2016年04月14日更新 黄熱の発生 -アンゴラ(更新2)

1月21日にアンゴラの国際保健規約(IHR)国家担当者は黄熱の集団発生をWHOに報告しました。2015年12月5日に発症した最初の患者は、Luanda(ルアンダ州)Vianaで確認されました。(その後の更新情報です。)

報告の詳細

2016年4月7日現在、死亡者238人(致死率13.9%)を含む1,708人が、国内18州のうちの16州から報告されました。(このうち)ルアンダ州が最も感染の影響を受けており、患者は死亡者165人(致死率14.5%)を含む1,135人となっています。この他で最も感染の影響を受けている州は、Huambo (ウアンボ州:疑い患者266人、死亡者37人)、Huila (ウイラ州::疑い患者95人、死亡者16人)、Benguela (ベンゲラ州:疑い患者51人、死亡者0人)となっています。4月6日から7日にかけて、新たに死亡者4人を含む30人の疑い患者が、全国から報告されました。このうちルアンダ州からは、死亡者2人を含む19人の疑い患者が報告されました。

患者581人が、12州59地区で検査確認されました。流行の震源地であるルアンダ州が、確認された患者(405人)の70%を占めています。その他に確認された患者数の多い州は、ウアンボ州(73人)、ウイラ州(27人)、ベンゲラ(22人)とKuanza Sul(クアンザ・スル州:11人)でした。4月6日から7日にかけて、新たに30人の確定患者が、ルアンダ州(19人)、ウアンボ州(4人)、クアンザ・スル州(2人)、Cunene (クネネ州:2人)、 Bengo (ベンゴ州:1人)、Lunda Norte(ルンダ・ノルテ州:1人)、Uige (ウイジェ州:1人)から報告されました。ルアンダ州よりも他州で検査確認される患者数の方が多い状況が続いています。他州と近隣諸国への拡大の危険が非常に高くなっています。

この病気の感染は、もはやルアンダ州に限られてはいません。2016年4月7日の時点で、国の最終診断分類委員会が5つの州(ベンゲラ、クアンザ・スル、ウアンボ、ウイラ、ウイジェの各州)と10地区に上る地域で地域内感染の伝播を確認していました。

また、既にこの病気の国外への広がりが報告されています。現実に、黄熱の感染輸入患者が、最近、中国、ケニア、コンゴ民主共和国(DRC)で確認されています(4月6日および11日の同記事で公表)​​。

公衆衛生上の取り組み

アンゴラの政府によって設置された国家対策会議が、この流行への対応策を主導しています。3月29日に、WHOは緊急対策フレームワーク(ERF)の評価尺度を緊急性レベル2度から緊急性レベル3度に引き揚げました。WHOと各加盟国は、ユニセフ、米国疾病対策センター(CDC)、国境なき医師団(MSF)、世界の医療団(Medicos del Mundo)とともに、対策を取り仕切ることへの支援を行っています。WHO学術専門家65人が、患者発生の管理者としてWHOで任命された後、この国への高度な技術支援を行うために配備されました。

4月3日から6日にかけて、WHO事務局長およびWHOアフリカ地域事務局(AFRO)の健康安全および流行緊急事態を担当する局長が、現在行われている対策を評価し、ハイレベルでの対策主導を支援するために、アンゴラを訪問ました。代表団は、保健省やその他の省庁の大臣、アンゴラ共和国大統領閣下と会談しました。2016年5月15日までに流行を終息させるための必要な措置をとることが決定されました。

調査活動を強化するための介入が続けられています。これらの介入には、疫学調査、データ管理、早期発見と患者確認、並びに設置された診断分類委員会による最終診断の分類などがあります。キューバから来た学術専門家が、媒介昆虫の制御に対する訓練を受けた技術専門家を携えてこの国を技術支援しています。

2月2日にViana行政地区で開始されたルアンダ州の予防接種キャンペーンは、12地区のうち7地区で完了し、残り5地区で現在も進行中です。4月7日時点で、合計でルアンダ州の5,892,901人(90%)にワクチンが接種されました。ウアンボ州の2地区とベンゲラ州の3地区でも、今後の黄熱予防接種キャンペーンのための準備が開始されました。4月7日には、ワクチン供給に関する国際協同体(The International Coordinating Group: ICG)が190万回分のワクチンを搬出しました。地域への動員活動が強化されています。ルアンダ州のすべての地区における脆弱な地域に特別に焦点を当て、国民の意識を高め、予防接種を人々に促すために、ラジオ、テレビなどのメディアが駆使されています。

