2016年03月23日更新 黄熱の発生 -アンゴラ(更新)

野口英世が研究していた病気としても知られる黄熱は、蚊に媒介されて伝播します。発症すると、発熱、頭痛、筋肉痛、嘔吐などの症状が現れ、皮膚が黄色くなったり、出血しやすくなったりします。死に至ることも多い病気です。黄熱の感染拡大を防ぐためには、予防接種が最も重要な方法です。特別な治療法はなく、脱水や発熱などの症状を和らげる治療が行われます。

3月22日付けで公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、3月21日にアンゴラ保健省は、現在、感染の集団発生が続いている黄熱についての更新情報を提出しました。この黄熱の流行は、Luanda(ルアンダ州)Viana自治区で2015年12月5日に始まりました。

報告の詳細

3月21日現在、国内18州のうち16州から黄熱の疑似患者が報告されています。これらの州のうち13州は、ルアンダ州から持ち込まれた患者と報告されています。黄熱の国内感染はHuambo(ウアンボ州)にある11地区のうち2地区で記録されました。他州では、ルアンダ州と疫学的に関連性のない国内感染の疑似患者が報告されています。これらの患者への調査が続けられており、後日、調査結果が判明する予定です。

これまでに、国内で、少なくとも死亡者168人を含む1,132人の疑似患者および確定患者が報告されました。このうち確定患者は、375人でした。流行の震源であるルアンダ州が、死亡者129人を含む患者818人(確定患者281人)が発生した感染の中心をなっています。しかし、ルアンダ州以外から報告された患者数が、明らかに増加しています。

公衆衛生上の取り組み

国家対策会議が設置され、感染の集団発生への取り組みを主導しています。WHOは取り組みへの計画の整備を支援しています。2月12日に、WHOは、緊急対応フレームワーク(ERF)にしたがって、この流行を「グレード2の緊急事態」と宣言しました。それ以降、 WHOの学術専門家65人が、この国に高度なレベルでの技術支援を提供するために配備されました。

2月2日にViana自治区で始まったルアンダ州の予防接種キャンペーンは、現在も進行中で、これまでに12の対象となる自治体のうち6自治体で実施されてきました。3つの自治体では、90%以上の高い摂取率が報告されていますが、残る自治体も、おそらくはルアンダ州の他の自治体や他州から来る人々によって、Vianaでは136%、Belaでは113%とさらに高い接種率が報告されています。

調査活動と新たな感染地の調査が継続されるとともに、地域での社会活動の動員も続けられています。これまでは、媒介蚊の駆除活動は、主に蚊の繁殖地の制御に向けられてきました。

WHOのリスク評価

アンゴラでの発生状況の悪化が懸念され、アフリカ大陸全体を緊密に監視する必要があります。一部での報告される確定患者数の大幅な増加は、滞っていた検査結果に起因している可能性があります。しかし、最近確認されている患者の発症日の日付は、現在もルアンダ州での感染伝播が活発であることを示しています。主に予防接種されていない地区や、おそらくは他の州で活発となっています。特に国境地域では、調査活動が適切に報告されておらず、高い疑似患者の数も除外することができません。

特に懸念されることは、既に報告されてきている黄熱が国境を越えて国際的に拡大するリスクです。最近、中国、ケニア、コンゴ民主共和国に患者が感染輸出されているという噂があります。WHOは、入手できる最新の情報に基づいて、疫学的な発生状況と行動リスクの評価を継続的に監視しています。感染輸入された患者は、感染の集団発生を表すものではないことは理解しておくことが重要です。流行の脅威は存在しますが、これは危険因子(感受性のある媒介昆虫および感染の影響を受けやすい人の集団)が存在しないときには、低いと考えられます。

WHOからのアドバイス

WHOは、加盟国、特に地域において蚊が感染伝播するサイクルの確立が可能な場所(即ち、媒介能力をもつ蚊であるネッタイシマカが生息する場所)をもつ国は、潜在的に流行が常在する地域を渡航する者に対して、予防接種の接種状況の管理を強化することを促しています。

アンゴラでの活発な黄熱の流行状況と関連して、アンゴラやその他の潜在する流行地域から帰国する渡航者にも、特別な注意が払われる必要があります。渡航者、特にアフリカやラテンアメリカからアジアに到着する渡航者は、黄熱の予防接種証明書を所持している必要があります。国際保健規則では、医療上の理由でワクチン接種を行っていない場合には、これが正式に認められた行政機関によって認定されていなければならないと述べられています。

WHOは、入手可能な情報に基づく限り、この流行発生においてアンゴラへの渡航にも貿易にも制限を推奨していません。蚊に刺されることを避けるために、感染流行地域に行く前に個々人がワクチンを接種するだけでなく、蚊に刺されることへの対策を行うことが、黄熱の予防には重要です。

蚊に刺されないための対策

  • 可能な限り、しっかりと網戸が取り付けられているか、エアコンが設置されている、または、蚊をしっかりと駆除しているホテルやリゾート施設を選んで滞在してください。
  • 長袖のシャツ、ズボンを着て、できるだけ皮膚の露出部を少なくするようにしてください。
  • 流行地域では、屋外にでかける場合や網戸が取り付けられていない建物にいる場合には、ディート(DEET)などの有効成分が含まれている虫よけ剤を皮膚の露出部につけてください。使用する場合には、必ず添付文書に記載されている使用法を守ってください。日焼け止めを使う場合は、先に日焼け止めをつけてから、虫よけ剤を使用してください。
  • 子ども、とくに乳児への虫よけ剤の使用については、小児科医にご相談ください。虫よけ剤が使用できない場合、ベビーカーにぴったりと合う蚊帳でベビーカーを被うように注意してください。

心配な場合には早めの受診を

  • 海外で発熱などの症状が出たら、できる限り早く医療機関を受診してください。
  • また、ご帰国の際に、発熱や心配な症状のある方は検疫所の担当官にご相談ください。帰国後に発症した場合や症状が改善しない場合、受診の前に、お近くの保健所か医療機関または検疫所にご連絡ください。
  • 医療機関を受診する時には、医師に、渡航先や渡航期間、渡航先での活動などについて、詳しく伝えてください。

FORTH感染症情報

出典

WHO.Emergencies preparedness, response. 22 March 2016
Yellow Fever- Angola
http://www.who.int/csr/don/22-march-2016-yellow-fever-angola/en/