2018年03月06日更新 コレラの発生状況-コンゴ民主共和国

2018年3月2日に、WHOから公表された情報によりますと、コンゴ民主共和国の首都キンシャサでコレラが流行しています。

コレラの発生状況

2017年11月25日から2018年2月23日までに、キンシャサ州保健行政35地区のうち32地区から、コレラ患者1,065人の報告がありました。このうち43人が死亡しています(致死率4%)。2017年11月25日から2018年2月15日までに、国立衛生研究所(Institut National Recherche Biomedicale;INRB)では、検査のために177検体が集められました。これらすべての糞便検体のうち、83検体がコレラ菌に陽性で、83検体が陰性で、11検体が現在も検査中となっています。

キンシャサ州では、2017年11月末以降、コレラの流行に直面しています。2018年1月の大量の雨と洪水の後に、報告される患者数は週5人以下から100人以上に増加しました。 それでも、1月中旬以降は、コレラ疑い患者と確定患者の数が減少傾向にあります。

コンゴ民主共和国はコレラが常在する国です。特にこの国の東部の州では、散発的な患者の集団感染が、よく見られます。首都キンシャサは、コレラの常在する州ではありませんが、ここ数年、いくつかのコレラの集団発生が報告されています。

公衆衛生上の取り組み

  • Pakadjuma、Luka、Bumbu、Lizibaのコレラ治療病棟(CTU)と、Maluka Iのコレラ治療センター(CTC)の5か所で、患者の管理が行われています。
    • Pakadjuma、Luka、Bumba のコレラ治療病棟(CTU)は、国境なき医師団(MSF)ベルギー・チームによって運営されています。
    • Lizibaのコレラ治療病棟(CTU)は、MSFスペイン・チームによって運営されています。
    • Malukuのコレラ治療センター(CTC)は、WHOの支援を受けながら、Maluku第1保健地区(Maluku I Health Zone)によって運営されています。
  • 国境なき医師団(MSF)ベルギー・チームは、患者数が大幅に減少してきたことから、2018年2月28日にPakadjumaのコレラ治療病棟(CTU)から引き上げることが計画されています。Lizibaのコレラ治療病棟(CTU)に患者を搬送するために、移送の体制が整えられてきています。
    国立衛生研究所(INRB)は、糞便(検体)の培養検査を行うことで、検査での確定診断サービスを提供しています。
  • WHOは、現地レベルでの患者報告と調査活動を向上させ、下痢症対応用の緊急キット(物品一式)の手配と出荷に取り組む保健省を支援しています。
  • 国際赤十字社は、衛生環境の整備への活動を支援しています。
  • 2016年に、保健省は、WHOや支援組織に支援され、5つの保健地区(Limete、Maluku I、Masina II、Nsele、Kingabwa)の375,000人を対象に、首都キンシャサで経口コレラワクチン(OCV)の接種キャンペーンを実施しました。このキャンペーンでは、第1ラウンドで(対象者の)94.6%、第2ラウンドで94.0%の投与に成功しました。

WHOのリスクアセスメント

コレラは、糞便で汚染された水や食品中に含まれるコレラ菌(Vibrio cholerae)を取り込むことで起こる急性の腸内感染症です。安全な飲み水や整備された衛生設備の利用環境が不足することに大きく関連しています。コレラは重篤となり、高い罹患率と致死率とをもたらす可能性のある感染症です。接触機会の頻度、危険にされる人口の規模、発生状況などに左右され、急速に拡がる可能性を潜めています。

首都キンシャサは、約1,000万人の人口を抱えるアフリカで3番目に大きな都市です。この都市は、人口の過密や、度重なる定住地の洪水によって生活上の基盤整備の低下、下水道整備の不足、安全な飲み水や衛生設備への利用環境の制約といった居住環境が荒廃することにより、村落から人々が移動し、急速に人口が増加しているという特徴があります。これらの要因により、特に雨期(11月から6月まで)に、首都キンシャサは、洪水や水を原因とする感染症に対して弱くなります。

キンシャサでの週毎の(コレラの)発生率は、2018年1月中旬以降、減少傾向にありますが、発生状況は驚異的です。新たな患者は、貿易および輸送のためにキンシャサとの間を行き来する大動脈であるコンゴ川に沿った地域に位置して報告されています。2018年2月13日から週には、キンシャサ州のMaluku Iの保健地区で、流行が始まってから初めて、患者の発生が報告されました。Maluku Iは大きな港湾都市であり、キンシャサ州の中ではコレラの常在する地域です。しかし、この地域では2016年10月にワクチン接種キャンペーンが実施されて以降、これまでに報告された患者はいませんでした。コンゴ川に沿った地域での患者の発生と、3月から6月に続く2度目の雨期の到来は、キンシャサでの患者の再興へのリスクをもたらします。

この流行の発生は2015年に始まり、1994以降、この国で最も深刻なコレラ流行と考えられています。2017年には、国内で患者55,000人と死亡者1,190人が報告されました。これは、2016年に報告された患者数のほぼ2倍にあたります。コンゴ民主共和国26州のうちの24州で、患者が報告されています。この国は、経済と政治の危機状態が長く続いています。また、コンゴ民主共和国は、400万人を超える国内避難民(IDP)と60万人の難民を抱え、大規模な人道的緊急事態(IASCレベル3)に相当する状況にもあります。今回の流行の発生への効率的な対応に対し、国の人的・物的資源と対処能力は限られています。

この流行が近隣諸国に広がるリスクは、人々が定期的に移動していることから高いと評価されています。世界レベルでのリスクは低いと評価されています。

WHOからのアドバイス

WHOは、コレラの感染伝播を予防するために、安全な飲み水、衛生設備、衛生習慣の実施など環境の向上を奨励しています。調査活動の強化、特に現地住民レベルでの強化が助言されています。死亡者の割合を低下させるために、感染が発生している地域では、患者管理の環境を向上させることが必要です。新たな地域への伝播のリスクを減らすためには、コレラの発生を速やかに発見し、対処するための国レベルでの確実な備えが必要になります。流行の拡大を抑制するためには経口コレラワクチンの供給も検討されるべきです。

WHOは、現在の流行において入手できている情報に基づく限り、コンゴ民主共和国への旅行および貿易に関する如何なる制限も勧めてはいません。細菌学的に安全な飲み水の使用と一般的な衛生習慣の実施およびその他・上記の予防対策で、この病気は十分に予防できるはずです。


コンゴ民主共和国へ渡航、滞在される方は、今後の情報に注意していただくとともに、以下の対策を行ってください。

  • 飲料水や歯みがき、うがいの水にはミネラルウォーターを使うか、十分に沸騰させた水を使うこと。氷は生水から作られている可能性があるので食べないこと。
  • 食事は加熱されたものを、冷めないうちに食べること。
  • 食事の前、トイレの後には石けんと水で十分に手洗いすること。
  • 下痢になった場合、以下の作り方で作った水を十分にとり、できるだけ早く医療機関で診療を受けること。

図.吸収のよい水の作り方.jpg

感染症情報

出典

WHO. Disease outbreak news, Emergencies preparedness, response. 2 March 2018
Cholera - Kinshasa, Democratic Republic of the Congo
http://www.who.int/csr/don/02-march-2018-cholera-drc/en/