サル痘 - ナイジェリア

Disease outbreak news (WHO) 2018年10月5日

概要

2017年9月26日、WHOは、ナイジェリアのバイエルサ(Bayelsa)州のYenagoa地方行政区(LGA)において、サル痘のアウトブレイクの疑いがあるとの警告を受けました。指標集団はある一つの家族として報告されました。これらの患者のすべては、4週間にわたって同様の症状、発熱および全身性皮膚発疹を呈しました。集団への疫学調査によると、感染したすべての症例は、発症前約1ヶ月間、サルと接触していました。
 
2017年9月のアウトブレイクの発生から2018年9月15日までの間に、25州と1領域において、合計269例の疑わしい症例が報告され、そのうち16州と1領域において、115例がサル痘と確認されています。また、7例の死亡が登録され、そのうち4例は以前から免疫不全状態の患者でした。確認された症例には2人の医療従事者が含まれていました。最も影響を受けた年齢層は21-40歳であり、確認された症例の79%が男性でした。
 
2018年には合計76例が報告され、そのうち37例がサル痘と確定、1例がほぼ確実、2例が死亡しました。これらの症例は、14州(Abia、Akwa-Ibom、Anambra、Bayelsa、Cross River、Delta、Edo、Enugu、Imo、Lagos、Nasarawa、Oyo、Plateau、Rivers)及び連邦首都領域(FCT)で報告されました。
 
ウイルスの遺伝子配列の解析結果は、ヒトからヒトへの感染の証拠を有する複数のサル痘ウイルス(MPXV)がヒト集団へ導入されたことを示唆しています。分離株は西アフリカ、ナイジェリア1971株と密接に関連しています。
 
2016年以降、中央アフリカ共和国、カメルーン、コンゴ民主共和国、リベリア、ナイジェリア、コンゴ共和国、シエラレオネなどのアフリカ中西部の国々(図1)から散発的にサル痘患者の発生が報告されています。
 
図1:2010年から2018年までに、ヒトおよび動物のサル痘症例が報告されたアフリカ諸国

公衆衛生上の取り組み

WHOと連邦保健省はナイジェリア疾病管理センター(NCDC)を通じて、州保健省と協力し、疑わしい症例を調査し、接触者を監視しています。強化されたサーベイランスがすべての州、特に最も被害を受けた州と連邦首都地区において進行中です。さらに、全国規模のサル痘対策の暫定的な指針が再検討され、地域単位のサル痘対策の研修が2018年10月に開始される予定です。

2018年10月、米国疾病予防管理センター(CDC)と共同で動物のサーベイランスが開始されます。この調査は、いくつかの被害を受けた州の野生生物保護区における、研修から始まります。

WHOのリスク評価

サル痘は、偶発的なヒトへの感染を伴う人獣共通感染症で、中西部のアフリカの熱帯雨林で散発的に発生します。サル痘は、天然痘と同じウイルス群Orthopoxvirusに属するサル痘ウイルス(MPXV)によって引き起こされます。

サル痘ウイルスには、コンゴ盆地と西アフリカ、2つの異なる系統群(clade)が存在します。臨床症状および疫学的特徴において、これら2つの系統群間のヒトへの病原性には差異があります。自然界における感染動物は未知のままですが、アフリカ土着の齧歯類が潜在的な感染源の可能性があるという証拠があります。狩猟や野生動物の肉の消費を通じた、サル痘ウイルスに冒された生きている動物や死んだ動物との直接的な接触は、ヒトへの感染を引き起こします。サル痘は限定的な症状に留まり、通常14~21日以内に自然に治癒します。重度の症例は子供の間でより一般的に起こり、ウイルス曝露の程度、患者の健康状態および合併症の重篤度に関連します。致死率はその時々の流行により大きく異なるが、記録された症例においては1~10%でした。サル痘ウイルス感染を防ぐワクチンやサル痘の特別な治療方法はありません。

WHOからのアドバイス

流行地域/国に住む住民や旅行者は、齧歯類、有袋類、霊長類などのサル痘ウイルスに感染しているおそれのある、生きた動物、病気の動物、死んだ動物との接触を避けるべきであり、野生動物の肉の摂食や調理を控えるべきです。石けんと水またはアルコールベースの消毒剤を使用する手指衛生の重要性が強調されます。最近の旅行および予防接種歴に関する情報を含めて、旅行中または帰国時のいかなる病気についても、すべての医療従事者に報告する必要があります。

サル痘ウイルス感染の疑いがあるか、感染が確認された患者をケアする医療従事者は、標準、接触および飛沫感染の予防措置を実施すべきです。

サル痘ウイルス感染が疑われる人および動物から採取したサンプルは、適切に装備された研究所で訓練を受けたスタッフが処理する必要があります。

迅速な接触者の追跡とサーベイランス措置、そして、ヘルスケア提供者の間で輸入される新興疾病に関する認識を高めることは、二次症例の予防とサル痘ウイルスのアウトブレイクの効果的な管理に不可欠です。

WHOは、現時点で利用可能な情報に基づいて、ナイジェリアへの旅行や取引に関する制限を推奨していません。

出典