2016年06月15日更新 黄熱の発生 -アンゴラ(更新3)

2016年6月14日付けで公表されたWHOの黄熱に関する更新情報です。第1報は、1月21日にアンゴラの国際保健規約(IHR)国家担当者から黄熱の集団発生がWHOに報告されました。2015年12月5日に発症した最初の患者は、Luanda(ルアンダ州)Vianaで確認されました。

  • 報告の詳細

2016年6月10日現在、死亡者345人を含む黄熱の疑い患者3,137人が、国内の全18州から報告されています。(このうち)847人が確定診断されました。確定診断された患者は、18州のうちの12州31地域で記録されました。報告された州は、Benguela(ベンゲラ), Cuango Cubango(クアンド・クバンゴ), Cuanza Norte(クアンザ・ノルテ), Cuanza Sul(クアンザ・スル), Cunene(クネネ), Huambo(ウアンボ), Huila(ウイラ), Luanda(ルアンダ), Lunda Norte(ルンダ・ノルテ), Malanje(マランジェ), Uige(ウイジェ), Zaire(ザイーレ)の各州です。

ルアンダ州とウアンボ州は最も多くの感染が発生している地域で、それぞれに患者は1,778人(確定患者489人)と508人(同126人)に上っています。この他に感染が多く発生している地域は、ベンゲラ州(疑い患者291人)、ウイラ州(同135人)、クアンザ・スル州(99人)、ウイジェ州(54人)です。大半は15歳から24歳の層の患者です。

調査活動を強化するための努力が続けられており、新たな集団発生地域が報告されているものの、国内の患者数は徐々に減少してきています。疫学的な傾向や動向からは、依然として、黄熱ウイルスの伝播が他州へと拡大するリスクと、アンゴラと密接に関係する周辺諸国へも拡がるリスクが存在することを示しています。

ルンダ・ノルテ州における疫学的発生状況は、特に懸念されています。この地域はコンゴ民主共和国(DRC)と国境を接しており、常時、DRCの国内外に大きな流れで人や物が移動しています。これまでに、確定患者3人がルンダ・ノルテ州から感染輸入されたことが、DRC政府によって報告されました。

  • 公衆衛生上の取り組み

国家公衆衛生委員長(NDPH)の下、国家対策会議が流行への対応策が行われています。WHOは、国家公衆衛生委員長への加盟各国の支援を調整すべく、感染発生の監視システム(IMS)を立ち上げました。この感染発生の監視システムは、ダカールのパスツール研究所、ユニセフ、米国疾病対策センター(CDC)、世界の医療団(Medicos del Mundo)、国境なき医師団(MSF)など、いくつもの組織の活動を関係調整し、統合強化しています。

この流行への対策を行うIMS参加国には、以下の5つの柱が明確に示されています。

  1. 1.患者の調査と検査施設での感染確認に重点を置いた監視活動の強化
  2. 2.ワクチン接種
  3. 3.媒介昆虫の駆除・制御
  4. 4.患者の管理
  5. 5.地域住民の動員活動

6月10日現在、国内のほぼ半数に当たる人々(10,641,209人)がワクチン接種を受けました。また、国は11,635,800本のワクチンを受けとりました。集団予防接種キャンペーンが、ルアンダ州の全ての地域、ベンゲラ州の7地域、クアンザ・スル州の5地域、ウアンボの5地域、ウイラ州の3地域、およびウイジェ州の2地域で行われました。DRCと国境を接する州の全ての地域にあたる、ルンダ・ノルテ州2地域とザイール州1地域でもワクチン接種が続けられています。さらなる集団予防接種キャンペーンが、クアンド・クバンゴ州、クネネ州、Namibe(ナミベ)州を含む、これら地域および他州でも計画されています。その中でも、Cafunfu(ルンダ・ノルテ州)とLubango(ウイラ州)の街で対策としてのワクチン接種が行われています。ルアンダ州とベンゲラ州の接種率が低い地域で予防接種を完遂するために計画(所謂、掃討キャンペーン)が繰り広げられています。

  • WHOのリスク評価

アンゴラでの発生状況の悪化が懸念され、緊密に(感染状況を)監視する必要があります。これまでの類似の経験に基づけば、さらなる患者が報告されることは予想されます。中国、コンゴ民主共和国、ケニアで患者が感染輸入されたことの報告は、この流行が、世界全体において脅威となる潜在性をもっていることを示しています。媒介する蚊や感染しやすい人々がいる地域にウイルスをもった旅行者が入って来たとき、そこには地域での感染伝播サイクルが確立されるリスクができます。早急に、アンゴラでの対策の質を強化し、これを続けることが必要です。近隣諸国およびアンゴラに民族の居住地区をもつ国においても備えを強化することが必要です。WHOは、入手できる最新の情報に基づいて、疫学的な発生状況と行動リスクの評価を継続的に監視しています。

  • WHOからのアドバイス

黄熱は、少なくとも旅行の10日前にワクチンが接種されれば、容易に免疫力で予防することができます。そのため、WHOは、加盟国、特に地域において蚊が感染伝播するサイクルの確立が可能な場所(即ち、媒介能力をもつ蚊であるネッタイシマカが生息する場所)をもつ国は、潜在的に流行が常在する地域を渡航する者に対して、予防接種の接種状況の管理を強化することを促しています。

アンゴラでの活発な黄熱の流行状況と関連して、アンゴラやその他の(黄熱が)潜在する流行地域から帰国する渡航者にも、特別な注意を払う必要があります。医療上の理由でワクチン接種を行っていない場合には、これが正式に認められた行政機関によって認定されていなければならないと記されています。

WHOは、入手可能な情報に基づく限り、この流行発生においてアンゴラへの渡航にも貿易にも制限を加えることは推奨していません。

蚊に刺されないための対策

  • 可能な限り、しっかりと網戸が取り付けられているか、エアコンが設置されている、または、蚊をしっかりと駆除しているホテルやリゾート施設を選んで滞在してください。
  • 長袖のシャツ、ズボンを着て、できるだけ皮膚の露出部を少なくするようにしてください。
  • 流行地域では、屋外にでかける場合や網戸が取り付けられていない建物にいる場合には、ディート(DEET)などの有効成分が含まれている虫よけ剤を皮膚の露出部につけてください。使用する場合には、必ず添付文書に記載されている使用法を守ってください。日焼け止めを使う場合は、先に日焼け止めをつけてから、虫よけ剤を使用してください。
  • 子ども、とくに乳児への虫よけ剤の使用については、小児科医にご相談ください。虫よけ剤が使用できない場合、ベビーカーにぴったりと合う蚊帳でベビーカーを被うように注意してください。

心配な場合には早めの受診を

  • 海外で発熱などの症状が出たら、できる限り早く医療機関を受診してください。
  • また、ご帰国の際に、発熱や心配な症状のある方は検疫所の担当官にご相談ください。帰国後に発症した場合や症状が改善しない場合、受診の前に、お近くの保健所か医療機関または検疫所にご連絡ください。
  • 医療機関を受診する時には、医師に、渡航先や渡航期間、渡航先での活動などについて、詳しく伝えてください。

FORTH感染症情報

出典

WHO.Disease Outbreak News, Emergencies preparedness, response. 14 June 2016
Yellow Fever- Angola
http://www.who.int/csr/don/14-june-2016-yellow-fever-angola/en/