2016年04月25日更新 コレラの流行発生 -タンザニア

2016年4月22日付で公表されたWHOの情報によりますと、タンザニアの健康保健省は流行が続いているコレラについての更新情報をWHOに報告しました。

報告の詳細

2016年4月20日までに、全国で死者378人を含む24,108人の患者が報告されました。患者の大半(死者329人を含む患者20,961人)は、タンザニア本土の23州から報告されています。

全体では発生患者の動向は変動していました。2015年10月から12月までに、いくつもの州(モロゴロ、ダルエスサラーム、タンガ、アルーシャ、シンギダ)で、新たな患者数が大幅に減少しました。(しかし、)2015年12月中旬から2016年3月の終わりにかけて、再び、新たな患者の報告数が増加し始めました。その後、3月中旬以降には、本土で報告された患者数が大きく減少しました。例を挙げれば、毎日の患者発生数の平均は、2016年3月の150人から2016年4月中旬には30未満に減少しています。

これまでに、ザンジバルでは、5つの州で死亡者51人を含む患者3,057人が報告されました。患者の大半は Unguja(ウングジャ)島(死亡者38人を含む患者1,818人)で発生していますが、Pemba(ペンバ)島でも死亡者13人を含む累積患者1,239人が報告されました。

状況評価は、タンザニア本土、ザンジバルともに、感染の拡大に関係した主な要因が、安全な水と衛生環境の確保に対する利便性に限りがあることを示しています。飲料水の設備機関は、塩素消毒の処理能力も、水質のモニタリングと評価を実施する能力も欠いています。改善されたトイレの普及率も非常に低い状態です。貧困世帯における作り話や誤解、そして衛生設備の欠如による恒常的な衛生習慣の欠落も流行の発生に関係しています。

公衆衛生上の取り組み

多岐に亘るコレラ対策委員会(保健省、WHO、UNICEF、疾病対策センター、赤十字、その他の支援組織)が、感染の流行に対する監視と対策への調整を進めています。国の保健局のコレラ対策計画は、この対策を主導することを承認されました。政府とWHOとの合同により、6つの技術的な小委員会、(1)上下水道と衛生環境[WASH]、(2) 地域活動の動員、(3) 調査活動、(4) 検査、(5) 患者管理、(6) 物流と人員の管理、で構成される対策委員会が作られています。この小委員会は、それぞれの分担地域に対策とその進捗状況に関する更新情報を提供するために、対策を実施している地域と密接に連携を取りながら、基本的に毎日会議を開いています。

保健局は、各家庭の衛生環境および安全で良好な上下水道の整備を進めるための地域活動の動員、家庭での飲み水の取り扱いと安全な貯水のための塩素の配布、定期的な飲料水の採取の実施と細菌汚染に対する検査と分析、治療センターでの患者管理の強化とコレラによる死亡者を埋葬する際のリスク管理の強化など、これらの対策への取り組みに焦点を当てています。広域におけるプライマリ・ヘルスケア(PHC)委員会が、地域の担当委員、地区の担当委員、その他の主な利害関係者や現地の指導者と、保健当局および実際の活動者の参加を得て、開かれています。それぞれの地域の個性に合わせて目標を置いた感染制御に取り組むために、最も感染が発生している地域や地区に対して、現地活動レベルでの支援提供のための緊急対応チームが展開されています。

WHOは、支援団体と調整し、調査活動、患者管理、並びに水質の監視における技術的な指針を提供しています。この組織は、これまでに、(安全な飲料水・下水・衛生環境の促進、社会活動員の投入、患者管理と発生の監視、医薬品の調達、日用品など)さまざまに対策に取り組む政府を支援するために、25人以上もの国際的な公衆衛生の専門家を動員しました。 WHOとCDCの支援により、公衆衛生の緊急オペレーションセンター(PHEOC)が、対策の調整を支援するために運営されています。また、この国の事務所は、感染の著しい村で換気の改善された汲み取り式トイレの建設と手動によるポンプを使える井戸の試掘を支援しています。

2015年11月に、WHOはこの流行を緊急対応のフレームワーク(ERF)評価尺度をレベル2としました。 ERF評価尺度には3段階のレベルがあります。2016年2月には、患者発生の指揮者が任命され、現地および遠隔の両方で対策の支援を提供しています。(WHO)地域事務局は、継続的に確実に効果を得るために、地方レベルでリスクの高い地区での監視を支援するための専門家を追加派遣しています。

WHOのリスクアセスメント

最近、新たに報告されたコレラ患者数は明らかに大幅に減少してきたものの、(ⅰ)地理的に大きく拡がる患者の分布、(ii)安全な飲料水と衛生環境の利用などの根底に持続的に存在する原因、(iii)いくつもの地方にある調査活動や検査活動の次善の状態、(iv)症状のある患者および症状のない患者の地理的な移動など、引き続き流行拡大へのリスクが存在しています。また、エルニーニョ現象も流行の持続に役割を果たしている可能性があります。この国と近隣諸国との間での往来は盛んで、検査もなく行き来できるため、この流行がタンザニアの国境を越えて国際的に拡散する可能性が存在します。そのため、隣接するコンゴ民主共和国、ケニア、マラウイ、モザンビーク、ザンビアでも、コレラの流行発生に対策が行われています。加えて、タンザニアは、感染が全く発生していないその他の国と国とをつなぐ往来の激しい国際港湾や空港を保有しています。WHOは、入手可能な最新の情報に基づいて、疫学的な発生状況を監視し、リスク評価を行っていきます。

WHOからのアドバイス

WHOは、現在、利用可能な情報に基づく判断として、コレラの感染が流行する如何なる国に対しても渡航や貿易の制限を勧めてはいません。

飲料水が媒介する疾患であるコレラは、コレラ菌に汚染された水を飲み、食品を食べる人々に感染し、重い下痢と脱水の症状を起こします。治療をしなければ、特に若年者と高齢者では、コレラは瞬く間にショックや死につながることがあります。


タンザニアへ渡航、滞在される方は、今後の情報に注意していただくとともに、以下の対策を行ってください。

  • 飲料水や歯みがき、うがいの水にはミネラルウォーターを使うか、十分に沸騰させた水を使うこと。氷は生水から作られている可能性があるので食べないこと。
  • 食事は加熱されたものを、冷めないうちに食べること。
  • 食事の前、トイレの後には石けんと水で十分に手洗いすること。
  • 下痢になった場合、以下の作り方で作った水を十分にとり、できるだけ早く医療機関で診療を受けること。

図.吸収のよい水の作り方

感染症情報:食べ物・水にご注意を!コレラ

出典

WHO.Disease Outbreak News, Emergencies preparedness, response. 22 April 2016
Cholera - United Republic of Tanzania
http://www.who.int/csr/don/22-april-2016-cholera-tanzania/en/