交差反応を示す病気を除外するために、黄熱が疑われた患者には検査施設で確認検査が行われています。

公衆衛生上の取り組み

集団感染の発生を制御するために、国家対策会議が設置されました。アンゴラの保健当局は、組織連携、臨床上の患者管理、調査活動の強化、施設での診断検査、地域での動員活動、媒介昆虫の制御など数多くの感染対策への取り組み活動を実施しています。主な流行地では、疫学と昆虫学の調査が進行中です。2月3日には、ルアンダ州で第1回目の予防接種キャンペーンの実施が始まりました。

WHOは、取り組み活動を支援するために専門家3名を現地に送りました。財政的な支援に加えて、感染対策の質を向上させるために、共通となる技術的な指示書やいくつものガイドラインが国内の関係者に配布されました。

2月2日には、ルアンダ州で予防接種キャンペーンが動き始めています。このキャンペーンでは、Vianaの住民1,578,085人が対象となります。

WHOのリスク評価

感染の影響を受けたルアンダ州の地域には、黄熱の主要な媒介蚊であるネッタイシマカが高い密度で棲息しています。そのため、感染の影響を受けていない地域にも感染が広がる高い危険性があります。この危険性は、免疫をもつ集団が2008年以降に黄熱に対するワクチン接種を受け、国際予防接種カード(イエローカード)をもつ市民とその子どもたちに限られるため、感染しやすい人が多くいる住民地域ではさらに悪化します。WHOは疫学状況を常に監視し、リスクアセスメントを行っています。WHOは、利用できる現在の情報に基づく限り、アンゴラへの旅行や貿易の制限を推奨してはいません。

背景

黄熱は、ウイルスを持った蚊によって伝播される急性ウイルス性出血性疾患です。もし治療をしなければ、深刻なことに、感染した人の50%までが黄熱で死亡します。毎年、世界で報告される黄熱患者は推定で13万人とされ、毎年44,000人を死に至らしめており、その90%がアフリカで発生しています。黄熱に対する特定の治療法はありません。治療は、患者の快適環境を保ち、症状を緩和することを目的として、症状に対して行われます。ワクチン接種は、黄熱に対する最も重要な予防対策です。2015年の下半期以降、黄熱ウイルスの伝播はマリとガーナで報告されています。

蚊に刺されないための対策

  • 可能な限り、しっかりと網戸が取り付けられているか、エアコンが設置されている、または、蚊をしっかりと駆除しているホテルやリゾート施設を選んで滞在してください。
  • 長袖のシャツ、ズボンを着て、できるだけ皮膚の露出部を少なくするようにしてください。
  • 流行地域では、屋外にでかける場合や網戸が取り付けられていない建物にいる場合には、ディート(DEET)などの有効成分が含まれている虫よけ剤を皮膚の露出部につけてください。使用する場合には、必ず添付文書に記載されている使用法を守ってください。日焼け止めを使う場合は、先に日焼け止めをつけてから、虫よけ剤を使用してください。
  • 子ども、とくに乳児への虫よけ剤の使用については、小児科医にご相談ください。虫よけ剤が使用できない場合、ベビーカーにぴったりと合う蚊帳でベビーカーを被うように注意してください。

心配な場合には早めの受診を

  • 海外で発熱などの症状が出たら、できる限り早く医療機関を受診してください。
  • また、ご帰国の際に、発熱や心配な症状のある方は検疫所の担当官にご相談ください。帰国後に発症した場合や症状が改善しない場合、受診の前に、お近くの保健所か医療機関または検疫所にご連絡ください。
  • 医療機関を受診する時には、医師に、渡航先や渡航期間、渡航先での活動などについて、詳しく伝えてください。

FORTH感染症情報

出典

WHO.Emergencies preparedness, response. 12February2016
Yellow Fever- Angola
http://www.who.int/csr/don/12-february-2016-yellow-fever-angola/en/