複数国におけるサル痘のアウトブレイク(更新6)

External Situation Report 6, published 2022年9月21日
Date as received by WHO national authorities by 17:00 CEST, 19 September 2022

 
確定された患者数 死亡者数 国・地域数
 61753   23   105

リスクアセスメント  
世界的なリスク
WHO管轄地域別のリスク 欧州地域
アフリカ地域
北米・中南米地域
東地中海地域
東南アジア地域
西太平洋地域 低から中

焦点

・2022年9月12日から18日の1週間に報告された欧州地域と北米・中南米地域のサル痘の患者数は減少し、2022年8月から世界的にも減少傾向となっている。
・2022年9月7日に発表された前版以降は、新たに8757人の患者(総患者数の16.5%増)と5人の死者が報告された。
・2022年9月13日、北米・中南米地域はリスクステートメント(評価日:2022年9月9日)を発表し、同地域の全体的なリスクを「高」と分類した。
・2022年9月16日、WHOは一般向けアドバイスページを開設した。このページの目的は、個人と家族の病気の予防と健康維持に関する情報と公衆衛生上のアドバイスを提供することである。WHOはまずサル痘の発生時に安全に過ごすための情報を掲載している。

疫学的な情報更新

2022年1月1日から9月18日までに、WHOの全6地域の105の国/地域から61753例の検査室で確定された患者と23例の死亡例がWHOに報告されている(表1)。2022年9月7日に発行された前版以降、新たに8757人の患者(総患者数の16.5%増)と5人の死亡例が報告された。
 
過去7日間で、23カ国が週間患者数の増加を報告し、チリで最多の増加が報告された。また、新たに3カ国が過去7日間のうちに最初の患者を報告した。グアム(9月12日)、ウクライナ(9月15日)、バーレーン(9月16日)である。全体では、33カ国が最大潜伏期間である21日以上、新規患者の報告をしていない。
 
第37週(9月12日~18日)の世界全体の週間新規患者報告数は、第36週(9月05日~11日)(n=4,863)に比べ22%減少し、欧州地域(-81%)と北米・中南米地域(-42%)で最大の減少が観察されました。これらの減少にもかかわらず、過去4週間に報告された症例の大部分は、北米・中南米地域(80.3%)と欧州地域(18.6%)から報告されている。9月5日から18日までに、カメルーン(n=2)、ナイジェリア(n=2)、スーダン(n=1)で、合計5人の死亡が報告された。全体として、アフリカ地域で確認された患者の中で最も多くの死亡を報告されている(14/23;60.9%)。
 
9月18日現在、世界で最も累積患者数報告が多い10カ国は、アメリカ合衆国(n=22 957)、スペイン(n=7037)、ブラジル(n=649)、フランス(n=3898)、ドイツ(n=3563)、英国(n=3552)、ペルー(n=2054)、カナダ(n=1363)、コロンビア(n=1260)およびオランダ(n=1209)である。これらの国々を合わせると、全世界で報告された症例の86.7%を占める。
 
図1 週毎に集計されたWHO管轄地域別のサル痘に係る新規感染者数を示したグラフ(2022年1月1日から9月17日17時(欧州夏時間)まで)


表1 WHOへ報告されたWHO管轄地域別のサル痘に係る累積感染者数及び死亡者数(2022年1月1日から9月18日17時(欧州夏時間)まで)


その他の疫学的知見
・この感染症は主に若い男性が罹患しており、データがある症例の97.4%(32125例中31295例)が男性で、年齢の中央値は35歳(四分位範囲:30 - 42)であった。年齢が判明している症例のうち、0~17歳は1%未満で、そのうち0~4歳は86人(0.3%)である。この割合は地域によって異なり、0-17歳の症例が最も多いのは北米・中南米地域である(164/293、56%)。
・性的指向が報告されている症例では、90.9%(13 940/15 339)がゲイ、バイセクシャル、MSM(men who have sex with men)であることが確認されている。感染経路が判明している報告のうち、性行為時の皮膚・粘膜接触による感染が最も多く、11242件中10215件(90.9%)であった。
・暴露されたと考えられる状況は、性的接触のあるパーティーでの感染が最も多く、5,280件中3,099件(58.7%)であった。
・HIV感染状況が判明している症例では、44.2%(17444人中7709人)がHIV陽性である。
・最低1つの症状が報告されている症例では、最も多い症状は皮疹(部位を問わない)で、85%の症例で報告されており、次いで発熱が57%、全身および性器の皮疹(それぞれ41.6%と30.1%)であった。
 