国連中央緊急対策基金(CERF)は、ワクチンの購入を支援するために3万ドルの拠出を承認しました。また、アンゴラ政府はルアンダ州のために既に受け取っているワクチン費用の50%の支払いに加えて、黄熱ワクチン購入のために15万米ドルを承認しました。

現在の課題には、対応しているワクチン接種を完了するために必要となるワクチン(の確保)、国内および近隣諸国へ流行が地理的に広がることの感染制御があります。また、他州での対策活動を向上させるためには、複数の活動基金と、適切かつ十分な媒介昆虫駆除への介入が必要です。近隣諸国で緊密に状況を観察する準備対策には、確実に如何なる感染輸入される患者も早期に発見し管理することが必要とされます。

WHOのリスク評価

アンゴラでの発生状況の悪化が懸念され、緊密に(感染状況を)監視する必要があります。中国、コンゴ民主共和国、ケニアで患者が感染輸入されたことの報告は、この流行が、世界全体において脅威となる潜在性をもっていることを示しています。アンゴラに存在するたくさんの国際的な地域集団があることや、近隣と海外の多くの国との間で渡航の活動が頻繁となっていることを踏まえると、この病気がさらに拡がることのリスクが存在します。

また、媒介蚊(ネッタイシマカ)が生息するすべての国、特に、デング熱、チクングニア、ジカウイルス及びその他のアルボウイルスが風土病となっている、もしくは以前に大流行を起こしたことのある国は、このリスクに曝されています。したがって、アンゴラにおける対策の質を高め、近隣諸国とアンゴラ人の国外居住地域をもつ国でも準備活動を強化する必要があります。WHOは、入手できる最新の情報に基づいて、疫学的な発生状況と行動リスクの評価を継続的に監視しています。

WHOからのアドバイス

WHOは、加盟国、特に地域において蚊が感染伝播するサイクルの確立が可能な場所(即ち、媒介能力をもつ蚊であるネッタイシマカが生息する場所)をもつ国は、潜在的に流行が常在する地域を渡航する者に対して、予防接種の接種状況の管理を強化することを促しています。

アンゴラでの活発な黄熱の流行状況と関連して、アンゴラやその他の潜在する流行地域から帰国する渡航者にも、特別な注意が払われる必要があります。渡航者、特にアフリカやラテンアメリカからアジアに到着する渡航者は、黄熱の予防接種証明書を所持している必要があります。国際保健規則(2005)では、医療上の理由でワクチン接種を行っていない場合には、これが正式に認められた行政機関によって認定されていなければならないと記されています。

WHOは、入手可能な情報に基づく限り、この流行発生においてアンゴラへの渡航にも貿易にも制限を推奨していません。

蚊に刺されないための対策

  • 可能な限り、しっかりと網戸が取り付けられているか、エアコンが設置されている、または、蚊をしっかりと駆除しているホテルやリゾート施設を選んで滞在してください。
  • 長袖のシャツ、ズボンを着て、できるだけ皮膚の露出部を少なくするようにしてください。
  • 流行地域では、屋外にでかける場合や網戸が取り付けられていない建物にいる場合には、ディート(DEET)などの有効成分が含まれている虫よけ剤を皮膚の露出部につけてください。使用する場合には、必ず添付文書に記載されている使用法を守ってください。日焼け止めを使う場合は、先に日焼け止めをつけてから、虫よけ剤を使用してください。
  • 子ども、とくに乳児への虫よけ剤の使用については、小児科医にご相談ください。虫よけ剤が使用できない場合、ベビーカーにぴったりと合う蚊帳でベビーカーを被うように注意してください。

心配な場合には早めの受診を

  • 海外で発熱などの症状が出たら、できる限り早く医療機関を受診してください。
  • また、ご帰国の際に、発熱や心配な症状のある方は検疫所の担当官にご相談ください。帰国後に発症した場合や症状が改善しない場合、受診の前に、お近くの保健所か医療機関または検疫所にご連絡ください。
  • 医療機関を受診する時には、医師に、渡航先や渡航期間、渡航先での活動などについて、詳しく伝えてください。

FORTH感染症情報

出典

WHO.Disease Outbreak News, Emergencies preparedness, response. 13 April 2016
Yellow Fever- Angola
http://www.who.int/csr/don/13-april-2016-yellow-fever-angola/en/