2016年04月07日更新 黄熱の発生 -中国 (更新)
野口英世が研究していた病気としても知られる黄熱は、蚊に媒介されて伝播します。発症すると、発熱、頭痛、筋肉痛、嘔吐などの症状が現れ、皮膚が黄色くなったり、出血しやすくなったりします。死に至ることも多い病気です。黄熱の感染拡大を防ぐためには、予防接種が最も重要な方法です。特別な治療法はなく、脱水や発熱などの症状を和らげる治療が行われます。
2016年4月6日付けで公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、中国の国際保健規則(IHR)国家担当者は、3月18日から4月1日迄に新たに黄熱患者8人をWHOに報告しました。
報告の詳細
最近、複数の患者が、アンゴラから中国に帰国しました。彼らは、元々は3つの省(福建省で6人、江蘇省で1人、四川省で1人)で暮らしています。患者の中央値は44歳(年齢幅は36-53歳)、患者の多くは男性(5人、62.5%)でした。症状の発症日は3月5日から17日の間です。患者8人のうち5人で、ワクチン接種状態の情報が分かっています。アンゴラに行く前に黄熱に対するワクチンを受けていた者はいませんでした。患者1人はアンゴラでワクチンを受けましたが、症状を発症する4日前でした。ワクチンから免疫が産生される前に感染してしまったようです。
これまでに、アンゴラから中国に感染輸入され、確定診断された黄熱患者9人が、中国から報告されています。
公衆衛生上の取り組み
中国政府は、以下のような対策を行っています。
- 多岐に亘る部局間での連携とその調整の強化
- 患者調査活動、媒介蚊の監視活動、リスク評価の強化
- 黄熱患者の治療管理の強化
- 媒介する蚊の駆除活動の実施
- 住民へのリスク情報の伝達活動の実施
- ワクチン未接種の中国人に対し黄熱ワクチンを提供するためのアンゴラへの医療チームの派遣
WHOのリスク評価
この病気に対する予防接種が必須とされる国から帰国したワクチン未接種の渡航者で、黄熱が発生したことの報告は、国際保健規則(2005)に則り、予防接種を入国の必要条件とすることの強化が必要であることを強調しています。また、この報告は、ワクチン未接種の渡航者を通じて黄熱が国際的に広がるリスクがあることも強調しています。しかし、現在の気象条件は媒介能力をもつネッタイシマカが好む条件ではないため、中国での感染伝播の地域サイクルが確立されるリスクは低い状態です。WHOは、利用可能な最新の情報に基づいて、疫学的な発生状況を監視しリスク評価を行っています。
WHOからのアドバイス
WHOは、加盟国、特に、自国内での感染伝播のサイクルが確立する可能性のある(即ち、媒介能力をもつネッタイシマカが生息する)国では、流行が潜在する地域へ旅行する者に対して予防接種の有無を管理することの強化を勧めています。
WHOは、現在利用できる情報に基づく限り、中国への旅行と貿易への制限を推奨してはいません。
蚊に刺されないための対策
- 可能な限り、しっかりと網戸が取り付けられているか、エアコンが設置されている、または、蚊をしっかりと駆除しているホテルやリゾート施設を選んで滞在してください。
- 長袖のシャツ、ズボンを着て、できるだけ皮膚の露出部を少なくするようにしてください。
- 流行地域では、屋外にでかける場合や網戸が取り付けられていない建物にいる場合には、ディート(DEET)などの有効成分が含まれている虫よけ剤を皮膚の露出部につけてください。使用する場合には、必ず添付文書に記載されている使用法を守ってください。日焼け止めを使う場合は、先に日焼け止めをつけてから、虫よけ剤を使用してください。
- 子ども、とくに乳児への虫よけ剤の使用については、小児科医にご相談ください。虫よけ剤が使用できない場合、ベビーカーにぴったりと合う蚊帳でベビーカーを被うように注意してください。
心配な場合には早めの受診を
- 海外で発熱などの症状が出たら、できる限り早く医療機関を受診してください。
- また、ご帰国の際に、発熱や心配な症状のある方は検疫所の担当官にご相談ください。帰国後に発症した場合や症状が改善しない場合、受診の前に、お近くの保健所か医療機関または検疫所にご連絡ください。
- 医療機関を受診する時には、医師に、渡航先や渡航期間、渡航先での活動などについて、詳しく伝えてください。
FORTH感染症情報
出典
WHO.Disease Outbreak News, Emergencies preparedness, response. 6 April 2016
Yellow Fever- China
http://www.who.int/csr/don/6-april-2016-yellow-fever-china/en/