年齢層および性別によるサル痘患者の分布の地域差
図2は、WHOの地域別患者数の多い地域におけるサル痘患者の年齢性別ピラミッドである。ヨーロッパ地域と北米・中南米地域では、年齢性別の分布が類似しており、30~39歳の男性に多くの患者が発生し、性的指向の分布も類似していることから、これらの地域で発生中のサル痘は、主にゲイ、バイセクシャル、MSM(men who have sex with men)、最近1人か複数のパートナーとの性的接触を報告した男性のなかでアウトブレイクが拡大していることが示されている。
 
一方、アフリカ地域では、今回の感染の人口統計学的な特徴として、継続的な人獣共通感染症の特徴を反映しているものの、野生動物からヒトへの伝播の役割は現時点ではよく分かっていない。年齢と性別のピラミッドは、家庭内での感染を含む他の感染様式を反映している可能性もある。0~9歳の子どもは最も感染者の多いグループの一つであり、感染者の男女数に顕著な差はない。次の18~29歳の層では、やはり男性が多いが、女性も同じく感染している。最近の研究で明らかになりつつあるように、性交渉による感染経路は男性から男性、男性から女性の両方が存在する可能性が高い。これらの地域で、地方や都市部でのサル痘の感染源や感染様式を解明し、より理解するために、さらなる疫学調査、研究、one-health studiesが必要である。
 
図2. 最も多くの症例を報告した3つの地域におけるサル痘症例の年齢-性別ピラミッド(年齢-性別データが判明している31012症例)


図3 公式情報からWHOによって特定又は報告されたサル痘の確定された感染者に係る地理的分布(2022年月1日1日から9月18日17時00分(欧州夏時間)まで)

最新情報とWHOのアドバイス

WHOは引き続きアウトブレイクを注意深く監視し、対応し、加盟国やパートナーとの国際的な調整と情報共有を支援する。Clinical and public health incident responseは、包括的な症例発見、接触者の追跡、検査室での検査、隔離の支援、臨床マネージメント、感染管理と予防策の実施、リスクコミュニケーションと地域社会の積極的な関与、ワクチン接種活動の調整を行い、さらに進行中の疫学および対策研究を支援するために加盟国によって発動される。

調査及び研究

WHOは、IHRコミュニケーションを通じて、毎日のサル痘患者数および死亡者数に関する定期的な情報収集を続けるとともに、症例報告書(CRF)を通じて詳細な情報を収集している。現在、WHOは世界中で報告された全確定症例の約91%についてCRFを受け取っており、最新の疫学情報はオンラインの2022 Monkeypox outbreak: Global trendsに掲載されている。オンラインレポートには、「文献の要約と疫学パラメータ」という新しいセクションがあり、WHOは2022年の流行について新たに発表された文献から疫学的パラメータをまとめている。
 
WHOは現在、加盟国とともに、サル痘の下水道サーベイランスの利用、地域社会におけるウイルスの存在と伝播のモニタリングに対する利点、この作業に関連する技術的及び、その他の課題を調査している。

感染予防と感染管理

WHOは、サル痘が疑われる患者や確定患者のケアをする際には、呼吸器、手袋、ガウン、目の保護具の使用などの標準予防策と感染経路別予防策を継続するよう医療現場に助言している。医療施設でも家庭でも、患者のケアをしている間は、手袋やその他の個人用保護具を使用する必要がある。医療施設は、医療従事者が安全に設計されたデバイスの使用促進を含め、安全な注射手技の訓練を受けていることを確認する必要がある。皮膚やその他の検体の採取時には、針刺し事故による経皮曝露で医療従事者の感染報告があり、それを避けるためにWHOのガイダンスに従うべきである。鋭利な針は、皮膚病変の切除に使用すべきではなく、ランセットまたは他の適切な器具の使用が望ましい。
 
特に、環境の清掃と消毒の手順、および標準予防策と感染予防策に従ったリネンと洗濯物の安全な取り扱いに注意を払う必要がある。汚染された可能性のある物質との接触は、すべて避けるべきである。医療および家庭環境における感染予防と制御のためのガイダンスは、「 Clinical management and infection prevention and control for monkeypox: interim rapid response guidance.」で入手できる。
 
集会といった地域のイベントやセックスが起こりうるイベントでは、職員がサル痘のリスク、感染様式、徴候および症状を認識し、手指衛生、環境の清掃および消毒、リネンを含む共有物の安全な取り扱いおよび清掃・消毒などの感染管理措置を実施するように、管理者や主催者が徹底させるべきである。

出典

Multi-country outbreak of monkeypox, External situation report #6 - 21 September 2022
https://www.who.int/publications/m/item/multi-country-outbreak-of-monkeypox--external-situation-report--6---21-september-2022(参照2022-9-21)