2016年05月06日更新 黄熱の発生 -コンゴ民主共和国(更新)
2016年5月2日付けで公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、3月22日に、コンゴ民主共和国(DRC)の国際保健規則(IHR)国家担当者は、現在、アンゴラで発生している感染の流行に伴い複数の黄熱が発生したことをWHOに報告しました(4月13日に公表された記事の追加情報です)。
報告の詳細
2016年1月初めから3月22日までに、死亡者45人を含めて、合計で453人の黄熱疑いの患者が国内調査システムによって報告されました。
さらなる調査で、アンゴラの流行に関連した死亡者が41人となる可能性が認められました。これらの患者は、キンシャサにある国立生体医学研究所(INRB)での検査によって確認されました。患者41人のうち、16人はダカールのパスツール研究所・地域レファレンス研究所でも確認されました。患者13人はコンゴ中央部(旧Bas-Congo)で発見され、3人はキンシャサから報告されました。コンゴ中央部(旧Bas-Congo)には、アンゴラとの間に自由に往来できる国境があります。
この他にも、25人の感染の可能性の高い患者に対して、ダカールのパスツール研究所からの検査結果が待たれています。結果が待たれる患者のうち、2人は国内感染(1人はキンシャサ、もう1人はコンゴ中央部の都市Matadi)の可能性が高いことが確認されています。調査は続けられており、ダカールのパスツール研究所からの追加の検査結果が待たれています。
地域での感染伝播の存在と拡散のリスクを評価するために、カメルーンのパスツール研究所からウイルス学者の支援を受けた調査チームが、4月7日から18日にかけて流行の調査を行いました。実施された昆虫調査では、感染力調査のためにダカールのパスツール研究所に送られた採取標本において、高い密度でのネッタイシマカの幼虫が発見されました。高い密度の媒介昆虫は、この病気を拡散させる危険性が非常に高いことを示しています。
DRC政府は、2016年4月23日に公式に黄熱の流行を宣言しました。
公衆衛生における取り組み
DRC保健省は、この事態に対し流行を制御するための国家対策委員会を立ち上げました。
主な対策への取り組みは、次の通りです。
- 各関係機関との調整機能の確立
- 地域での活動員の動員
- 患者の管理
- 医療従事者の訓練を通した調査活動の強化
- 患者の診断定義の普及
- 入国地点でのスクリーニング検査と衛生管理、避難民のワクチン接種状況の確認
- 媒介蚊の駆除に対応し、全ての公衆衛生施設(公共、民間、地域に根ざしている医師)が感染に細心の注意を払うこと
- アンゴラに旅行するすべての人への予防接種
診断、特に患者の確定診断の遅れを回避し、調査活動を向上させるための診断に対して、検査の処理能力を向上させる技術支援が必要とされています。
WHOと加盟組織からの支援を受けて、政府は、黄熱の流行がさらに拡大する可能に対して国の備えを向上させるために、不測の事態への計画を作成しました。この計画では、最低でもキンシャサの2地区と確定診断患者が確認されているコンゴ中央部の6地区(200万人の合計)の8地区でワクチン接種することになっています。もし地域感染が検査によって確認されれば、その後は他の地区でも必要に応じて標的として定めていきます。
WHOのリスク評価
DRCにおける状況は、懸念されるものであり、最も高度な警戒体制で監視していかなければなりません。DRC政府には、黄熱が常在することで知られる地図上の地域にあることから、国内での感染患者が定期的に報告されています。2016年1月以降、国内感染が疑われる患者が、Bas-Uele、 Equateur、Kasai central、Tshuapaの各州で記録されました。前回の大流行は、2013年にKasai n Oriental(東カサイ州)と2014年にOriental(東部州)およびKatanga(カタンガ州)で報告されました。
黄熱は、2003年にキンシャサで定期のEPI (Expanded Programme on Immunization:予防接種の普及計画)に組み込まれました。(しかし)利用が可能なデータによれば、2012年から2014年まででも、首都地区の多くの地域(71%)で黄熱ワクチンの接種率(<80%)が不十分でした。DRC政府は国内および国境を接する国々に地理的に流行が拡大することを避けるために、WHO並びに加盟組織の支援を受けて、適切な管理対策、特に、即応すべき予防接種キャンペーンを行うことを必要としています。
キンシャサには、アンゴラ人の大きな地域集団があり、媒介するシマカ属の存在と活動性を考えると、DRC全土で、特にキンシャサ(キンシャサ地区人口:推定1,290万人)で感染伝播の地域サイクルが確立される潜在性は、現実的な懸念であり、極めて注意深く監視される必要があります。
これまでの調査では、地域での感染伝播の高いリスクが強調されました。それは、高い昆虫指数、アンゴラとコンゴ民主共和国との間の人々の往来、およびアンゴラからのウイルスをもった患者の定期的な流入などの要因によって明らかにされています。
アンゴラから帰国した旅行者や労働者における黄熱感染の報告は、この病気が国際的に広がる危険性があることも強調しています。
WHOからのアドバイス
IHR(2005)にしたがって、緊急に旅行者に対する黄熱予防接種の要件を強化することが必要です。黄熱は、少なくとも旅行の10日前にワクチンを接種することで産生される免疫力で簡単に防ぐことができます。WHOは、加盟国の中で特に地域感染のサイクルが確立する可能のある(すなわち、媒介するネッタイシマカが生息する)国に対して、黄熱が流行している国に向かう、もしくはその国から来る旅行者に対して黄熱病の予防接種証明を確認することを励行しています。
WHOは、入手可能な情報に基づく限り、この流行発生においてコンゴ民主共和国への旅行にも貿易にも制限を推奨していません。感染の発生している地域に行く前の個々人のワクチン接種、防蚊対策の確認、症状および徴候への注意、並びに治療のための早めの受診は、病気の予防のために不可欠となる対策です。
蚊に刺されないための対策
- 可能な限り、しっかりと網戸が取り付けられているか、エアコンが設置されている、または、蚊をしっかりと駆除しているホテルやリゾート施設を選んで滞在してください。
- 長袖のシャツ、ズボンを着て、できるだけ皮膚の露出部を少なくするようにしてください。
- 流行地域では、屋外にでかける場合や網戸が取り付けられていない建物にいる場合には、ディート(DEET)などの有効成分が含まれている虫よけ剤を皮膚の露出部につけてください。使用する場合には、必ず添付文書に記載されている使用法を守ってください。日焼け止めを使う場合は、先に日焼け止めをつけてから、虫よけ剤を使用してください。
- 子ども、とくに乳児への虫よけ剤の使用については、小児科医にご相談ください。虫よけ剤が使用できない場合、ベビーカーにぴったりと合う蚊帳でベビーカーを被うように注意してください。
心配な場合には早めの受診を
- 海外で発熱などの症状が出たら、できる限り早く医療機関を受診してください。
- また、ご帰国の際に、発熱や心配な症状のある方は検疫所の担当官にご相談ください。帰国後に発症した場合や症状が改善しない場合、受診の前に、お近くの保健所か医療機関または検疫所にご連絡ください。
- 医療機関を受診する時には、医師に、渡航先や渡航期間、渡航先での活動などについて、詳しく伝えてください。
FORTH感染症情報
出典
WHO.Disease Outbreak News, Emergencies preparedness, response. 2 May 2016
Yellow Fever-Democratic Republic of the Congo
http://www.who.int/csr/don/02-may-2016-yellow-fever-drc/en/