2016年04月13日更新 黄熱の発生 -コンゴ民主共和国

2016年4月11日付けで公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、3月22日に、コンゴ民主共和国(DRC)の国際保健規則(IHR)国家担当者は、現在、アンゴラで発生している感染の流行に伴い複数の黄熱が発生したことをWHOに報告しました。

報告の詳細

2016年1月初めから3月22日までに、死亡者21人を含めて、合計で151人の黄熱疑いの患者が国内調査システムによって報告されました。黄熱疑いの患者151人のうち、9人がキンシャサにある国立生体医学研究所(INRB)における血清検査(IgM)によって確認されました。他のアルボウイルスとの交差反応の可能性があるため、IgM抗体陽性の検体はダカール・パスツール研究所に送られました。そこで、4検体の陽性が判明しました。ダカールで確認された4検体のうち、3検体はアンゴラから感染輸入され、DRCコンゴ中央部(旧Bas-Congo)のNsona-Pangu州、Kimpese州、Kitana州で発見されました。この地域は、アンゴラと国境を接しています。

公衆衛生における取り組み

DRC保健省は、この事態に対し流行を制御するための国家対策委員会を立ち上げました。活動としては、関係機関の調整体制の確立、地域への活動員の動員、地域社会の組み入れ、医療従事者の訓練を通した調査活動の強化、患者の診断定義の普及、入国地点でのスクリーニング検査と衛生管理、避難民のワクチン接種状況の確認などが行われています。その他の活動としては、アンゴラに旅行するすべての人の予防接種、媒介する蚊の駆除、患者管理に焦点が当てられています。

WHOと関係組織からの支援を受けて、DRCはアンゴラから感染輸入された患者への可能な対策の準備を国家レベルで向上させるために不測の事態への対応計画を作成しています。患者の綿密な調査を組織し、対策としての予防接種計画の準備を強化するために、コンゴの中枢にある国の学際チームの野外調査が計画されています。

WHOのリスク評価

DRCは黄熱が常在することで知られる地図上の地域にあり、国内での感染患者が定期的に報告されています。2016年1月以降も、国内感染とみられる疑い患者がBas-Uele、 Equateur、Kasai central、Tshuapaの各州で記録されました。

しかしながら、アンゴラから帰国した渡航者における黄熱の感染報告は、この病気が国際的に拡がるリスクがあることを強調しています。現段階で利用可能な情報からみる限り、DRC国内での感染サイクルの確立は示唆されません。それでも、有力な媒介昆虫であるネッタイシマカの存在、感染が広まりやすい密度の高い人々の集積、アンゴラとを行き来する大量の人の動きなどは、DRCでこの病気がさらに拡がることの重大なリスクとなっています。

WHOは、利用可能な最新の情報に基づいて、疫学的な発生状況を監視しリスク評価を行っています。

WHOからのアドバイス

WHOは、加盟国、特に地域において蚊が感染伝播するサイクルの確立が可能な場所(即ち、媒介能力をもつ蚊であるネッタイシマカが生息する場所)をもつ国は、潜在的に流行が常在する地域を渡航する者に対して、予防接種の接種状況の管理を強化することを促しています。

WHOは、入手可能な情報に基づく限り、この流行発生においてコンゴ民主共和国への渡航にも貿易にも制限を推奨していません。

蚊に刺されないための対策

  • 可能な限り、しっかりと網戸が取り付けられているか、エアコンが設置されている、または、蚊をしっかりと駆除しているホテルやリゾート施設を選んで滞在してください。
  • 長袖のシャツ、ズボンを着て、できるだけ皮膚の露出部を少なくするようにしてください。
  • 流行地域では、屋外にでかける場合や網戸が取り付けられていない建物にいる場合には、ディート(DEET)などの有効成分が含まれている虫よけ剤を皮膚の露出部につけてください。使用する場合には、必ず添付文書に記載されている使用法を守ってください。日焼け止めを使う場合は、先に日焼け止めをつけてから、虫よけ剤を使用してください。
  • 子ども、とくに乳児への虫よけ剤の使用については、小児科医にご相談ください。虫よけ剤が使用できない場合、ベビーカーにぴったりと合う蚊帳でベビーカーを被うように注意してください。

心配な場合には早めの受診を

  • 海外で発熱などの症状が出たら、できる限り早く医療機関を受診してください。
  • また、ご帰国の際に、発熱や心配な症状のある方は検疫所の担当官にご相談ください。帰国後に発症した場合や症状が改善しない場合、受診の前に、お近くの保健所か医療機関または検疫所にご連絡ください。
  • 医療機関を受診する時には、医師に、渡航先や渡航期間、渡航先での活動などについて、詳しく伝えてください。

FORTH感染症情報

出典

WHO.Disease Outbreak News, Emergencies preparedness, response. 11 April 2016
Yellow Fever-Democratic Republic of the Congo
http://www.who.int/csr/don/11-april-2016-yellow-fever-drc/en/